ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
Other Side
超高速で翻弄しようとしても、追いつかない。
ビルの合間を高速で欠けながら、久遠は曹操と激突を繰り返していた。
曹操のこの能力を相手にして、まともに戦えるのは自分かオーフィスぐらいだ。そしてオーフィスはソーナたちを守る必要があるので自分しか戦うことはできない。
勝ち目があるなんて思えない。間違いなく曹操はそれだけの強敵だ。
だが、それでも自分が何とかしなければならない。
せめてアーチャーが来るまで、その一心で、久遠は曹操を引き離していた。
強制的な空間転移が厄介だが、幸いこっちの方が瞬間的な速度では早い。一回か二回発動されたが、そのおかげで大体の感覚はつかめた。
ゆえに勘でそれらをかわして戦闘を行うが、それゆえに苦戦は免れない。
「いいね! 正直シトリー眷属どころか、若手悪魔で今の俺とここまで戦えるのはキミぐらいしかいないだろう!!」
歓喜の表情を浮かべながら、曹操は久遠の攻撃をすべてさばいていく。
「この力を前に活動できるのは、その力を吸収するする龍喰らいに守られる君だけだ! あのヴァーリですらろくに動けないのがその証拠だ!!」
かすり傷程度は作れるが、致命的な部分には一切当たらない。
むしろかすり傷を受け入れているからこそ致命的な部分の防御が間に合っており、そのせいで一手入れることができなかった。
一発でも当たれば、自分の技量なら曹操を倒すことはできる。
だが、自分の場合は当てるプロセスを組まねばならない。
その事実が悔しくて、目の前がにじんでくる。
自分はいつか置いてけぼりになる。そんなことは最初からわかっていた。
生前の技量を生かして駆け上がっている自分は、生前の身体能力を取り戻しようがないがゆえに限界がわかり切っている。
見えているからこそそこから上るのがさらにキツイ。下手に強大な実力を前世で持っているからこそ、そこから上に行くのは匙たちよりはるかに苦労するのだ。
魔法世界でも強大すぎて勝てる気がしない相手はゴロゴロいた。ジャック・ラカンやナギ・スプリングフィールドたちを相手にすれば、自分は勝ちを完全に投げ捨てなければ戦闘と呼べるものを行うことはできないだろう。実際そうだった。そしてそういうのは相手が胸を貸してくれるから成立するものであり、そうでなければ相手にしてもらえなかっただろう。
そういう領域にいるのが曹操だ。真正面から勝ちに行こうなど気が触れている。
「本当、嫌になるよねー」
地獄に落ちたような心境だったからこそ、彼女に忠誠を誓った。
そして地獄に落ちたような心境だったがゆえに、彼女の力になることができない。
そんなことを考えている場合ではないが、そんなことを考えてしまう場合だった。
すでに攻撃は見切られ始め、七宝によるカウンターまで入ってくる。
間違いなく、自分はそろそろ劣勢に追い込まれていた。
それを自覚した瞬間、七宝の一つがビルに紛れて接近する。
能力は女性封じ。自分の技量なら防げるが、それでも一瞬のスキが生じる。
だから最短距離でそこから離れ―
「そろそろ終わりだ」
突如現れた七宝の一つが脇腹にめり込んだ。
「・・・っ!」
驚くことは何もない。
空間転移能力は自分自身や七宝にも有効だっただけのこと。今の今まで伏せ札にして不意をついただけだ。
そのままぐらついたところに一斉に襲い掛かる攻撃を、何とか無理やり後退して距離を取る。
だが、今の一撃は非常に危険だ。
おそらく内臓にもダメージが入っている。長時間の戦闘は難しいだろう。
時間稼ぎをしなければならないというタイミングでこの失態。もはや情けなさ過ぎて涙を本当に流してしまう。
「ごめんなさい、会長ー」
このまま負けが確定するのを確信して―
『久遠。三時の方向の30°下に三秒後に飛びなさい』
・・・主の言葉に条件反射で反応した。
同時に、ミサイルがどこからか発射されて爆発する。
「遠隔操作なら動かせるということか! 考えたな!!」
曹操が感嘆する中、久遠は瞬動で後退する。
次の瞬間、横から引っ張りこまれて建物の中に引きずり込まれた。
抵抗はしない。相手がわかっているから必要なことだと確信した。
だが、まさか彼がこのタイミングで動くとは思わなかった。
「兵夜くんー!? どうしてー!?」
「ちょっとオーフィスの力を匙にバイパスさせた。・・・ああ、戦闘する余裕なんてないから戦力には入れるな」
冷や汗と脂汗を流しっぱなしの真っ青な表情で、しかし兵夜は不敵な笑みを浮かべていた。
「・・・勝ちに行くぞ、久遠」
そういいながら視線を下に向ける兵夜の視線を追って、彼が何をたくらんでいるのかを理解した。
無茶苦茶な方法以外の何物でもないが、確かにこの方法なら初見殺しを早々に叩き込める。
あの手のタイプにとって有効な作戦だ。確かに決まれば有効だろう。
だが、それが自分で大丈夫なのだろうか不安になる。
「私じゃ・・・」
『久遠、貴女が最近悩んでいるのはよくわかっています』
弱音を主の声が遮った。
『だから、あなたに一つ命令しましょう』
まるでリアス・グレモリーのように慈しみの感情を乗せた、主の声が久遠の耳に届く。
『過去の実力など考えず、常に私の誇り高き刃として磨き続けなさい。私も宮白くんも方法を考え続けてあげますから、とにかくものにすることだけ考えなさい』
その声が、久遠の悩みを打ち砕いた。
「そういうことだ。・・・愛する女の力になる努力ぐらい、当たり前のことだろう?」
真っ青な顔を無理やり赤くしながら、兵夜が魔法陣を完成させる。
まともに見たことなど一度だけだろうに、よく覚えていたものだと感心してしまった。
「あっちゃー。主と愛人にそんなこと言われたら、頑張らないとだめだよねー」
不安は消えない。だが悩みは消えた。
過去の力に限界があるのなら、新しい力を手にすればいいだけ。
なるほど真理だ。目が覚めた。
だから―
「・・・力と一緒に、勇気も頂戴ー?」
「かしこまりました、お嬢様」
この口づけが、再起の証だ。
Side Out
煙を振り払った曹操に、久遠が再び切りかかる。
冗談抜きでここまで来るのが無理難題だったので、俺は手を貸す方法が全く存在しない。っていうか今動けるのが奇跡に近い。
だが、もう心配はしていない。
俺の女に勝ちの目上げたんだ。あとはもう完全にまかせるだけさ。
「じゃあ反撃するよー!!」
感卦法を発動させた久遠が、真正面から切りかかる。
もちろん曹操はそれを受け止めたうえで七宝を前後左右から襲い掛からせる。
だが、それはもう切り札たりえないことを教えてやれ。
「
懐からカードを取り出すと同時に桜花が叫ぶ。
そのカードに書かれる絵柄は、今までの物とは違うものだ。
「・・・パクティオーカードが、別物だと!?」
曹操がその意味を理解すると同時に、曹操自身を浮かばせる以外の七宝に、六つの鳥が激突する。
それは魔術で動く鋼の鳥。
「踊れ、シンソクノサンバ、マフウジノサンバ」
それぞれ緑色と水色で彩られた魔鳥が、七宝と空中で火花を散らしてぶつかり合う。
その激突は拮抗していたが、やがて魔鳥が上回っていく。
「自立戦闘が可能ということか! 確かに操作する手間がある以上こっちが不利か!!」
命令すればオートで動いてくれる魔鳥の方が、動かさなければならない七宝より扱いやすさでは上回る。
いずれは曹操も使いこなしていくのだろうが、奴はまだとこまで言っていない。
そして、あれの能力はそれだけじゃない。
「じゃあ、テンポあげるよー!」
次の瞬間、久遠と同時に緑色の魔鳥が瞬動で回り込んだ。
曹操は七宝を転移させてそれを阻止しようとするが、七宝の一つに水色の魔鳥がまとわりつく。
次の瞬間、七宝はその力を失って一気に動きが鈍くなった。
「高速移動と能力封印!? 六つで一つのアーティファクトではなく、二種類のアーティファクトなのか!?」
「そういうことだよー!!」
全身を傷だらけになりながら、曹操はその種を理解して驚愕する。
それこそがその魔鳥の根本。
シンソクノサンバは瞬動による超高速移動を可能とする。そしてマフウジノサンバはとっつ構えた相手の能力を封印する。
どちらも出力は高くないが、しかし一瞬の隙を作るには十分すぎる。
そしてそれを突ける久遠にとって、十分すぎる能力だ。
「しかも俺の七宝を見切ったのか!? 今までの戦闘で全て把握していたとは恐れ入る!!」
「見分けがつかなくても一度使ったらあとは覚えるだけでいいから楽だよねー!!」
そのまま超高速で切り結ぶ久遠と曹操は、そのままビルの群れを駆け巡る。
「ならこれだ!!」
周囲のビルを吹き飛ばしながら、七宝の一つが久遠に遅いかかる。
同時に魔鳥の攻撃を無視して、残りの七宝が久遠の動きを封じる。
「まだまだー!!」
マフウジノサンバが全部一斉にとびかかり、その七宝を封印する。
そしてそのタイミングを好機とみて、久遠が瞬動で一気に迫り。
「いや、俺の勝ちだ」
久遠の進行方向が上にそれた。
見れば、足場にしていた七宝が曹操の前に移動していた。
あの七宝、相手も浮かすことができたのか!?
「これで―」
一瞬のスキを突いて七宝がとびかかり、桜花を取り囲む。
魔鳥はとびかかろうとするが、間に合わない。
「―終わりだ!!」
瞬動する隙すら与えずに一撃を与えず襲い掛かり―
「その瞬間を待っていました」
・・・水で出来た龍が、それをすべてからめとった。
「・・・何ぃ!?」
驚愕する曹操の視線の先、そこに会長がふらつきながらも魔力を展開している。
ああ、気づいてなかったのか曹操。
バイパスは一人しかできないわけじゃないし、俺じゃないなら少しぐらいは戦闘もできる。
そしてお前は誘い込まれてたんだよ、会長の射程範囲内に!!
「・・・ならメドゥーサの眼で―」
「もう遅いよー」
振り返った時には、すべてが決していた。
聖槍を龍喰らいで抑え込んだ久遠が、曹操の顔面に試験管をたたきつけた。
試験管は割れ、その顔面に液体が飛び散る。
・・・ああ、これで勝負は決した。
一瞬だけ間が空き、次の瞬間に曹操はもだえ苦しむ。
やはり、蛇であるメデューサの目にもサマエルは有効だったか。
「・・・弱っちい人間なのを受け入れてるのに、余計な弱点を付け加えるからそういうことになるんだよー」
残酷なまでに冷たい目で見降ろしながら、久遠が勝利宣言をする。
ああ、弱っちい人間であることを自覚して戦うのなら、余計なウィークポイントを付け加えるべきじゃなかった。
弱っちい人間であるがゆえにお前はあらゆる方法で強さを得てきたが、弱っちい人間だから背負っちゃならない欠点まで、つい背負ったのがお前の敗因だ。
おれにも言えることがあるからな。反面教師としてしっかり気を付けておこう。とりあえず仲間と連携して任せれるところは任せていかないとな。
「・・・まだだ!!」
曹操はそれでも立ち上がる。
例のドーピング剤の影響なのだろうが、しかし今のままでは勝ち目がない。
「・・・槍よ、神を射抜く聖なる神槍よ―。我が内に眠る覇王の理想を吸い上げ、祝福と滅びの狭間を抉れ―。汝よ、遺志を語りて、輝きと化せ―!!」
槍が展開して莫大な光を放出する。
あれが噂の
だが久遠は何一つ動じない。いったいどうした!?
「いやさ、覇がついてるってことはその槍に封じられたものを使うわけで、たぶんそれってやりに刺された主の想いとかそんな感じだと思うんだけどねー?」
輝きが収束する中、久遠は龍喰らいすら仕舞い―
「まさか自分に力貸してくれるとか思ってないよねー?」
そのまま曹操に組み付いた。
「・・・・・・は、ははは。これは、参ったな」
曹操は悟った表情で自虐的に笑い、
「・・・浮雲、桜散華」
そのままフランケンシュタイナー擬きで投げ飛ばされ、ビルにたたつけられてそのまま残骸に埋もれていった。
久遠のアーティファクトをさらに追加。外観イメージの刹那も二種類持ってたし、今回のパワーアップとしてあえて出してみました。
自分が特訓しても限界があるなら、開き直って強化武装などで代用すべし。そうやって仲間に追いついてきた兵夜だからこそ何の躊躇もなく言える方法で逆転しました。
実際曹操相手に正面から勝つには、相手にとって想定外の初見殺しが最も効果的。まあいきなり渡されて使いこなせる奴はいないからこの方法は難易度高いのですが、なんだかんだで器用な久遠だからこそ何とか勝てました。もともと相性よかったしね!
・・・え? 曹操倒したからこれで終わりかって? んなわけないじゃん?