ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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特訓、続いてます

 

 山はいい。

 

 空気はうまいし景色は奇麗。おいしい野草も豊富で、山菜料理とかよだれが出てくる。

 

 だが、こんな形で来たくはなかった。

 

「ひーひー」

 

 俺の隣でイッセーが汗だくになって山を登る。

 

 その背には三人分ぐらいの大荷物がのっかっていた。

 

 ちなみに、俺も相応の荷物を背負っている。鍛えているが結構こたえるぞコレ。

 

 ・・・そう、俺たちは修行に来ているのだ。

 

 部長の発案で修業をすることになった俺たちは、グレモリー家が保有している別荘までこうやって修行をしながら歩いているのだ。

 

「やっほ~」

 

 遠くで登山者の声が聞こえてくる。

 

 うん、なんかいらついて来るよねこういうの。

 

 俺は強化の魔術を使うべきがどうするか真剣に迷っている。

 

 一応鍛えているから何とかなっているが、まだまだかかりそうだし正直めんどい。

 

 が、それでは修行にならないしどうしたもんか。

 

「部長、山菜を詰んできました」

 

 木場は俺たちと同じぐらいの荷物を持っているが、軽々と歩くどころか山菜を採ってくる余裕まである。

 

 あ~あ。山の薬草とか魔術的にも便利だから集めたいんだけどなぁ。

 

 と、心の中で愚痴を言いながら山を登っていたら、俺たちはとんでもないものを目にしてしまった。

 

「・・・失礼します」

 

 ・・・小猫ちゃん? 君が背負ってるの、どう考えても俺達三人の荷物を足しても足りないぐらいのサイズだよね?

 

 恐るべし戦車。パワータイプだというのは知っていたがここまで怪力だと驚愕するしかないな。

 

「イッセーさ~ん。大丈夫ですか~」

 

「イッセー、兵夜! 早くしなさい」

 

「もう少しですわよ~」

 

 先の方では、荷物を持たない女性陣が俺達を待っている。

 

 小猫ちゃん以外の女性陣はどう考えても殴り合いをするタイプじゃないし、これはまあいい。

 

 俺も魔術師なんだけどね。残念だが、ポテンシャルの都合や正体を隠す必要があるから、中距離やら遠距離やらじゃ戦えそうにない。

 

 ちくしょう! なんか悔しい。

 

「う、うおりゃああああああっ!!」

 

 小猫ちゃんの怪力っぷりに感化されたのか、イッセーがものすごい勢いで山を登り始めた。

 

 ・・・あのバカ、ペース配分考えないと死ぬぞ。

 

 などと考えていると目的地である部長の別荘が見えてきた。

 

 使わないときは魔力で森の中にまぎれてしまうという素敵仕様。下手な結界よりも便利な悪魔パワーに、俺はちょっと嫉妬心を抱いたのは秘密だ。

 

「んじゃ着替えるぞ? ・・・大丈夫か?」

 

「ぜーはー、ぜーはー・・・」

 

 イッセーが死にかけるなか、俺はさっさとジャージに着替える。

 

 これからが大変だというのに、この調子でイッセーは大丈夫なんだろうか。

 

 修行の内容はよくわからないが、これだけは言えることがある。

 

 ・・・たぶん、相当スパルタだということだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Sideイッセー

 

 あの焼き鳥野郎を倒すために、俺達の特訓は始まった。

 

 ただ、始まったは良いけど俺は最初から苦労していた。

 

「おりゃー!」

 

 俺は手に持った木刀を、目の前の木場に向かって振るって行くが、全然通用しない。

 

「剣だけを見ない! 戦闘では視野を広げて、相手と周囲を見るんだ」

 

 木場はそう言ってくるが、俺にはさっぱりわからねえぞ。

 

 何度も何度もふるうが、そのたびにあっさりいなされて、今度は剣をはじかれる。

 

「次、宮白くん!」

 

「おうよ!」

 

 木場に促されて、宮白が前に出る。

 

 宮白は木場から距離をとると、体を揺らしながら様子をうかがう。

 

 かと思ったら、一気に走り寄って木刀をふるう!

 

「オラ!」

 

「おっと」

 

 木場はあっさり受け止めるが、なんと宮白は木刀から手を離すと。そのまま体を一回転して蹴りを放つ!

 

 それすら木場はかわすが、さらに宮白は体を倒すと、木刀を逆手で掴んで柄を木場の木刀に叩きつけた。

 

「これは!?」

 

 倒れそうになるのを何とかこらえる木場だが、足をついてバランスを取った宮白は、刀身の部分をもう片方の手でつかむと、そのまま木場の顔面に突きだした!

 

 おお! かろうじて交わしたけど毛先が揺れた! いきなりいい感じじゃないか!?

 

「・・・杖術の心得でもあるのかい?」

 

「喧嘩で鍛えた鉄パイプ術だよ」

 

 距離をとる木場に対して、宮白は木刀の真ん中を持ちながら不敵に笑う。

 

「10日そこらで剣術が身につくわけないし、対刀剣戦闘と割り切らせてもらうぜ?」

 

「できれば、剣の使い方を覚えてほしかったんだけどね。・・・あのはぐれ悪魔祓いと渡り合っただけあるよ」

 

 おお! 二人の間に火花が散っているのが見える。

 

 さすが宮白! そのままイケメンにひと泡吹かせてくれ!

 

 ・・・アレ? 俺の特訓は?

 

 そんな感じでレッスン1は、木場と宮白の3ラウンドで終了。

 

 ちなみに、勝敗は木場が二本先取で勝ち越した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・魔力は体全体を覆うオーラから、流れるように集めるのです。意識を集中させて、魔力の波動を集めるのですよ」

 

 レッスン2は朱乃さんとの魔力修行。

 

 これがなかなか大変で、俺は全然魔力を集められない。

 

 言われたとおりにやってみるけど、米粒ぐらいの魔力の塊が限度だった。

 

 全然できない! なんで? 俺の魔力ってなんでこんなにちっぽけなの!?

 

 うぬぬぬぬ! 集中だ! この程度じゃ皆に笑われちまう! 踏ん張るんだ!

 

「あ、できました~」

 

「うぇ? マジで!?」

 

「な!?」

 

 隣にいるアーシアの嬉しそうな声に、俺と宮白のショックな声が連続ででてくる。

 

 アーシアの魔力は淡い緑色だ。うぅ、ソフトボールぐらいはあるんじゃないか?

 

 俺ってやつはここでもダメダメだ。

 

 だが、そんな俺よりもダメダメなやつがいる。

 

「全体から・・・全体から・・・」

 

 宮白、未だにひとかけらも魔力が出せてない!?

 

 魔術師じゃなかったっけ? と思ったが、昔宮白が言ってたことを思い出す。

 

『魔術ってのは魔術回路って言うのが無いと出せないんだよ。つーわけでイッセー、お前無理な』

 

 そんなことを言っていたな。

 

 ああ、全身から出そうとすると逆に違和感があって出来ないのか。

 

 ぐふふ。木場との特訓では宮白に劣等感を抱いたけど、これはちょっと嬉しいかも。

 

 よっしゃ、この調子で頑張って、宮白を悪魔的魔力運用で追い越して・・・

 

「よっしゃできたぁ! いよっし! 頑張った俺!!」

 

 ―宮白の手の先から、バスケットボールサイズの魔力の塊が生まれていた。

 

 色は水色で、なんか授業で見た恒星の写真を思い出したけど、それにしてもでかい。

 

 そんなバカな!? 今の今まで苦戦しまくってたじゃないか!?

 

「あらあら。アーシアちゃんもそうですが、兵夜くんも魔力の才能があるみたいですね」

 

「いやぁ、コツをつかめたらこれぐらい楽勝ですよ」

 

 今まで苦戦してたやつのセリフじゃない!

 

 くそ、あいつは生まれついての魔法使いか何かか! あ、前世魔術師だったから今の人生じゃそうか!

 

 割と本気で焦ってたのか、魔力を出している宮白はすごい嬉しそうだった。

 

「では二人は、魔力を使って水を操ってみましょう」

 

 そう言うと、朱乃さんはペットボトルの中に入っている水を魔力で操る。

 

 ・・・すげえ! 水が棘になってペットボトルを突き破った!

 

「魔力で水や火を作ることも出来ますが、初心者は実際に動かした方がいいですから」

 

「はい! じゃあまずはペットボトルを輪切りにするところから・・・」

 

 宮白がすごいやる気になってる! そこまで嬉しいのか!?

 

「頑張ってください。魔力の源流はイメージですから、とにかく頭に浮かんだものを具現化するのです」

 

 自分の思い描いた形か・・・。

 

 待てよ? ってことはあんなことやこんなことも・・・いけるか!?

 

「朱乃さん! こんなこと考えたのですが・・・」

 

 俺は朱乃さんにこっそり耳打ち。

 

 それを聞いた朱乃さんは、ちょっとあっけにとられたけどにっこりほほ笑んでくれた。

 

 ―ホントにいけるか? 俺の超必殺技?

 

「あらあら。イッセーくんらしい発想ですわ」

 

 そう言うと、朱乃さんは台所にいって何か持ってきた。

 

 その間にもアーシアと宮白の魔力修行は進み―

 

「輪切り! 千切り! みじん切り!!」

 

「宮白さんすごいです! ペットボトルがどんどん細かくなってます!!」

 

 調子乗ってる!

 

 よっぽど嬉しかったんだ! よっぽど上手くいったのが嬉しかったんだ!

 

 ・・・後でこっそり聞いてみたところ、こんな答えが返ってきた。

 

「全身から魔術回路に集めてからやってみたんだ。意外と簡単だった」

 

 コツって重要だよね!

 

 追加で言うと、俺の方はカレーの材料の皮むきと言う形でスタートした。

 

 どうやら、道は険しいようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 続いて小猫ちゃんとの体術訓練。

 

「ぬわぁあああ!!」

 

「おっと!」

 

 吹っ飛ばされた俺を宮白がかわす。

 

 ・・・さりげなく襟を引っ張ってくれたおかげで、俺は木と激突しなくて済んだ。

 

「・・・弱っ」

 

 小猫ちゃんの痛烈な一言が、俺の心に突き刺さる。

 

「まあ、イッセーは喧嘩だってろくにしてないから・・・なっと!!」

 

 宮白がフォローをしてくれながら小猫ちゃんに向かって行く。

 

 思いっきり俺の方を見ながらなのに正確に蹴る宮白もすごいが、その不意打ちをあっさりかわす小猫ちゃんもすごい。

 

 小猫ちゃんは立ち技寝技何でもござれの格闘少女。宮白の攻撃をかわしてはカウンターを叩きこもうとしている。

 

 対して宮白は、百戦錬磨の喧嘩慣れ。さっきから木を蹴って機動力で小猫ちゃんを翻弄しようとしている。

 

「イッセー先輩。打撃は体の中心を狙って的確かつえぐりこむように打つんです」

 

「あとお前全身で突っ込みすぎ。わかり安すぎるからすぐかわせる」

 

 俺にアドバイスする余裕まであるよ!

 

 この二人、実は余裕たっぷりなんじゃないか!?

 

 あ、宮白が飛びかかったかと思うと、木の枝をつかんで飛び上がった。

 

 そのまま飛びかかるかと思ったけど、落ちる最中に木を蹴って小猫ちゃんの真後ろに!!

 

「そいや!」

 

「まだまだです」

 

 これもかわすか小猫ちゃん!! さすがは歴戦の戦車。格闘技を極めるとここまで強くなるだなんて!

 

 その後も俺は頑張ったが、結局小猫ちゃんに一発も当たらなかった。

 

「木場にも小猫ちゃんにも全然かなわねぇ! 魔力にいたっては米粒程度だし、俺いいとこなしじゃん!」

 

 転がったまま俺は叫んだ。

 

 今日一日、俺ってばやられてばかりじゃん!

 

 こんな調子でライザーを倒せるようになるのかよ?

 

「ま、今まで戦闘なんて経験ないんだから仕方ないだろ」

 

「それぞれ特性もありますから」

 

 そう言いながら、二人も手合わせを終了してくる。

 

 特性、か。

 

 転生悪魔としての特性はプロモーションだけど、俺自身の特性って何だ?

 

「俺の場合は?」

 

 よくわからないときは質問するのに限る。

 

「・・・エッチなところ」

 

「エロパワーはすごいな。駒王学園(あそこ)にも一発合格したし」

 

 ガクッ。

 

 それは戦闘に何の関係もないじゃん。いや、いっそセクハラに集中すれば活躍できるのか?

 

「・・・それともう一つ」

 

 だけど、小猫ちゃんの言葉はまだ続いたんだ。

 

「がんばり屋さんなところ」

 

 がんばり屋さん・・・?

 

 首をかしげる俺に、宮白が手を差し出してくれる。

 

「なんだかんだで一日頑張ったし、この調子で頑張りな」

 

 そうか! 俺って頑張り屋さんか!

 

 よっしゃ! どうせ頑張り屋さんなら、とことんまで頑張ってやる!

 

「おりゃああああっ!」

 

「えい」

 

 ・・・小猫さまは本当に容赦ないです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side兵夜

 

 夕方、俺たちは最後のレッスンをしていた。

 

 具体的には、岩を背負って山道を上り下りしていた。

 

「レッスン4。まあ、整理体操みたいなものね」

 

「どこがですか!? これのどこがそんな生ぬるいものですか!?」

 

 どこの世の中に、岩を背中にくくりつけて行う整理体操が存在するんだ!

 

 イッセーにいたっては言葉を放つ余裕もない。

 

 死ぬんじゃないか? コレ。

 

「鬼ですか部長! いや、鬼でしょう部長!」

 

「悪魔よ」

 

 素敵な笑顔で言わないでください!!

 

 ダメだ、これで俺が魔術師だってばれたら何されるかわからん!

 

 黙ってて正解だった! こんな調子じゃしゃべる気にすらならん!

 

 もう何回往復した? 少なくとも二十は超えたぞ!

 

「はいOK。今度は腕立て伏せね」

 

 ・・・さすがは悪魔だ。殺す気としか思えん。

 

 悪魔の基礎体力はすさまじいということだろうか。この調子だと俺たちはボディビルダーも真っ青なムキムキなマッスル野郎になるかもしれない。

 

 戦場を一番駆け巡る兵士の駒になったのが運のつきか。せめて戦車か騎士ならよかった。

 

「ぐわっ!」

 

「・・・マジですか」

 

 イッセーの悲鳴に見てみれば、部長がイッセーの背に岩を乗せていた。

 

 恐るべし魔力の力。俺も強化の魔術を行使していいだろうか?

 

 ああ、俺の背中にも乗ってきましたよ岩が、背骨の心配をするしかないじゃないか!

 

「さて、それじゃあ腕立て伏せ300回よ」

 

「オーッス!」

 

 イッセーが威勢よく声を張り上げる。

 

「だぁもう! やればいいんでしょうやれば!!」

 

 悪魔になったのを後悔するぞ俺は! 

 

 ライザーと戦う時まで、俺は生きていられるのか!?


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