ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
憎悪、受け止めます!
豪奢な聖堂の一室に、俺は今座っていた。
とりあえずスーツは着ているが、しかし悪魔がこんなところに来るなんて前代未聞だろう。
それが冥界の重鎮や、魔王様なら話は分かる。
だが、なぜか俺が呼び出されていた。
今回、俺が呼ばれたのは合同模擬戦のことだ。
その実、模擬戦の名を借りた壮絶な殴り合いとなることは想像に難しくない。
実際俺が企画した最大の目的は、和平に納得いかない連中のガス抜きが目的なのだ。せいぜい全力出して殴り合って、うっぷんを晴らしてほしいと思っている。
そういうわけで、クーデターを計画していた連中がそれを中止してこの模擬戦に参加する気になってくれたのは素直にうれしい。
理由が、
で、そのクーデターを首謀していたとかいう司教枢機卿が俺に会いたいといってきたらしい。
なんでも俺が模擬戦の発案者だからだが、さてどうしたもんか。
「せめて上級悪魔クラスの箔があればよかったんだが」
「何言ってやがるんだこの馬鹿」
と、付き添いできたアザゼルがため息をついた。
「お前は功績的になってもおかしくなかったんだよ。それをハーデスボコった件で禁止されてるから成れなかったんだろうが」
ぐぅ。確かにその結果死神の禍の団入りを招いたのは失敗だったが。
「イッセーたちと違って戦闘以外の国益を上げまくってるから、そのあたりから異例の短時間での上級試験だって可能だってのに、何やってんだお前は」
「うるせえよ。見せしめは派手にやんなきゃ効果ねえだろ」
「怖いわ!! おまえそんなだから性格悪いって言われんだよ」
と、喧嘩しているとドアがノックされた。
「・・・お待たせいたしました。テオドロ・レグレンテイ猊下の準備が整いました」
「貴方が、宮白兵夜殿か」
そこにいたのは、まだ小さな子供だった。
なんでも技術が発展する前から出てきた天使と人間のハーフだとのことだ。
「初めまして。そして、クーデターを考え直してくださって感謝します」
俺は素直に感謝する。
「この一年足らずにおける急激すぎる変化に、耐えられないものが出るのは予想の範囲内でした。その爆発を抑えていただき、本当に感謝いたします」
「き、気にしなくていい。我々は納得のいかないこの想いを考えてほしいだけなのだ。天界が滅びの危機に瀕したとあっては、もはやそれどころではないだろう」
なるほど、まだ子供っぽさが抜けてはいないが、教会の準トップを務めることはある。
教皇に次ぐ地位にある司教枢機卿。その地位に見るからに十歳前後の少年が付くとか驚きだったが、それだけの素質はあるようだ。
「だが、不満が限界に達しているのもまた事実。その怒りを直接悪魔にぶつけ、しかし天のお達しである和平を壊さないこの機会は我々にとって渡りの船だ。・・・感謝する」
「いえいえ。新たに悪魔になりたての私としては、どうしてもろくにかかわってこなかった戦争の影響を受けるのは抵抗があるのですよ。私的な理由が半分を超えているので、そこまでされては恐縮です」
ああ。これだけの威厳を備えるのに、いったいどれだけの年月が必要なのだろうか。
それを転生者でもないのにこの年で持つなど、もはや尊敬の念すら覚えるだろう。
「・・・だなんて、建前を言う必要はないさ」
だからまあ、こっちとしては大人らしい対応をするべきだろう。
「―っ」
「防音結界は晴らせてもらった。もう中の様子はアザゼルでもすぐには把握できない。アーチャー製だから奴でも三十分はかかるだろうな」
外の気配が変わらないことを確認してから、俺はにやりと笑って見せた。
「・・・この業界は若手がいろいろ活躍できる業界だが、君はさすがに若すぎる」
まさか魔法世界に匹敵する実力至上主義だとは思わなかった。うん、ちょっとやりすぎだよ年長者。
「年長者として、なにより提案を受けてくれた恩義がある身だ俺は。餓鬼のわがままに付き合う気もくそ野郎の八つ当たりに付き合う気もないが、小さな子供の面倒を見るぐらいの甲斐性は持ってるつもりでな」
だから、俺はそっと彼の頭を撫でた。
「不満分ぶつけろよ。それが模擬戦起こす条件だ」
そういってから数秒後、俺は光の槍をもろに喰らった。
・・・ここまで我慢してたとは。念のために戦車に昇格して魔術強化までしていたが、下手したらあと残るなコレ。
「・・・私の両親は、悪魔に殺された」
ぷるぷると、震えながらテオドロは絞りだす。
それは、和平が結ばれる前なら当然起こってしかるべき出来事。
客観的に見てどこの勢力も相応にされたことで、だからこそ和平を起こすのであればお互い掘り出さないだろうこと。
「・・・クーデターを起こそうとした者たちは、ほとんどがそうだ」
だが、当事者としては一生残る傷といってもいいだろう。
ましてや、相手は悪と教えられた者たちなのだから。
「・・・貴方のようにいい悪魔もいるのかもしれない。だが、悪い悪魔だって何人もいるのだろう?」
世界情勢的に、動くとするならば即座に動かなければならなかったはずだ。下手にゆっくり動けばそれが隙となり余計な動乱が起こりかねない。
だが、急激な変化は基本的に毒だ。
体が熱くなっているときに冷水をかけられれば、心臓麻痺がおこりかねない。
深く潜った後に急激に海面に出れば、血管の中に泡が生じて死にかねないように。
高山の山頂に駆け足で登った人間が、時に高山病で死に至るように。
「・・・我々のこの無念は、怒りは、憎しみは!! どこにぶつければよかったのだ!!」
・・・世の中、本当にままならないものだ。
「その言葉、必ず四大魔王様に伝えるよ」
ぼろぼろ涙をこぼす小さな子供の頭を撫で、俺は素直にそれを約束する。
「安心しろ。サーゼクス・ルシファーは俺の義兄になる男だ。義弟としてしっかりと伝えておく。・・・悪い悪魔はお仕置きを受けれる社会を作るよう、しっかり頑張らせるから」
ぽんぽんと、小さな子供をあやす基本的なことをしながら、俺は本当に苦労性だと痛感する。
「大丈夫。天使は悪いことをすると神が作ったシステムで堕天使になるんだから。君は神に悪いことはしてないって認められてるよ。堕ちてないのがその証拠だ」
少なくとも、悪なる行いではないと認められている。
だからまあ、それはしっかりと受け止めないとな。
「だから君たちも手伝ってくれ。そうしてくれれば今よりましな世界にできるはずだからさ?」
・・・まったく、後でしっかりと首脳陣に迷惑料を徴収しておくとしよう。
兵夜としても、子供に無茶を言う気はないのです。
しっかり恨みつらみは受け止めて、そのうえで先を進むべき。実際システムも寛容な判断を下したわけです。
・・・そういうわけで、この章のバトルは派手に行きます。
規模なら原作をはるかに凌駕。ついでに悪魔側の不満持ちも巻き込んで、盛大にガス抜きをしてやろうというのが兵夜の狙い。さらに長期的な戦争状態にもなれておくための練習台に使用などと打算もしっかり考慮していたり。
デュランダル編はベル編でもありますが、同時に今までの四章がベル編ともいえます。
四章を全体的に使ってベルの特訓編にしましたが、兵夜はそこに思うところがあるわけで・・・