ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
正月、俺たちは京都の神社に来ていた。
わざわざ初詣に行くという真似をしているが、転移によって距離を大きく無視できるというのが大きいだろう。
「日本の神殿も大きいところは大きいのね。そして人が増えたものよねぇ」
「だろう? いろいろと問題もあるが、同時にいいところもしっかりあるんだよ」
俺はアーチャーにそう答えながら、屋台で買った焼き鳥を食べる。
・・・新年、よく迎えられたよなぁ、俺ら。
「聖杯戦争なんてひと月もかかわらず終わり、しかも高確率で死に至るのになぁ」
「本当に頑張って生きてきたわね。素直に評価します」
まったくだ。なんで俺生きてんだろ。
頑張った。俺、頑張ってるよなぁ。
「それにしても、最近少しすっきりした顔をしてるわね。何かいいことでもあったのかしら?」
「ああ、ちょっとやけ酒してたらいい相談相手に恵まれてな」
正体をアザゼルから聞かされた時は、心底驚愕したぞ。
っていうか安酒場に枢機卿が来るか、オイ。
だが聖職者を名乗るにふさわしい人物だったのは事実だ。
悪魔でハーレム作っている俺みたいなやつにも、真摯に相手をしてくれた。しかも助言までしてくれるとは、本当に素晴らしい。
聖職者っていうのは本来ああいう人たちのことを言うんだよ。ああ、マジで救われた気がする。
「だけど、ベルは全然あってくれない・・・っ」
「き、気にしてはいけませんわ宮白さん。ベルさんはあくまでまじめに対応しているだけなのですから」
思わずレイヴェルに同情されるが、しかしタイミングが悪い。
ベルは最近こっちに来すらしていない。今はバチカンの方に行っており、行き違いになった形だ。
―実質申し訳ありません。
今回、教会側から模擬戦の代表選手の一人になってくれと嘆願されました。やるからには勝ちたいということで、戦力となるものを用意しておきたいとのことです。
つきましては、ゲンさんと一緒に一旦バチカンへと戻らせていただきます。
模擬戦の際に手心を加えるのも加えられるのも嫌なので、模擬戦が終わるまで実質会わない方がいいでしょう。
などという置手紙を残されては問いただしにも行けない。
大丈夫。大丈夫だ。
「マジ聖職者の導きありがとう!! おかげで覚悟決まった!!」
「覚悟決めなくていいから。そんな心配しなくていいから」
「あきらめなさいナツミ。性分よ」
ナツミとアーチャーが後ろでなんか言ってるが、聞こえない聞こえない。
うん、頑張って前を向いて生きていくぞ!!
などと思っていたらいつの間にやら九重もきて、初詣はいろいろと大きなことになってきた。
なんでも姫様と相談して、駒王学園の中等部に通う予定だそうだ。
イッセーは子供に人気だからな。親が親だし、すごいナイスバディに育ちそうだ。よかったな。
「でもほんと、教会でクーデターが起きなくてよかったね」
木場の意見には心底賛成だ。クリフォトの相手をしなくてはいけないこの状況下。今の三大勢力にクーデターに対応する余裕はない。
まったく。和平締結直前から禍の団が仕掛けてきたせいで、やるべきことが未だにやれやしない。
そしてそのツケが俺たちに乗っかるとか、マジ勘弁してほしいのだが・・・
「実際にクーデターが起きたら面倒なことになっていたぞ。エクスカリバーとデュランダルが、これまでの研究でレプリカを作ってしまったらしい。しかも歴代でも最高峰の使い手がクーデターの主導者だったらしいから、激突したらこっちにも相応の被害が出るしな」
「へえ。それは・・・確かにね」
ん? なんか木場の様子がおかしいんだが。
―スパァン!!
「ゼノヴィア! なんでそんな目立つタイミングでキスしてんだ!! 見え見えだろうが!!」
「いいではないか! 私もナツミのように堂々とキスしたいのだ!! 何より戦闘中にするほど私は空気が読めなくないぞ!?」
「ファック!! ファックファックファック!! あれは気の迷いだ!! ちゃんと空気は読める!!」
どうやらゼノヴィアが何かしたらしい。小雪に張り倒されて口喧嘩になってる。
うん。今までは遠慮してたのかアザゼルや俺に甘えるようにするのが精いっぱいだが、ちゃんと物理的ツッコミの役目を果たせるようになったのか。
「成長したなぁ・・・」
「宮白先輩。ゼノヴィア先輩が指を指てるので宮白先輩もダメージ受けてますよ」
小猫ちゃん。俺も現実逃避ぐらいしたいのだよ。
まあ、ゼノヴィアも生徒会選挙に生徒会長として出馬するらしいし、いろいろとテンションが上がっているのだろう。
いつものことだというツッコミは入れないでくれ。だから現実逃避しているのだ。
なにせ、俺参加するからね模擬戦!!
いや、個人的には俺としては教会側が消耗戦の果てに勝利ってのが一番いい結末だと思うのだよ。
悪魔側は戦争継続派が真っ先に旧魔王派になって出て行ってくれたわけで、今回の和平に対する反感は比較的少ない部類なのだ。
そういう意味では教会よりも余裕があるから、一敗ぐらいしても余裕はあるだろう。
お互いに全力でぶっ倒れるぐらいにヘロヘロになるまで殴り合えば、何とかすっきりすると思うのだ。
一応悪魔側も和平に不満を持っている連中がメインだが、どう転んでもある程度カマセにする必要があるし、そういうのに納得してくれそうな連中も入れる必要がある。
今のところ、メンバーの数割をグランソード派閥にすることで、負けたときの言い訳もできるようにしている。本人も元テロリストの自分に人気が集まっていることを危険視しているので、ここで情けないところを見せてガスを抜きたいそうだ。
「そういうわけで、今回はだいぶ楽できそうだぜ、みんな」
さてさて、今後はいったいどうなることやらねえ?
「・・・ああ、それなんだけどさ。僕も参加していいかな?」
と、木場がそんなことを言ってきた。
「ん? 別に一人や二人なら捩じ込めるし、イッセーは士気向上のために無理やり入れるが・・・どうして?」
「おいマテ宮白!! 俺にも休みをくれよ!!」
イッセーの文句をスルーし、俺は木場に質問する。
特に木場が参加する必要はないわけだし、慣れない副部長で苦労しそうだから休んでくれてよかったのだが・・・。
「いや、最近の揉め事で実験の時の嫌な思い出がぶり返してきたから、ちょっとぶつけ合ってガス抜きしようと思って」
ふむ、確かに教会にいたときの木場の過去は悲惨といっていいものだろう。
それがぶり返して来たのなら、ガス抜きの機会を与えて発散させるの特に問題はないが・・・。
「ああ、それなら私も参加していいだろうか?」
と、今度はゼノヴィアまでそんなこと言ってきた。
「おいゼノヴィア。お前は生徒会選挙があるだろうが」
「そういう宮白も、準備をしながら参加するのだろう? この模擬戦にストラーダ猊下が参加すると聞いてな。デュランダルの担い手として胸を借りようと思っているんだ」
・・・ああ、あのおじいさんか。
実にいい人だった。俺みたいな不良優等生なんぞの相談に真摯に乗ってくれた、正真正銘の聖職者だ。
なるほど、あれだけの素晴らしい人物の後任として、自分がどこまで行けているのか試してみたいのか。
「下手に溜め込んでもあれだな。OK、それじゃあ何とか捩じ込、んどくよ。・・・あ、これ以上は俺の負担が大きいので、参加したいなら別口を探すように!!」
一応釘を刺しておきながら、俺はしかし不安になってきた。
木場の奴、変なこと考えてなければいいんだが・・・。