ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
祐斗Side
戦闘は此方の勝利に終わろうとしていた。
邪龍の数も少なくなり、何よりアグレアスから増援が来てくれたことも大きい。
宮白くんが用意した龍殺しの弾丸は大活躍だったようだ。これは今後のクリフォトとの戦いで大きな力になってくれるだろう。僕も龍殺しを大量に作らないと。
「これは大変ね。まったく萌え萌えできませんわ」
さすがに状況が不利になったのを理解しているのか、ヴァルプルガも冷や汗を浮かべて逃げ腰になっている。
『いやいや逃がさねえよ。龍王怒らせてただで済むと思ってんのか?』
だが匙ににらまれていてはそう簡単にはいかない。龍王の力を利用した禁手の出力は、神滅具にだって引けを取らないのだから。
イッセー君たちからの連絡はまだないが、しかし彼らならロスヴァイセさんを助け出すと信じている。
だからこそ、ここで負けるわけにはいかなかった。
「さあ、行こう皆。ここで僕たちが負けるわけには―」
『おぉっとそうはいかないぜこの野郎!』
突如、空間が割れた。
あれは次元の狭間だ。いったい何があった?
それにこの声はフィフス。まさかこのタイミングで増援だと!?
『悪いが神滅具をこれ以上奪われるわけにはいかないんでな。そいつにはまだ協力してもらう必要があるし、助けに来たぜヴァルプルガ!!』
そんなフィフスの声を響かせながら、割けた空間を潜り抜けて現れたものに、僕たちは目をあんぐりを開いてしまった。
SF映画に出も出てきそうな空を飛ぶ船が、僕たちの眼の前に現れた。
え、あれ、なんだあれ!?
いや待て、そういえば僕たちはあれに似たものを知っている。
宮白くんのラージホーク。あれとどことなく似ている雰囲気がある。
その場にいる全員がそれを理解したのだろう。僕達の視線は一斉に桜花さんに集まった。
「あれは魔法世界経由ですか、桜花!!」
「あ、はい。魔法世界じゃああいう飛行戦艦とかが結構出てくるんですよー。いやー、昔はよく切ったなー」
「懐かしがってる場合じゃないぞ!!」
由良さんが思わずツッコミを入れるが、確かに懐かしがっている場合ではない。
彼らはなんてものを作り上げたんだ。テロリストのはずなのに技術力では僕達を上回ってないかい!? 異世界の技術者とか向こうに集まりすぎじゃないかい!?
あとよく切ったってあの大きいのを!? 桜花さん少し暴れすぎじゃないかな!?
と、思ったその瞬間その飛行戦艦から何かが飛び上がった。
いや、何かなんて言うまでもない。僕たち悪魔の戦いではあまり見かけないが、しかし人間たちの間ではよく使われる戦争用の兵器。
「「「「「「「「「「ロケットランチャー!?」」」」」」」」」」
『ミサイルだよお馬鹿がこれが! さあ防げるものなら防いでみろ!!』
くそ! あんなもの一発でも落ちたらアウロス学園が持たない!
しかもご丁寧に全部アウロス学園を狙って落ちてきている。僕達の性格をよく理解しているたちの悪い真似を。
何とか迎撃が間に合ったが、その隙を突かれてヴァルプルガが戦艦の中に駆け込んでしまう。
いや、僕たちがあの戦艦を落せばヴァルプルガも確保できる。
しかし、フィフスを同時に相手にすることになるのでは僕たちの中にも犠牲が出るかもしれない。せめてイッセーくんか宮白くんが来てくれれば何とかなるのだが・・・。
『はっはっは。赤龍帝や神喰いが来る前に逃げるに決まってるだろう。そして殿もおいていくぜもちろん!!』
殿? 一体誰を出す気なんだ?
そう思った僕たちの視界の先、戦艦から人影が出てくる。
そしてそれを見た瞬間、桜花さんが悲鳴を上げた。
「ぎゃー!? 隊長ー!?」
「龍王とかいうUMAはどこだぁああああああ!!!!!」
く! まさかここでふんどしが来るとは思わなかった。いや、ここ最近出続けてるから想定してしかるべきだったか!
だが、宮白くんがそのあたりの対策は考慮してくれている。彼は本当に頭の回転が速い。
そして桜花さんの協力の元実験も成功している。少なくとも対抗策はちゃんとできている!
かなりショックな出来事もあったけどだからといって負けてやる義理はない。
D×Dの一員としてやるべきことはきちんと果たす!
「おーおーカッコいいところ悪いけど、真打忘れてもらっちゃ困るぜ諸君!」
この声は!
「お手数おかけしてすいません。これから援護することでお詫びします!」
「ロスヴァイセはしっかり助けてきたわ! さあ、私のかわいい下僕たち! 最後の戦闘もしっかりこなして、胸を張って勝利を飾るのよ!」
「アンタも本当にしつこいなふんどし! だったら俺たちも容赦しねえよ!」
ロスヴァイセさん、リアス部長、イッセーくん。それに―?
「なんで宮白くんだけボコボコなんだい?」
「女性優遇の結果だ」
ああ、これはまた宮白くんが何かやらかしてお仕置きされたんだね。
いったい今度は何をしたんだろうか・・・。
「まあそれはさておき!」
宮白くんはツッコミを入れさせないためにことさら声を大きく動きも派手にふんどしに宣戦布告する。
「対貴様戦術はすでに構築した。これまでのようにチートできると思うなよ!!」
「よかろう! ではこちらも本腰を入れてぺろぺろしに行かせてもらう! 主にファーブニルを!」
「隊長ー。絵面がいろいろとひどいんでやめてくださいー」
桜花さんが割と本気で額に汗を浮かべてそれを止めようとする。
パンツを食べるドラゴンを舐める男・・・。確かにこれは絵面として非常に悪い意味で来るものがあるね。
「しかし止めん! さあ、ぺろぺろタイムのスタートだ!!」
Side Out
いうが早いか全方位に気の弾丸がまき散らされる。
それは例えていうならば人間サイズに圧縮した要塞。ガトリングガンのようにばらまかれる低威力の弾丸でこちらの機動力を削ぎながら、そこをピンポイントでつくかのように大砲クラスの一撃が飛んでくる。
大したダメージにはならないが足止め確実の弾幕と、喰らうと確実に大打撃になる大技の複合。
無駄に豪快というかワイルドというかインパクトがあるからパワータイプと思っていたが、こいつは久遠の上司なんだ。
隙の無い技量を同時にしっかりと持ち合わせており、そしてその水準は一つの世界の人間の到達点。
変態ではあるがそれに見合うだけの力量はある。歴代二天龍でも一対一で倒すには覇龍が必要だろう。
ある意味次元を超えているイッセーやヴァーリを同時に相手してなお渡り合っただけのことはある。
転生者の基本スペックは平均値より高いやつはいても封印指定されるほどの正真正銘のキチガイスペックはそこまでいないと判断されていた。
ナツミですら世界大会参加を狙えるレベル程度。久遠はあくまで部隊長の範囲内。ベルはポテンシャルだけなら世界ランカークラスとのことだが全く鍛えてない宝の持ち腐れ。小雪はあくまで一エージェントの範疇内。
まあ何気に
しかしそれを踏まえてなお頭一つとびぬけているのがこの化け物。転生前の戦闘能力でいうのならば、この男は間違いなく現時点で発見されている中では最強だろう。
全力のサーゼクスさまクラスですら勝負になりそうな領域。ああ、接近を仕掛けているメンバーが、すでに何人もぶちのめされている。
それでも一人も殺されていないのは、アーシアちゃんが回復のオーラを大きく広げているからだ。
ダメージを受けたそばから即座に回復。致命傷レベルのダメージすら即座に回復するアーシアちゃんの回復力は、最初からダメージが喰らうことが確定している状況なら垂れ流しにすることで強固な防壁を生み出すことができる。
もちろんこれは回復の恩恵をふんどしにも与えることになるが、しかしこれは別に構わない。
とにかく一撃クリティカルな有効打を与えてからでなければ押し切られる可能性があるのだ。ならば敵すら回復してでも有効打を与えるまで安全策を取るのは愚作ではない。
できれば蒼穹剣を使いたいところだが、すでに一度使ってしまっている以上これ以上の使用は現実的ではない。っていうか無理。
だからこそ、最後の切り札を使うしかないのだ。
「おら行けイッセー&小猫ちゃん!」
出せる限りの榴弾を出し、加えて大量の光魔力の槍をぶっパしながら俺は道を作り出す。
さあ、行ってこい!
「うぉおおおおおおおお! 行け、小猫ちゃん!!」
「はい!」
小猫ちゃんの新技白音モードが発動し、より高い出力で仙術が行使できるようになる。
思い出す。そう、アレはシトリーとのレーティングゲーム。
あの手この手でハメられながらも頑張ってほとんどの眷属を撃破したのはいい思い出だ。
そして久遠一人に文字通りイーブンにまでもってかれたのは割と悪夢だ。
その際反撃の起点となったのは小猫ちゃんのファインプレーだ。
仙術の一撃が通ったからこそ、それで足が半ば殺されたからこそあそこまで肉薄できた。
そう、それはつまり―
「名前が同じなだけじゃなく、魔法世界とこの世界の気は性質も似通っている。・・・お前は仙術による気の乱れは防ぎきれない!!」
最後の足止めのために呪詛を満載した魔弾をばらまきながら、俺はそう言い放つ。
そう、化け物じみたこいつを消耗した状態で倒す唯一のクモの糸。
それは仙術による奴の気のバランスの変化だ。
そして、小猫ちゃんも本領を発揮する。
「いきます・・・っ!」
瞬間的に、小猫ちゃんの体が成長する。
・・・これぞ新技白音モード。小猫ちゃんが一時的にブーストする新形態だ。
そして大人の体型になるのも特徴的だ。眼福なんだがこの空気ではヒャッハーできん。
ちなみにナツミは「ロリ《売り》を捨てるとは馬鹿なやつだなぁ」と純粋にほざいていた。ロリと売りをかけるセンスはともかく、お前はもうちょっと自分の幼児体型を気にしようか。
そんな脱線をしてる間に、まさに接触する寸前にまで行った。
これならさすがに迎撃できまい! 俺たちの―
「・・・甘い!」
次の瞬間、背中から気弾が発射されて小猫ちゃんが完璧なカウンターを喰らった。
「お前はどこの達人だ!?」
「達人だとも!!」
くそ! これじゃあ―
「・・・秘密のまま終わらせたかった秘密兵器が必要不可欠じゃねえか!!」
「うるせえよ!!」
俺の絶叫にイッセーが突っ込みを入れながらそのまま突進。
もろにカウンターを喰らった小猫ちゃんはほぼ動けない状態だったが、それでもイッセーに手を伸ばす。
「・・・お願いします!」
「おう!!」
「・・・あ」
ふんどしも気づいたようだがもう遅い!!
「やっちまえ、イッセー!!」
小猫ちゃんのおっぱいを喰らったイッセーが窮地を潜り抜けたことでどうしても生まれる隙をつき、ふんどしにキッツいボディブローを叩き込む。
そしてまあ、誰もが想定できるだろうが、小猫ちゃんバージョンは当然のごとく仙術の使用だ。
とうぜん、気は大きく乱れて動きが遅くなる。
「ぬぅうううううう! だがこれしきで―」
「いや、終わりだよ!」
何とか体勢を整えなおそうとしたふんどしの顔面を、匙がしっかりとつかんだ。
「お前がどんだけUMAだか馬だか好きだか知んないがなぁ・・・っ!」
次の瞬間、見るだけで同情してしまうほどの漆黒の炎がふんどしを包み込んだ。
「俺の惚れた女の夢見た場所で、変態行為なんかしてんじゃねえ!!」
・・・いっちゃった! いっちゃったよ匙くん!
ああ、会長顔まっか!!
小猫ちゃんバージョンはまあわかりやすいですよね。
とはいえふんどしはこれで終わりではありません。転生者の純粋な戦闘能力において最強の名は伊達ではないのです。