ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
スカイライトの魔術は単純であるがゆえに脅威だ。
なにせ攻撃力が九倍である。当てることだけを考えて威力が極めて低いような攻撃すら九倍になれば相応に危険だ。それが大威力ともなればどうなるか。
「変な手加減したのが間違いだった。・・・一発で決めてやる!!」
泣き笑いのような表情を浮かべて、スカイライトは術を展開する。
もはや手加減はしないといわんばかりに、最大級の術式を放つつもりだ。
「小雪、行くわよ」
短くそう告げると、朱乃は全力を出す。
雷光だけではない、かつて宮白兵夜に持たされた磁力操作の礼装すら使い、最大級の一撃を叩き込まんと出力を上昇させる。
小雪は素直にそれにこたえる。
すべての防御を投げ捨て、そして手を抜き手の形に切り替えた。
自分の能力を本来の形に置き換え、加速をかけるべく意識を集中させる。
・・・思えば、本格的にこの技術を使うのも久しぶりだ。
大気の噴出点を自分の体に接続し、高加速で反対側のビルなどの想定外の地点から接近。一気に本命を素手で殺すのが彼女の本来の戦闘スタイル。
能力者同士の戦いも考慮して様々な戦闘技術を習得していたが、本命は近接暗殺だった。
これをやめるよう言われたのはあの事件からだ。
もともと聖書の神の死の影響をある程度研究していたアザゼルは、小雪の能力がこれまでにないことからある程度の正体に気づいていた。
そして小雪も限界だった。怖くて隠していたことが原因で、家族を失った苦しさに耐えられなかった。どこかに吐き出したかった。
だから全部話した。
自分が異世界と呼ぶべき世界の出身であること。そこの異能の詳細。自分の立場と経歴。当然裏社会の刺客として生きてきたことも全部話した。
そのうえで小雪は懇願したのだ。
もうこれ以上何もしないで後悔するのは嫌だ。頼むから何かさせてくれ。汚れた自分だからこそできる、そういった仕事がほしいと。
だがまあ結局はヴァーリのお目付け役である。まあ使いこなせば手が付けられなくなる神器ので、正面戦闘ではなく暗殺が妥当なのはわかるが、ほかの仕事もおおむね汚れ度が少ないのが不満といえば不満だった。
その癖、神器と光力のかみ合わせもあったが銃撃中心のスタイルに矯正する羽目になった。と、いうより素手などの暗殺能力を極力避けるように言われてしまった。
『んなもん今更引きずったっていいことねぇよ。さっさと捨てて忘れちまえ』
バッサリと切られて怒るに怒れなかったことも思い出す。
必要となれば冷徹な判断も辞さない性分だが、その実どこまでも面倒見がいい人で、その人の願いを断ることはできなかった。
だが、今はあえて使おう。
すべては過去の清算のため。
自分の罪と向き合うため。
何より、朱乃や兵夜とこれからも歩き続けるために。
「くたばれ、マリンスノぉおおおおおおおおお!!!」
「やらせません!!」
龍王にすら届くであろう威力の増幅された術を前に、しかし朱乃は全力で拮抗する。
刮目せよ。これが雷光の末裔の本領だといわんばかりに、一瞬だが、しかししっかりと相殺した。
そして、凶手は一種のチャンスを逃さない。
「小雪!!」
「ああ」
自分の体の影響すら半ば度外視した最大加速。
音速すら一瞬で突破するだけの超加速を受け、しかし小雪は冷静に一撃を突き出した。
「・・・本当にごめんな。でも、あたしは進むよ」
その言葉とともに、小雪は最大級の一撃をスカイライトに叩き込んだ。
「そうじゃないと、今度はあいつらが引きずっちまう。それがあたしの
「・・・そう」
その一撃を
「まあいいわよ。とりあえず、
偽りすら身にまとった聖剣と、邪悪に染まった聖剣がぶつかり合う。
父に対する憎悪を一心に受けながら、イリナはその攻撃をさばききる。
エクスカリバー使いであった自分と、偽物とはいえエクスカリバーの相性はいいに決まっている。
自分の担当は天閃ではなかったが、それでもエクスカリバー使いだったのだ。だからこそ性能を少しは引き出せる。
そして最大の懸念である邪龍も、
「全部まとめて撃ち落とす!!」
僧侶の特性を発揮した一誠の一撃は、味方をすり抜ける。
ゆえになんのてらいもなく放つことができる砲撃が、龍王のオーラを問答無用で相殺していた。
むしろ八重垣の方が防御のために集中しなければならないほどで、戦闘の趨勢はこちらに傾いているといってもいい。
だがそれでも、憎悪の牙城は崩せない。
「ふざけるなよ! ふざけるなよ! ふざけるなよ!? なんで君たちはそんなことになってるんだ!?」
許せるわけがない。許したいなんて思わない。
当然だろう。自分たちの愛は引き裂かれて消し去られたのに、寄りにもよって消し去った相手の子供が同種の愛をはぐくんでいるのだ。
これで怒りに燃えなかったら、それこそどうかしてるといっていい。
とてもわかる。心からわかる。今なら本気で理解できる。
かつての自分だったら、同情はしたかもしれないがそれでも相手が悪魔だから仕方がないと言い切ってしまうだろう。
今はとても言えない。いえるわけがない。
だから―
「だから、私がパパの分まで引き受ける!!」
鎧越しとはいえ日本最強の聖剣の一撃は防ぎきれない。
全身がかすり傷を受けているし、重傷といえるものもいくつもある。
だけど、それでも―
「それでも、私は死なない!!」
だって、
だって、
何よりも―
「イッセーくんと―」
愛する人と―
「これからも生きていたいから!!」
だからこそ、オートクレールはそれにこたえ、オーラを最大限に放出する。
そしてそのまま、思いのままに、イリナは八重垣を一閃した。
「・・・ああ、できることなら」
だからこそ、八重垣の言葉が耳に痛い。
「―僕も、そうしていたかったよ」
これは、絶対に忘れてはいけない。
それが自分の
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