ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
目が覚めた俺は、だいたいどういうことかを理解した。
とりあえず起き上ってみる。
周りを確認すれば、再びの駒王学園旧校舎だ。
そういえば家の場所を伝えるのを忘れてたな。
とりあえず、携帯を開いて日時の確認。・・・よし、まだ一日も立ってないな。
傷がないのは全身からの感覚ですぐにわかる。
致命傷からの瞬時の回復。
この時点で、俺になにが起こったのかは確定的だ。
「
全身の魔力の流れを解析する。
・・・思えば、イッセーの体を解析すれば話がややこしくなることもなかったのかもしれない。あの時は本当にうっかりしていたとしか言いようがない。
明らかに、今までとは違う体に作り替わっていた。
朝日も無駄にきついし、とりあえず話を聞くとしよう。
そして、だいたいの状況を理解した俺は立ちあがり―
「まさか悪魔になるなんてな」
―悪魔の翼を広げた。
「おはようございます『部長』」
「あら、もう事情は分かっているようね。兵夜と呼ぶわよ」
あえて部長と呼んだことで、グレモリー先輩こと部長もだいたい状況を把握したようだ。
早朝の部室は朝日が差し込んでいつもと違う雰囲気だった。
そして、そこには俺以外のオカルト研究部員が勢ぞろいしていた。
「宮白!!」
イッセーが半泣きで俺に掴みかかった。
「この野郎! 本気で心配したんだからな!!」
「悪い悪い。まさかあそこで堕天使まで来るとは思わなくて」
「そこについてはごめんなさい。一人取り逃がしたのはこちらの責任だわ」
部長が謝ってくる。
なんでも、堕天使の行動があやしいと判断した部長は、レイナーレ以外の堕天使達をおびき寄せたのだ。
結果、今回の行動は上層部に黙って堕天使が勝手に起こした行動だということが判明した。
そこで部長はその場の堕天使を全滅させ、戦闘中の木場達と合流したらしい。
「部長はその消滅の魔力から、『紅髪の
木場が怖いことを教えてくれた。
なに、その物騒なあだ名は。この人どこまで実戦経験豊富なわけ?
ヤバい、ちょっとなめた口きいてたかも。
「・・・ビビらなくても大丈夫です」
小猫ちゃん、きみ俺の心でも読めるの?
「あらあら、意外と可愛いところもあるのですね」
朱乃さん。恥ずかしいんでやめてください。
いかん! 話を変えないとダメージがひどくなる!
「と、とりあえずありがとうございます部長」
「構わないわ。私も貴重な神器を手に入れたし」
そう言うと、部長は俺の右手に手を伸ばす。
「天使に匹敵する光の力を放つ神器『
兵士一つ?
どういう意味かと思ったが、部長が続けて説明してくれる。
「悪魔の駒は現実のチェスと同じく駒に価値があるの。女王が兵士9、戦車が5、騎士と僧侶が3って言ったぐらいにね」
なるほど。戦車と僧侶って移動パターンが似てる気がするけど、戦車の方が価値が高いのか。
「ちなみに、駒の数も現実と同じで、女王が一つで兵士が8つ、残りが2つずつですわ」
朱乃さんが追加で説明してくれる。
なるほど、適当に名を借りたというわけではなく、本格的に参考にしているのか。
「本来ならイッセーは兵士8の価値を持っていたけど、何かあったのかいざ駒を使う時に七つで済んだの。残った一つの兵士が、あなたを転生させるときに使われたのよ」
以外に低いな俺の価値。
「アーシアの聖母の微笑やあなたの天使の鎧、さらにはイッセーの
赤龍帝の籠手?
見れば、イッセーが無駄に偉そうな表情で得意げになっていた。
「ふっふっふ。俺の神器はなんと! 10秒ごとに自分の力を倍にし続けるという素敵な力を持っているのだ!!」
そりゃすごい。
それってつまり、一分もたてば64倍だろ?
圧倒的に強くなれるじゃないか!
そりゃ7つ分の価値があるわけだ。なぜ最初は8になってたのか気になるが、おかげで助かったんだ、文句は言わない。
「マジかよ! そんなのを弱い神器と勘違いしてたのかあの堕天使! 見る目ないわぁ」
「そうだろそうだろ! ・・・あれ? なんでお前がそこまで知ってんの?」
おっと口が滑った。
ばれないうちに盗聴器を回収しておかないとな。
ってちょっと待て?
アーシア? 確かアルジェントの名前の方だと思うが、彼女悪魔になっちゃったのか!?
よくよく周りを見渡せば、そこにはとてもかわいい金髪美少女の姿が。しかも狗王学園の制服を身にまとっている。
「は、はじめまして。部長さんの僧侶のアーシア・アルジェントと言います」
「あ、これはご丁寧に。兵士になった宮白兵夜だ。日本語上手だな」
やけに日本語が上手な女の子だな。いまどきの外国人ってこんななのか?
「あ、悪魔になると言語が自分の知っている言葉に自動的に翻訳されるんだよ」
・・・木場、そういうことは早く言ってくれ。
むっちゃ恥ずかしい!
「・・・あらあら。イッセーくんに続いて可愛い弟ができたみたいですわ」
本当に恥ずかしい!
もうちょっと、この人ドSか何か!? きっついタイミングでそんなこと言わないで。
「・・・ターゲットにされた宮白先輩」
・・・なんかマジでドS!?
「その辺にしておきなさい。今日は兵夜とアーシアの歓迎会よ。・・・朝食もまだでしょう? いっぱい食べなさい」
部長がそう言うと、いきなりテーブルの上においしそうなケーキが現れた。魔力か何かか!?
これは美味そう!
しかも高そうだ! こんなケーキそうそう食べれないぞ!
「た、たまには皆でこうやって食べるのもいいでしょ? あ、新しい部員も出来たことだし、ケーキを作ってきたから皆で食べましょう」
しかも手作り!? 前世でもそんな経験ないぞ!?
「手作り・・・部長の手作り・・・っ」
「・・・頂きます」
イッセー泣くな!
あと小猫ちゃん? 目がマジだよ? 怖いよ!?
くそ! これは俺も全力で食べないと取り分がなくなる!?
ただでさえ朝飯食ってないんだ! 俺の分はだれにも渡さん!!
その後、俺達オカルト研究部はみんなで仲良く新入部員歓迎会をした。
イッセーがドラゴン波をかましたのも、面白くいていい思い出だ。
・・・それでも、それでも俺は・・・
Sideイッセー
昼休み、俺は宮白に呼び出されて屋上まで来た。
「悪いなイッセー」
自棄に深刻な顔だな? どうしたんだ?
あ、やっぱ悪魔になったこと後悔してるのか?
「・・・覚えてるか? 俺が魔術の話をしたときのこと」
ああ、今でも覚えてる。
まさか小学生で前世なんて考え方を知るなんて思わなかったが、今ではいい思い出だ。
アレがあるから、俺は宮白と本当の意味で友達になれたんだ。
それに、部長と知り合って悪魔になったのはこいつにとってもいいことのはずだ。
さすがに前世のことまで離すことはできないけど、部長なら魔術についても知ってるはず。
こいつもだいぶ気が楽になると思うんだけど・・・。
「最初、悪魔と聞いた時に違和感を覚えたんだ」
宮白は空を見上げながら、絞り出すようにそう言った。
「前世の親父から、悪魔とは、人間にとりついたうえで無理やりその体を自分と同じように変化させ、人体を破壊すると聞いた」
・・・へ?
前世の記憶ってことは魔術関連の記憶だよな?
少なくても、こいつの知識は本物のはずだ。
だけど部長はあくまで、翼を持っている以外は人間と全然変わらない姿をしているし、堕天使だってそうだった。
でも宮白の魔術は本物で、それは間違いないから魔術も間違いなくあるはずだ。
だけど、宮白のとんでもない言葉はさらに続く。
「それだけじゃない。魔術にとって治癒とは化け物だろうがなんだろうが治癒できるもので、神の祝福とかは関係ないはずだ。それどころか、治癒の力だろと魔術である以上、教会では本来敵視される」
な、なんだって!?
どういうことなんだよそれ!
現実に使ってる以上、魔術が宮白の妄想なわけがない。
だけど部長の言ってることも今のところ間違ったところはないし、それならどうして―
「話は変わるが、イッセーは並行世界って知ってるか?」
「並行世界?」
宮白は少し考えた後、顔の向きを俺に戻す。
「具体的に言うと、何日か前に覗きに行く時、松田と元浜だけが見れただろ? 逆にイッセーだけが見れた世界も同時に存在するということだ」
スケベな俺にわかりやすい説明!
でもなんでそのチョイスなんだよ。俺はスケベなたとえじゃないと何も分からないバカってわけじゃないぞ。
だが、宮白はどこまでも真剣なんだ。
「その概念を突き詰めれば、部長がイッセーに一目ぼれした世界や、アーシアが堕天使ではなく悪魔の側に身を寄せていた世界もあるし、何より―」
その言葉は、やけにはっきりと聞こえたのを覚えている。
「・・・異世界じみた、『魔術』が存在せず『悪魔と天使の戦い』が存在した世界も、存在しうる」
・・・えーっと。
それってつまり・・・
「宮白の前世って、異世界?」
「たぶんな」
その顔はひどく疲れている風に見えた。
当然だろう。
もし俺が宮白の立場だったら、もっと取り乱してる自身がある。
っていうかなんだよそれ! 珍しいってもんじゃないだろ!?
神様何考えてんだよ! もうちょっと宮白に優しくしてあげよう! あ、俺達悪魔だから神様敵か、無慈悲だ。
「イッセー。このことは、まだ部長達には言わないでくれないか?」
「え? なんでだよ」
「魔術師の概念で言うなら、俺は生きたままホルマリン漬けにされてもおかしくない存在だ。部長がそう言う外道だとは思いたくないが、さすがに、そこまで安心できない」
・・・宮白。
そういえば前に言ってた。
宮白の世界じゃ、超すごい魔術の使い手とかは、生きたまま封印されたり実験材料にされることがよくあるって。
俺は、部長はそう言ったことを考える人じゃないと思う。
アーシアがすごい神器を持っていたからって、わざわざ堕天使と殺し合うのは危険だからな。
それでも助けようとしてくれたのは、きっと俺のことを考えてくれたからだ。
そんな部長が、珍しいからって宮白を実験材料にするだなんてあり得ない。
あり得ないけど・・・
「わかったよ。皆には当分黙っとく。それでいいだろ?」
「サンキュー。助かるわ」
・・・宮白の不安もわかるんだ。
生きた人間を実験材料にする世界なんかに生まれてたら、きっと人を信用するのも大変だろう。
宮白だって、部長のことを信じたいと思ってるはずだ。
それでも信じきれなくて、だからそんなことを言ってきた。
だったら、俺からはなにも言えねぇよ。
「俺が言いたかったのはそれだけさ。時間とって悪かったな」
そう言うと、宮白は俺の方を叩いて階段の方に向かう。
・・・さびしそうな背中だ。
俺は、その背中に大声で呼びかけた。
「宮白! 俺以外にも、お前のことわかって一緒にいてくれる奴はきっといるって! 元気出せよな!!」
宮白は手を振ってこたえてくれた。
宮白兵夜。
ガキの頃からの俺の親友で、なんだかんだで面倒見が良くて、本当はけっこうさびしがりやな、リアス部長の兵士。
きっと、本当の意味で部長の兵士になるって、俺は信じてる。
だって、あいつは俺の親友なんだからさ。
ついに一巻分までは終わりました。
これからもケイオススクールD×Dをよろしくお願いいたします。