ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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たぶん、D×D二次創作でもそうはない展開です。











・・・一話丸ごとサイラオーグ編!!


獅子王VS錬金術師

Other Side

 

 

 この超常の技術が乱れ飛ぶ戦いの中で、自分たちの戦闘が一番地味だと、サイラオーグはよく理解していた。

 

 自分は黄金に輝く獅子を模した鎧をまとっているし、敵も流に連なる炎をまとっているが、その動きはいささか激しさに劣る。

 

 相手の隙を伺い、陽動のための偽りの隙を作り、隙ができたのならば速やかに封じる。

 

 そしてそれらの合間に散発的に拳が飛び、まともに喰らえば即死レベルの一撃を素早くさばく。

 

 人間的には認めるわけにはいかないが、しかしその強さには一定の敬意を向けざるを得ない。フィフス・エリクシルはある意味で自分好みの強者だ。

 

 堕天使としての力量はそう高くはないだろう。魔術師としても戦闘能力は決して高い部類ではない。フィフス・エリクシルの先天的才能は戦闘職としては問題のあるレベルだった。

 

 その状態から、ここまでの領域へと高めた努力と研鑽と研究は、今の冥界に足りないものだ。

 

 その拳は迷いないまっすぐな思いがあるものだけが放つことのできるものであり、その眼は何物にも負けないとする強固な意志がある。

 

 強さとは、様々な意味があるものだ。そして、彼は一つの意味では間違いなく強者だ。

 

 彼の理論で強さを図るものから見れば、フィフス・エリクシルはこの場の誰よりも強いのだろう。それをサイラオーグは素直に認めた。

 

 例え生まれが劣悪であろうとも、強い夢を持ち絶え間ぬ研鑽をつんで結果を出してその道を進んでいく。

 

 ああ、間違いなくこの男は強い男だ。

 

 だが、それは自分の求める強さとは違う。

 

 彼の強さは蹴落とす強さだ。

 

 すり寄ってくる連中から逆にすい尽くし、お互いに利用し合って必要とあらば切り捨てる。孤独なただ一人の求道に過ぎない。

 

 サイラオーグが求める未来は、結果を出せばだれもが認められる社会。それは評価をされずに苦しむものたちへの救いの手でもある。

 

 彼は救いの手など伸ばさない。倒れて立ち上がらないのなら、それまでだと見切りをつけるだけだ。

 

 似ているようで全く違う。見るべき向きが相反している。

 

 ゆえに・・・

 

「俺たちは、お前のその求道を破壊する!!」

 

「ほざくな脳筋!!」

 

 正面から拳と拳がぶつかり合う。

 

 本来なら、出力でなら上回っているだろう。

 

 だが、それをどうにかしてこその真の強者。

 

 フィフス・エリクシルの出力は寄り強大に高まっていた。

 

 たとえ万全の状態だとしても、今のフィフスを突破するのは困難だろう。

 

「この空間なら俺は文字通り桁が違う!! 奥の手を切るタイミングを間違えた自分を恨みやがれぇ!!」

 

 灼熱をまとった拳と打ち合いながら、サイラオーグは少しずつ押され始めていた。

 

 普通、物事には相性というものが存在する。

 

 ライオンとシャチのどっちが強いかなどという質問は的外れだ。そもそも同じ土俵に立つことが不可能なのだから、土俵に立った者が勝つだろう。

 

 ホームかアウェイか。リーチがあっているか。属性があっているか。物事はそんなことがよくあるものだ。

 

 フィフス・エリクシルはそれをよく知っている。

 

 フィフス・エリクシルは火を力に変える。

 

 そして今この戦場は文字通り火の海である。

 

 ・・・間違いなく、今この場において最も力を発揮できるのはこの場においてフィフス・エリクシルだった。

 

 常時力を供給することができるから最大出力を維持することができる。これだけなら外から無尽蔵に魔力を供給できる兵夜も負けてはいないが、いかんせん本体の出力において開きがある。この状況下なら兵夜は間違いなくこの火を何とかすることを考えるだろう。つまり正面から勝負していいような相手ではない。

 

 加えて言えば、サイラオーグは文字通り瀕死の状態。

 

 相手が圧倒的に有利な状態で、相手の方が技量が上で、しかもこちらは瀕死。

 

 誰がどう考えても負け戦だ。

 

「・・・だが!!」

 

 ここで負けるわけにはいかない。

 

 今目の前にいるのは、正真正銘冥界の脅威だ。

 

 それも、目的のために必要だからつぶすのではなく、目的のために必要な行動の都合上やらざるを得ないから行っているような類である。

 

 そのようなものたちに好きにさせるわけにはいかない。

 

「・・・そろそろ終われ!!」

 

 フィフスがガ・ボルグを呼び出し、一気に踏み込む。

 

 近距離からの一撃で完膚なきまでに止めを刺すつもりだった。

 

 だが、その瞬間こそ好機だった。

 

「その瞬間を―」

 

 フィフス・エリクシルの戦闘能力はある程度知れ渡っている。

 

 策略の成果とはいえ魔王二人に大天使1人を殺しかけた男だ。当然のごとく上は警戒しているし、彼の戦闘データは当然調べることができる。

 

 この男の切り札は間違いなくガ・ボルグであり、当然勝負所でそれを使う確率は高い。

 

 一度拳を合わせた時点で、この男が強者であり油断できない男であることなどわかり切っていた。

 

 ゆえに、そのタイミングは完全に把握している。

 

「―待っていた!!」

 

 完全にタイミングがあっていた。

 

 直撃する瞬間に真横から当てることができたのは僥倖だった。

 

 これ以上ないタイミングの一撃は、魔槍を一撃でたたき折る。

 

「・・・マジか」

 

 フィフスの目が大きく見開かれる。

 

 その攻撃が場の流れを大きく傾けたと判断し、サイラオーグは一歩前に踏み出し―

 

「・・・じゃあもう一本だ」

 

 ・・・フィフスが呼び出したガ・ボルグによるカウンターを喰らった。

 

「な、に・・・っ!」

 

 その破壊力の前に後ろに弾き飛ばされながら、サイラオーグはみた。

 

 フィフスが生み出す針金の腕すべてに、ガ・ボルグが握られているのを。

 

「まさかマジモンだとでも思ったか? ・・・全部キャスター製のフェイクだよ!! マジもんにもケンカ売れる出力だがなぁ!!」

 

 全身から炎をまき散らしながら、フィフスは一歩前を踏み出す。

 

「こっちもいろいろと研究してるんだよ。わかったら倒れ伏せ・・・弱者!!」

 

 一瞬で間合いを詰められ、そしてダメージで反撃ができない。

 

 この瞬間、サイラオーグは死を覚悟した。

 

「ただではやられん!!」

 

 例え心臓を貫かれようと、絶命するその瞬間に一撃を叩き込む覚悟も決める。

 

 そして一瞬で迫りくる槍がその体に触れた瞬間。

 

「・・・は?」

 

 槍は一切真価を発揮することなく、サイラオーグのカウンターだけが明確な一撃となってフィフスを弾き飛ばした。

 

 見れば、槍には見覚えのある文様が浮かび、その力が封印されている。

 

「なん・・・だと?」

 

 よろよろと起き上がりながら、フィフスが茫然とガ・ボルグを見る。

 

 そしてその眼前に立ちはだかる影があった。

 

「サイラオーグ様を倒そうなど、我らが見逃すと思ったか?」

 

「お前は、サイラオーグの・・・っ!?」

 

 ミスティータ・サブノックが、ふらつきながらもフィフスをにらみつけていた。

 

「他者封印系の神器か・・・っ! だがその程度で―」

 

 フィフスは素早くガ・ボルグによる戦闘をあきらめ、即座に近接格闘に映ろうとする。

 

 その全身に、高密度の重力が襲い掛かる

 

「いまだ!!」

 

 リーバン・クロセルの重力攻撃がフィフスの足を止め、そこに高速で騎兵槍がぶつかる。

 

「サイラオーグさまにこれ以上の手出しは許さん!!」

 

「舐めるな!!」

 

 ベルーガ・フールカスの一撃を、フィフスは白羽取りでかろうじて受け止める。

 

 だがその左右に、ガンドマ・バラムのと龍と書いたラードラ・ブネの巨躯が並ぶ。

 

「むぅん!!」

 

「つぶれるがいい!!」

 

 フィフスは針金の腕で受け止めようとするが、槍を受け止めている体勢では抑えきれず弾き飛ばされる。

 

 さらに、全方位に穴が開いたかと思うと大量の魔法による攻撃が襲い掛かった。

 

「どいつも・・・こいつもっ!!」

 

 それらすべてを振り払ったフィフスは、しかしその眼前にサイラオーグの姿を見て動きを一瞬止める。

 

 激戦で全身ズタボロで、そして眷属たちも無傷なものがいないどころか、全員が重傷を負っているといっていい。

 

 だが、その目は誰もが勝利を信じて疑わない。

 

 それだけの気迫を、サイラオーグが放っているからだ。

 

「この戦い・・・」

 

 その時、その光景を見ていた誰もが確信していた。

 

「俺たちの・・・」

 

 この一撃が直撃すれば、例え無限であろうと揺らぐと。

 

「・・・勝ちだ!!」

 

 目にもとまらぬ速さで、サイラオーグの拳が放たれる。

 

「・・・舐めるな!!」

 

 そしてそれより一瞬早く、フィフスの頭突きが放たれた。

 

 最高速度に乗るそのわずかなスキを突いて放たれた頭突きが、サイラオーグの拳を弾き飛ばす。

 

 さらに、新たに魔槍が呼び出され、今度こそフィフスのすべての腕に握られる。

 

「残念だった―」

 

「―いったはずだ」

 

 勝機を確信したフィフスはしかし、サイラオーグのその言葉に初めて気づく。

 

「この戦いは―」

 

 サイラオーグは、獅子の鎧をまとっていなかった。

 

「―()()()()()()だと!!」

 

 直後、莫大なオーラを察知した。

 

「―上か!?」

 

 かろうじて真上を見上げるが、そのタイミングは一歩遅かった。

 

「禁手化《バランス・ブレイカー》―」

 

 その眼前には、巨大な獅子を模した巨大すぎる戦斧が浮かんでいた。

 

 しかも、その戦斧は周囲全ての力を吸収しているのが把握できた。

 

 赤龍帝が放った龍のオーラも、エルトリアがばらまいた魔力も、宮白兵夜の神格の波動も、そしてもちろん自分がまき散らした灼熱の炎の力すら。

 

 その光景を見て、フィフスは一つのことを想いだした。

 

 マキリの家系は、吸収の属性を持ち、使い魔を操ることに長けた魔術師の家系だと。

 

「スパロ・・・ヴァプアルぅうううう!!」

 

 条件反射で魔槍全てを投げつけたフィフスの判断は最善だっただろう。

 

 だが、それでも足りない。

 

 なぜなら、獅子王の戦斧とは飛び道具に対する加護を持つ斧。

 

 その禁手が、遠距離攻撃でどうにかできるわけがないのだから。

 

「|獅子の大王が放つ覇の一閃《レグルス・ネメア・ブレイクダウン・デットエンド》!!」

 

 文字通り覇を名乗るにふさわしい威力の一撃が、フィフスを一撃で叩きのめした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side Out

 

 




事実上の章のラストバトルを、主人公に一切かかわらせない作品なんてそうはないだろうと自分でも思います。

全然出せなかったので、ここぞとばかりにサイラオーグ眷属総力戦。フィフスがどんどん制御しきれない大物になっていく。

ガ・ボルグについての設定はかなり前から決定していました。いつD×Dの原作に出てきてもいいように最初からそういうことにするつもりではありましたが、以前ほかのSSの感想でついツッコミついでにばらしたんでいつか公表するつもりでした。


スパロの獅子王禁手についても、彼女の戦力的なポイントを考慮するために用意しました。ちなみに、単純火力なら現時点の神滅具の禁手を比較してもぶっちぎりトップ。

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