ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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神器、出ちゃいました!

 

 目が覚めたら、なぜか知らない天井が見えた。

 

 起き上ってみるが、なんか古い学校の教室みたいな部屋の中で寝かされていたみたいだ。

 

 なぜかベッドは高級そうな感じで、それは周りの調度品にも言える。

 

「・・・あれ? ここ・・・どこだ?」

 

 まだ覚醒しきっていない俺の疑問に答えたのは、後ろからの声だった。

 

「駒王学園の旧校舎ですわ。ふふ、おはようございます」

 

 振り返ってみれば、そこにいるのはとんでもない人物。

 

 今や絶滅危惧種の黒髪ポニーテール。リアス=グレモリーに並ぶ二大お姉さまの一人、姫島朱乃先輩が、お盆に軽食を持ってそこに立っていた。

 

「よっぽど疲れていたのですね。もう放課後ですしお腹も減ったでしょう? 簡単なお食事を用意しました」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 お礼と共に受け取って、まずは一口。

 

 うまい!

 

 コレ手作りか? だとすると俺は、この瞬間に学園の大多数の生徒を敵に回したかもしれない。

 

「・・・って違う!?」

 

 なんでこんなとこに!?

 

 なんで姫島先輩がいんの!?

 

 っていうかイッセーは!?

 

「いろいろと疑問はあるのでしょうが、まずは落ち着いて」

 

 パニック状態の俺に、姫島先輩が優しく微笑む。

 

「もう少ししたら兵藤君もやってきます。そうしたら、今までのことを説明いたしますわ」

 

「は、はあ・・・」

 

 全く状況はわからないが、とりあえずイッセーは無事なようだ。

 

 とはいえ、それがこれからも続くとは限らない。

 

 とにかく、このうまい飯はしっかりと味わっておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今、学園のマスコットである塔城小猫ちゃんが隣に座っています。

 

 あまつさえ、羊羹を黙々と食べています。

 

 しかも、目の前でグレモリー先輩がシャワーを浴びています。

 

 何っているのかわからないって? 安心しろ、ただ事実を言っているだけだ。

 

 食事を終えた俺は、姫島先輩に連れられて「オカルト研究部」と書かれたドアをくぐってこの部屋へやってきた。

 

 そしてイッセーが来るのを待たされているのだが、非常に落ちつかない。

 

 考えてもみてほしい。いきなり変な男と変な力の脅威にさらされる。助かったと思ったら知らない部屋に寝かされている。とどめに、美少女三人が、しかも一人がシャワーを浴びている部屋で男一人待たされているなんて状況が普通あるか?

 

 しかも、床、天井、壁など部屋中のいたるところに謎の文字やら魔法陣やら書かれている不思議な部屋。

 

 とっても居心地が悪い。

 

 そんな俺の緊張を救ってくれたのは、ドアを叩くノックと、それに続くさわやかな声だった。

 

「部長、失礼します」

 

「し、失礼しま~す」

 

 ドアを開けてはいってきたのは、学園の貴公子、木場祐斗とイッセーだ。

 

 俺は立ちあがると、イッセーに駆け寄った。

 

「イッセー! 大丈夫か? 怪我ないか?」

 

「お、おう。大丈夫だ」

 

 よかった。

 

 あんな怪我だし死んだかと思ったが、どうやらこの様子だと大したことないみたいだ。

 

 安心したタイミングで、グレモリー先輩と姫島先輩がシャワールームからやってきた。

 

「待たせてしまってごめんなさいね」

 

 湯上りのグレモリー先輩。うん、こんな状況でなければイッセーが暴走したかもしれん。

 

「これで全員そろったわね。私達オカルト研究部はあなた達を歓迎するわ。・・・・・・悪魔として」

 

 ・・・待て。今何て言った?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すいません。ちょっと頭で整理していいですか?」

 

 俺は手をあげて、失礼ながらグレモリー先輩を遮った。

 

 グレモリー先輩が語る内容は、正直って現実離れしすぎている。

 

 自分の正体は悪魔だということ。

 

 昨日の翼を生やした男は堕天使だということ。

 

 そしてもちろん天使もいるということ。

 

 それらは長年にわたって三すくみで争っているということ。

 

 そしてオカルト研究部はグレモリー先輩の趣味である仮の姿で、その実体は悪魔の集まりだということ。

 

 どれもにわかには信じられないことだらけだが、魔術をかじっていた俺は比較的理解できる。

 

 だがおかしい。悪魔って確か―

 

 いや、それよりも重要なことがあるな。

 

「質問があります。・・・天野夕麻はそのうちのどれですか?」

 

「ちょ、宮白! なんで今その話―」

 

 イッセーは止めようとするが、それより早くグレモリー先輩が反応を示した。

 

 薄く笑ったのだ。

 

「勘がいいのね。・・・彼女は堕天使よ」

 

 そう言ってグレモリー先輩が指を鳴らすと、姫島先輩が一枚の写真を取り出す。

 

 そこには懐かしい姿が、移っていた。

 

「ゆ、夕麻ちゃん!?」

 

 そう、天野夕麻の姿だ

 

 しかも、昨日の男と同じように黒い翼が生えている。

 

 やっぱりそういうことか。

 

 イッセーの話と男の姿に共通点が多いから、おそらく二人の間には何らかの関連性があるとはあの時から思っていた。

 

「この堕天使はとある目的があって彼と接触した。そして、その目的を達成したから、あなたの周囲から自分の記憶と記録を消させたの」

 

「「目的?」」

 

 俺とイッセーの声がハモる。

 

「そう、イッセー、あなたを殺すため」

 

「な、なんで俺がそんな―」

 

 イッセーを殺す。

 

 確かにそれなら、イッセーが見たという夢の話も説明できる。

 

 だけど、それだとイッセーはなんで生きている?

 

「仕方なかった・・・いえ、運がなかったのでしょうね。そこの宮白君みたいに殺されない所持者もいるのだし」

 

 なるほど、アレか。

 

 それを確信した俺は、口元を隠しつつ小さく声を出す。

 

「起動。解析開始(ブーストオン)

 

 右腕を中心に自分の体を解析。

 

 ―あった。右腕に、これまでにない力の塊を感じる。

 

「神器―セイクリッド・ギアと呼ばれる力のことよ。あなた達には神器があって、彼女はイッセーのそれが危険かどうかの確認のために接触したのよ」

 

 あの堕天使も言ってたやつか。

 

 ろくな攻撃手段も持たない俺が、あんなヤバそうな光の槍をやすやすと防いだ力。

 

 だとすると、イッセーの神器はそれ以上ってことか?

 

「神器とは特定の人間に宿る、規格外の力。例えば、歴史上に残る人物の多くがその神器所有者だと言われているんだ。神器の力で歴史に名を残した。」

 

「現在でも体に神器を宿す人間はいるのよ。世界的に活躍する方々がいらっしゃるでしょう? あの方々の多くも神器を体に宿しているのです」

 

 木場と姫島先輩が説明してくれるが、そりゃすごいな。

 

 いわば才能と言い換えてもいい。

 

「大半は人間社会でしか機能しないものばかりだけど、中には私達悪魔や堕天使の存在を脅かすほどの力を持ったものがあるの」

 

「・・・なるほど、イッセーがそれを持っていたから、奴らは天野夕麻に確認させてから始末したわけですね」

 

 あのスケベイッセーに見知らぬ少女が告白してきたという異常事態。

 

 なんてことはない。ある意味で2を超えるハタ迷惑な理由だったのだ。

 

 ってちょっと待て? っていうことはあの夢はマジなわけで、それだとおかしいことに・・・

 

「これ以上は実際に見てもらった方が早いわね。二人とも、目を閉じて、一番強いと感じる何かを心の中で想像してみて頂戴」

 

 この時、俺は解析に魔力を込めまくった。

 

 なんかとても嫌な予感がしたからだ。

 

「一番強い・・・ドラグ・ソボールの空孫悟かな・・・」

 

 イッセーがバカ正直にしているが、俺はその間も解析を続行。

 

 ―ビンゴ。これなら魔術回路を開く要領で力を注げるぜ。

 

「そして、その人物の一番強く見える姿を真似るの。強くよ? 軽くじゃダメ」

 

 こっちもビンゴ。

 

 新手の拷問以外の何物でもない要求が飛び出した。

 

 あ、イッセーが焦ってる。

 

「み、宮白。お前先に―」

 

「アレ?」

 

 俺はとぼけながら神器に力を込める。

 

 右腕から強い光が放たれたかと思うと、それは昨日も見た手甲になってくれた。

 

「すごいわね。想像しただけで発動させるだなんてやるじゃない」

 

 グレモリー先輩が称賛してくれる。

 

 ふ、危なかった。

 

―テメエ、魔術使いやがったな―

 

―うん。悪いな―

 

 そしてイッセーとのアイコンタクト完了

 

 目と目を合わせて念じるだけで、言葉を交わすことなく言いたいことを伝え合うことができる。アイコンタクトは友情と信頼が生んだ人類の奇跡だ。

 

 がんばれイッセー。俺は視線をそらしてやる。

 

「ドラゴン波!」

 

 自棄になったイッセーがドラゴン波のポーズをすると、イッセーの左腕から、俺が初めて神器を出した時と同じぐらいの光が放たれる。

 

 それはどんどん密度を増すと、俺とは違い左腕全体まで覆って凝縮された。

 

 左腕全体をおおう赤い籠手。手の甲には緑色の大きな宝玉がはめ込まれていて、全体的に豪華な装飾が施されている。

 

「それが神器。一度発現すれば、あとは自分の意思で簡単に発動できるようになるわ」

 

 なるほど。・・・ん? だったら俺は真似る必要なかったんじゃないか?

 

 まあ良いか。それより早く本題に移ろう。

 

「それでグレモリー先輩。殺されたイッセーはなんで平然と次の日登校できたりしたんですか?」

 

「私達は人間と契約するためにこんなチラシを配っているのだけど、それをイッセーがあの時持ってたのよ」

 

 そういうと、何やら胡散臭いチラシを一枚差し出す。

 

 ・・・これで呼び出そうとする奴って、かなりアホじゃないか?

 

 なんでも、契約のためには魔法陣を用意する必要があるらしい。

 

 だが、この現代社会に一から魔法陣を用意してまで悪魔を召喚しようとするモノ好きはごく少数。それに対して悪魔側は妥協して、魔法陣をかいたチラシを自分から用意して、それで召喚されるという方式に変更したそうな。

 

「普段は姫乃が呼ばれるのだけれど、とても強い思いで呼んだのでしょうね。その時呼ばれたのは私だった」

 

「そして先輩は、イッセーが神器のせいで堕天使に殺されたんだってわかったわけですね。それで?」

 

「問題はここから。イッセーは死ぬ寸前だった。宮白君はわかっているみたいだけど、堕天使の光の槍は人間なら一発で即死。だから私は、あなたの命を救うことを選んだ。悪魔としてね」

 

 繋がった。

 

 堕天使によるイッセー殺害。

 

 悪魔を召喚するチラシ。

 

 悪魔にすることを選んだというグレモリー先輩。

 

 そして、その次の日から始まったイッセーの異変。

 

 それらはすべて―

 

「あなたの手で、イッセーは悪魔としてよみがえったわけですか」

 

「そうよ。イッセー、あなたは私、リアス・グレモリーの眷属として生まれ変わったわ。私の下僕としてね」

 

 次の瞬間、グレモリー先輩の背中から、こうもりみたいな羽が生える。

 

 見れば、イッセーを含めたオカルト研究部員全員から同じ翼が生えていた。

 

 うん。とんでもないことになった。

 

 この部屋、俺しか人間がいないってどういうことだよ! パニックにも程があるわ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その昔、悪魔、堕天使、天使の三つ巴の大きな戦があった。その結果、純粋な悪魔の多くが死に、魔族は戦力を集め、悪魔を増やす必要性に駆られてしまった。

 

 とても面倒なことに、悪魔はその長い命に反して、出生率が極端に低いらしい。子供を産んで数を増やすという方法は取りにくい。

 

 結果、人間を含めた様々な種族を悪魔に転生させる技術が確立された。

 

 さらに、力ある悪魔を増やして復興するため、転生した悪魔にも爵位をもつチャンスを与えることにしたらしい。

 

 そうなれば、グレモリー先輩のように眷属を持つことができるようになる。

 

 しかも、自分の眷属ならハーレムを作っても良いとのことだ。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 案の定イッセーが喰らいついた。

 

「ゴメン。イッセーが暴走して」

 

 なんとなく謝ってしまった。

 

「リアス先輩! 俺に悪魔を教えてください!!」

 

「良いわよイッセー。だけど私のことは部長と呼ぶこと」

 

 なるほど。眷属になるということは=でオカルト部員になるということなのか。

 

 イッセーはお姉さまじゃダメですかなどと言うが、お前は馬鹿ですかと言いたくなった。

 

「元気な人だね。もう少し落ち込んだりするかと思ったんだけど」

 

 そんな感想を木場が漏らした。

 

 ま、それが普通だよな。

 

 人間、自分が人間だということを絶対だと思っていることは多い。

 

 そんな絶対が消えた時、たぶん人は恐怖するんだろう。

 

「イッセーはまっすぐだからな。どうせ人間に戻れないならって思ったんだと思うぜ?」

 

「なるほど。それはちょっと羨ましいね」

 

 そんなことを木場が言う。

 

 人に歴史ありとか言うが、このイケメンにもいろいろあるということなのだろう。

 

 俺だってある。イッセーだってある。

 

 なら、きっと皆が一つぐらいはあるんだろうな。

 

「お前も大変だねぇ。ま、悪魔生活頑張ってくれ」

 

「君も転生してみるかい? 部長はまだ、悪魔に転生できる余地がいくつかあるけど?」

 

 スカウトされるかもとは思ったけど、ここで来るか。

 

 確かに、もし本当に爵位持ちになることができれば人生相当勝ち組だろう。

 

 だが、それはそれで面倒なことも多そうだし、積極的にやるほどのことじゃない。

 

「忙しいのは嫌いでね。ま、頭の隅にでもとどめておくよ」

 

 そう返しながら見るのは、姫島先輩に機会の使い方を教わるイッセーの姿だ。

 

 悪魔が契約をするのに使う代物なのだろうが、まさか機械とは思わなかった。文明の進歩は人類だけでなく悪魔の生活も大きく変えているということなのだろう。

 

 しっかし燃え上がってるなイッセーの奴。

 

 下僕でも爵位を取れる可能性があるってだけで、それが狭き門ってやつなのには変わりないだろうに。

 

 まあ、この日本で人間がハーレム作るのは極めて難しいだろうし、それなら作れるらしい悪魔としてってことなんだろうな。

 

 ま、期待しないで見てるとしますか。

 


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