ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
それからはいろいろと大忙しだった。
なぜかイッセーの乳技が役に立つかもしれないとかでシトリー領の病院に運ばれたり、インタビューでイッセーがかんだせいで、公衆の面前でイッセーが部長の乳を吸うとか思われたり。
しかもサイラオーグ・バアルがいがいとノリのいい人だったもんでさあ大変。マジでそう思われて雑誌にまで乗ってしまった。
まあ、イッセーだと本当にしそうで俺も怖い。
などと考えながら俺は今、大絶賛修行中だった。
修行内容は極めて単純。神の力の運用だ。
・・・正直言って、俺は多芸ではあるが一点特化ではない。
まあ、固有結界の質から言って
そのせいで、どうにも近年の一芸に特化しているといってもいい連中相手では後れを取りがちだ。
正直解決のために最近は研究をしまくってはいる。
とはいえ、それは逆にただでさえ伸びた枝をさらに伸ばすことになりかねない。逆に手詰まりになる可能性だってある。
ただでさえできることが多すぎて特化したものを持たないのが俺の欠点だ。研究はしているがこれ以上延ばすのも問題がある。
そこに刺した光明が神格だ。
悪魔で神格など俺以外には存在しない。まさにレア中のレアにして、正真正銘俺のみの特性だろう。ほかにいたらむしろ驚く。
いや、厳密な意味ではヴァルキリーは半神だからロスヴァイセさんは近いだろう。だが、それでも狭義の意味で神なのは俺だけだ。
なので、これが光明になるかと思ったのだが、そううまい話があるわけもない。
ぶっちゃけかなりイレギュラーな方法で神格になったこともあるし、緊急事態だったのでピンポイントの特化に限定しているわけだ。
ベルという使いの使役に特化しているがゆえに、現時点でほかのことはろくにできなかったりする。
「・・・やはりイレギュラーすぎてうまくいきませんわね。そもそもどこをどうすればいいのかもわからない以上、そう簡単に行くわけもないのですが」
朱乃さんも困り顔だ。
神職関係者の朱乃さんなら美味い手段を思いついているかとも思ったが、やはりそううまくはいかないということか。
「とはいえさすがにこれは今後に使えるとは思うんですよねぇ。どうにかならないでしょうか?」
「確かにそうなのですけど、悪魔から神格に昇華した存在なんて前代未聞ですから、まず手を付けるところがどこかということすらわかりませんわ」
真剣に考えながらも、朱乃さんはどうしていいのかわからないようだ。
「確かにそうですよね。・・・行けるかと思ったんだけどそうもいかないか」
まずはこの辺を何とかしないといけないわけか。
「仕方がない。あとはこっちで何とかしてみます。お手数をおかけしてすいませんでした」
「いえ、私もなにもできなくて申し訳ありません。・・・そういえば、アーチャーさんには相談しないのですか?」
ぐ。痛いところをついてきた。
本人は悪気はないのだろうが、これはちょっと困ったことになったぞ。
「ま、まあそうですが、こういうのは神道に詳しい朱乃さんの協力を仰いだ方がいいでしょうからね。まずは専門分野に近い方から聞いてみようかと」
「あら、そうでしたの」
本当はほかにも理由があるがそれは内緒だ。
とはいえ、この調子だと最終手段がうまくいかなかったら使わざるを得ないな。マジで覚悟しようか。
俺がそんなことをおもっていると、ノックの音が聞こえてから小雪が部屋に入ってきた。
「お、朱乃じゃねえか? 兵夜も一緒で何してんだ?」
「あら小雪。・・・ちょっと兵夜くんの神の力を使えないかどうか試してたのよ」
「お前もいろいろと考えてんのな。ま、手に入れたけど使えませんとかファックな展開もあれか」
そういいながら小雪は持っていた袋からジュースを出すとそれを俺に投げ渡す。
で、朱乃さんには手渡しした。
「・・・扱いが違うのはなぜだ」
「扱い同じだと思ってんのか?」
んなことを言いながら小雪も試作していた術式とかを目にしていろいろと確認する。
「小雪としてはどのあたりを変えたほうがいいかわかるかしら?」
「つったってあたしは十字教関係が中心だったから神の力に干渉とか専門外だからな。・・・以前かかわった天草十字教とかならそっちの方面もしってるかもしれねーが、さすがにこっちには来てねーみたいだす」
と、言いつつも一応考えて頭をひねってくれるこいつが大好きだ。
朱乃さんもそう思ったのか、なんか後ろから抱き付いてくる。
「昔から、なんだかんだ言って面倒を見てくれるのが小雪のいいところね」
「わっ! バカ、抱き付くな!!」
小雪が顔を真っ赤にしながらあわてるが、しかし振り払ったりはしない。
そして俺は見逃さない。微妙にあわて顔がうれしそうなのを。
「最近縁遠かった幼馴染のスキンシップ。・・・イイネ!」
「てめー何萌えてやがる!?」
「あらあら。兵夜くんは女の子同士の絡みが好きなのかしら? だったらもうちょっとこう・・・」
「って朱乃も胸をもむな!!」
ああ、朱乃さんはドSなだけあってあおり方がうまい!!
喜ばしいことだし、動画にとって後でイッセーや久遠にも見せてやろうか。
「いい・・・加減に・・・しろファァアアアック!!!」
って待て待て待て待てなんだそのメリケンサックは!?
「2人そろて歯ーくいしばれ!!!」
ぎゃぁあああああっ!!!
佑斗Side
なぜか朱乃さんと宮白くんにたんこぶができていたけど、問題はそこではない。
・・・ちょっと、これはマズイことになってるね。
来るサイラオーグ・バアル氏とのレーティングゲーム前のミーティングなどをしてから、アザゼル先生とロスヴァイセさんが退席した後、フェニックス夫人がこちらに連絡を取ってきた。
フェニックスの涙の需要増加でお忙しいなか、あえて連絡してきた理由は結構明白だ。
イッセーくんにレイヴェルさんを進めているんだろう。
レイヴェルさんがイッセーくんに好意を持っているのは誰が見ても明白だ。同年代なせいか小猫ちゃんが喧嘩腰になってたりしているぐらいだ。
今も結構露骨にイッセーくんに対してレイヴェルさんの眷属入りをアピールしている。
だけど、なぜかイッセーくんはそのあたりがよくわかっていないようだ。
・・・前から思っていたけど、これはさすがに鈍感じゃないだろうか?
レイヴェルさんだけじゃない。部長やアーシアさん、朱乃さんや小猫ちゃん、ゼノヴィアのアプローチに対して、イッセー君は反応が鈍い時がある。
普通はキスまでされれば好意を自覚するものだろうに、なぜかイッセーくんはそこに考えが至っていない。
いつもこの調子だと、いい加減女性たちの方もイライラしてきてもおかしくないだろうに。
実際、部長が腹を立ててしまったのかそのまま出ていこうとしていた。
「・・・部長? どうしたんですかいきなり」
イッセーくんが引き止めるけど、やっぱり自分が原因の一つであることには至っていないらしい。
「イッセー、貴方にとって、私は―」
―ばいーん、ぶるるん、ボインボイン!
部長の言葉を遮るように、空気を台無しにする音声が響き渡った。
この歌詞はおっぱいドラゴンの歌の第三番!? 寄りにもよってなんでこれが!?
と、思ったら宮白くんが携帯を取り出して耳に当てる。
宮白くん!? それはさすがにどうかと思う!!
と、宮白くんは携帯を切ると、イッセーくんの方を向いた。
「・・・イッセー。久遠がお前に大至急話したいことがあるそうだ。悪いが急いで行ってくれ」
「え? い、今から?」
イッセーくんは部長のほうを気にするが、そこに宮白くんが続けてとんでもないことを言ってきた。
「こんどエロゲーのモザイク除去してやるから」
「・・・行ってきます!」
さすが宮白くん! イッセーくんの操縦方法をよくわかっている!!
イッセーくんは目の色を変えて部屋を飛び出そうとする。
だけど、このタイミングではそれはさすがにマズイよイッセーくん。
ほら、リアス部長が怒って―
「・・・い―」
と、その口を宮白くんが強引にふさいだ。
そのままイッセーくんはそとに行ってしまい、少しの間様子を見てから、宮白くんは部長を解放する。
「・・・兵夜!! 今、私は大切な話をしようとしているのよ!? 後にして頂戴!!」
・・・かなり怒っておられる部長は、抑えきれないのか消滅のオーラすら見え隠れしている。
確かにこれはないだろう。
今部長はかなり大事な話をしようとしていたところだ。
ついでに言えば、イッセーくんの鈍感さも目に余る。
宮白くんはイッセーくんに甘いし優遇はするけど、あまりに目に余るようならしっかりと引き締めることも誘導することもできる人物だったはずだ。
それがこれではさすがにあれだろう。
真面目な話、ほかのみんなもさすがに視線が鋭い。
「あ~・・・。その辺についてはすいません。まさかこんな早く導火線に火がつくとは思わなかったもので」
そういうと、宮白くんは深々と頭を下げた。
角度は90度以上。心から謝っていることがわかる見事なお辞儀だ。
「ただ、そのうえでお願いします。・・・今のイッセーに恋愛方面で期待するのはやめてください」
そのあと、宮白くんは依然アザゼル先生やグレモリー卿たちに説明した内容を言ってくれた。
・・・女性恐怖症、か。
確かに、信頼していた人物に裏切られればそのショックは計り知れないだろう。僕も似たような経験はあるからよくわかる。
僕の場合はそれがエクスカリバーに対する憎しみへと変わったけど、イッセーくんの場合は潜在的な女性への恐怖に変わったのか。
・・・それでアレというのもあれだけど。宮白くんがイッセーくん関係で見当違いの発想をするとも思えない。
あと、宮白くんのイッセーくんの恋愛方面の反応のズレのさらに詳細は理由は結構的を射ていると思う。
「・・・正直ほっといても問題ないとたかをくくっていてすいません。部長たちのほうが限界に来ることを失念していました」
宮白くんも苦悶の表情で謝罪する。
部長たちも顔が青い。
当然だろう。自分たちが愛する男が、下手をすれば自分たちを怖がっているのかもしれないんだから。
特に、レイナーレのことについて知っているメンバーの表情は硬かった。
「たぶん、あいつ自身自覚はないと思います。だから下手に刺激せずにゆっくり愛されることでいやしていこうと思ってたんですが、いささか見通しが甘かったです。本当にすいません」
「・・・いいえ。主でありながら下僕の心の傷に気づきもしなかった私が愚かだわ」
力なく座り込みながら、部長は両手で顔を覆った。
「イッセーのことを心から愛しているのに、その心の傷を気づきもしなかっただなんて。・・・これで愛してるだなんて、笑わせるわね」
乾いた笑いを浮かべながら、部長はそのままうなだれる。
宮白くんも壁にもたれかかりながら、力なく天井の方を向いた。
「・・・正直最近ひどかったんで、専門家に予約を入れました。レーティングゲームが終わった後ぐらいになるはずです」
相変わらず動きが速い。
だけど、彼の表情は暗かった。
「本音を言うと憂鬱です。気づいていない相手の傷をえぐろうっていうんですから」
・・・うかつだった。
イッセーくんの強さに目がくらみ、彼の痛みを理解してやれなかった。
もしレイナーレが生き残っていれば、これをついて報復してくるかもしれない。
本当に、運がよかったとしか言いようがない。
「・・・せめて、回復するまで暴発しなければいいんだがな」
そう、ぽつりとつぶやく宮白くんの言葉が妙に印象的だった。
関係が改善した朱乃さんと小雪の様子を見せてから、不穏な展開になってきました。
・・・正直、ここで兵夜の恋愛経験不足が裏目に出ました。まさか一年足らずで我慢の限界に達するとは思っても見なかったのです。
そして同時に危険なフラグが。さて、イッセーは大丈夫か!?