ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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本作転生者。実は敵味方である対比があります。


・・・言われてみると「ああ、なるほど!」と思うかも?


強者と弱者

 光の槍を光魔力で迎撃し相殺する。

 

 ああ、いろいろと状況はあれだが、心から望んでしかし果たせないとわかっていたことがまさか可能になるとは思わなかった。

 

 組織の運営上仕方がなかったとはいえ、下種な手段でイッセーの心を傷つけた堕天使レイナーレ。

 

 この手で奴に報復する機会が、まさかめぐってくるとは思わなかった。

 

 しかもイッセーを思いっきりぶった切ってくれたせいで俺のボルテージは間違いなくMAXだ。

 

 ああ、こいつを殺すなといわれても抑えることなどできないとも!!

 

「全力で殺してやるよ!!」

 

 神格の発動は消耗がひどすぎてできない。加えて言えばダメージも大きく前進が激痛を発している。

 

 だが、激痛は痛覚干渉で無視できる。

 

 ならば問題ない。

 

 持っていた魔術用結晶体をフルに使い、身体能力を限界まで強化。さらに相手が堕天使であることを考慮して、木場に作ってもらった対光力用の聖剣を取り出す。

 

「くたばれビッチが!!」

 

「そうはいかないわね。・・・来たれ(アデアット)!」

 

 レイナーレはパクティオーカードを取り出すと、召喚の口上を述べる。

 

 現れるのはチェーンソーのように刃がついたロングソード。

 

 ちっ! 俺のように複数セットのアーティファクトか!!

 

 レイナーレの剣は俺の魔剣に接触すると、超高速で回転して削り取ろうとする。

 

「このタイマノヤイバの前には、そんな安物通用しないわね」

 

「おいおい家のエースに失礼だなお前」

 

 とはいえぶった切られるのは間違いない。

 

 素早く投げ捨てると、水を生み出して戦闘態勢を取る。

 

 魔術に関しても俺はすでに研鑽を積んで高めている。

 

「―起動(スタート)! 水流よ、(アクアスライス)その刃をもって我が怨敵を両断せよ(キリングタイム、フォーリンエンジェル)!!」

 

 超高圧水流によるウォーターカッター。コレなら切り裂かれても何の問題もない。

 

 加えて光魔力による強化もいれているので攻撃力はさらに上昇。これなら確実にダメージは通る。

 

 だが、そこに割って入るかのようにフィフスがツッコミ、灼熱を纏う拳で迎撃する。纏う拳で迎撃する。

 

 その温度に水流が蒸発し、攻撃力が大幅に減衰した。

 

 チッ! 錬金術で硬化した奴の腕を切るには圧力が足りんか!

 

「レイナーレチェンジだ!! こいつは俺が相手をする」

 

「はいはい。私は小猫ちゃんを倒せばいいわけね」

 

 後ろから追いかけてきたライオンに向き合い、レイナーレが光の槍を発射する。

 

 ええい、邪魔する気かお前!!

 

「お前とも付き合いが長いからな!! いい加減終わらせてもらうぜこれが!!」

 

「うるせえよ白髪ヒトカゲ!! 邪魔するならぶっ殺すぞ!!」

 

 連続で攻撃を叩き込むが、想像以上に相手の動きが速い。

 

 こいつ、前回よりはるかに戦闘能力が上昇してやがる。

 

 あの短期間でどこまで鍛え上げた。こいつは100年かかって十代であろうサイラオーグ・バアルと互角じゃなかったのか!?

 

「禍の団の技術研究は素晴らしいな。俺が100年かけて積み上げた基礎が、一気に花開いてくれるからよぉ!!」

 

 水と炎なんていうお決まりのライバル関係だが、やはりこいつは強い。

 

 文字通り年季が違うのがここまで厄介だとは! シャルバとかとは大違いだ。

 

―アーチャー!! まだ来れないか!?

 

―まだかかりそうね。もともと空間転移は魔術では不得手なジャンルだもの。この場合はアザゼルに頼るしかないわね。

 

 アーチャーからの増援もきついということか。

 

 ええい、神代とはいえ魔術師(メイガス)には限界があるということか!!

 

 と、そのタイミングで部屋の左右が崩壊し、そこから人がなだれ込んでくる。

 

「た、たたた助かったって感じ! 助けてマジで!! 相性悪すぎ!!」

 

「あら、合流しちゃったかしらぁん? グランソードがいないのは残念ねぇん?」

 

 リット・バートリと全裸の女が入ってきた!?

 

「だからお前は全裸になるなと何度も言ってるだろこれが!!」

 

「断る!! どんな時だろうとマジな時は全裸!! それが私たちの心意気よぉん!!」

 

「群体なのかよ!?」

 

 などと相手が漫才をやっている間に、木場たちがこちらに合流してくる。

 

「イッセーさん!? しっかりしてください!!」

 

 アーシアちゃんがあわてて回復する中、俺たちは一度合流して相対する。

 

 そのタイミングで、フィフスはアサシンを呼び出し向かい合った。

 

「やってくれるね、フィフス・エリクシル」

 

 比較的動揺が少ない木場が、聖魔剣を向けてにらみつける。

 

「おいおい。兵藤一誠程度がやられたくらいで動揺しすぎだろお前ら。そこまで頼れるような奴か、こいつ?」

 

 フィフスは余裕の態度を崩さないが、だからといってここで俺たちがビビル通りはない。

 

「イッセーをここまで叩きのめした礼はさせてもらう。・・・覚悟はいいな」

 

「イッセーくんをここまで痛めつけるだなんて・・・ゆるさない」

 

 ゼノヴィアと朱乃さんもかなりマジギレしている。

 

「とはいえアーシアさんが来た以上回復は時間の問題ですし、宮白くんが復活しているのなら頼りがいはあります。なんとかして見せましょう」

 

 ロスヴァイセさんがそういいながらも魔法陣を展開する。

 

 うれしいことを言ってくれるが、とにかくここは持ちこたえなくては。

 

 バアル眷属も気合いを入れているし、ここは踏ん張りどころか。

 

 そう思ったとき、フィフスは何を思ったのか肩を落とした。

 

「・・・前から思ってたんだがお前ら、一つ言っていいか?」

 

 なんだ?

 

 俺がそう思ったとき、フィフスは冷めた目で言い放った。

 

宮白兵夜(そいつ)がなんで強いと思うのかがわからねえんだが。・・・お前らが弱いからなのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その光景を、小雪たちは見ていた。

 

 フィフスはあざけるでもなく純粋な疑問を浮かべ、宮白兵夜をみて言葉を紡ぐ。

 

『今までいろいろ調べてきたが、その男は兵藤一誠に支えられてここまで来たんだろう? ・・・誰がどう見ても弱いじゃねえかこれが』

 

 それは挑発でも何でもなく、彼にとって確固とした事実だった。

 

『いや、そりゃ小雪も一緒か。・・・そしてお前らも程度はともかくある程度は似たようなもんか』

 

 蔑むというより憐みすら感じさせて、フィフスはグレモリー眷属を見る。

 

『兵藤一誠がいるからここまで頑張れた。・・・裏を返せば兵藤一誠がいなけりゃ、お前らそこまで頑張れないってことだからなぁ』

 

 それは、その光景を見ているすべての者に対してはっきりと言い切ったことだ。

 

 グレモリー眷属は、戦闘能力とは関係ない部分で弱い。

 

 フィフス・エリクシルは虚言でも挑発でもなく事実としてそう言い切った。

 

『どういう意味だ?』

 

 木場佑斗が剣を剥けながらそう問いただすが、フィフスは平然とする。

 

『・・・英雄派どもと大して変わらない。あいつらは曹操、お前らは兵藤一誠。・・・自分の心を支えてくれる柱が自分の中にない』

 

 弱い連中の言葉など気にならない。そういわんばかりに、フィフスは気圧されることなく正面から見据える。

 

『どん底に落とされているのに、そこから逃げ出すことも復讐するために鍛えることもしないのが英雄派の曹操に心酔する連中。自分たちが問題を受けているというのに、それを叩き潰す何かを兵藤一誠が来るまで持ちきれなかったのがお前らだ。・・・どいつもこいつも魔法使いがくるのを待ってるシンデレラかこれが』

 

 フィフスはやれやれといわんばかりに首を振ると、鋭い視線を彼らに向ける。

 

『結局お前らは兵藤一誠と大して変わらん。・・・支える杖()がなければ自分の意思を前に進めることもできない腑抜けどもだな』

 

 だから俺はお前らなどに負けはしない。

 

 弱者の分際で強者(自分)の邪魔をするんじゃない。

 

 その意志を込めて、フィフス・エリクシルは敵意を向ける。

 

『人生舐めるんじゃねえぞ馬鹿どもが。お前ら風情が俺やレイナーレの邪魔をするな』

 

 一歩、一歩前に踏み出す。

 

 その強靭な意志を前に、リアスたちは気圧されて一歩後ろに下がってしまう。

 

『かなえたい願いがあるなら、それをかなえるための努力をしろ。理解者がいないのなら、理解してくれそうな連中の元に自分を売り込め。力が足りないなら、他から奪い取ってでも手に入れろ。・・・そして、足がないのなら這いつくばってでも前に進め』

 

 静かに腰を落とし、拳を構える。

 

 その眼は、間違いなく生粋の強者のそれだった。

 

『・・・義足を渡されなければ前に進もうとも思えず、ただベッドの上でむくれてるような軟弱ものが、俺の根源到達の邪魔をするな』

 

 冷徹なまでに、そう言い切った。

 

「んの・・・野郎・・・っ!!」

 

 小雪は歯噛みしながら、しかしどこかで負けを認めている自分を認めていた。

 

 支えになるものがなければ自分たちは立つことができない。

 

 それについて、自分は全く否定ができない。

 

 見れば、ベルとナツミも顔を真っ青にしている。

 

 その気持ちが痛いほどよくわかる。

 

 自分たちは、転生という地獄を経験しているものたちだ。

 

 誰かに救われて光に照らされたから、道を決めることができる。

 

 誰かに救われて肩を貸してもらっているから、前を進むことができる。

 

 だが、フィフス・エリクシルは違う。

 

 ほかのだれもいない状況下で、しかし意に介すことなく生前以上の目標を持った。

 

 誰も理解者がいない状況下で、それを意に介さず目的のために努力した。

 

 一時は不可能だといわれてもなお、あきらめず手に入れるための方法をくみ上げた。

 

 そういう意味では、フィフス・エリクシルは間違いなく自分たちよりはるか上の強者だ。

 

 それを、心のどこかで認めてしまった。

 

『たたきのめされて叩きのめされたままのお前らと一緒にするなよ。少しはそこのサイラオーグ・バアルに敬服したらどうだ?』

 

 そう言い切り、目の前の弱者を屠らんと、フィフスが両足を踏み込む。

 

『・・・さっきから、黙っていれば言ってくれるな』

 

―その機先を制するかのように、兵夜は冷たく言い切った。

 

 その表情は冷静で、まるでさっきまでの言葉を意に介していないようだった。

 

『なるほど。道を照らされなければ進めない俺たちは弱い。・・・そこは認めよう。お前は強いよある意味で』

 

 特に動揺することなく、兵夜はフィフスの言葉を認める。

 

『俺はイッセーがいなければ結局迷走していただろう。そういう意味でいうならば俺は間違いなく弱いんだろうな』

 

 はっきりと、自分がフィフスより弱いと彼は認めた。

 

 そう認め、しかししっかりとフィフス・エリクシルを見据える。

 

『だが、それがどうした?』

 

 一歩、明確に一歩前に踏み出す。

 

『誰かの肩を借りなければ前に進むことができない弱い連中でも、誰かの肩を支え返すことはできる。前を向けない弱い人に、前を向くことを促すことはできる』

 

 静かに、全身から魔力を放つ。

 

『確かにその歩みは何もなくても進める奴より遅いかもしれない。だが、それでも前に進んで歩くことはきっとできる』

 

 全身から光力を放ち、それを形にする。

 

『そうやって肩を借りながら前に進んでいって、そうしてきた結果が人類の歴史っていうものだろう』

 

 二つの力を一つにして、宮白兵夜はフィフス・エリクシルを真正面からにらみつける。

 

 誰の助けを借りなくても、きっと前に進み続けるであろうもの。フィフス・エリクシル。

 

 誰かが照らしてくれなければ、きっと道を踏み外したであろう男。宮白兵夜。

 

『誰にも支えられなくても、何があっても前に出る者の成果でなければ価値がないとでも言うつもりか? 何様のつもりだ貴様』

 

 真逆の者同士が、真正面から対峙した。

 

 真正面から強者(フィフス)を見返し、弱者(兵夜)は堂々と宣言する。

 

『俺も、ナツミも、久遠も、小雪も、ベルも、イッセーたちも、そして残念だが英雄派のそいつらも、弱い奴なりに血反吐はきながら立ち上がって光に向かって前に進んでんだ。・・・上から目線な強者の基準でモノ言ってんじゃねえ!!』

 

 今ここに、弱者の反撃が宣言される。

 

『倒れてるやつに手を差し伸べもしない奴が、自立も促してない奴が偉そうに吠えるなよ!! 一度叩き潰されて弱い奴の気持ちを知るんだな!!』

 

『叩き潰される側がよく吠えた!! やれるもんならやってみな!!』

 

 フィフスが挑発すると同時に、その背後からエドワードンが現れる。

 

 それらの姿を前にしながら、しかし、リアス・グレモリー達は兵夜に続く。

 

『ええ、そのとおりね。・・・かつて私達は弱かったけれど、それでも前に進んで成果を上げてきた』

 

 消滅の魔力をほとばしらせながら、リアスははっきりと宣言する。

 

『たとえ弱弱しくても、私たち自身が前に進んできた事実は変わらない。・・・さあ、私のかわいい下僕たち!! 高みから見下ろすあの男を、引きずり落としてあげなさい!!』

 

 王者の貫禄を見せつけて、リアスはフィフスに向かい合う。

 

 そして、その言葉に皆が一歩を踏み出した。

 

 その姿をみずに理解して、宮白兵夜はボロボロの体で、しかし雄々しくフィフスを見据える。

 

 その姿に、小雪はどこか憧憬を感じていた。

 

 ・・・負けたと思っていた。

 

 フィフスは誰にも何も言わずに前に進んだという事実に、前に進めなかった自分はやはり負けたのだと思ってしまった。

 

 だが、兵夜は決して負けていない。

 

 弱くても、誰かに支えられながらも、それでも前に進んだ成果は否定させないと、正面からその道に立ちふさがったのだ。

 

 なら、自分たちもそれに続かなくてどうするというのだ。

 

「・・・アザゼル!! とにかくあたしらだけでも行けるようにしろ!!」

 

 だから、急いで声を飛ばす。

 

『おいおい。できない事はないかもしれないが、かなり無茶やらかすことになりかねないぜ?』

 

 アザゼルは説得したいのか危険なことを言ってくる。

 

 実際リスクが高すぎるからいまだに増援を送れないのだろう。そうでなければアザゼルは今の兵夜たちに増援を送らないはずがない。

 

 だが、そんなことは知ったことではない。

 

「惚れた男にここまで言わせて、応えないようで女が語れるか!! 今は男女同権なんだから根性だって同程度必要だってあいつに言っておかねーとな!!」

 

「それは実質同意見ですね」

 

 ベルも、拳を鳴らしながらそれに同意する。

 

「兵夜さまの使いとして、ここで主だけに負担をかけさせるわけにもいきません!!」

 

「使い魔として同意だよっと!!」

 

 ナツミも立ち上がると、速やかにベールフェゴルへと変化する。

 

「・・・ある程度できてるならこっちで調整すりゃ何とかなる! とっとと増援をよこしやがれってな!!」

 

「あら、だったら私も行かせてもらうわよ?」

 

 と、後ろからイリナまでもがやってきた。

 

「幼馴染や親友をここまで痛めつけてくれたんだもの。ミカエルさまのAとして、禍の団を成敗しちゃうんだから!」

 

 天使に使い魔に堕天使と、そうそうたる連合軍が形成される。

 

 ああ、こんなところで観戦している場合ではなかった。

 

 そんな決意が分かっているのか、画面の先の兵夜は、神気すらみせて戦意を高める。

 

『そろそろ第二ラウンドだこの野郎。・・・さあ、聖杯戦争を始めよう!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side Out

 




意図して書いたわけではないのですが、転生者の敵味方はある対比で出来ております。


味方・・・どっちかというと善だし人間性もあるが、それゆえに転生という孤独に耐えられるず支えを必要とする。

敵・・・どっちかといわなくても悪で人間的にも問題児だが、ゆえに支えがなくても欲求のままに我が道をいく。


本当に意図して書いたわけではないので、自分でも気づいたときはちょっと驚きました。



本当は別に出すつもりも毛頭なかったのですが、D×Dの作品を開拓していったときに、自力で立ち上がれないものを「人生を生きてない」と非難するイッセー改悪SSをみて、ちょっとイラって来たので対比とすることにしました。

1人では立ち上がることのできないものはたくさんいるでしょう。この作品の兵夜たちもその一人です。

だが、他力でようやく立ち上がって前に進める奴は前に進んじゃいけないのか? そのまま倒れ伏してなければいけないのか? 自分が前に進めるからってそこまで言う権利があるのか?

なにより兵藤一誠はそんなことを言う男ではないだろうという想いが、アンチテーゼとしてこの内容を盛り込むことを押さえさせませんでした。

弱いやつでも、支えられながらでも、前に進んで作り上げた結果は誇れるし、罵倒する権利なんて誰にもない。強者の基準で物事を押し付けていいわけがない。

ケイオスワールドはそのスタンスで通し続けることを誓います。










全く別の話だが、こういう時久遠が非常に絡ませずらい。

無理して眷属悪魔にすることなかっただろうか? いや、どっちに転んでも応援にはいくから無理か。ヘルキャット編も大変なことになるし。作品を作るのは難しい。

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