ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
今回はちょっと短め。
ジャンヌは、自分が一番酷い目に遭っている事を理解した。
自分の神器は確かに強い。
ぼくがかんがえたさいきょうのせいけん。中二病を現実に具現化するとどれぐらい厄介かなど、誰が考えても理解できるだろう。
ましてや相手は殆ど悪魔である。
聖剣を作る自分にしてみれば、基本的にやりやすい相手である事は変わりない。
ぶっちゃけハンデとして転生天使を選んだが、彼女は他のメンツに比べて特化した武装を持っていない。
天使としての光力だけで戦っている以上、言ってはなんだが地味なのだ。
ゆえに、応用性で圧倒している自分が、更にドラゴンでパワーを上回れば普通に立ち回れば勝てる。
空を飛んで遠距離戦に徹されたら話は別だが、赤龍帝一味は基本的に正面勝負を選ぶ傾向がある為、この問題はほぼなかった。
ゆえに、唯一の例外ともいえる宮白兵夜が前に出た時点で、おそらく空中からの攻撃になるだろうと思っていた。
が、もしかしたらその方が良かったかもしれない。
「ちょ、ちょっとボク? 女の子はもっと優しく扱うものだと思わない!? 君は紳士で文字通りの騎士だって聞いたんだけど!?」
「あいにく、テロリストに情けをかけるつもりはない!!」
出す聖剣がことごとく切り裂かれていく。
確かにぼくがかんがえたさいきょうのせいけんは非常に有効だろう。
全神器を探しても間違いなく上位に位置するこの能力だが、実は簡単な対抗策が一つあった。
宮白兵夜は容赦なくそれをついてきた。
Q ぼくがかんがえたさいきょうのせいけんがきついんですけどどうしたらいいですか?
A ぼくがかんがえたさいきょうのせいまけんで挑みましょう。格上だから文字通り有利です。
「よりにもよってなんで木場佑斗が相手なのかなぁ!!」
やけくそ気味に叫んでしまうのは仕方がないだろう。
どんな聖剣を出して翻弄しても、同等の能力の聖魔剣を使われれば出力で負ける。
はっきり言って普通に出してもエクスカリバーなどの伝説級には勝てないのに、聖魔剣はエクスカリバーと戦って拮抗したのだ。
相性というより格が違う。しかも戦法が同じなので独自に対処する事ができない。
だったらドラゴンで対応すればいいと思ったが、こちらに関しても嫌がらせ以外の何物でもない対抗策を使われた。
Q 特殊能力満載のドラゴンがいるんですがどうしましょう?
A 特殊能力満載の龍王で相手をしましょう。格上だから有利です。
もの凄い正攻法で攻略されてしまった。
とにかく聖剣を大量に増殖させて対処しているが、ぶっちゃけ足止めにはなっても撃墜は難しい。
念の為龍殺しも用意していたのだが、それすら決定打にならなかった。
何故か?
『気の強化はやっといて良かったぜ、おかげで龍殺しのオーラは何とか抑えられるな。ヴリトラ』
『全くだ我が分身よ。龍殺しが気にせず戦えるなど、そんな事が出来るとは思わなかった』
異世界の力なんて大嫌いだ。
ジークフリートにはぜひ頑張って桜花久遠を倒してほしいと切に願う。
ジャンヌは今度転生者を模擬戦の名目でボコボコにして憂さを晴らそうと決めた。
ゲオルグはほぞをかんでいた。
自分は術式の準備をする必要がある。
八坂の制御をする必要がある。
このフィールドの調整も必要だ。
はっきり言って一番忙しい。
なのに、
「ゼノヴィア! はいもう一回!!」
「吹き飛べぇえええええええ!!!」
超高出力の聖なるオーラが叩き付けられ、絶霧の結界が軋みを挙げそうになる。
グレモリー眷属でも生粋のパワーファイター、ゼノヴィア。
破壊力においてはコールブランドにも勝りうる聖剣、デュランダル。
更にそれを制御するエクスカリバーによる鞘。
これだけでも非常に厄介だったが、そこまでならまだいい。
ゼノヴィアの戦闘スタイルはパワーファイター。エクスカリバーの能力を全て活かす事は出来ないだろう。
正直策を弄する自分なら対処の余地はあった。
だが、そこに紫藤イリナが加わった事で非常に面倒な事になった。
彼女もまたエクスカリバー使いなのである。
ゆえに二人が協力する事でエクスカリバーの制御が高まり、結果としてデュランダルの出力は収束される。
その所為で、防御に全力を振らねばならなくなった。
しかも二人で協力して警戒する所為で、この出力に対応しながら出来る策では対処されてしまう。
幻術で対抗しようにも、宮白兵夜は対応用の武装を満載させていた。
真面目な話生身の姿を見るのも困難なぐらい用意してある。あれでは流石の自分も無理がある。
ただでさせ京都側が色々と対策をした所為で、こっちは制御が難しくなっているのにこれだ。
これが終わったら休暇を申請しよう。紫炎のヴァルプルガとは神滅具を持つ魔法使い同士話がしたかった。
ついでにこの二人をいたぶって殺す方法でも相談しよう。ああ、そうしよう。
何とか術式の制御をしながら、ゲオルグはキリキリ痛む胃をさすった。
そして、その影響は見事に出ていた。
ロスヴァイセは、放たれる炎を術式で対処する。
放たれる攻撃は九尾の狐なだけあって強力だが、あいにく自分も戦乙女の1人である。
仮にも北欧の主神の付き人となった実力は伊達ではない。自分でも時々どうかと思うぐらい、攻撃力においては自信があるのだ。
ゆえに、全ての攻撃を撃ち落とすという芸当を行っている。
もちろん大量に放たれれば照準を突ける時間が間に合わないが、しかし今回は非常に助かった。
今彼女は、一本の杖を手に持っている。
アーチャーとアザゼルがヴァルハラからの協力を得て開発したマジックアイテム。
北欧の魔術を行使する為の術式機関だ。
各種術式を容易に行う事で不意打ちを可能にする為の兵夜用の武装だが、実験段階なのでまだ魔術礼装としての機能を組み込んでいない。
本来なら未完成品なので使わないが、兵夜はそれを逆手にとって、北欧の術式に慣れているロスヴァイセに貸し与えた。
『この際壊してもかまいません。いや、壊す勢いで使っちゃってください!!』
そこまで言われたらこちらも遠慮なく使わせてもらおう。
とてももったいなく思いはするが、だからといって使わないでやられるのも馬鹿らしい。
それに、正直この杖はちょっと嬉しい事をしてくれている。
実家の魔術と相性が悪く、攻撃力特化の術式構成になったロスヴァイセは、時々自分に対して思うところがあった。
実家の魔術を使いこなせたら良かったのにと思った事も何度もある。
この杖は、それに希望を与えてくれる。
今、彼女は八坂の術式に干渉している。
洗脳の解除まではいかないが、操作系に干渉する事で行動をある程度制御している。
それがあるからこそ、たった一人でここまで有利に立ち回れているのだ。
使っている術式は実家のものとは違うが、研究が進めばそれに対応したものも完成するかもしれない。
もし完成できるほどの領域になったのなら、一つおねだりしてみたいと思った。
一度でいいから、実家の魔術を普通に使うところを家族に見せたい。
とっくの昔に諦めていた事が、彼のおかげで出来るかもしれない。
初めて会った時に優しく慰めてくれた事といい、悪魔に転生する時に自分の為に怒ってくれた事といい、彼には感謝しきれない。
女顔なのが難点だが美形だし、金払いが激しいところはあるが金銭感覚はちゃんとしている。
こちらの術式の話にも、知識が少ないのにも関わらず理解を示し、機会があれば積極的に取り入れようとする意欲を見せる。
頭もいいし身体能力も高く、政治方面においても非常に優れた出来る人物。
そこまで思い至り、ロスヴァイセはつい顔を真っ赤にしてしまった。
「やんね! 今戦闘中だっぺ! おちつかんかわたす!!」
思わず方言が出てしまうぐらい狼狽しながらも、しかし術式の制御はちゃんとする。
グレモリー眷属の一員なだけあり、彼女もまた、変人ではあるが優秀でもあった。
Side Out
今回は普通に優勢になりました!
とはいえ戦法自体は正攻法。有利な相手で挑み、頑丈な相手には強力なパワーで正面から挑むというシンプルな戦法です。
そして着々と重なるロスヴァイセフラグ。
兵夜、初の転生関係なしのハーレム要因成立なるか!?