ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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弘法筆を選ばず、桜花剣を選ばず!!

 

 サラブリオンは速いなぁ。

 

 などと感想を抱きながら、俺は敵の死神と打ち合いを続けている。

 

 幸いこのサラブリオンは封印系神器の技術を流用している。

 これにより足を失い再起不能になった冥界の優れた使い魔たちを宿すことによる一種の義肢といったところだ。おかげでテスターは易くついた。

 

 で、そのテスターの経験で攻撃を勝手に回避してくれるので、俺は鎧越しなのもあって攻撃と防御に集中できる。

 

「ったく俺を恨むのならともかく冥界政府にまで喧嘩売るのやめてくれない? 果たし状を送ってくれるならスケジュール調整ぐらいはしてやるってほかの連中にも伝えてくれ!」

 

「ほざけ! 薄汚い蝙蝠風情がよくもまあ騒ぐ!!」

 

 激昂した死神が三連射してくるが、俺が反応するより先にステップで回避してくれるので実に便利だ。

 

「第一貴様のことはあくまで最後のきっかけにすぎん! いずれ三大勢力は亡ぼしてやりたいと心から思っていたわ!!」

 

 お~お~本音が出てるねぇ。

 

 まあ、神話体系のお偉いさんの中にもそういう本音の連中はゴロゴロいそうだけど。

 

「まあ布教しまくっていろいろやっちゃってるからねぇ。そりゃそちらさんからしてみれば殺意のバーゲンセールぐらい出てるだろうけど、賠償としての技術提供とかはアザゼルあたりがやってんじゃねえの、人造神器」

 

「あんなものはどうでもいい。我らより簒奪した土地をすべて明け渡し、そして二度と踏み入れないことしか我らは望まん」

 

「ハイ終了。交渉の余地なしと判断しました」

 

 俺はもうバッサリと切って二丁持ちでぶっ放す。

 

 因みに馬さんは実戦経験豊富なおかたを回してもらったし、俺は乗馬経験はさすがに少ないので全部任せることにしている。

 

「悪いんだけど、すでに生活基盤がしっかりできちゃっている以上、そんなこと言われてもこっちが対処できないんだよ。ショバ代払えとか数百年単位でもスケジュールで順次減らすとか、代わりに冥界の土地を割譲とかの代案を立てる気がないなら、オタクとの交渉はなかったことにしとくべきだと上に進言しておこう」

 

 いや、実際のところどうしようもないからねそんなこと。

 

 なにせほっとんどそういうのは数百年も昔の話だったりするわけだ。すでにその場所で生まれてきちまってるやつもいるし、人間に至っては完璧に入れ替わっている。

 

 今更ここはギリシャ神話の土地だったからキリスト教徒はどっかいってね♪ などといわれて納得する奴がいるわけないだろう。発生する被害を度外視ている非現実的意見だ。今すぐやろうものなら宗教戦争勃発で数十万ぐらい死人が出るぞ。

 

「なあ、和平っていうのはこれ以上殴り合い続けてもお互い損だから妥協して矛を収めようっていう行動だ。こっちが損するだけの一方的な要求なんてもんは降伏勧告っていうんだよ」

 

 戦争しないというのは最終的な到達地点。そこから先の利益と損害の妥協点模索が和平の重要なポジションだ。

 

 そのあたりをするつもりが最初からないのなら、もお最初から敵と割り切った方が一番だ。

 

「追加でいえば三大勢力の和平派その後の交流もセットだ。つまり鎖国狙いな時点でこっちが何か言いたいかすらわかっていない。・・・まあかかわりたくないという感情があるのは否定しないし、そういう結論を出してかかわる気がないならこっちが突っかかるのもどうかとは思うけどさぁ」

 

 つまりはまあ、こいつらは最初からテーブルに乗っかるつもりもないということだ。

 

 まあ、はたから見たら傲慢かもしれないが、こっちにもこっちの生活が懸かっている上での和平なんだ、代わりの物を用意するぐらいのことはするだろうし、そのあたりのことを考慮してもらいたいものだと本気で思う。

 

 つーか交流できるんだからお前らが悪魔祓いや下級悪魔に神話のすばらしさを伝えてスカウトするっていう方法もあるんじゃねえのだろうか?

 

「ほざくな劣等! 偉大なる我らオリュンポスと対等の立場に立とうなどということこそ、傲慢の極みとしるがいい」

 

「問題児神様の宝庫で有名なギリシャ神話体系にそんなこと言われてもねえ。聖書の教えも厳しいけど、気まぐれでひどいことはしてないと思うよ?」

 

 俺は打ち合いをつづけながら、久遠のいる方向をちらりと見る。

 

 あいつ、大丈夫だよな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佑斗Side

 

 桜花さんはアサシンと一対一で向かい合う。

 

 その手には龍喰らいが握られいてるが、しかしそれは相手も同じ。

 

「笑止。いまだ手にしたことのない剣ならば隙を付けるとでも思ったか!!」

 

 そう言い放ち、アサシンは切りかかる。

 

 桜花さんはそれをさばいて反撃するが、こちらもあっさりとさばかれた。

 

「やはりだめだ。グラムやコールブランドすらあそこまで再現で来た力、禁手とはいえそこそこレベルでしかない神器のコピーなんて簡単にできる!」

 

 そして相手はその性能をほぼ完ぺきに引き出すことができる上に、サーヴァントということで身体能力はこちらより上だろう。

 

 ここは加勢するしかない! こうなればやはりグラムを使ってでも・・・

 

「数で責めるのは本意ではありませんが、彼女ほどの使い手を失うわけにもいきませんしね・・・!」

 

 してやられたことに対する怒りも込めながら、僕たちは援護のために立ち上がろうとし―

 

「待ってください。様子が変です!」

 

 副会長の言葉に、僕は一度真剣に見直す。

 

 高速で振るわれる野太刀同士の切合いは、サーヴァントの力があるだけあって桜花さんの方が不利のはず。

 

「確かにおかしい。少しずつですが、桜花久遠の方に傾いている・・・?」

 

 そうだ。少しずつ、少しずつだけど、桜花さんが動きに対応し始めている。

 

 まさか、彼女はすでに龍喰らいの性能を引き出しきっているというのか? それなら勝てるという理由にも納得いくが、目覚めてまだ一年もたっていないその力を完全に引き出しているだなんてありえるのか。

 

 そして、少しずつだが戦闘は桜花さんが押し始めている。

 

 なんだ、一体何が起こってるんだ!?

 

「ぬ、ぬぉおおおおお!? 馬鹿な、剣の性能は確かに私が引き出しているはず・・・!」

 

「あのさあ、何か皆勘違いしてない―?」

 

 かすり傷をいくつも作りながら、しかし桜花さんは真剣かつ平然とその場で戦っていた。

 

 そこには何かしらの呆れのようなものが浮かんでおり、そしてそれはどこか自分に向けられているかのようでもあった。

 

「剣士は剣の力で切る生き物じゃなくて、剣を使って切る生き物だよー? 剣の性能ばっかに頼って、本人の切る能力を高める努力を忘れてちゃダメダメだよー!」

 

 そして、いきおいよく反撃が始まった。

 

 まるで動きにくい服を脱いだかのような軽く鋭い動きで、アサシンを一気に翻弄する。

 

「ぬぉおおおおおおおおお!? なんだ、なんだこの動きは!」

 

「対したことはしてないよー。今までブロッサ・タイムの動きで戦ってたのを、桜花久遠の動きを作って少しずつならしてただけー」

 

 え、えっと、どういうことだ?

 

「ま、まさか・・・っ!」

 

 副会長が何かに気づいたかのように目を見開き、心底馬鹿らしいといった感じの表情になった。

 

「どうしたのですか? 先程の言葉遊びみたいなものに一体何が?」

 

 アーサーも茫然としながら、しかし不思議に思ったのか質問する。

 

「桜花の特訓は基本的に勘を取り戻すという行動が主軸でしたが、その勘の元である前世、ブロッサ・タイムと桜花の体つきは全く異なっていました」

 

 そういえばそういった話を聞いたことがあるような。

 

「桜花あなた、まさか今までその体でブロッサ・タイムの動きを無理やり行おうとしていたのですか? 身長差が20cmはある体の動きを再現しようと!?」

 

 え?

 

 いや、ちょっと待ってくれ。

 

 身長さ20cmってもうあれだよね。体の動かし方とか、全然違うよね? っていうか確か前世は180ぐらいあったからもっとあるよね!?

 

 そんな動きをあの小柄な体格で再現しようとしたら、そりゃ無理があるというかできるわけがないよね。

 

 いやそんな、自分の動きをまず教えてから、すぐに生徒たちに合わせた動きを思いついて教えるという主腕を見せた彼女に限ってそんなこと・・・。

 

「・・・昨日教えててようやく気付きましたよー。まずはブロッサ・タイムの動きから桜花久遠の動きに再構築するのが大事だってー」

 

 ええええええええええ!?

 

 い、今までそんな無茶な方法で戦ってたのか! それでグレモリー眷属をああも追い込んだなんて嘘だろう!?

 

「き、昨日? まさか一日で体の動かし方を構築しなおし、実戦で使えるレベルにまで肉体に覚えさせたというのですか?」

 

 あまりの事態にアーサーも狼狽している。ああ、気持ちはよくわかる。

 

 つまり彼女がやっているのはこういうことだ。

 

 剣の性能を引き出すという勝負は捨て、剣を扱う自身の技量だけでサーヴァントと渡り合っている。

 

「・・・く! これ以上付き合っても勝ち目は無いか!!」

 

 アサシンは状況が不利になったとみるかあわてて後ろに飛び退る。

 

 そのまま後退しようとするが、突如壁にぶつかったかのように動きが止まる。

 

 いや。あれは―

 

「アーティファクト応用編。こっちの魔法技術も利用して壁を作っといたよー」

 

 あの戦闘の最中に仕込みまで済ませていたのか!

 

 歴戦の傭兵というのは伊達ではなかった。なんだかんだで彼女の立派な策士だ!

 

「れ、霊体化―」

 

「させないよ」

 

 アサシンの体が足元から消えていくが、しかし桜花さんの動きの方が速かった。

 

「斬魔剣!」

 

「がぁっ!」

 

 ましょうめんから袈裟懸けに切られ、アサシンから鮮血がほとばしる。

 

 その傷跡を見ながら、アサシンは自嘲的な笑みを浮かべた。

 

「強大な力におぼれ、暗殺を忘れたがゆえに結末か。自業自得とは、よくいった・・・もの―」

 

 そういい残し、アサシンが消滅する。

 

 た、倒したのか。サーヴァントの一体を。

 

 それをなしたのは桜花さんだが、その偉業はおそらく広く知れ渡るだろう。

 

 模倣能力の劣化再現とはいえ、相手の剣をコピーしてその性能を100パーセント引き出せる剣士相手に、剣士がそれを上回って勝った。

 

 目の前のそれを成し遂げた彼女の姿に、僕は強い衝撃を受けてしまった。

 

「・・・じゃ、死神は兵夜くんに任せて学校の方に行きましょうかー。アーサーさんには子供たちを逃がしてもらわないといけないしねー」

 

 やはり彼女は、すごい人だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




弘法筆を選ばず・・・いみ、優れた人物はどんな道具でもいい結果を出す。

つまり剣の性能を引き出す勝負ではなく人を切り倒す技量の勝負に持ち込みました。


んでもって久遠のパワーアップは極めて単純。今まで久遠はソフトが同じだからって全く違うハードを同じ使い方で動かそうとしていたわけです。

それを、人に合わせて自分の動かし方と違う動かし方を教えることでようやく気付いて、一日でアジャストしなおした結果ロスが大幅に減ったというわけです。

まあ、それでも本来英霊クラスを相手にするのは苦戦必須なわけですが、ベースがアサシンであるがゆえに性能がセイバー本来よりも劣化していたことと、セイバーそのものが特殊であったことが原因で終始優勢。さすがにオリジナルが相手の場合はもっと苦戦してます。

頂点に到達していない剣士に対する天敵であるセイバーに対する究極のアンチテーゼです。転生者味方組の中でも安定した実力者である久遠だからこそできる回答でした。

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