ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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妄想幻像

 

 突撃してくるランサーの攻撃をかわしながら、俺は割と本気で追い込まれたことを理解する。

 

 ・・・真面目な話、うちの連中にとってこいつの能力は鬼門だろう。

 

 信頼する味方をあっさり奪い取るような能力の持ち主だ。俺たちにしてみればこれ以上ない攻撃ともいえる。

 

 実際、内容を聞いた時点で木場もゼノヴィアも狼狽して戦闘能力が低下している。

 

 三対三の状態でこれは非常にマズイ。

 

 ・・・仕方がないな。

 

「・・・ベルは俺が相手する。ランサーの噛みつき攻撃には注意しろ!!」

 

 俺は光魔力の槍を展開しながらベルに突撃する。

 

 ベルはそれに反応して念動力の波動をたたきつけるが、攻撃の気配がまるわかりなので、攻撃してくるとわかっていればなんとか躱せた。

 

「アーシアちゃん、回復よろしく!!」

 

 牽制の砲撃を叩き込みながら回復を要請する。

 

 どちらにしても片腕では不利だ。と、言うかさすがに痛い。

 

「わ、わかりました! ベルさんをお願いします!!」

 

 アーシアちゃんの回復を受けてから、俺はとりあえずベルをおびき寄せる。

 

 ・・・ベルは空中戦もできるが基本的には地上戦を中心にしている。

 

 ゆえに空中戦に引きずり込んだほうが優位にはなる。

 

 しかも近接格闘ではなく念動力を中心に行動しているのも有効だ。

 

 どういう理由でやっているのかは知らないが、慣れてない行動なのでどうしても隙が大きい。

 

 そのせいなのか発動前に視界がゆがんでタイミングが計れる。おかげで不可視攻撃にもかかわらず、かなり回避しやすくなんとかさばける。

 

 とはいえイーヴィルバレトではやすやすはじかれるし、光魔力の槍を展開してもさすがに腕で弾き飛ばされる。

 

 蹴りをつけるなら偽聖剣を展開しての近接戦だが、ぶっちゃけベルに近接戦闘とか自殺行為だ。

 

―アーチャー。宝具で無力化できるか?

 

―無理ね。私の宝具では宝具は無効化できない。彼女にかけられた契約が宝具によるものである以上、無効化は無理よ

 

 無慈悲な言葉だが、このタイミングで期待を持たせる言葉も無意味。

 

 ゆえにわかりやすく、そして俺向きの言葉だった。

 

―・・・サポート頼む。メインは俺がする。

 

―無理はしないほうがいいわよ?

 

―いや、ここでお前に押し付けるのは、間違ってる。

 

 俺もさすがに覚悟を決めた。

 

 と、言うよりこういうのは俺の役目だろう。

 

 アーチャーに押し付けるのは間違ってるし、俺以外のメンバーじゃこういった判断はできそうにない。

 

 俺は深呼吸をし、一度だけ目を閉じて意識を切り替える。

 

「・・・悪く思うななんて言わない。好きなだけ恨んでくれていい」

 

 ベル。俺はさ。

 

 たぶん俺たちの中で一番まっすぐで、そこしか見えてないところがあって、だけどそこから前に進みかけているお前が。

 

「・・・殺す気で行くぞ、ベル」

 

 ・・・好き、だったよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イッセーSide

 

 

 

 

 

 

 

 

 マズイ!

 

 宮白の奴、なんかやばい覚悟決めやがった!?

 

 目が完璧に冷たくなってる。アレはかなりやばいことをする覚悟決めやがったぞ!

 

 なんとか止めなきゃいけないけど、戦闘が忙しくて介入できない!!

 

「どうしたどうしたぁ! 赤龍帝の名が泣くぞこれがぁ!!」

 

 主にフィフスが邪魔で介入できない!!

 

「今それどころじゃねえんだよ!!」

 

 振り返りざまに拳を振りぬくが、フィフスはそれを余裕でつかむ。

 

 殴り合いじゃ向こうの方が圧倒的に有利か!

 

 だけど距離を取ろうとしたら、どこからともなく短剣や矢が飛んできてこっちの邪魔のをしてくる。

 

 どうする!? どうすればいい!?

 

 ベルさんが敵の手に堕ちたとか最悪すぎる!!

 

 どう考えたって倒すわけにもいかないし・・・。

 

「ベル=アームストロングを倒すわけにもいかないがどうしようとか、考えてないか?」

 

 図星を突かれて、思わず言葉に詰まる。

 

 そんな俺を見て、フィフスはものすごい嫌な笑顔を浮かべる。

 

「だよなぁ? お前らだったらそこまでしか考えられねえよなぁ? だからこの手段は効果的なんだよ」

 

 この野郎・・・!

 

 俺たちとベルさんを戦わせることが目的か!

 

 だけど、フィフスはそれからさらにとんでもないことを言い放つ。

 

「そんな連中が、ベル=アームストロングを殺した奴と仲よしこよしでいけるわけがない。ああ、予想通りの展開になってきた」

 

 ・・・なに?

 

 ま、まさか宮白の奴!?

 

「てめえ! そこをどきやがれぇええええええええっ!!!」

 

「嫌だね!! そのまま味方同士の殺し合いを見物しやがれ!!」

 

 全力で殴り飛ばそうとしても、フィフスはその上を行ってすべてさばく。

 

 クソッ! こいつ、技術だけならサイラオーグさんより上を行ってやがる!!

 

 それでも身体能力なら今の俺の方が上だと思ったのに、新能力引っさげて挽回しやがった。

 

 それでも、ここで何とかしなけりゃなんないってのに―

 

「とらえたぞ、赤龍帝」

 

 耳元で、静かな声が聞こえてきた。

 

 そう思った瞬間には、関節を取られて右腕をひねりあげられる。

 

 なんだ!? 全然動かねえ・・・っ!

 

「―無駄だ。我が捕縛術の前には、その程度の怪力など何の意味もない。おとなしくそのままつかまっているがいい」

 

 視線をずらせば、そこにはアサシンが絡みついている。

 

 くそ! だったらこっちの腕は構わねえ!!

 

 全力でドラゴンショットをぶっ放すべく、今度は左腕を向けようとしたら、こっちも動かなくなった。

 

 顔を向ければ糸が絡まって動きを止めている。

 

 なんなんだよ!? 毒に糸に関節技!? いくらなんでも多芸すぎるだろ!!

 

「無様な面だなぁ、赤龍帝。そのまま親友が味方殺しをする姿を目に焼き付けろ・・・と、言いたいところだが」

 

 フィフスは俺を見下ろしながら、炎に包まれた手で俺の兜を砕いて顔を見る。

 

「俺もそこまで非道じゃない。殺した事実さえあればお前らは空中分裂するだろうし、目に焼き付けさせる必要もないだろう。・・・やれ」

 

「承知」

 

 女の声が聞こえてきたかと思うと、突然耳元から音楽が聞こえてくる。

 

 なんだ・・・これ? 急に眠気が・・・?

 

「我が夢歌のハサンの音に呑まれて、一時の夢へと旅立つがいい。そのあとの地獄をいやすための、心地よい夢をくれてやろう」

 

 ま、まずい。・・・マジで・・・ね・・・む・・・。

 

「そんなあなたに天使の目覚ましタイムよ!!」

 

 ―と、思ったら後頭部に光の矢が刺さって痛い!?

 

 と、そう思った瞬間に左手が自由になった。

 

「い、イリナ!?」

 

「ハァイ! イッセーくん起きたかしら!! 助けに来たわよ!!」

 

 急降下して関節を取ったアサシンを蹴り飛ばしたイリナが、擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を片手にフィフスをけん制する!

 

「チッ! 面倒なことをしやがる!! アサシン、仕留めろ!!」

 

 飛びのいたフィフスが声を挙げた瞬間、しかしそれより早く砲撃が建物に叩き込まれた!!

 

「カッハハハ!! だらしねえなイッセー!! ・・・リアスに言われて助けに来たよ!!」

 

 仰ぎ見れば、宝石まみれのナツミちゃんの姿!

 

 あ、あれって砲撃戦闘形態だ! あれで邪魔な連中を吹っ飛ばしたのか!!

 

 そして破壊された建物から脱出する姿を見て、俺は別の意味で驚いた。

 

 全身真っ黒で髑髏の仮面をつけた奴が三人。

 

 短剣を構えた奴とスリングを持った奴と弓を構えた奴の三人!? え、どういうこと!?

 

「えぇ!? サーヴァントって一クラスにつき1人じゃなかったっけ? なんか六人ぐらいいるんだけど?」

 

「分身能力でも持ってるんじゃねえのか? 宝具ってのは過去の功績とかも形になるらしいし、多重人格でなんかやった奴なら、人格の分だけ分裂するとかありえるだろ」

 

 困惑するイリナに、ナツミちゃんがサミーマモードでありそうな推測をだす。

 

 その説明を聞いたフィフスが明らかに狼狽したので、どうやらマジっぽい。

 

「なんつーもん召喚してんだよ、お前。だけどおかげで宮白もビックリの多芸っぷりが解けたぜ」

 

 俺がフィフスをにらみつけると、それをかばうように何十人ものアサシンが姿を見せる。

 

 いや、多すぎだろ! まさかこいつら全部得意技が違うとか言うんじゃないだろうな!?

 

「気づかれたのなら仕方がない」

 

「然り。我ら個にして群の影」

 

「そして群にして個の影なり」

 

 アサシンたちが俺たちを一斉に取り囲む。

 

 見れば、そのかっこうは近代的なボディスーツみたいなもので覆われている。

 

「さすがに分裂してる分、一体一体の戦闘能力は低いみたいだね。・・・それを、物理攻撃が通用しないのを逆手にとって、リミッターなしの危険な武装で強化してるってとこか?」

 

「意外と頭回るな、お前」

 

 ナツミちゃんの推測に、フィフスがマジで嫌そうな顔を見せる。

 

 おお! すごい当たりっぽい!!

 

 って、つまりこいつ等分裂してるけどそれでも結構手ごわいってことじゃねえか!!

 

「イッセー。こっちは任せて早く行って」

 

 ナツミちゃんが一歩前に出て、俺をそうせかす。

 

「滅竜魔法相手じゃ分が悪いでしょ。兵夜を止めるのは任せたから」

 

「ミカエルさまのエースとして、赤龍帝の道を切り開いてあげるわ。行って、イッセーくん」

 

 イリナも聖剣と光の剣の二刀流で、俺をかばうようにアサシンたちをにらみつける。

 

「・・・わかった!」

 

 俺は翼を全開にして、一気に飛び立つ。

 

 早まるなよ、宮白!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Side Out

 




ついにイッセーたちの前でアサシンのタネがばれました。

実際この能力はかなりチートですが、さらにフィフスは一味加えてパワーアップ。

人間では耐えられない速度で駆動したり反動があったとしても、それが魔術的なものでないのならサーヴァントは耐えられる。そこを突いた強化武装です。

んでもって作戦も非常に極悪。

兵夜がいざというときは冷徹な判断を取れることを逆手に取り、それを利用してメンバーの空中分裂が本来の目的。

オカルト研究部にとって結束が力になっていることをちゃんと理解しているからこそとれる悪辣な手段でもありますが、これ、考えたのフィフスではなくアサシンの1人という設定。


強化武装と強化改造が中心というのは似てますが、兵夜がアクティブな頭脳労働担当なら、フィフスはインテリな肉体労働タイプと微妙に反対に設定しております。

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