ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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ホーリー編最終話。

決着ついたそのあとは・・・。


小猫と主人の逃避行

「・・・どうやら君たちの勝ちのようだ。本当に君たちは面白い」

 

 粗方の敵を片付けたところに、聞き覚えのある声が響いた。

 

 振り返った先にはヴァーリに美候にアーサーの姿が。その後ろに例の赤女が隠れていた。

 

 一難去ってまた一難だな。そろそろアザゼルでも来てくれないだろうか?

 

「ああ、別に俺たちに戦う意思はない。他の連中がうるさいからリット・バートリは回収させてもらうが、そちらから手を出さないならこっちも仕掛けるつもりはないよ」

 

 戦意ゼロでそういわれれば、こちらとしても戦うつもりはない。

 

 というか、これ以上戦うとこっちがヤバい。

 

 フィフスの新兵器のせいでこっちは全員満身創痍。イッセーに至ってはいつの間にかぶっ倒れてる始末だ。

 

 みれば美候は例の女の首根っこを掴まえて動きを止めているし、戦わせるつもりもないなら様子見をするべきか。

 

「いやぁ、面白いものを見せてくれたじゃねえかぃ。つーか赤龍帝の坊主はグレモリーの嬢ちゃんがスイッチにでもなってんのかい?」

 

 その美候は腹を抱えて笑いをこらえている様子だが、イッセーの奴今度は何をした?

 

 とはいえ戦闘はこれ以上内容だし、全員少しだけ警戒を緩めた。

 

 見れば待機してもらっていた人たちも急いで駆け付けてきている。コレならヴァーリが戦意を見せても迎撃は間に合うだろう。

 

「イッセーさん!」

 

「イッセー先輩!」

 

 アーシアちゃんと小猫ちゃんが、あわててイッセーに駆け寄っていった。

 

 癒しの力と仙術による気の供給があれば、よほどのことがない限り死なないだろう。今は二人に任せよう。

 

 と、俺もなんというか気が抜けて、ついその場にへたり込んでしまう。

 

「兵夜!?」

 

「兵夜くんー? 大丈夫ー?」

 

 ナツミがあわてて俺に肩をかし、久遠は会長のそばでヴァーリたちを警戒しながら声をかけてくる。

 

「デュランダルの全力解放にしろ、残骸から形成したエクスカリバーの紛い物にしろ・・・まさかここまでの性能を出すとは。これからが非常に楽しみですね」

 

「俺としては兵藤一誠の今後に期待したいな。まさか不完全とはいえ、この短期間に覇龍の制御にまで手を伸ばすとは」

 

 アーサーとヴァーリが何やら感心し合っているが、正直聞くのも面倒い。

 

「・・・それで、戦闘が目的でないなら何の用かな? そこの彼女の救出もついでのようだが?」

 

 へたり込んだおれをかばいながら、アポロベ卿がヴァーリたちに問いただす。

 

 確かに、まさか駆けつけてきそうなアザゼルとかの首が狙いとか言い出さないだろうな。

 

「まあちょっとした所要だよ。いくら俺でも、絶対に負ける状況下で手を出すつもりはないさ。・・・ほら、さらに敗因が増えた」

 

 そうヴァーリが言った瞬間、なんかデカい物が奴の隣に墜落してきた。

 

 そしてそれを追いかけるように、見覚えのある人影が何人もやってくる。

 

「よ・う・や・く! ぶち壊されやがったか! マジで執拗かった!!」

 

「おお、兵藤一誠たちも無事か! 何やら余計なものもいるようだが、まずは一安心だな」

 

「リアス! 無事でよかった・・・」

 

 アザゼルにタンニーンにサーゼクス様!? そうそうたる面子がなんで結構、煤けた姿でこんなところに?

 

 っていうかなんて言うかスーパーロボットの頭部っぽい残骸だな。誰が作った?

 

 まさかこれに苦戦したなんてオチはないだろうか? ・・・ないよな?

 

 とても不安な気分を何とか盛り返そうとした俺の耳に、ヴァーリの声が届く。

 

「・・・対光力・対消滅のシステムをふんだんにつぎ込んだ、キャスターの最高傑作をもってしても足止めがせいぜいか。さすがはアザゼルにルシファーを継ぐもの。俺としてもなんというか誇らしいな」

 

 苦戦してた! マジかキャスターすごいなオイ!!

 

 いろいろな意味で微妙な気分になった。やはりディオドラはもっと徹底的に叩き潰しておくべきだったか。

 

「・・・しかし、この様子ではクルゼレイもやられたようだな」

 

「おう。カテレアもボコボコにされて求心力が落ちてるだろうし、禍の団の旧魔王派はこれで瓦解だな」

 

「そううまくはいかない。もともと年長者を敬って指揮権を譲っていただけで、求心力という意味ではザムジオが最も信奉されている。この作戦も最初から期待薄で撤退時の後詰を務めていたし、当面他の派閥に指揮権を譲る程度で終わるだろうな」

 

「マジかよ? あの坊主そこまでやるとはな。シャルバぶちのめしたイッセーにしろ、才能なしに時期大王になったサイラオーグにしろ、悪魔業界はどこもかしこも若手が台頭しすぎだな」

 

 ヴァーリとアザゼルは意味深な会話をしているが、しかし頭に入ってこない。

 

 どうやら敵幹部はアザゼルたちが一人片づけている程度という事か。・・・やべぇ、ぼーっとしてきた。

 

「しっかし遠くで観戦してたけど、グレモリーの嬢ちゃんは赤龍帝の起動スイッチか何かかよ? 御姫様だしスイッチ姫ってか?」

 

「・・・でかした美候! それ頂き!」

 

「ちょっとアザゼル? 何やら嫌な予感がするのだけれど?」

 

 なんかなごやかなムードにまでなっている気がするが、しかし何だか視界が暗くなってよく分からない。

 

 ああ、そういえば最近は忙しくて睡眠時間は魔術で無理やり誤魔化してたな。

 

 精神的にはともかく、肉体的には限界超えてたって訳か。

 

 なんかバランスを崩して倒れてしまうが、その体を柔らかなものが包み込んだ。

 

「馬鹿な奴だなぁ。前から色々とやってたとは思ってたけど、大仕事の前はちゃんと休んどけよ」

 

 呆れたナツミの声が聞こえるが、支えるその力はなんていうか絶妙な力加減で心地いい。

 

「・・・お休み兵夜。出来るご主人様でボク嬉しいよ」

 

 ・・・ああ、俺も出来る使い魔がいて嬉しいよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・死ぬかと思った」

 

 マジで死ぬかと思った。

 

 この体育祭になるまでの数日間、俺はマジで大変だった。

 

 何分単独行動がすぎたことで罰ゲームが連発。おかげで数日間イッセー宅の家事を俺一人でやることになった。

 

 ・・・あのサイズの家で、家事を一人でとか拷問だろ!? こっちはイッセーのリカバリーの研究もしなくちゃいけなくて、忙しさがどんどん増してるのに!

 

 ・・・そろそろ組織運営も落ち着くし、助手でも雇った方が良いだろうか? 過労死するぞ、マジで。

 

「まあ、こっそり動きすぎたお前にも責任があるからなぁ? しっかりお灸をすえられた方が良いだろ?」

 

「てめえはちゃっかり安全圏にいておきながら何言ってんだコラ」

 

 隣でゆったり観戦ムードに入っているアザゼルに俺は鋭い視線を向ける。

 

 冷静に考えれば眷属に余計な手間をかけさせないように努力した俺より、俺ら全員巻き込んだアザゼルのほうが重罪な気がするんだがなんでこうなる?

 

 これが権力持っている奴の力ってやつか。よし、俺も必ず上級悪魔まで出世してやる。

 

 むしろ最上級悪魔でも目指すとするか。そんでもって堕天使交渉担当になってこいつに嫌味をいう毎日を・・・。

 

「まあ、イッセーの方は小猫もいるし気負うなよ? お前ただでさえ仕事しすぎなんだからな」

 

 ・・・時々大人の立場で指導が入るからなおムカつく。

 

 シャルバを叩きのめしたイッセーだが、その代償は相当にデカかった。

 

 何でも覇龍の暴走をスケベ根性で抑え込んで叩きのめしたらしいが、生命力の消費までは抑えられなかったそうだ。

 

 この調子で行けばせいぜい100年が寿命の限界だとの事だ。

 

 人間で言えば間違いなく長い部類に入るが、一万年近く生きる悪魔の視点で言えば相当に少ないだろう。正直寿命は実感が沸いていたら卒倒していたかもしれない。

 

 と、いうかその消費量でよく今までの二天龍は覇龍つかえてたなオイ。

 

 とはいえそこまで慌てる必要はない。

 

 魔術はもともとそこらへんが非常に優秀だ。

 

 ここ百年足らずで急速に医学が進歩するまで、子供はたくさん作らなければ後継者を残すのは難しいぐらい、人は簡単に死んだ。

 

 そんな状況で一子相伝をむねとし、スペアを一人作れば多い方の一人っ子政策至上主義の魔術師の、そういった方面は非常に優れいてる。

 

 そもそも死徒化の研究に始まり、外見は若くて中身は百歳以上な魔術師など高位の連中には普通にいる。フィフスのアインツベルンとか、千年以上続いてるはずだが当主は(アハト)とか呼ばれてたはずだ。間桐も500年ぐらい生き続けているだろう。

 

 ただの人間をそこまで生かす技術があるのだ、もともと一万年生きる悪魔の寿命を元の段階まで引き延ばすぐらい可能不可能で言えば可能だろう。

 

 実際魔術師組織もその方面の研究は進めている。例えすぐに転生悪魔に慣れなくても、数百年人の身で生きる存在など優れていることぐらい馬鹿でもわかる。それならその時に転生してくれる可能性は十分にある。

 

 秘匿の必要性がなくなり共同研究が盛んになり始めている今の状況なら、十分打開の可能性はある。

 

 そもそも小猫ちゃんの仙術ならある程度回復させることが出来ると言うし、ある程度気長にやっても問題ない。少なくとも禍の団の騒動がひと段落してから本気になっても十分間に合うだろう。

 

 ・・・すでに主要派閥に甚大な被害が出ているし、下手したら数年も掛からずに決着がつくんじゃないだろうか?

 

「・・・それで? ディオドラのほうはどうなったんだ?」

 

「お前が徹底的にやってくれたおかげでもうしゃべるしゃべる。この調子で行けば支部の一つや二つぐらいは潰せるだろうな。でかした」

 

 ディオドラはちゃんと取っ捕まえることに成功した。

 

 幸い向こうも余裕がないようで、回収されずに済んだのは行幸だった。

 

 後で知ってビビったのは、敵が用意したある特殊装置。

 

 最初に見た時はどういうものかよく分からなかったが、なんでも神滅具の担い手の禁手によって生み出されたものだそうだ。

 

 効果はアーシアちゃんの神器の増幅反転。それによって俺らを一網打尽にするのが計画だったらしい。

 

 つくづく入れ替わって良かった。俺だったら接続した瞬間に発動して一気に片づけている。奴らもそこまで馬鹿ではないだろうし、切り札の切り方は間違えないだろう。

 

 とはいえ無傷で確保できたことから研究は進んでいるそうだ。これで対策の一つでも出来ると言いが。

 

「あ、ディオドラの歯は貰っていくぞ。・・・攻撃型手榴弾の材料に組み込めばなかなかすごいのが出来そうだ」

 

「お前って本当にえげつねえよな。ディオドラが心折れるわけだ」

 

 何やらドンビキだったが、そこまで言われるのは心外だな。

 

 女の魔術師にとって髪が貴重であるように、また宝石魔術が基本的に血液を媒介とするように、人体の素材というのは魔術には非常に有効だ。実際レイヴンは死んだ人体を材料にして魔術を行使する死霊魔術師だしな。

 

 上級悪魔の肉体など材料としては破格だろう。実際、今回の一件で死亡した旧魔王派の遺体を欲しがった魔術師は非常に多い。

 

 コカビエルの指を材料に作った光力弾も、俺の全力より破壊力は上だし間違いなく力になる。今度魔獣狩りでもして材料を掻き集めようか。

 

「それよか聞いたぞ宮白。お前、ディオドラの女どもに例の魔力供給の話したんだってな」

 

「どうせなら、吸い取って苦しめても問題ないやつにしたほうがいいのは当然だろう? 罪もないやつから搾り取るより、罪のあるやつから搾り取ったほうがよっぽど気分が楽だ」

 

 全く失礼な奴だな。犯罪者の権利は被害者より下であるべきだろう。罪人部隊は合法化していいと俺は心底思うぞマジで。

 

 え? ブーメラン? いやいや基本的に悪人同士の食い合いにしか使ってないからグレーにしろよ。

 

 当然のことをしているだけなのにとやかく言われても困るというものだよ、うん。

 

 だが、アザゼルはすごいにやにやしながら一枚の紙を見せつける。

 

「・・・収容所近くの冥界のデリバリー使用権、日本円換算5万円分を月支給。ネット回線付でパソコン提供。労働拒否可能。・・・月に酒一本まで追加はやりすぎじゃねえかぁ? 他の連中に比べてサービスしすぎだろ」

 

「うっせぇよ! いいだろ別に俺の依怙贔屓ぐらい!! ちゃんと自分の金でサービスしてんだから文句言われる筋合いはない!!」

 

「素直に「アレはディオドラが悪いだから勘弁してやってくれないでしょうか?」とか言ってもバチはあたらねえだろうに。お前、敵と認めると徹底的にキツいが、そうじゃねえと意外と甘いよな。案外サーゼクスと気が合うんじゃねえか?」

 

 いやいやそれはどうよ。

 

 実際サーゼクスさまもクルゼレイとかいう奴には結構譲歩したらしいしな。

 

 王としては冷徹な判断を必要とし、実際にそれができるだけの強さを持つ。しかし同時に優しさをもち、可能な限りいい方法を探そうとする。

 

 考えうる限りトップクラスにいい王様じゃねえか。俺みたいなアウトローなんかと比べちゃいかんだろうに。

 

「指導者クラスならグレーゾーン踏み込む覚悟は必要だと思うが、俺は明らかにブラック踏み込んでんだから組ませちゃあかんだろうに」

 

「なに言ってやがる。お前がサーゼクスクラスの権力持ってたら、絶対ブラックな真似はしねえだろ。どう考えてもリスクのほうが高くなるからな」

 

 ・・・反論できん。

 

 確かにあの立場なら裏に手を出して余計なリスクを背負うより、表の立場から動くほうがいいだろう。

 

 どう考えても必要な手段が取れる状況下ではやる意味がない。

 

「アーチャーも理があるなら下種な手段は使わないしな。意外と似た者同士だねぇ、お前ら主従は」

 

「まあ触媒が緩いしな。性質が近いのは当然だろう」

 

 その分行動がうまくかみ合ってるのは好都合だし、反論する意味もないか。

 

『それでは借り物競争を始めます。選手の方は所定の位置にお集まりください』

 

 お、時間だ。

 

「んじゃ、行ってくるわ」

 

「おう、行って来い」

 

 アザゼルに見送られながら俺は所定の位置に向かう。

 

 いろいろお仕置きされてストレス溜まってるし、ちょっと全力出して圧勝してスッキリしたいところだ。

 

 それもこれも借りるもの次第。さてどうなる・・・?

 

『スタート!』

 

 走りだし、そしてダントツで紙に到着。

 

 そして開いて見て―

 

「猫耳属性・・・ってなんじゃこりゃぁ!?」

 

 思わず叫んでしまった。

 

「トリプルテールって現実にいるのかよ!?」

 

「胸開きタートルネックって時事ネタにもほどがあるだろ!?」

 

「誰かぁあああ!? 紐ビキニ着たことある人はおりませんか!?」

 

「魔法少女のコスプレをしたことがある男ってなんだそりゃぁ!!」

 

 借り物がイロモノに走りすぎた!?

 

 どういうことかと生徒会のテントに向けて聴覚を強化してみれば、向こうも慌てているようだがヤバい内容が入ってきた。

 

「会長! ワルノリしたときの内容と本命が入れ替わってます!?」

 

「・・・これは、どうしたものか」

 

 本当にどうしたものか。

 

 オイオイオイオイこれどうすんだ!?

 

 こんなところに猫耳つけた奴なんているわけが―

 

「兵夜ぁあああああ!!」

 

 俺に呼びかける子供っぽい声が聞こえる。

 

 振り返ってみれば、久遠に肩車されて目立ったナツミが、大きく手を振って俺をよんでいた。

 

 その状態は本来の猫娘モードで、必然的に猫耳が!!

 

「でかしたナツミぃいいいいいいいいい!!」

 

 よっしゃ勝った!!

 

「ほら、筋骨隆々の漢の娘の電話番号だ、つかえ」

 

「え? あ、どうも・・・」

 

 勝者の余裕で苦戦しているものに施しを与えてから、俺はナツミのもとへと駆けつける。

 

「よっしゃいくぞナツミ!!」

 

「うん! 運んで運んで!!」

 

 テンションが高くなったおれは、そのままナツミを抱え上げるとゴールへと向き直る。

 

「・・・頑張ってねー、ナツミちゃんー」

 

「っ! ・・・うん!」

 

 なにやら久遠に背中を押されているようだが、・・・つまりそういうことか。

 

 走るスピードを少しゆっくりにして、俺はナツミの言葉を待つ。

 

「・・・兵夜。あのね?」

 

「ああ」

 

「ボク、兵夜のこと、大好き」

 

「そっか」

 

()()()でも、()()()()でも大好き。ずっと一緒にいたい」

 

「そうか」

 

「・・・い、い、一緒に・・・」

 

 ものすごく顔を真っ赤にするが、それでも俺はナツミの言葉を待つ。

 

「・・・一緒に、いてもいい?」

 

 小さな声だったが確かに聞こえた。

 

 ナツミを抱えなおす。

 

 俵みたいな持ち方じゃなく、いわゆるお姫様抱っこだ。

 

「あ」

 

「思えばお前が一番最初にあった転生者(同類)だったよな」

 

 イッセーにあって俺は救われたけど、ある意味でこいつにも救われたんだよな。

 

 正しい意味で一人じゃないって確信できたのは、確かにこいつのおかげなんだから。

 

「俺も大好きだ。一緒だぞ、ナツミ」

 

「・・・うんっ」

 

 ・・・まさか泣かれるとは思わなかった。

 

 なんか照れくさくなったので全速力でゴールを突破する。

 

 さてどうやってこれをごまかすかと思った瞬間、首にナツミの手が回り―

 

「ん」

 

 ・・・え? あの? ちょっと?

 

『『『『『『『『『『『『『『『『『『『『『『『『『『『『『『えぇええええええええええええええええっっっ!?!?!?!?』』』』』』』』』』』』』』』』』』』』』』』』』』』』』』

 

 絶叫が響き渡るのも仕方があるまい。俺もすごく気持ちはわかる。

 

 なんでこんなところでキスしてんだお前ぇええええええええ!?

 

 顔を真っ赤にしながらもナツミはサミーマの表情でにやりと笑った。

 

「・・・俺様は自分の想いは馬鹿みたいに堂々と出す主義でな。都合がいいんでやらせてもらったぜ?」

 

 あのすいません俺の社会的信用を考えてください!!

 

「・・・宮白?」

 

 後ろから殺気。

 

 振り返ると、そこには阿修羅がいた。

 

 阿修羅、個体名松田は、静かに気をまき散らしながらこちらを静かに見つめる。

 

「お前が年下趣味だとは知らなかったぞ? エロいお姉さんとエロいことしまくってるし、桜花さんはお姉さんムードがあるからてっきり年上好みかと思ったのに」

 

「え、えっと」

 

「っていうか桜花さんどうするんだ? てめえイッセーに続いてハーレム状態とはいいご身分だな、オイ」

 

 やばい、静かのが非常に恐ろしい。

 

 これはあれだ、大津波の前の静けさ的なあれだ。

 

 に、に、逃げないと―

 

「えー? 私は現地妻志望だから何の問題もないよー?」

 

 久遠が爆弾投下したぁああああああ!?

 

「・・・・・・・・・・・・コロス」

 

 よし、逃げよう。

 

「捕まってろナツミ!!」

 

「え!? あ、うん!? なんかちょっと面白いかも!? カッハハハ!」

 

 微妙にサミーマ混じってるぞお前!?

 

 などといってる場合じゃない!? なんか他にも後ろから突撃してくる連中が増えてるぞ、オイ!?

 

『え、えっと・・・。と、とりあえずそろそろ二人三脚を始めたいと思うのですが―』

 

「アーシアどこだ!? ・・・あれ? どういう状況?」

 

 どうやらイッセーは復活したようだ。よかったよかった。これでアーシアちゃんも大丈夫。

 

 余計なトラウマ作ったんだし、運動会は挽回して楽しんでもらわないとな。

 

「イッセー頑張れよ! 俺はちょっと逃避行してくる!!」

 

「え? 宮白? ナツミちゃんと一緒にどこ行くんだ!?」

 

 全く状況がつかめていないイッセーだが、この状況下で説明している暇はない!!

 

「手前待てコラァアアアアア!?」

 

「そんなかわいい子にキスされた挙句、桜花さんを愛人とはどういうことだ!?」

 

「変態どもの友人は変態ってわけ!? 私たちの信頼を返して!!」

 

「血祭りにあげろぉおおおおおおおお!!」

 

 やっべえ本当に殺気立ってる!?

 

「しっかりつかまってろよナツミ!!」

 

「うん! 離さないからね!!」

 

 ぎゅっと抱き付いてくるナツミの柔らかさを感じながら、俺は全力で逃走を開始する。

 

 ああもう、モテるって大変だなオイ!!

 

 ・・・ま、ちょっと幸せだから納得してる自分もいるけどな。

 

 




ホーリー編終了。

ナツミは新たに人格スイッチというキャラを確立しました。・・・我ながらアクの濃い設定を追加したな。


































次からはラグナロク編に突入します。

ちなみに小雪編です。

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