ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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活動報告のちょっとしたアンケートを出してみました。

ぜひご参照ください。


判明、洋服崩壊の問題点!!

 温泉に入って火照った体を覚ましながら、俺は非常階段のところで一息ついていた。

 

 ごたごたの疲れは温泉でしっかり抜いたが、しかしそれだけとも思えない。

 

 英雄派がなぜこのタイミングで仕掛けてきたかわからないが、いくらなんでもアザゼルの行動を警戒していないはずがない。

 

 駒王学園のスケジュールぐらい、調べようと思えば簡単に調べられる。それを調べるだけでアザゼルがどこに出没するかの可能性ぐらいはすぐにわかるはずだ。

 

 つまり、奴らはアザゼルがこっちに来ることを把握したうえで行動した可能性が非常に高いわけだ。

 

 どれだけ自信があるのかそれとも馬鹿なのかはわからないが、しかしどちらにしても警戒するに越したことはないだろう。

 

 最悪、アザゼルを正面から撃破するだけの戦力を擁している可能性は十分にある。

 

「・・・全く、初日から大波乱にもほどがあるだろう」

 

 部長からの返信はすぐに来た。

 

 アザゼルが可能な限り巻き込むのを避けたかったためか部長たちは止められたらしいが、すでに部長も相応の警戒はしてくれている。

 

―何かあったらすぐに連絡しなさい。回せる戦力は準備しておくわ。

 

 実に頼りになるお言葉だ。それだけでもだいぶ心強い。

 

 とはいえここ最近連戦しているのはこちらにとっては不都合といってもいいだろう。

 

 英雄派の戦力がどれぐらいかわからないにも関わらず、こっちは連戦でだいぶデータが取れているはずだ。

 

 戦争なんてもんは事前の情報戦がかなり重要なポジションを占める以上、こっからはだいぶ苦戦することを想定したほうがいいだろう。

 

 それを言えば今までだって楽勝な戦闘はほとんどなかったわけだが、しかしそれを差し引いても苦戦するだろう。

 

 旧魔王派は馬鹿が多かった印象があるが、ザムジオは馬鹿の方向性が違うようだし、そういった面でも注意が必要だ。

 

 これまで以上の苦戦が必須。なんとしてもパワーアップの方法を考慮する必要があるな。

 

 とはいえその筆頭になりそうなイッセーのパワーアップは想定外の方向でとん挫しているし、さてこれどうしたもんだろうか・・・。

 

「こんなところにいましたか」

 

 声をかけられて振り向くと、ふろ上がりのようなベルがジャージ姿でこちらに笑いかけていた。

 

 ・・・なんというか、ジャージなのに色っぽいな。

 

 胸デカいやつは大変だな。どんな時でもサイズがアレなのでエロく見える。

 

「疲れがとれるいい温泉でした。ここなら多少の揉め事が起こってもすぐに回復できるでしょうね」

 

「お前実は戦闘のことしか考えてないだろ」

 

 まさかこのような想定外な事態があるとは思わなかった。

 

 普段から普通の会話には参加しているから気づかなかったが、どうも大天使ミカエルの役に立つ人材になることに頭が行き過ぎて、優先順位のつけ方に問題があるようだ。

 

「今日食ったみたらし団子、どうだったよ」

 

「・・・え? 美味しかったですけど、それがなにか?」

 

「お前はもうちょっとそういうことを気にしたほうがいいって話だよ」

 

 どう反応したものか微妙に困るようだ。

 

「そういえば、お前って大天使ミカエルに拾われてからずっとトレーニング続けてきたのか」

 

「はい。実に苦労しました」

 

 そういうベルの表情は、まるで懐かしいものを見ているかのようだった。

 

「合計で二十数年、私は実質人から幸せを願うような扱いを受けた記憶がないもので、あの方たちにこの力を認められたときは、本当にうれしかったです」

 

 そういうと、俺にだけ見える位置でベルは念動力を行使してタオルを浮かべる。

 

「こんな力を一般の中で持っていれば嫌悪と恐怖が出てくるのは当然ですから、当然のように認められたときは本当にうれしかったですね」

 

「そうか、確かに、恐れずに受け入れてくれるっていうのはうれしいよな」

 

 俺が同意すると、ベルはそれを見て誰が見ても見とれそうな表情を浮かべる。

 

「ええ。今でもあの時のことは手に取るように思い出せますっ」

 

 ・・・こいつは、一体どういう生活を送ってきたんだろうか。

 

 使える技術として好意を抱いていた俺。久遠やナツミも当然として使われる社会で若くして相応の評価を受けてきた。小雪だって、利用される形とはいえ使える武装程度の認識は持っていたはずだ。

 

 それなのに、彼女は自分がそんな力を持っていることすら嫌悪しているみたいだった。

 

「・・・嫌いなのか、自分の力?」

 

「正直、あの世界でこんなものがあれば人から怖がられるのが当然です」

 

 即答だった。

 

 嫌いもしてないが肯定もしていない。そんな感情がありありと伝わってくる。

 

「この世界のように異能が当然で、魔法などといった誰でも使える能力が存在するならいいでしょう。ですが、あの世界はそういった世界ではなかった。それだけです」

 

「そうか。お前、強いな」

 

 普通、そんな割り切りはできないだろう。

 

 ガキの頃からそんな風に怖がられて、普通は周りに憎悪を向けるもんだと思う。

 

 そう思わないのがこいつの強さで、だけどそのせいで変な方向に向かっている。

 

 自分が嫌悪されるのが当然だと思っているから、嫌悪しない人たちに対してより全力で好意を向けているんだろう。

 

 それが無私の奉公につながっている。

 

 おそらく大天使ミカエルは把握していないだろう。

 

 こいつ、ミカエルを求めるタイプじゃないから接触するときも思いっきり忠誠心ばっかり見せてその辺を思わせたりしてないだろうからな。

 

 そもそも大天使が一回の悪魔祓いにそう何度も顔を合わせるわけにもいかないだろうし、その辺も問題だ。

 

 そういう意味ではべったりできる俺や久遠とは方向性が違う。

 

「もう少し、肩の力を抜いても大天使ミカエルは何も言わないと思うぞ?」

 

「いえいえ。油断して弱くなってはミカエルさまの力になれないかもしれませんから。油断は禁物です」

 

 ベルは胸を張ってそういうが、そういう意味じゃないんだよ。

 

「あの人善人だからいいんだよ。そんな自分を捨ててまで使えるより、楽しむときは思いっきり楽しんだほうがよく思ってくれるんじゃないだろうかと思うけどな」

 

 悪魔が神に祈りをささげるのを許し、自分の失態は一介の信徒に直接頭を下げられるような人だ。

 

 その程度のことで目くじらは立てたりしないだろうに。

 

「お前まじめすぎて損してるよ。もっと人生楽しんだって問題ないって。フリーなんだろ?」

 

「まあ、信仰心があるわけではないので教会に属しているわけではありませんから」

 

 それなのにこの一直線具合かよ。

 

 どんだけ真面目なんだか。

 

「この揉め事が終わったら、お前はもっと遊ぶことを覚えとけ。きっとそっちの方が人生うまくいくぜ?」

 

 俺は苦笑しながらそう言ってみる。

 

「・・・・・・考えておきます。あなたが言うことなら、きっといいことになるでしょうから」

 

 思ったよりあっさりと納得された。

 

「もうちょっとごねるかと思ってたんだが、意外だな」

 

「貴方の意見なら間違ってはいないのでしょう。参考にしたほうが、きっともっと強くなれると思っただけです」

 

 なぜそう思うのかわからないんだが。

 

 こいつは悪魔祓いの中でも有数の実力者だと聞いているし、俺なんかよりはるかに実戦経験も豊富だろう。

 

 それが何でそこまで俺を評価する?

 

「貴方は自分で気づいていないだけで、非常に優れた人物です。私なんかよりはるかに優れた視点を持ち、そして高みへと駆け上がっている」

 

 俺をそう評しながら、ベルは自分の胸に手を当てた。

 

「ただかつてのようにどん底で這いつくばっていただけの私とは実質違いすぎる。あなたは兵藤一誠という光を見つけるより前から、高みを目指すために努力を重ねてきていたのです。ただ示された道を走り続けてきた私よりも、はるかに上にいるものでしょう」

 

 ・・・べた褒めされてるよ、オイ。

 

 なんというか、ベルが俺を見る目はなんというかうるんでいるというかなんというか。

 

 顔まで赤くなってつやがあるというか色気があるというか、なんだこの展開。顔が赤くなってきたぞ!!

 

「ええ、きっと私はあなたに―」

 

洋服崩壊(ドレス・ブレイク)!!」

 

 ・・・空気が凍った。

 

 俺とベルは示し合せたかのように同時に駆け出し、すごい勢いでホテルの非常階段を駆け上がる。

 

 そして俺の目の前には当然というかなんというか、裸に剥いたイッセーの姿があった。

 

 そして向かれたのはロスヴァイセさん。

 

「何やってんだイッセー!!」

 

「ぐっはぁあああああっ!?」

 

 ドロップキックで吹っ飛ばしてから、俺は素早く結晶体を取り出すと魔術でちぎれ飛んだ衣服を回収する。

 

「ちょ、ベル!! 回収するの手伝ってくれ!」

 

「は、ハイ!! うわ、本当に細切れに・・・」

 

 何とかかき集めて修復魔術をかけながら、俺は何というかあわててコートを呼び寄せるとロスヴァイセさんにあわててかける。

 

「イッセーがマジすいません!! でも味方にいきなりかます奴じゃないんですけど、一体どういうことですか!?

 

「くっそぉ!! 宮白まで来ちゃったらもう覗けないじゃねえか!!」

 

「お前マジで何考えてんの!?」

 

 このややこしい状況下でなんでそんなことまでしてんだよオバカ!!

 

 もうちょっと真剣に今後のこと考えようか!!

 

 ベルには娯楽を知ったほうが言い的なこと言ったけど、お前はもう少し真剣に生きたほうがいいとツッコミを入れるぞ!!

 

「本当にすいませんロスヴァイセさん!! なんかウチの馬鹿が全裸に剥いてしまって」

 

「ほ、本当です!! このジャージはせっかく安い時に買えたのに!! あんなに安い時なんて多分もうありませんよ!!」

 

「「そっち!?」」

 

 なんで今値段のこと言ってるんですか!?

 

「・・・って! 裸になってるじゃないですか!! まだ男の人になんか誰にも見せてなかったのに!!」

 

「遅いですロスヴァイセさん!! まずそっち反応しましょう!!」

 

 この人、真面目かと思ったけど方向性がなんかおかしい気がする!!

 

「な、何を言ってるんですか宮白くん!! 衣服は大事なんですよ!! 資源なんです、消耗品なんです!! もっと大事にしないとだめなんですよ!!」

 

「今は女の尊厳のほうが大事なタイミングではないでしょうか!?」

 

「いえ、こういうことは大事にしないといけません。宮白くんは金銭に困っていないかもしれませんが、だからといって無駄遣いをしていいわけではありませんよ。洋服崩壊で破かれる衣服だって予算がかかっているんです、こういったことは避けないといけません」

 

 そっち方面からツッコミ来るとは思わなかったが確かにその通りだ!!

 

 でもロスヴァイセさんは剥かれたことの方を気にしたほうがいいと思います!!

 

「確かに、衣服もただではありませんね。実質もったいない技ですし、味方に使用してはいけませんよ、兵藤一誠」

 

「す、すいません」

 

 ベルも納得するな!!

 

 ああもう!! どう反応していいのかわからねえよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・で、お前は何でリアスたちに連絡するかねぇ」

 

 アザゼルにそう詰め寄られるが、俺としては間違ったことはしていないので地酒を飲みながら視線だけ逸らす。

 

 あの後、アザゼルがセラフォルーさまとある程度の情報を収集したのでちょっと話を聞くために呼び出された。

 

 イッセーたちはすでに帰っているが、俺は説教も兼ねての作戦タイムで取り残されているというわけだ。

 

「つったって、いざというときを考えると報告しないわけにもいかんだろう。これまでの経験上、間違いなく大事になるのは読めてるだろ?」

 

 大ごとになってから呼び出しても間に合わないかもしれないからな。いざというときのための準備はしておかないと。

 

「まあそれはいいけどよ。お前はもうちょっと修学旅行を楽しんでろよ、ガキなんだから」

 

「中身は30代だって言ってんだろ? それより、京都の妖怪の方とは連絡取れるのか?」

 

 つまみを食いながら、俺はその辺が気になってしょうがない。

 

「どうも長である八坂の娘とやらがちょっと暴走気味のようでな。仕掛けてきたのもそいつらだろう。たぶん今日明日中にはどうにかなると思うがな」

 

「それを期待してるよ。・・・それで、英雄派の動きはどうなんだ」

 

 今回の下手人は英雄派だとか、グランソードは言っていた。

 

 全面的に信用するつもりは一切ないが、しかし参考にはするべきだろう。

 

 各勢力にテロ行為をしでかしている奴らを警戒するのは当然なことだ。

 

 あの連中、誘拐した連中を洗脳して非道な人体実験してるからな。英霊というか反英霊だろうに。

 

「こちとら戦争を起こさず平和にやっていきたいだけだってのに面倒な連中だな。・・・悪魔と人間の付き合いだってそこそこうまくできてるだろうに、何が楽しいんだか」

 

「だが、実力はあるから面倒だ。・・・神滅具の持ち主も何人かいるっていうし、出来ればこのタイミングで一人ぐらい片づけたいところだがな」

 

 同時に溜息をつくと、そのままヤケ酒気味に酒を一気にあおるのも同時だった。

 

「じゃあアザゼル。とりあえず妖怪側とのコンタクトは任せるぞ。何かあったらすぐ連絡しろ」

 

「わかってるよ。それで、お前はアーチャーにはどういうつもりなんだ?」

 

「とりあえず、今は保留にしておきたいところだがな」

 

 その辺はできれば避けたいところだ。

 

 ・・・あいつがせっかく現世を楽しんでいるのに、余計な邪魔を入れたくはない。

 

 とはいえそううまくはいかないだろうが、とりあえず妖怪側から事情を聴いてからでも十分間に合うだろう。

 

「・・・面倒事を背負い込む性分だなお前。肩の力抜いたほうがいいのは、お前の方なんじゃねえのか?」

 

「負担をかけてる自覚はあるからな。ゆっくり休めるときは休んでほしいだけだよ」

 

 とはいえ、状況次第じゃそういうわけにもいかないか。

 

 ・・・英雄派め、見つけたらただじゃおかねえからな。

 

 




久遠の兵夜に対する好意のそれが、同じ部活に所属するできる異性に対する好意的なものだとするならば、ベルのそれはスポーツ少女が金メダリストに向けるであろうそれです。


ミカエルに拾われるまでの過去において、底辺から這い上がることを考えもしなかったベルにとって、輝きを浴びる前から高みに行くための努力を惜しまなかった兵夜は自分を超える存在として認識されています。


久遠や小雪が共感ではあるが方向性が違い、ナツミが自分を救ってくれた恩人に対する感謝なら、ベルの場合は自分の道の圧倒的先にいる存在に対する憧憬が根幹です。


ロスヴァイセフラグを着々と組み立てていますが、それに対してうまく差別化していきたいと思っております。

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