ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
仮眠を取って目を覚ますと、外には雪が降っていた。
ルーマニアはかなり北にあるわけだからな、武装も雪中行軍を想定したものが必要だったかもしれない。
「・・・兵夜さま」
ベルは真剣な表情で隣に立っていた。
「おいおい、まさかあいつら動いたか」
「それはまだですが、イッセーくんたちが外でリリスと出会ってしまったそうです」
リリスっていうとオーフィスの分身だとか言う奴か。
「言い方は悪いが放し飼いにしてんのかよ。リゼヴィムの奴は何考えてんだ」
「何も考えてないんじゃないかしら。・・・あの手の男は目的よりも遊び心を優先するわ。後先考えずなんとなく動いている可能性もあるわよ」
などといいながらアーチャーが入ってくる。
「アザゼルも帰ってきたわ。そろそろ反撃をする時だと思うわよ」
なるほど、じゃあ確かに反撃タイムと行くとしますかね。
イッセーSide
やばいことになってきやがった。
やっぱりマリウスの奴はヴァレリーから聖杯を抜き取る気だと確定した!
しかも、それを阻止するためにカーミラの吸血鬼たちとツゥペシェの吸血鬼たちが戦闘すら始めてやがる。
・・・だけど、そんなことは俺たちには関係ない。
ギャスパーが男を見せた。
ヴァレリーを何としても取り戻すって誓ったんだ。
オカルト研究部の先輩としちゃ、ここで黙ってるわけにはいかないだろ。
「つーわけだ宮白!! 俺は何をすればいい!」
「つーわけだご主人! 俺様は何をすればいい!」
「お前らシンクロしてるけど何があった?」
すでに何かしらの怪しいペンダントを取り出した宮白が、割と本気で呆れていた。
「何言ってんだよご主人。馬鹿は現場でどうにかするもんで作戦立てるもんじゃねえだろ。ほら動かすための策よこせ」
「・・・そっち方面はアザゼルに任せる。俺はとりあえず陽動ぶちかますから」
宮白はそういうとペンダントを起動させる。
「・・・ああ、アーチャーに城の見取り図や構造は解析させたから戦闘時にはそれを応用してくれ。俺はランダムで入れ替わりぶちかましてちょっと混乱させておくわ」
いつもに比べるとやけにあっさりとしてるな。っていうか今回作戦丸投げかよ!
「いや、なんでまともな策士がちゃんと作戦てててくれるのにうっかり策士が仕切らなきゃいけないんだよ。どう考えて合ってリスクがでかすぎる」
「自覚があるなら直せ。しかも結局ファックに単独行動かよ」
青野さんが溜息をつくが、宮白はどこ吹く風で礼装を起動させた。
さて、たぶん入れ替わりで吸血鬼が誰か来るだろうし、最初の仕事はそいつを取り押さえることだな。
「んじゃ、言ってくるぜ」
Side Out
そんな軽い気持ちでいたことが俺にもありました。
「・・・イッセー。俺はもうだめかもしれん。いや、半分ぐらいマジで」
『いきなり何があった!? こっちはもう取り押さえたけど!?』
いや、今目の前の光景をどう説明したらいいのか。
「目の前にヴァレリーとマリウスと吸血鬼の貴族がゴロゴロいる。・・・うん、どうやら儀式の真っただ中だな、おい」
『お前何してんのぉおおおおおおお!!!』
わあい、仕込み入れたの儀式の参加者かよ。なんてミラクル。
陽動のつもりが特攻である。これふつう死んだろ。
『兵夜戻ってきなさい! いくらなんでそれは危険よ!』
部長も顔が真っ青になっているのが予想できる声色だが、しかしそういうわけにはいかない。
「いやいや、確かにやばいですけどギャスパーが男見せたわけですし、全員ぶちのめすのも狙って派手に暴れさせてもらいますよ」
まあ、冷静に考えれば非常い危険ではある。
なんたって全員最高位の吸血鬼。それもおそらく聖杯の強化を受けているのだろう。
実際半分ぐらいはやばいと思っている。俺単体じゃあ切り抜けられない。
ああ、俺単体ならな。
「安心してくださいよ。いったでしょ、半分ぐらいって」
「ほざいてくれるな蝙蝠風情が」
余裕があるのを察したのか、吸血鬼の1人が一歩前に出る。
「我らが宿命を克服し進化した我々を相手に一人で挑むか。蝙蝠風情がよくほざいた」
「じゃあほざかれない程度の実力があるのか試してやるよ。かかってきな腐敗貴族」
まあ、この数を一人でどうにかするのはきついわけだ。
このシステムの都合上、複数人そろってってわけにもいかないだろうからすぐに使うことはなかった。
だが、あいにくここまでの展開は想定外だが強敵が多い状況は想定内だ。
「いいことを教えてやろう。・・・本家の家訓は常に余裕をもって優雅たれ。これは、うっかりという呪いをもつ俺たちはそれを見せない精神的余裕と対処できる物理的余裕の二つを常に持たねば何かがおきたときに対応できないという極めて実利的な格言だ」
そして俺は一つの宝玉を転送する。
ああ、まあ万が一のための保険というものは用意してるんだよ、俺は。
「・・・ゆけ、罪人部隊!!」
「うるさいわよ!」
「うるせえ!!」
ステレオで叫びながら出てきたその姿を目にして、吸血鬼連中が目を見開いた。
まあそうだろう。まさかこいつらがここで出てくるなど普通は思うまい。
今とっ捕まっているはずのジャンヌとヘラクレスが出てくればそりゃさすがに驚く。
「英雄派の幹部だと!?」
「馬鹿な! なぜこんなところに!?」
「おいおい驚くのは仕方がないが納得しろよ。・・・学生としての活動にしろ、魔力供給の確保にしろ、犯罪者に餌ちらつかせて活用するのは俺の基本戦略だぜ?」
ぶっちゃけいつもとやってることはそんなに変わらない。
雑用や魔力供給の代わりに実務労働をさせただけだ。
基本的にすねに瑕持っている連中だから多少ひどい目に合っても心が痛まないし、基本的にマイナスダメージ受けることが前提の連中だから比較的安上がりだし、しかもこの業界の連中なら腕が確かかどうかをしっかり把握することもできる。
念には念を入れて保険として入れておいて正解だった。
「と、いうことで時間稼ぎしろ犯罪者よ。生き残れれば今夜はフランス料理のフルコースをおごってやろう」
イッセーSide
「アイツ何やってんの!?」
寄りにもよってヘラクレスとジャンヌとか何考えてんの!?
「安心しなさい。魔術的な制約を二桁はかけているから裏切りたくても裏切れないわ。令呪を参考にした特別性だから安心しなさい」
「危険性じゃなくて方法論の問題なのだけれども」
アーチャーさんがものすごく平然と言う横で、リアスが溜息をついて額に手を当てた。
「おいアザゼル。てめえまさか知ってたんじゃねーだろうな」
「一応その方法は聞いてたが、まさかいきなり使うとは思わなかったぜ。あいつやっぱり首輪付けたほうがいいな」
「ホントに? わかっててこっそり無視してたんじゃないの?」
小雪さんとナツミちゃんはアザゼルに半目を向けるけど、そんなことを言っている場合でもない。
「と、とにかく兵夜さまが大変ですし、どちらにしても急がねばなりません! 実質時間がないので追及は後にしましょう!」
「そうですね。宮白くんがアレなのはいつものことですし、今はとにかくヴァレリーさんの救出を第一にしましょう」
ベルさんとロスヴァイセさんがそうとりなし、俺たちは急いで部屋を出ようとする。
「ヴァレリー・・・待ってて!!」
勢いよくギャスパーがドアを開け―。
「よお。邪魔しに来たぜ、これが」
今特に会いたくない奴が目の前にいた。
Side Out
今回の兵夜のうっかり。陽動のつもりが本命となってしまった。
雑に扱っても心が痛まない連中を優先的に使う性格の悪い兵夜。でも労働に見合った報酬はちゃんと用意するから人は良い。ちなみに福利厚生と正当な報酬に気を使いすぎたため、かなり稼いでいるのに貯金はそんなにないという裏設定があります。
因みに強化吸血鬼対策はバッチし準備済み。これをこう使うのかという兵夜らしい奇策を用意しております。
そして一歩遅かったフィフス。こちらも邪魔されないように速攻で動きました。
ケイオスワールド恒例、オカルト研究部VSフィフス軍団のスタートです。