ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
まずは家に戻って準備を整えてから、俺はイッセーの言っていた教会の情報を入手する。
どうやらあの協会はだいぶ前に廃棄されていたものらしい。と、言うことは勝手に使われているということだ。
次に、使い魔を放って様子を確認。
どうやら地下室を造っていたらしく、そこまで様子を見ることはできなかった。
だが、人数は十分に把握できた。
無駄に数がいやがるな。これじゃあ強行突破は不可能か。
数が少ないのなら、暗示を使って連れだすという方法もあったが、この人数だと俺の技量じゃ無理がある。
やはり礼装がいる。となるとアレを持ってくるのが一番妥当か・・・。
と、そんなことを考えていると敵側に動きがあった。
はぐれ悪魔祓いが何人か外出するようだ。
これは本気でチャンスだ。
俺は暗示用の魔術礼装を取り出すと、急いでアパートを出る。
「・・・問題は、実行した後どうするかって言うことだよなぁ」
自分で言うのもなんだが、俺は時々致命的なポカをする癖がある。
前世で死んだのも、うっかり信号を確認するのを忘れた挙句、寝るときに使っていた耳栓をつけたまま遅刻して学校に向かってしまい、信号無視をする車の音がさっぱり聞こえていなかったからだ。
それクラスのうっかりミスは、この人生では一つある。
イッセーと友達になってから一年後ぐらいに、あいつに魔術を使っているところを見られてしまった。
・・・あれは恥ずかしい。
学校の掃除をしているときに、誤って壺を倒してしまい割ってしまったのだ。
あわてた俺は修復の魔術を使って治したのだが、それをイッセーに見られてしまった。
人は異質なものを嫌う。
それは人間として当然の機能だ。
自分にとってよくわからないものを嫌うのは当然の反応で、それに関して、俺はそれ相応に一家言持っていると言ってもいい。
グレモリー先輩たちを嫌っていない理由は簡単、俺が魔術という異能を持っているからにすぎない。
ましてや、魔術は素質のあるものしか使えない能力。魔術回路という文字通り常人にはない機関を持ってして初めて可能とする。
努力やら何やらで増やすことができないのだ。
人間的な問題なら、精神年齢が高いということだけなので成長に伴い緩和するかもしれない。
だが、こればっかりはどうしようもなかった。
当時イッセーと友情を築いていた俺は、あの時ほど取り乱したことはない。
「あ、後で説明するから誰にも言わないでくれ!」
・・・自分でもどうかしている。
あの時は魔術で記憶を消すという考えが浮かばなかった。
だけど、イッセーはそれを今でもずっと守ってくれている。
小学生ならうっかりしゃべってしまうこともあるかもしれないが、少なくとも、俺が知る限り魔術がらみが漏れたことは一度もない。
それについて、中学に入る前にイッセーに聞いたことがある。
あいつは当たり前のようにこう言い放った。
「だって知られたくないんだろ? 友達なんだから当然じゃねえか」
・・・本気で驚いたよ。
あんな人間離れなことをする俺を、あいつは友達のままぶれることなく思っていてくれた。
それ以来、俺は絶対に守り通すと決めたことがある。
もし、イッセーが命がけで何か行動を起こすとする。一度だけ、どんなことであろうと俺は命がけで協力する。
たとえ、それが覗きなどの犯罪行為だったとしても、俺は魔術を行使してそれを手伝うつもりだ。
正直、イッセーがそのシスターを助けようとするかは分からない。
相当でかい問題だからな。
グレモリー先輩も反対していたし、下手すると国際問題レベルの出来事みたいだしな。
それでも、あいつは助けたいとは思い続けるはずだ。
長年の経験から、あいつの本気はすぐにわかる。
たぶん、数日の内にあいつは強くなるために行動するだろう。
そして本気で決意したら、あいつは一人でも助けにいくはずだ。
・・・その時は、俺も手を貸してやらなければならない。
たぶん、それは命がけだ。
そして、殺す気でいかなければ何とかすることはできないだろう。
魔術にかかわった時から命のやり取りをする可能性は覚悟していたが、まさか死んでからすることになるとは思わなかった。
手持ちの礼装で使えるものは全部出す。
ほとんど記憶を頼りに作った頼りない品だが、ないよりはましなはずだ。
「命がけか。・・・上等だよ」
・・・まさか、昨日の今日ですることになるとは思わなかった。
念には念のために仕掛けておいた盗聴器から、ほおをはたく音が聞こえてくる。
『・・・ダメなものはだめよ。あのシスターの救出は認められないわ』
きっかけは、イッセーの奴がそのシスターと再会したことから始まる。
どうもシスターが逃げ出したらしい。
で、イッセーと出くわしたとか。
イッセーはそのシスター・・・アーシア・アルジェントだっけ? と再会した後どうやらデートしてたらしい。
とっとと事情を聞けよ。そして俺に相談しろよ。
なんでハンバーガーショップでのんきに食べてんだよ!
つかゲーセンで遊ぶな。得意だからって遊ぶな。
と、いうかクレーンゲーム今回不調だな!? 天罰か? あ、神様敵だったな悪魔は。んなもん常時か。
で、その後俺が事情ゆえに残していた傷を、彼女が治したらしい。
・・・そして、彼女の身の上話を聞いたらしい。
親に捨てられ、孤児院で育てられた少女。
ひょんなことから癒しの力に目覚めた少女は、教会で聖女として育てられる。
教会に来る傷を負った人々に、その力を使って癒しを与える日々。
だが、少女に友達ができることはなかった。
まあ、それはそうだろう。
聖女だなんて大層な存在、普通の人は畏怖してしまうのが当然。そんな偉大なお方との友情なんて、恐れ多くて築けるわけがない。
しかも、そこで面倒なことが発生する。
教会に傷ついた悪魔がやってきたのだ。
普通に考えれば、教会の敵である悪魔なんてすぐに逃げるか誰かを呼ぶかが普通だ。
が、ここでアルジェントは治してしまった。
これだけ聞いて、俺は正直どういうことかわからなかった。
魔術に置いて治癒とは、存在を復元させるか自然治癒力を増大させると言った方法をとることが多い。
当然、そんなもの生きている者ならどんな奴にだって効果がある。
だが、教会の連中はおそれおののいた。
聖なる力である治癒の力が、邪悪な悪魔に対して行えるわけがない。
・・・俺はある確信をしたが、ここでは置いておく。
悪魔を治してしまうような力を持つ者を、教会は魔女として排斥した。
面倒ではあるが、まあちょっと前の話と同じだ。
人間は異端を恐れて忌避する傾向にある。
人間が違う人種を差別するように。
子供が自分と違う人をいじめるように、
神に愛された者しか癒すことができないのに、神から見放された悪魔をも癒してしまう異端の力を、彼らは恐れたのだ。
人間と言うのは本当に面倒な生き物だ。
癒してしまったことを咎めるのはまあいいが、癒す力を持ってしまったことは彼女の責任ではないだろうに。
結果、彼女はいやでも堕天使のもとに身を寄せることになった。
イッセーは本気で激怒しただろう。
俺の魔術を全く忌避しなかったあいつのことだ。アルジェントを追い出した連中のことが理解できないに決まっている。
案の定、イッセーはアーシアの友達になると言いだした。
が、ここで事態は一変する。
天野夕麻。イッセーを殺すために告白し、そして殺した堕天使の女。
奴がアーシアを回収するために強襲したのだ。
イッセーは神器を出して抵抗するが、戦闘経験のないイッセーにどうこうできるわけもなく返り討ちにあう。
なんでも、イッセーの神器は『
そんなものをわざわざ殺そうとするなと言いたい。
そして、イッセーの目の前でアルジェントは連れ去られた。
しかも、アルジェントを儀式に利用するという発言をしてまで。
・・・そして、イッセーがオカルト研究部に急いで来てアーシア救出を発言。今に至る。
『イッセー、彼女のことは忘れなさい』
『いやです! 俺は友達を見捨てたりなんてしない!』
イッセーとグレモリー先輩の口論はまだ続いている。
グレモリー先輩。残念ですがイッセーはもう引き下がりません。
こうなったイッセーはテコでも動かない。俺も経験があるから、とてもとてもよくわかる。無理やり暗示で返そうとしたけど、それでも抵抗したから本当に恐れ入る。
ここぞという時の精神力が無駄に高いのだ。
そして、少しした後、グレモリー先輩は突然話を変えた。
『みんな。大事な用が出来たらから、私と朱乃は少し外に行くわ』
オイオイ、話は切り上げてるのかよ。
『待ってください部長! まだ話は―』
『イッセー、一つ言っておくわ。あなたは兵士を弱い駒だと思っているわね』
急に話が変わった?
『それは大きな間違い、あなたの勘違いよ』
確かチェスの駒の話だったな。
俺、チェスは詳しくないけどたしか将棋の歩と同じ立場・・・ああ、そういうこと。
『チェスでは、相手陣地の最奥部へ到達した兵士の駒は、王以外のすべての駒に変化することができる『プロモーション』という特殊な力があるの』
本当に歩と同じだな。いや、いろいろと選べるだけこっちの方がすごいのか?
『イッセー、あなたも私が敵と認めた相手の一番重要な場所に行けば、王以外の駒に変化することができるの。教会のようにね』
と、言うことはその兵士以外の駒には、転生した悪魔を強化する力が含まれているということか?
恐るべし転生悪魔。
そして、もう一つ。
わざわざ具体例に教会を上げるということは―
『あなたはまだ転生して日が浅いから、最強の駒である女王にはなれないでしょう。でも、強く思いを込めればそれ以外の力を得ることができるわ』
あ、さすがにそこまでうまくいかないか。
だが、それなら今のイッセーでも戦いようはあるかもしれない。
問題は、その力の上昇がどこまであるかということか。
『それともう一つあるわ。神器について。神器を使う際、これだけは覚えておいて・・・』
俺は通信を切った。
これ以上は聞かなくても大丈夫だ。
このタイミングで戦闘についての話、どう考えても堕天使戦を視野に入れている。
おそらくだが、グレモリー先輩が出る用事もそれなんだろう。
これ以上は話を聞いている余裕がない。
こんなこともあろうかと用意していた戦闘用礼装、全部引っ張りだす余裕もないし、バレると面倒だから簡単なのだけにしておくか。
後は自己暗示だな。殺すのはさすがに抵抗はあるが、ボコボコにするのは覚悟しておかないと。
Side祐斗
兵藤くんに付いて行く形で、僕と小猫ちゃんは堕天使のアジトである教会へとやってきた。
正直に言うと兵藤君には感謝している。
僕は神父や堕天使を憎悪していると言ってもいい。
そんな相手と出くわして、不利な状況だとしても尻尾を巻いて逃げだすことになったのは我慢ならなかった。
教会に近づくにつれて寒気が走る。
間違いない。この教会に堕天使はいる。
一応見取り図は用意できたが、おそらく聖堂で儀式とやらを行うつもりなのだろう。
堕天使やはぐれ悪魔祓いは神に捨てられたもの。だからこそ、あえて教会で邪悪な儀式を行うことによって、醜い喜びに浸る。
シスターを助けるというのもどうかとは思うが、兵藤くんの話では彼女は放逐されているらしい。
彼女は心中は察することができる。
僕もそうだったからね。
部長が来てくださらなければどうなっていたことか。
神に見捨てられながらも信仰を捨てない彼女には、正直感心している。
兵藤くんが助けたいと思うのもわかる気がするよ。
それに、部長も行動を起こしているみたいだ、なら、部長の剣である僕も動くだけさ。
「それじゃあ行こうか」
僕は剣を持ち、聖堂の前で覚悟を決める。
「おう!」
「・・・了解です」
兵藤くんと小猫ちゃんもうなづいてくれる。
僕たちは聖堂の中に踏み込んだ。
人がいなくなったことはすぐにわかる聖堂。
頭部が破壊された聖人の彫刻。それが電気とろうそくの光に照らされて、不気味は雰囲気を生み出している。
わざわざ一つ残らず破壊しているあたり、悪趣味だね。
そして、聖堂の中には人影があった。
その姿には覚えがある。
兵藤君が依頼で言った家の住人を惨殺し、あとすこしで兵藤君自身を殺すところまで行ったはぐれ悪魔祓い。
「ああ、クソ悪魔と激動の再開。感動的でござんすねぇ」
「フリード!!」
イッセー君が睨むが、あちらも殺気では負けてない。
「いやホント君らレアだよぉ? 俺様チョー強いから再開する悪魔ちゃんなんていないんですよぉ。チミ達にとってすぅんばらしいラッキーなことなんですが、俺様的にはチョー最!悪! ・・・ってことで死んでちょ♪」
先日と同じくふざけた物言いだが、それでいて隙がないから面倒だ。
事実、彼の手には既に拳銃と光を放つ剣が握られている。
天敵ともいえる光の力を持つ以上、油断できるはずがない。
ふざけた態度に見合わず、あの男は相当腕の立つはぐれ悪魔祓いだ。油断をして勝てる相手ではない。
「アーシアはどこだ!! とっとと答えやがれ?」
「や~っぱり、あんの悪魔も治しちゃうクソシスターが目的でござんすか。彼女はー祭壇のー隠し階段を下りた先におりますです~」
兵藤くんの質問に、あっさりと答えてくれる。
もちろん、ただで通してくれるわけがないか。
「セイクリッド・ギア!!」
兵藤くんが神器を発動させ、僕も剣を構える。
そして小猫ちゃんは―
「つぶれて」
長椅子をつかむとフリードに放り投げた!
「おっほー! 野球かいおチビちゃぁん!! ある意味ピッタリでござんすねぇ!!」
フリードはそれをあっさりと両断すると、今度は指を鳴らす。
・・・なるほど。そういうことか。
「本当ならボクチン孤独でさびしいロンリーウルフなんだけどさぁ、お暇しちゃってる人がけっこーいたりすんのよねぇ」
「クククッ! 悪魔が・・・三匹ぃ」
「・・・悪・・・魔」
物陰から、さらに二人のはぐれ悪魔祓いが現れる。
どうやら、彼らの儀式は相当大事なものだということか。
「げ! 他にもいんのかよ」
「・・・面倒」
兵藤くんと小猫ちゃんも警戒するが、ここでのんびりしている時間はない。
なんとしても、フリードたちを片付けないと―
―ダダンダンダダン ダダンダンダダン♪
・・・なんだ? 音楽?
あのふざけた男が用意したものか? いや、フリードも首をかしげてあたりを見回している。
「おんやぁ? ターミでネーターちゃんなミュージックではないですかぁ?」
この男ではない。だとすると・・・
「・・・ヤバい」
兵藤くんが冷や汗を流している。この音楽に心当たりが? いや、確かに音楽自体は有名だけどね。
「・・・人の気配」
小猫ちゃんが、入ってきた聖堂の入り口の方に視線を向ける。
振り返った僕が見たのは、赤茶色の髪をした少年―宮白くんの姿だった。
なんでこんなところに!? 僕達の動きを読まれていたのか!?
不味い!
部長の話では、彼も神器を持った人間だという。
だが、これは悪魔と堕天使の戦いだ。そんなものに巻き込まれてただで済むわけがない!
「宮白くん!! すぐに逃げるんだ!!」
このままだと例のシスターを助けに行くどころじゃなくなる。
どうしてこんな時に!?
しかし、宮白くんはなにも答えず、ブツブツと何かを言っている。
「・・・スト・・・ップ!」
そして・・・
「・・・色んな意味で何やってんだイッセェエエエッ!!」
「フゴッ!」
気がついたら、兵藤くんが殴り飛ばされていた。
なんて動きだ! 動揺していたとはいえ、僕が反応できない速さで移動するだなんて!
兵藤くんからケンカ慣れしていることは聞いていたけど、これは並の悪魔祓いを上回っている!
「いってーな! 何考えてんだよ宮し・・・ろ!」
兵藤くんが文句を言うよりも早く、宮白くんは兵藤くんの胸ぐらをつかみ上げた。
「イッセー? お前なぁ、なんで俺を呼ばなかったんだ? 呼ばなかったんだ? ・・・準備万全にして待ってたのに、なに俺無視して教会ちょっこうしてるんだドアホ!」
「へいボクちん? 大事な大事なぶっ殺タイムの邪魔しないでブチッ!」
割って入ろうとしたフリードだが、それは宮白くんによって妨害される。
―兵藤くんの体で殴り飛ばされた。
「・・・準備万端でカッコつけてまってた俺の身にもなれ!? あやうく不審者として警察に捕まるところだったんだぞこの単細胞ならぬエロ細胞が!」
「ゴ! まっまってブ! 悪かっダ!?」
青筋を浮かべた宮白くんは、そのまま兵藤くんを振り回す。
振り回された兵藤くんは凶器とかし、あっけにとられたはぐれ悪魔祓いを薙ぎ払った。
戦車の小猫ちゃん程じゃないがとんでもない怪力だ。人間のそれとはとても思えないレベルに到達している。
祭壇は壊れるは椅子は砕け散るは、・・・あ、はぐれ悪魔祓いがまた薙ぎ払われた。
とりあえず兵藤くんを離すんだ! 彼のHPはとっくにゼロだよ!?
・・・やがて、落ち着いたのか宮白くんは肩で息をしながら兵藤くんを解放した。
「ぜえぜえ・・・。と、とにかく俺からありがたい言葉を聞かせてやろう」
「は、はい! 何でしょうか宮白さま!」
兵藤くんが直立不動でそれを聞く。既に彼の服はボロボロになっていた。
彼は僕や小猫ちゃんの方にも視線を向けると。腰に手を当てて言い放った。
「ここは俺に任せてとっとと行け。・・・アルジェントとかいうシスターの儀式が終わったら、彼女は死ぬぞ」
・・・なんだって?
「締めあげたら白状した。奴らの目的はアルジェントの持つ
そういうことか!?
人間はもとより、神の加護を受けない悪魔や堕天使をも癒す力。それを持つということは、悪魔や堕天使にとって重要な存在になるということに他ならない。
それを移植することによって自分の地位を高くすることが堕天使の目的!
だけどそれは不味い。
「神器を無理やり引き離されると所有者は死にいたるそうだぜ」
「な・・・っ」
宮白くんが放った言葉に、兵藤くんが絶句する。
当然だ。彼女を使ってよくないことをしようとするところまでは想像していただろうが、まさか自分の陣営にいる少女を殺そうとするだなんて、今まで一般人だった兵藤くんに想像できるわけがない。
「・・・時間がありませんね」
小猫ちゃんの表情も険しくなる。
「そういうことだ。こういうときは途中の障害は適当な誰かに任せて本丸に直行するのが基本だぞ?」
宮白くんはそういうと、懐から伸縮式の棒と・・・引き金のついた弓―クロスボウを取り出した。
よく見れば、彼の動きには隙が見えない。
『あいつの力は借りたいけどさ、さすがに悪魔と堕天使の喧嘩に巻き込むわけにはいかねぇよ』
兵藤くんが教会に向かう時に言っていたことはコレか!
優等生と言うのは仮の姿で、彼は喧嘩や暴力沙汰はもちろんのこと、近隣の不良を締め上げて頂点に立っている存在だと聞いた。
だが、それだけでは説明がつかないほど彼は実力を持っている。これが兵藤くんが信頼する男の実力か。
「適当に足止めしたら引き上げる。奴らの人数は二桁を超えてるんだ。ここで消耗してる余裕はないぞ!!」
周囲のはぐれ悪魔祓いを睨みつけながら、宮白くんは僕達を促す。
だけど、さすがに彼一人を置いていくわけには―
「安心しろよ。・・・『二人』相手に足止めするぐらい簡単だ」
二人? はぐれ悪魔祓いは三人いるはず・・・
そう思うのと、はぐれ悪魔祓いの一人が倒れるのはほぼ同時だった。
「やるじゃねぇか宮白!」
「・・・いつのまに」
兵藤くんが称賛し、小猫ちゃんが驚く。
だが、それ以上にフリードは驚愕していた。
「ちょぉおおおっと!! 平民あいてにハイドボンって、なにやってんのよ御同輩! 同僚のなっさけない姿に、俺様涙がちょちょぎれちゃいますよぉ!?」
口調こそふざけているが、フリードの動揺は深刻だ。
有利な状況に持ちこんだかと思えば、いきなり乱入してきた一般人に、何をしたのかもわからずに一人減らされた。
これは嬉しい誤算だ。
速攻で終わらせれば、彼の身に危険が及ぶこともないはず!
「わかった。ここを任せるよ」
「木場こそ、イッセーのことは任せるぜ」
「わかった。・・・行くよ、二人とも!!」
「・・・お任せしました」
「頼んだぜ宮白! ・・・死ぬんじゃねぇぞ!!」
僕たちは頷きあうと、宮白くんを残して隠し階段を駆け下りていく。
僕達がことを終えるまで、持ちこたえくれ!!
原作キャラを書くのは難しい。
違和感なく書けているでしょうか? アドバイスを頂けると幸いです。