ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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先輩、現れました!

 

 

 あれから数日。

 

 俺は完全に行き詰っていた。

 

 とりあえず、デートコース当たりで聞き込みをしていたのだが、成果が全く出ない。

 

 魔術を使ってより聞き出しやすくしてみたのだが、それでも0。

 

 これは全員が記憶を消されたと考えなければおかしい。

 

 携帯の画像も消されてたことから予想はしていたが、かなり徹底しているな。

 

 唯一成果があったとすれば、たまたま街を歩いていた女の子が「初々しいカップル」として二人をちらりと見かけていたことだ。

 

 本当に通りすがった人以外の記憶を完全に消しているらしい。

 

 魔術で記憶を刺激してもいいのだが、俺の魔術師としてのポテンシャルは低い。

 

 元々本格的に取り込んでいたわけでもないし、こっち来てからは暗中模索の独学なので当然だ。

 

 後遺症が怖くて正直使えない。

 

 と、言うことで早くも手詰まりになってしまった俺は、缶コーヒー片手に夜の町に立ち尽くしていた。

 

 魔術使いづらい。もっとこうステキでワンダフルな感じだったらもっと人生チートモードだって言うのに。

 

 魔術って以外と科学に負けてる部分とか多いからな。空を飛んだり遠くの相手を傷つけたり栄養を補給したり寒い時にあったかい物を懐に入れたり。

 

 本格的なスペシャリストならこうも失敗はしなかったんだろうが、あいにく俺は3流魔術使いでしかないのだ。

 

 これじゃあイッセーに合わせる顔がない。

 

 などと天を仰いでから顔を戻すと―

 

「うわぁあああああああああっ!!!」

 

 なんかイッセーが向こう側の道を全力で走って行った。

 

 なんだ? やけにあわてていたが。

 

 と、言うか、あれ速すぎないか? あいつは別に陸上部とかじゃなかったはずだが。

 

 などと思ったら、今度は黒づくめの怪しい男が、イッセー並みのスピードで追いかけて行った。

 

 あれ? なんか羽生えてないか?

 

「おいおいなんかやベーぞ!?」

 

 俺は使い魔の小鳥を操って後を付けさせると、同時に走って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Sideイッセー

 

 畜生! なんなんだよ一体!!

 

 宮白が調べてくれるってことになって、正直俺は安心してた。

 

 アイツ曰く、魔術は使い捨てカイロや栄養ドリンクに劣るとか言ってたけど、そんなことない。

 

 以前松田や元浜とエロビデオを探してた時、間違えて不良にからまれたときだってそうだ。

 

 通りすがったあいつが暗示っていうのを使って簡単に追い払ってくれた。

 

 松田や元浜には適当にごまかしてたけど、あんな簡単に追い払えるってマジすげえよ。

 

 そんな宮白が調べてくれるっていうから安心してエロビデオ鑑賞会を終えて帰ろうとしたらこのありさまだ。

 

 この日本で殺意をぶつけてくる男なんてどう考えてもまともじゃない。

 

 運がいいことに、夕麻ちゃんに殺された夢を見た日から、俺は夜の時だけ体の調子がすごくいい。

 

 フルマラソンすらジョギング感覚でできる足で、全力で逃げ出した。

 

 十五分ぐらい走ってついたのは、デートの最後、夕麻ちゃんに殺された公園だ。

 

 ここまでくれば大丈夫―

 

「逃がすと思うか? 下級な存在はこれだから困る」

 

 黒い羽根と一緒に声が聞こえた。

 

 振り返った俺の目に映ったのは黒い翼。

 

 夕麻ちゃんが俺を殺す直前に出したのと同じ翼を生やした、あの男だった。

 

 一人でブツブツ言っている男を見てると、あの夢のことを思い出す。

 

 そう、あの夢の時俺は光の槍で―

 

「―お前は『はぐれ』か。なら殺しても問題あるまい」

 

 そういうと、男の手に光が集まりだす。

 

―殺される!

 

 思った時には、もう俺の体をあの時と同じやりが貫いて―

 

「イッセー!!」

 

 あ・・・宮、白。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side兵夜

 

 男をスクーターではね飛ばすのと、イッセーがファンタジーみたいな光の槍で貫かれるのはほぼ同時だった。

 

 くそ! もう少し決断が早ければ間にあったのに!

 

「イッセー!! オイ、しっかりしろ!!」

 

 スクーターが倒れるのも構わずにイッセーに駆け寄るが、これは非常にまずい。

 

 どてっ腹に風穴があいてる。どう考えても致命傷、早く救急車を呼ばないと助からないぞこれは。

 

「俺の治癒魔術じゃ血止めがせいいっぱいか。イッセー! すぐに救急車を呼ぶから、しっかりしろ!!」

 

「・・・ろ。う・・・ろ」

 

 うろ? うろってなんだよ・・・後ろ!?

 

 イッセーの言葉に反応して振り返れば、轢かれたにもかかわらず、男はあっさりと立ちあがっていた。

 

「人間。何のつもりかは知らないが、そのはぐれをかばうつもりなら容赦はせんぞ」

 

 うわぁ。相当殺気だってるな

 

 こりゃ逃がしてくれそうにないし、電話をしてる余裕もないか。

 

起動(スタート)

 

 魔術回路を起動させる。

 

 時間はない。ちょっとセコイが一瞬で終わらせる―ッ!

 

「・・・もう一度言う。死にたくなければさっさと消え―」

 

身体強化(ブーストアップ)ッ!!」

 

 身体能力を限界まで強化し、一気に相手のところまで駆け抜ける。

 

 男は虚を突かれてくれた。このチャンスは逃さない。

 

 隠し持ていたスタンガンを引き抜き、もちろん、出力を上昇させることも忘れない。

 

出力上昇(ブーストアップ)ッ!!」

 

「グァッ!?」

 

 電力を強化されたスタンガンは中のバッテリーを一瞬で消費しつくす。

 

 正直命の危険もある出力だが、この際手段は選べない。

 

 だが、全ての電力を使いきった後も男は倒れない。

 

 それどころか、どこか余裕そうに片手を上げる。

 

 おいおい、なんか光が集まって槍っぽくなってるんだけど!?

 

「小賢しいッ!」

 

「あっぶね!?」

 

 遠慮なく振り下ろされたそれを、間一髪避ける。

 

 警戒しながらあわてて下がるが、すぐに足がイッセーに当たってしまい、あまり距離がとれなかった。

 

「貴様魔法使いか? いや、それにしては戦い方が・・・」

 

 魔法使い? あんな化け物連中と一緒にされるレベルじゃないぞ俺は。

 

 いや、まさかと思ったがもしかして・・・

 

「まあいい。ならもろともに始末すれば良いだけだ」

 

 男はなんか勝手に納得すると再び光の槍を生成する。

 

 やばい。後ろにはイッセーがいる。避けられない。

 

 俺の行動がわかってるのか、男はものすごい邪悪な笑顔を浮かべてやがる。絶対わざと時間をかけてぶっぱなす気だ。

 

 どうする? 完全に積んでるぞこの状況。

 

 こうなったら、限界以上に強化して腕を盾にすれば両腕だけで何とかなるかッ!?

 

「・・・硬度最大強化ッ!」

 

「さよならだ」

 

 放たれる光の槍。

 

 なんかゆっくり来るのが見える中、俺は両腕に限界まで魔力を集中させ―

 

 なんか右腕から爆発的な力が流れ出た挙句に急に光った。

 

「はい!?」

 

「な、神器(セイクリッド・ギア)だと!?」

 

 え? 何!? せいくりっどぎあ!?

 

 俺の右腕になにがあった! なんか光の槍も吹っ飛んだぞ!?

 

 光は徐々に凝縮されると、右腕に凝縮されると手首から下を覆う手甲の形をとる。

 

 そして光が収まった後には、天使の羽のような装飾を持つ、金と黒で彩られた手甲がそこにあった。

 

「これは・・・」

 

 おいおいおいおい。まさかとは思うけど、秘められた力が覚醒されたとかいう小説とかにありがちな展開か?

 

 だけど待て。俺はまだコレの使い方なんてさっぱりわからないぞ? コレをどう使って奴を倒せと!?

 

 あ、男も俺がわかってないのに気付いたのか、再び光の槍を作り始めやがった。

 

「まさか神器使いがこんなところに・・・っ。面倒だがここで仕留めて―」

 

「―そこまでにしておきなさい」

 

 後ろから声が聞こえてくるのと、俺の右側から何かが通り過ぎるのはほぼ同時。

 

 次の瞬間には男の腕から爆発が生じ、それによって鮮血が飛び散った。

 

 いきなりの光景になにも言えないうちに、声の主が俺の前に歩み出る。

 

「貴様・・・グレモリー家のものか」

 

「御機嫌よう、堕ちた堕天使さん。リアス・グレモリーよ」

 

 学園の二大お姉さまの一人、リアス・グレモリー。

 

 なんでこんなところに?

 

 と、いうか今の攻撃は何をした?

 

 俺の頭の中を疑問符が支配しているうちに、男は翼を広げると空を飛ぶ。

 

 俺たちを一睨みした後、男は憎々しげに去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず脅威は去ったのか? ふう・・・一安心―

 

「じゃねえ!! きゅ、救急車・・・119だっけ!?」

 

 あわてて携帯を取り出すが、その手をグレモリー先輩が優しく包んで止める。

 

「大丈夫。救急車は必要ないわ」

 

 どう考えてもそんなわけがないのだが、グレモリー先輩は全くあわててない。

 

「まさかうちの学園に神器を持つものがいたとわね。・・・ありがとう、おかげで間にあったわ」

 

 とても魅力的な笑顔でお礼を言われる。

 

 今まで女の相手を何人としてきた俺だが、こんな美人はさすがにいない。

 

 ちょっと顔が赤くなってきそう。ああ、地が昇ったら視界とかも真っ赤になったりするのだろうか?

 

 あれ? それどころか真っ暗に―

 

「ちょっと? 神器(セイクリッド・ギア)の反動かしら?」

 

 そんなのんきなグレモリー先輩の声と共に、俺の意識はドロップアウトしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




初戦闘いかがでしたでしょうか?

兵夜の戦闘能力は常人以上堕天使未満でしたが、この話で神器に目覚めました。

次はどうなることやら・・・?

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