ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
しかしアーシアちゃんの能力は本当にすごい。
イッセーとの連携技とはいえ、吸血鬼の本拠地をあっさり直すのだから回復力が尋常ではない。
これは今後の戦いでもだいぶ楽になるだろう。タイミングはしっかり気を付ける必要があるが、多くの人々をいやすことができるのだから。
とはいえ強化吸血鬼が邪龍化するとはどこのバイオハザードだ。しかもカーミラの方でも同じことが起きていただと?
完璧に愉快犯だなリゼヴィムの奴。やはり逃がしたのはまずかったか。
「っていうか神器無効化能力とかどんなチートだ。アザゼルも、そういうのは最初に行っとけよ俺ら神器所有者が多いんだぞ」
イッセーとヴァーリとギャスパーが同時に攻撃してもあっさり無効化したらしい。間違いなく出力なら上位三人のはずなのだが、これは神器で攻略するのは考えないほうがいいか。
しかしまあ、それはそれとしてウチの二人はまたとんでもないことになってるな。
イッセーの方は白龍皇の力を昇華させたとのことだ。しかし反射能力なんてものがあったとはまた驚き。ヴァーリが使えるようにならないことを切に願う。あと、赤龍帝の方にも秘められた力がありそうだ。
ギャスパーの方はアーチャーの推測がほぼ正解。残滓とはいえ邪神を宿しているのならあの出力にも納得がいくだろう。だからなんで部長は眷属でチートをかき集めるのが得意なんだ。人材発掘を仕事にしたらすごい成功するぞ。
「あ、兵夜!」
と、ナツミが俺に抱き付いてきた。
「お、ナツミ」
「うぅ。またふんどしが来て怖かったよぉ」
思い出して恐怖が襲い掛かってきたのか、割と本気でぶるぶる震えていた。
うん、それは怖かったな。
「・・・悪かった。肝心な時にそばにいなくて」
自分の使い魔怖がらせるとは主人失格だ。
後でふんどしには落とし前をつけさせねばならん。対抗策は立てたのだ。俺がやるのは大変だが、グレモリー眷属でいけば十分行ける。
「大丈夫。イッセーが近くにいてくれたし、みんなもいるもん」
ナツミの言葉に俺はなぜかゾクっと寒気がした。
え? 何子の展開? え、ちょ、まって、俺不必要?
いやいやいやいや、俺だってイッセーが一番大事だからそれについては仕方がないよ? ある意味すごいラッキー的なあれだよ? でもそれってつまり・・・。
N T R
うぉおおおおおおおお! すごいアレな感じだああああああああ!
しっかりするんだ俺! 俺にそんなことをとやかく言う資格がないのはわかっているだろうハーレム野郎! おまえ自分は女複数侍らせておいて女に男複数侍らせちゃいけないとか筋が通らない! やりまくりはめまくるのエロエロパコパコライフ送ってきた俺に対して前世含めて未経験のある種のもじょばっかりなんだぞ! いいじゃないか男性経験増えたって! いやでもビッチ萌えってのは完全に割り切ってるとか最終的に一筋になってくれてるから萌えるのであってこの流れはやっぱりあれだよね! え、ええい舐めるな! これまで鍛え上げてきたテクニックと俺の福利厚生っぷりと共感があれば完全に乗り換えられるなんてそんなことはありえない! あ、でもイッセーには最終的にテクでも乗り越えられそうだよねエロが絡むとホント化け物だし。・・・違う違う違う! くそ、あの野郎ネコミミロリ属性を二人も載せるとか貪欲というかなんというかナツミちゃんは渡したくありませんぬぉおー!」
「オイご主人、人のことなんだと思ってんだ」
いかん! 思ってたことが口から出た!!
「いや、悪いけど覗き魔好きになるような趣味ねえから。あれ、ないから。ナイ」
三回言っちゃったよ。それだけないのか。いや、普通ないか。
言っちゃなんだけどイッセーは趣味に特殊性がないと致命的だからな。それこそ痴漢されて楽しんじゃうような頭ゆるい系のビッチじゃないと好感持たれないんじゃないかと思ってたから今の状況はある意味意外なんだけど、やっぱ一線超えるのは致命的な人多いか。
「大丈夫だよ兵夜。ボク一人じゃないもん。みんないるってわかったもん」
そういうとナツミは思わず見惚れるような笑顔を見せた。
「だから大丈夫。ボクもこれからもっと頑張るから、兵夜も少しは楽していいよ?」
「なんか真正面から言われると照れるな」
あ、やべ。
顔真っ赤になってるのが自分でもわかる。
恥ずかしいからとりあえず体格差を生かしてハグして顔を見せないようにする。
ナツミも配慮してくれたのかそのまま俺の胸に顔をこすりつけてくる。
うん、これは恥ずかしいですな。
と、思ったら左右からなんか抱きしめられた。
「実質私ももっと頑張りますよ! だから兵夜さまとナツミちゃんをぎゅってしてあっためます」
「いやー疲れちまったなぁ。今日はだいぶ頑張ったから少しご褒美もらってもいいよなぁ?」
「ぎゃあみられた!?」
ここに久遠がいなくて本当によかったよ!?
「あ、でも久遠がいないね」
「仕方ねーな。帰ったら久遠よばねーと」
「あ、すいませんさっき写真撮ってメールしました」
ですよねぇえええええ!!!
Other Side
その後、リゼヴィム・リヴァン・ルシファーが宣戦布告したことにより、神話・宗教全ての組織おいてその全貌が明らかになった。
禍の団の発展形。リゼヴィム・リヴァン・ルシファーによって再編成された組織クリフォトの目的はこれまでの禍の団のそれを凌駕する危険性だった。
邪龍の数々を復活させた、リゼヴィム・リヴァン・ルシファーによる、トライヘキサを復活させての、グレートレッド撃破を経る、異世界侵略。
全てにおいて問題しかない非常事態に、各種神話体系は警戒態勢を取らざるを得なくなった。
これまで保守的な態度を取っていた神話体系からも話し合いに応じるという対応を取らざるを得ないこの事態に、当然のごとく三大勢力は対策を決断。
動きのとりやすい若手を中心にした部隊を編成し、対リゼヴィム部隊として運用できるようにしようということだ。
そしてそのための先鋒として名だたる若手が集められている。
「ほとんどが顔見知りなのはあれですよねー。世界が狭いっていうかなんて言うかー」
桜花久遠は割と本気でそう思ったが、しかしまあ戦力としては破格なのも事実だ。
いまだ本格的なレーティングゲーム参戦すら果たせない年代であるにもかかわらず、高水準の実戦を潜り抜けてきた若手四王が一堂に集結して特殊部隊として運用する。これは本当に重要な事態だろう。
そこに転生天使が三名、須弥山からも闘戦勝仏。合計すれば神滅具持ちは片手が埋まるほどおり、龍王クラス以上のドラゴンが封印されているのも含めれば五体。
挙句の果てにもと禍の団であるヴァーリチームまで入れているというあたり、だいぶなりふり構っていない。
「まあそういうな。なにせほかの連中はしがらみがあってなかなか動かせなくてな。フットワークが軽くなる連中で実力者を集めたら自然とこうなったってわけだ」
アザゼルも割と呆れているようだが、しかしこれはある意味でわかりやすい。
大体お互いの実力もわかっている者同士。戦闘能力が十分なのはわかっており、戦力的な意味では問題ない。
「加えて、宮白の奴がいろいろ動いてグランソードのところとか各種神話体系の連中をかき集めてのバックアップチームを作ろうとしてやがる。あいつしまいに過労死するんじゃねえだろうか」
「止めてくださいよ先生ー。さすがに専門外だから私口出しできないんですよー」
久遠はそう拗ねるが、しかしそこまで心配はしていない。
なんだかんだでダメージコントロールはしっかりできるのが兵夜だ。ちゃっかり休憩時間ぐらいはもぎ取っているだろう。
とはいえその許容範囲が常人と大いにずれているので不安は残る。適度に監視をしなければと本気で思う展開だ。
「でもどうするんです? 主力がことごとく神器使いのこのチームだと、肝心のリゼヴィム相手が大変ではー?」
「まあ大元の相手は俺か闘戦勝仏の爺さんがやるべきだろうな。リリスの方も大変だが、そっちは宮白が対策立てやがったし」
確かにあまりにも強大な切り札の存在には割と驚いたものだ。
最終的に拘束を振り払われて逃げられたものの、オーフィスの約半分の力を長時間封じることができる装備など規格外以外の何物でもない。
「まったく、聞けば対俺用の装備として開発していたようじゃないか。そんな危険なものを渡すとは怖いことをするな」
「全くだぜ。爺、んなもんなんて奴に渡してんだよ」
茶化す感じでヴァーリが、そして割とうんざりとしながら美候が闘戦勝仏を非難するが、当人は肩をすくめると首を振る。
「天帝の坊主が聖槍の小僧を隠してたことを突かれたらどうしようもなくてなぁ。まあ、こっちも交換条件で便宜は図ってもらったし、妥当な条件じゃ」
「一応私のマスターはそういうのは気を使うから。冥界政府を経由して入手すれば中間マージンがどれだけ出たと思ってるのかしら? むしろぼろもうけさせてあげたんだからもっと喜びなさい」
アーチャーはさらりとそういうと、しかし憂鬱そうに眼を伏せる。
「だけどまあ、聖杯戦争もどうなることか。戦争ってついてるけど、戦闘範囲そのものはせいぜい一都市規模のはずなのだけれど?」
「マジで世界またにかけてるからなぁ。俺、半年ぐらい前までそんなことになるなんて思わなかった」
イッセーが遠い目をしながらそう漏らすが、程度はともかくほとんどのメンバーがそんなことなど考えていなかっただろう。
この世界どころか異世界まで巻き込みかねない大きな騒ぎに自分がまきこまれるなど、普通想像する方がどうかしている。
いろいろ考えている宮白兵夜だってそんなことは想像もしていなかっただろう。
とそこまでかんがえて、イッセーはあることに気が付いた。
「・・・って、そういえば宮白はどこ行ったんだ?」
言われてみれば呼び出されてからも宮白の姿だけは見えなかった。
「そういえば見ないわね。どこに行ったのかしら?」
リアスたちも不思議に思いながら視線で探す中、全員の鼻腔に刺激的な香りが立ち込める。
次の瞬間、兵夜が扉を開けて入ってきた。
「待たせたな諸君!! チーム結成おめでとう!!」
そういいながら入る兵夜の後ろから、土で出来たゴーレムがトレイやカートを抱えながら入ってきた。
そして全てお菓子屋らサンドイッチやらカレーパンやら食べ物が満載され、ジュース類まで完備している。
「え、え、なにこれ!? なにこれ!?」
「何言ってんだイッセー。話の内容はちゃんと聞いてたし大体予測もしてたからな。こういうのはメンバーでの交流が必須なんだよ、必須」
などという兵夜は割と自慢げにドヤ顔を浮かべる。
その表情をみて久遠やイッセーを含めた何人かはよく理解した。
ああ、これほとんど自前で作ったなこの男。
「兵夜くんって時々凝り性だよね。カレーとか隠し味研究してそうだよねー」
「甘いぜ桜花さん。カレー粉とかも市販じゃなくて海外から取り寄せるかもしれねえ」
「何をたわけたことを言っている。今回は金持ち多いからスパイス取り寄せるところから始めて、集まり始めたときから粉にした特注品だ」
自慢げに語る兵夜だが、よく見ると目にクマができている。
皆の心は一つになった。
お前、そんなことしてる場合か?
「アザゼル。自分で勝手に仕事を増やすワーカーホリックなマスターを無理やり休ませたいのだけれど協力してくれないかしら」
「お前なぁ、言ってくれたら用意したぞ」
「心配すんな。前から研究していた災害派遣用料理作成用ゴーレムのデータ取りも兼ねている。本格的に作ったのは一部分だけだ。サンドイッチとかはパン屋に予約して作ってもらった」
さらに後ろからチェーン店から取り寄せたと思しきピザや寿司が大量に運ばれてくる。
どうやらこのタイミングを見越して電話する順番まで考慮に入れたらしい。
とはいえ安物など一つもないと誰もが見て取れる質の物ばかりが用意されている。若手四王という最高級のセレブを相手にすることを考慮したものばかりだ。
手作りのものも材料からこだわっていることが見て取れるようなものばかり。しかもできるタイミングまで調整したのか、まるで全部できたてのようだ。
「あらあら。メロンパンまで手製のようですし、やっぱり小雪のために練習しましたの?」
「おいおい教えてからまだ二、三か月しかたってねえぞ。こいつホントやればそこそこできるな」
「自分の女の好物ぐらい自分で作れないでどうするよ。俺は菓子パン作りで食うに困らない技量をすでに手に入れた」
「ファァアアアアック!? なんで知ってんだてめーら!? あとばらすな!!」
後ろから銃声が響き渡るが、今更この程度で死人が出るわけもないので全員スルーする。
「オイオイオイオイ。これ全部旨そうだけど食っていいのかよ」
「そのために作ったんだからむしろ残さず食べるといい・・・痛い痛い痛い折れる折れる折れる!!」
「おま! 堂々と、恥ずかしいだろうがファック!!」
匙の質問に答えるあたりまだ余裕がありそうだが、小雪の方が余裕がないので適当なところで止めたほうがいいのでは無いかと思うメンツも何人か出てきた。
「・・・イッセー先輩。食べないならそこどいてください。カレーパンはいただきます」
「え、あ、うん」
小猫に場所を譲りながらイッセーはとりあえず適当にサンドイッチを取りながら食事を始める。
こういうところの気配りができるから宮白は人材を集めているということがよくわかる。上級悪魔になったら参考にしよう。
そしてもう少し耐えろ。今のはお前がうかつだ。
久遠もそれには異論がないので同意して見逃すことにしてサンドイッチに手を伸ばす。兵夜は時々正確に制御して危険運転をするので締めておく必要があることを理解している。
すでに四人で監視ローテーションは組んでいる。あまり仕掛けると開き直る可能性があるので、お仕置きにはバリエーションを設けて覚醒させないようにしなければならない。
それはそれとしてサンドイッチの中にも時折兵夜作があるあたり、実はこれはストレス発散が目的ではないのかと勘ぐってしまう。
食べて分かるようになっている当たり、久遠自身だいぶ骨抜きになっている。というより女としての沽券がかかわるような気もするのでちょっと鍛え上げねばならないような気がしてきた。
因みにベルはものすごい勢いでどれが兵夜の作ったものなのか気にして食べている。たぶん彼女は当分そこまで気にする領域には至らないだろう。
小雪は小雪で自分の立ち位置が分かっているのでこちらもあまり気にしないのが読める。どちらかといえばいいお店を探して買ってくる方向でいきそうだ。
あれ? もしかして自分も開き直った方がよくない?
そんなことを思いながらとりあえず気を取り直して舌鼓を売っていると、勢いよくどたばたと音がしてナツミが入ってきた。
「・・・できたぁあああああああ! おにぎりできたよぉおおおお!!!」
デフォルメ状態がぴったりな笑顔を浮かべながら、頬に米粒をつけたナツミが皿の上に乗せたおにぎりを堂々と見せつける。
「食べて食べて! 自信あるよコレ!」
「おう! ・・・そういうわけなのでお腹は勘弁していただけないでしょうか小雪様」
「しかたねーな。・・・じゃあとりあえず右腕をもっかいひねり上げるか。コレなら片腕開くし」
器用にプロレスしながら速攻で取りに行くあたり二人とも息が合いすぎな気がする。
「ひゃう!? ひょ、ひょっとまっへ・・・」
「ベルさん飲み込んでからしゃべったら」
とっさの事態にベルは対応できておらず、イリナにフォローされている。
これは自分がちゃっかり確保したほうがいいと思いつつ、久遠はおにぎりを一つとる。
ところどころ不器用だけど思いがこもっていることがよくわかる。食べてみても頑張っていることがよくわかる味で、一生懸命準備したことが理解できた。
「頑張ってるね、ナツミちゃんー」
「もっちろん! だってみんな頑張ってるもん!」
ほめてほめてといわんばかりの笑顔に、久遠もつい頭をなでる。
「久遠も兵夜もみんな頑張ってるから、ボクもいっぱい頑張るもん」
「そっかー。なんか一皮むけちゃったー?」
何というか、ふんどし騒ぎでいろいろと大変になっていてもやもやしたところもありそうだったが、帰ってきたら前よりはるかにすっきりしている風だった。
「うん、イッセーたちも皆、ボクのこと仲間だって思ってくれてるもん。仲間のために頑張るもん」
「そっかー。そう思えるって結構すごいことだよー。ナツミちゃんいい子だよー」
同じ男を愛する身として、すっきりしてくれたならいいことだ。
自分もいい加減すっきりして、何とか追いつきたいと思ってしまう。
「よっしゃ! これからもっと頑張るからねーっと!!」
この可愛い笑顔を見てしまったら、本当に頑張るしかないのである。
かわいいは正義。とても実感できる時だった。
全体的にウィザード編とデイウォーカー編はナツミ編第二弾でした。
ヒロイン第二シーズンを行うにあたり、ナツミは意外とそういう方面での成長というか試練がどうにも少なかった。・・・というよりそういう方面での問題点が他と違ってあまりない。
それもあって、最初に出した時から後半での強敵として設定したふんどしに対するトラウマをより大きくして、そこからくる成長物語というのが今回の展開です。
ナツミは兵夜に出会って救われたけど、ほかのみんなも大事に思ってくれてるんだよということを再確認させるお話でした。