ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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五手 観客乱入

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 観戦室の一つ、冥界の若手が観戦するフィールドでは、戦闘はすでに終局に向かっていた。

 

 もともと最重要ターゲットではないこともあってか戦力はそこまで多くなく、しかしその戦力はありえないほどに強大だった。

 

 若手眷属の中でも優秀なものたちが多いだけでなく、ピンポイントでの襲撃を避けるためにアザゼルは自分が個人的に使える戦力を周囲に配備していたことで数は大きく減少。さらにアーチャー自身もこちらに待機していたことから、観戦していたものに敵意を持つものだけに効果を発揮する呪詛を展開することで有利に展開する。そのうえで、中にいた戦力にも破格の化け物がそろっていた。

 

 その猛攻の前に襲撃者たちは軒並み返り討ちにされる。

 

 最後に残った鋼の巨人が、莫大な出力をもつエネルギーフィールドを展開して突進していた。

 

 キャスターのサーヴァントが、自身の錬金術と学園都市の技術力を組み合わせて開発した自立戦闘兵器、アルフォンスン。

 

 魔王たちすら足止めできる兵器の一機が放つ特攻攻撃、粉砕激突ブチコワスーアタックなどと名付けられたこのふざけた兵器は、ふざけた名前に反して上級悪魔ですら突破困難な頑丈さをもってしての体当たりであり、それゆえに高い攻撃力を発揮する。

 

 しかし、それだけの攻撃も化け物じみた二人の拳の前には見劣りするものだった。

 

「実質合わせてください!!」

 

「承知した!!」

 

 かたや異世界の超能力、それも計測限界にまで達するほどの念動力をもち、さらに光力すら身にまとうことで最上級堕天使コカビエルと勝負することもできるフリーランスのエージェント。ベル・アームストロング。

 

 かたや、生まれついてもたなかった魔力の代わりを(おの)が肉体に求め、その努力のみで若手悪魔でも最強とまで言わしめるほどの戦闘能力を手に入れた次期大王。サイラオーグ・バアル。

 

 その剛腕から放たれる破壊力の前には、たかが上級悪魔程度で突破困難な程度の障壁など、もろいと言わざるを得ない。

 

 その戦闘経験により初共闘でありながらタイミングのあった同時攻撃に、障壁は難なく崩れ去り、その装甲を砕く。

 

 そこにアザゼル直属エージェントの一人として護衛を担当していた青野小雪の銃撃が叩き込まれ、巨人は活動を停止する。

 

 データ解析防止のためか、機能を停止した巨人は塵へと変わる。その最後は憐みすらさそうが、しかし彼らは同情しなかった。

 

「・・・実質打ち止めのようですね。お手を煩わせて申し訳ありません、サイラオーグ・バアル」

 

「いや、おかげでだいぶ助かった。礼を言う」

 

 拳で戦うもの同士感じ合う何かによって通じ合う二人を尻目に、青野小雪は素早く観戦モニターに飛びつく。

 

 彼女はこの程度の戦いで混乱するほど未熟な戦力ではない。しかしどうしても気になることがあった。

 

「それより兵夜と朱乃は大丈夫か!? オイ、画面操作してすぐにあいつらの居場所を探し出せ!!」

 

「は、はい! 少々お待ちを!!」

 

 あわてた映像担当がすぐに操作し、画面が連続して移り変わる。

 

 各所で戦闘している風景が映し出される中、そして目当ての映像はすぐに出てきた。

 

 だが、その光景は非常に危険だった

 

「・・・朱乃!?」

 

 悲鳴じみた声を挙げてしまうのを、小雪は抑えられなかった。

 

 画面に映し出される光景で、最も大きな色は赤とオレンジ。

 

 それは血の色でこそないが、しかし凶悪な光景であることに変わりはない。

 

 何らかの攻撃によって溶解された地面。それが暖色で彩られた光景の正体だった。

 

 幸い飛行能力をもつ悪魔たちは皆飛ぶことでそれを避けてはいるが、しかしこれだけの破壊力を発揮するものがいるということは非常に危険である。

 

 単純な破壊力だけならば、現時点での赤龍帝すら超えかねない。

 

 それだけの大出力の攻撃が、散発的にとはいえ複数回放たれているというのも重要な危機を現している。

 

 それを成し遂げているのは、彼らから遠く離れた存在であった。

 

 その姿は、まるで砲台を抱え込んだ二足歩行の化け物。

 

 胴体下部に搭載された巨大な臼砲を思わせる球場の物体からは、白い輝きが漏れ出し、そして放出されている。

 

 そして、それを指揮するフィフスが大きく高笑いをしていた。

 

『あーっははははははっ!! うちの技術開発担当が開発した新兵器の味はどうだい!? 上級悪魔もビックリな火力だろ!? 赤龍帝とだって打ち合える化け物が、量産も可能だなんて絶望もんだよなこれが!!』

 

 圧倒的な火力という優位点を手に入れたことにより、フィフスは勝利を確信しているのか勝者の余裕を見せつけていた。

 

 そして、それだけの破壊力を示している化け物の姿を、小雪はよく知っていた。

 

「ファイブ・・・オーバー・・・だと?」

 

 それは、彼女が彼女でないときの世界の異物。

 

 万を超える特殊能力者の頂点、それも破壊力においてはトップクラスの化け物の力を、純粋な工学技術でしのぐために作られた究極の兵器の一つ。

 

 最大火力という一点を追究し、その破壊力は一点収束という意味なら核をこえ、放射能汚染もないクリーンな兵器。

 

 超能力を超える物(ファイブオーバー)。その固有名はマウンテンイレイザー。

 

 その名の通り山をも消しかねない一撃を放つ、破壊力に特化した砲撃兵器が、寄りにもよって量産されて待機されていた。

 

「サイズがでかすぎて整備方面から生産停止されたファックな化け物が、なんでこの世界で量産されてんだよ!?」

 

 思わず叫ぶ小雪だが、しかしその答えは大体わかっていた。

 

 いるのだ、この世界に。

 

 あの人を人とも思わない、人間性を失った科学の申し子たちが。

 

 詳細なデータの記録媒体もない状況下で、己の記憶と知識を頼りに、それを再現できるだけの、科学という現象における究極を現す絶対悪が。

 

「いるのか、・・・木原が!?」

 

 それは非常にマズイ。

 

 なぜなら彼らは学園都市の技術の申し子である。

 

 特別な才を持たざる者に与えるもの。天井に住まう神々の領域へと人を押し上げるための力。

 

 自分たち能力を使うものではなく、能力を生み出すもの。

 

 ファイブオーバーに連なる驚異的な技術力の結晶は、技術であるがゆえに数をそろえやすく、そして人道を無視する特性ゆえに、どのような人間にもある程度の力を与えてしまう。

 

 個人の資質に頼るところが多い現状の異形業界において、間違いなく天敵となりうる。

 

 もし、もしもだ、この世界で彼らが己の研究のためにその技術力を研究しようとしていたらどうなる?

 

 あの人道を無視する連中のために、協力してくれる組織が果たしてどれだけいるだろうか?

 

 神々の領域に届く可能性があると知れば、目的のために二万のクローンを殺させるためだけに作る連中。研究データのためならば、自分ごと数百万の人間を吹き飛ばさせかねない狂人。そもそも意図的に脳障害を発生させるといって過言でない、冷静に考えれば狂気以外の何物でもない方法を、ろくに内容も知らない子供に仕込む異常者。

 

 決まっている。そんなものを最も重宝してくれる組織など、狂人の群れだ。

 

 そして禍の団は、ある意味でその条件に見事に適合するだろう。

 

「・・・ファックッ」

 

 だがそれは上に後で報告するべきことだ。

 

 今はとにかく増援を呼ばなければならない。このまま放っておくわけにはいかない。

 

 だが、どうすればいい?

 

 レーティングゲームの空間は、特殊な結界によって侵入阻害されている。

 

 桁違いの実力者ですら侵入困難な代物を、果たして突破できる人材が今から間に合うか。

 

「朱乃・・・兵夜・・・っ」

 

 この状況下で見ているしかできない自分がもどかしい。

 

 こんなことなら、わがままを言ってでも自分があの場にいればよかった。それならまだ救援することはできたのだ。

 

「あれは電子操作能力だから、雷をフルに使える朱乃ならある程度の干渉ができるはずなのに!? ファック! あたしがあそこにいればこんなことには!?」

 

 完全に判断を間違えた。

 

 想定してしかるべきだったのだ。

 

 転生するのが異能力者だけとは限らない。何事にだって例外がある以上、天文学的な確立だとしてもその可能性を考慮しないのは間違っていた。

 

 その油断のツケを、自分ではなく大事な人たちに背負わせるなど、愚かとしか言いようがない。

 

「ひょ、兵夜!?」

 

 その戦闘の光景を見たナツミも悲鳴を上げる。

 

 兵夜はイッセーとともにシャルバと戦っていたが、しかしそれでも苦戦していた。

 

 アーチャーの戦闘能力は、その気になれば魔王とも勝負になれるほどの能力を持つ。シャルバと正面から戦闘しても、十分渡り合えるだろう。

 

 だが、作った直後の武装を、システムに異常が発生した状態から無理やり持ち直して運用しているため、そこにアラが出始めていた。

 

「実質、地力の差が出ていますね。人為的に強化しているといっても一応は魔王の血族。油断できませんか」

 

 こちらに視線を向けたベルも表情をゆがませる。

 

「私の空間転移能力では完璧に断絶している異空間への転移はできそうにありません。・・・実質、こちらからは手が出せない。兵夜・・・っ」

 

 爪が手に食い込むほど握りしめながら、しかし手を出すことが物理的にできない。

 

 どうしようもなかった。

 

「兵夜!? みんな・・・っ!? ね、ねえ、どうにかなんないの!?」

 

 ナツミが涙ぐみながら縋り付くが、こればかりはどうしようもない。

 

 今から探しても間に合わない。敵の想像以上の数に、動員されたメンバーもまだ追いつかない。アザゼルに至っては連絡が取れない。

 

 どうしようも、なかった。

 

「ファックな話だが、あたしが思いつく方法は何もない。・・・むしろお前はどうにかなんねーのかよ」

 

 八つ当たりじみたことではあるが、しかしつい聞いてしまう。

 

 自分では想像できない。ベルは不可能だと自分で言った。サイラオーグ・バアル眷属に対処できる能力の持ち主はいないはずだ。

 

 可能性があるとすれば能力を詳しく聞いていないナツミしかいない。

 

「・・・ゴメン、まだ・・・全部・・・思い出せない」

 

 肩を落としながらのナツミの絞り出すその答えに、小雪は天を仰いだ。

 

 少なくとも現状とれる手の中に対処できるものはないということだ。たとえあったとしても、記憶があいまいなナツミがそれをした場合、反動で何が起こるかわからない。

 

 世の中は不条理で出来ているということぐらい身をもって知っていたが、しかし心に来るこの展開は何度味わおうと苦痛でしかなかった。

 

「・・・ふむ」

 

 ベルもそうなのか視線をそらし。

 

「ななめ45度」

 

「グベッ!?」

 

 唐突にナツミの後頭部にチョップを叩き込んだ。

 

「お前なにしてんだファァアアアアアアアック!? おい次期魔王、救護班呼んで来い!?」

 

「なんだ!? いったいどうした!?」

 

 なんというか後頭部から流血していて非常にやばい。

 

 助け起こそうにも頭部を強打している状況下でうかつに動かすわけにもいかず、小雪は拳銃をベルに突きつけた。

 

「いや、昔から調子が悪い時はななめ45からたたけば」

 

「どこのおばーちゃんの豆知識だ!? そもそもそれはテレビだろーがぁあああ!?」

 

 時々アグレッシブにボケるとは聞いていたが、まさかこのタイミングでこんな行動を起こすとは思わなかった。

 

 これはマズイ非常にマズイ画面の危機もそうだが今は目の前の非常時だ。

 

 フェニックスの涙を持っていなかったかとポケットを探った時、小雪の耳に妙な声が聞こえた。

 

「・・・カッハハハ」

 

 

 

 

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

 

 

 

 

 

 さすがにこれはマズイ!?

 

 あんな超強力なビーム攻撃を放てる軍事兵器まで開発しているとは思わなかった。

 

「久遠!? クソが・・・っ」

 

 ふざけんななんだあの量産型ビ●○ム! イッセーの初禁手時のビームよりやばいだろうが!!

 

「部長!? みんな!?」

 

 イッセーも度肝を抜かれて絶叫するが、しかし今はそれどころではなかった。

 

「下劣な下級悪魔風情が魔王を無視するなよ!!」

 

 莫大な魔力を感じて振り返ったがもう遅い。

 

 とっさにトゥムファーアインを蹴り飛ばして距離をとったが、しかし回避しきれず弾き飛ばされる。

 

 イッセーに至ってはもろに喰らって禁手が溶けてる始末。

 

 やばい、これは詰むぞ!?

 

 このまま行けば高確率で全滅する。・・・悔しいが俺たちの負けだ。

 

―アーチャー!? こうなれば最後の手段だ、令呪でマスター権をアザゼルに送る。俺は可能な限り味方を逃がすから後任せた!!

 

―そこは私を呼んで助けてもらおうとしなさい!?

 

 アーチャーが何か言っているが、しかし8割ぐらい能力を呼び出せるあの武装で対処不可能なのに、圧倒的不利な状況下でそんなことする度胸はない。

 

 ここで令呪を使って勝算低い戦いをするより、より勝機のあるマスターに送って何とかしてもらうほうがまだ確立はある。

 

 ・・・とはいえ誰を優先するかは精神的に来るな。俺が一番最後なのは当然だがまずはイッセーと久遠と部長と会長。続いて―

 

 と、そこまで考えて、俺は目の前に見慣れた姿を見た。

 

「・・・ナツミ?」

 

 やばい、精神的に動揺しすぎて幻覚が見えてきたぞ。

 

 この状況下でそれは非常にマズイ。

 

 こんな時だからこそ冷静に対応しなければならないのに、動揺しすぎて幻覚を見るなどあってはならないはずだ。完璧にマズイ。

 

 っていうかなんだあの熊娘バージョンは。もうちょっと緊張感ある格好にしろよ俺の脳!

 

「・・・カッハハハ」

 

 しかもなんかひどい幻聴なんだが。再現度ひっく!?

 

「よし速攻で動いたほうがいいな。令呪に―」

 

「いいからこっち向け馬鹿が!!」

 

 鎧越しに顔面に衝撃!?

 

 馬鹿な!? 幻覚だけでなく幻衝撃だと!?

 

「いいからちょっとこっち顔向けろ馬鹿が!!」

 

 そのままナツミ?に顔を固定されて、ドアップのその顔を見ることになる。

 

 なんというか、本来のナツミが無邪気な子供なら、こっちのナツミはなんというか野性的だな。

 

「説明はめんどいから手っ取り早くいうぞ? ・・・あのデカブツつぶしてくるから、それまで持ちこたえてろ」

 

 ニヤリと笑うと、そのままナツミは姿を変える。

 

「サタンソウル・・・フィネクス!!」

 

 炎に包まれた鳥を思わせる姿に変えると、そのままあのデカブツに向かって突進した・・・ってオイ!?

 

「あ、流れ弾は俺様でもどうにも出来ねえから躱せよ?」

 

「いやそうじゃなくて前ぇえええええ!?」

 

 すでにビーム撃たれてるんだけど!?

 

 しかしナツミ? は全く前を見ずに前進し続ける。

 

 そしてそのままビームの中に突っ込んだ。

 

「・・・・・・」

 

 とりあえず、黙祷するべきだろうか?

 

「なんだったんだこれが」

 

「気でも狂ったか?」

 

 フィフスとシャルバが酷評するが、しかしこれは反論できん。

 

 だが、その中で一人だけ震えてるのがいた。

 

「や、やややややや、やばいって感じ!?」

 

 そういえば名前を聞いていなかった謎の女が、顔を真っ青にして震えていた。

 

「どうしたリット? なんか1人吹き飛んだがそれがどうし―」

 

「まだ吹き飛んでない!! 急いでとっつ構えないと手遅れになるって感じ!!」

 

 いやどういうことだと首をひねった瞬間、それは飛び出した。

 

「カッハハハ!! んなもんが効くかぁああああ!!」

 

 ナツミ?がビームをくらったはずなのに、なんか全身から火を噴いているだけでそのまま突貫して跳び蹴りを叩き込んだ。

 

 ぐらりと揺れるデカブツはしかし壊れないが、そこでナツミ?は再び輝く。

 

「サタンソウル・・・ナフラ!!」

 

 今度は獅子のような姿になったナツミ?は、そのまま揺らいだデカブツをつかむと―

 

「どぉおおおおりゃぁあああああああ!!」

 

 ・・・投げ飛ばして隣のデカブツごと叩き潰したよオイ。

 

 あまりにアレな光景に、俺は開いた口がふさがらなかった。

 

 ほかの連中も思わず動きが止まってしまうが、その中でガクガク震えだす女が一人。

 

「マルショキアス・・・ベールフェゴル・・・フィネクス・・・ナフラ・・・。ま、まままままままままま間違いない!! フィフスやばい、やばいって感じ!!」

 

「何がやばいんだこれが!? おれにもわかるように説明しろ!?」

 

 状況についていけてないフィフスが叫ぶが、女は泡を食って逃げ出す寸前だった。

 

「病死しなければ聖十大魔道すら確実といわれた化け物、魔人姫の異名をもつ超人!? サミーマ・エーテニルがこの世界にいるなんて聞いてないって感じ!?」

 

 ・・・はい?

 

 なんか明らかにすごそうな称号が聞こえてきたんだがどういうことだ?

 

「カッハハハ!! 馬鹿なことに全然思い出せなくてやばかったぜ!! ベルにはあとで礼いっときたいが、死ぬかと思ったからやめとくか!! とりあえず無事だなご主人! 晩飯はオムライスにしてくれや!!」

 

 あいつ記憶あいまいだって言ってたけど、性格違いすぎだろ。

 

「それともこっちのキャラのほうがいいかな? 記憶戻ったばかりであいまいだけど、兵夜の好みどっち?」

 

 今そんなことを聞いている暇があるかぁあああああ!!

 

「どっちでもいいからとりあえず切り抜けるぞ!! あとお前昨日卵丼食ったばかりだろうが、明日にしなさい!!」

 

「ちぇっ。わかったよーだ。・・・じゃあめんどいんで当分サミーマで行くぜ?」

 

 ものすごい偉そうな風格を漂わせるが、ナツミって実はあいまいどころの騒ぎじゃないレベルで記憶を思い出せてなかったんじゃなかろうか?

 

「朱乃! この砲撃は電流操作の応用で逸らせるってよ! だから手を貸しな! それだけあればデカブツはこっちで潰すぜ!!」

 

「なんでマウンテンイレイザーの弱点が!?」

 

 フィフスが愕然とするあたりどうやらマジらしいな。

 

 とはいえ今の砲撃で全員満身創痍。こりゃどうしたものか。

 

「・・・ならば有象無象はこちらが引き受けよう」

 

 聞き覚えのある頼もしい声が聞こえた。

 

 瞬間、離れたところにいた砲台が、まとめて灼熱に呑まれて燃え尽きる。

 

 おいおいこの声とこの魔力の放出は!

 

「アポロベ卿!」

 

「有象無象は部下に任せ、再生力頼りで無理やりここまできて正解だったようだ。・・・周りの雑魚はこちらに任せろ。全滅させたらすぐに加勢する!!」

 

 よっしゃ流れは変わった。

 

 とはいえまだ窮地に変わりはない。もうちょっとピースがそろえば・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イッセーSide

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんだかよくわからないけど、とんでもないことになってきた。

 

 ナツミちゃんのキャラが変わったと思ったら、なんか無双が始まってる。

 

 以前宮白の家の時の騒ぎでお世話になったアポロベさんもきて、これなら盛り返せるかもしれない。

 

 だけど、まだ足りない。

 

 持ち直せただけでひっくり返したわけじゃない。敵だって数が増えるかもしれない以上、これだけじゃだめだ。

 

 立てよ赤龍帝、立てよ兵藤一誠!

 

 ハーレム王になる男が、こんなところでへばってるんじゃねえ!!

 

「う・・・おぉおおおおおおおおお!!」

 

 気合いを入れて無理やり立ちあがる。

 

 赤龍帝の力だけではどうしようもない。残念だが今の大ダメージで限界を超えてしまった。

 

 だけど、勝算が一つだけある。

 

「部長ぉおおおおおおお!! お力を貸してください!!」

 

 俺は部長を大声で呼ぶ。

 

 そう、この手段には部長が不可欠だ。部長の力がなくては勝ち目がない。

 

 以前、ヴァーリは生命力を極度に消費するとかいう覇龍を、自分の魔力で補っていると聞いた。それでも暴走の危険が隣り合わせだとも。

 

 それはつまり、暴走の抑制と消耗の増大はまた別の話ってことなのではないだろうか。

 

「イッセー、無事だったのね! それで私に頼みたいことって」

 

 部長が歓喜の表情を浮かべてこちらに駆け寄ってくる。

 

 そう、魔力の消耗と精神の暴走が別の問題なら、暴走さえ抑制すれば俺だって覇龍が使えるかもしれない。

 

 そして暴走を抑えるような精神の動きとは何か。

 

 それは、悟りだ。

 

 煩悩を捨てていきついた心のありようを、俺が到達することはありえない。

 

 だが、煩悩の身にしていきついた乳語翻訳の境地を刺激すれば、俺にも行けるんじゃないか。

 

 ならば選択肢は一つしかない。

 

「部長! 乳を再びつつかせてください! 今勝つにはそれしかない!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side Out

 


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