ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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レーティングゲーム・始まります!

レーティングゲーム。

 

 悪魔同士が自らの下僕を様々なルールで競い合わせる、悪魔の間の交流試合。

 

 このルールに置いて、圧倒的にその地位を高めた上級悪魔が存在する。

 

 その名をフェニックス。

 

 神話における聖なる獣の名を持つその一族は、聖獣のフェニックスと同じ力を手にしている。

 

 すなわち不死。

 

 すなわち癒しの力を秘めた涙。

 

 そこまで復習して、俺は軽くため息をついた。

 

 ・・・攻略法は見えたが、難易度が抜群に高いのは決して変わらないな。

 

「メシが不味くなった」

 

 晩飯の玉子丼をかき込みながらの情報収集は、実に面倒なことになった。

 

 これは実に面倒だ。

 

 そりゃあ自信を持つわけだ。これで負ける方がどうかしている。

 

 朱乃さんに頼んで悪魔の言語を日本語で調べられる和英辞書もどきを入手した俺は、悪魔業界のネット世界に旅立った。

 

 そこで手にした情報は実に大変。

 

 ライザーの戦績は八勝二敗。それも、負けた相手はどうにもわざと負けたっぽい戦いだった。

 

 だが、何も悪いことだけではない。

 

 知っている者は少ないと思うが、人間社会には何でも賭け事にしてお金を賭けるサイトというものが存在する。

 

 それを知っていた俺は調べてみた。

 

 悪魔にも似たようなものがないかと。

 

 結果はビンゴ。その手の類が存在していることが判明した。

 

 それも、人間社会用の人間の金を使える仕様でだ。

 

 そこで調べてみたのは俺達の戦い。

 

 どうやら噂になっていたようで、参加者は少ないが結構な戦いになっていた。

 

 俺達の倍率は20倍。とりあえず、景気づけに一万円ほど使って俺も一口参加させてもらった

 

 ちなみに、俺の貯金は現時点で120万円ほどある。

 

 勝ったら回転寿司でもおごろう。丁度期間限定でサーモンマリネ寿司なるものが出ていたはずだ。

 

 ・・・ヤバい、本気で食べてみたい。

 

 などと考えている場合ではなかった。

 

 今気にするべきはライザー・フェニックスだ。フェニックス家に連なる上級悪魔の対処法こそ、いま一番考えるべきことじゃないか。

 

 くそ面倒なことに、これを正面から打倒するには二つの方法しかないらしい。

 

 一つは圧倒的な力で一気に押しとおすこと。

 

 これは、行うにはそれこそ神や魔王クラスが必要とのこと。リアス部長も上級悪魔クラスだし、これは俺たちではまず不可能。

 

 もう一つは圧倒的なまでの持久戦だ。

 

 何度も何度も再生しているそばから撃破し、精神が先に限界を迎えるのを待つ。

 

 正面から倒すとするならばこれしかない。ただし、時間と体力を非常に消費する。

 

 無理ゲ―にも程があるな。

 

 おそらく、部長の父親もだからこそレーティングゲームを利用したのだろう。

 

 これならいくらわがままを通そうとしても、何とかなると考えたんだろう。

 

 だがそうはいかない。

 

 俺としてもイッセーをあそこまでこけにされて黙っているわけにはいかないし、一応部長は俺の主だ。

 

 勝ちにいくぜ、絶対にな。

 

「兵夜~、しょうゆとって」

 

「塩分取りすぎだアホ」

 

 一緒に玉子丼を食べていたナツミがすごいこと言ったのでツッコミを入れる。

 

 ナツミは現在、旧校舎で世話になっている。

 

 だが、一応とはいえ俺が主になっている手前、俺は何度かナツミを家に招待していた。

 

 ようやく見つかった転生者仲間だ。俺も、それ相応に優遇した状態で仲良くやっている。

 

 ちなみに、今回のレーティングゲームにこいつは関わらせない方向で行っているため、ついでにこいつはお留守番だ。

 

 魔術的なものにうっかり触って大惨事とかならないように、結構しっかりめに言い聞かせたし、封も頑丈にしておいた。

 

 好奇心、猫を殺すということわざもあるし、そのあたりはしっかり目にしておかないと。

 

「兵夜、今夜らいざーっていうのと戦うんだよね」

 

「まあな。・・・何? 心配してくれんのか?」

 

「当たり前じゃん」

 

 予想以上に真剣な顔で怒られた。

 

「レーティングゲームでも死人が出ることあるらしいでしょ? ・・・せっかくアレのこと話してもいい人ができたのに、いなくなったら怖いよ」

 

 ・・・それもそうだな。

 

 前世の記憶なんてもの、あってもろくなことにはならない。

 

 それはイッセーみたいな殊勝な奴にでも会うことができなければ孤独を生む。魔術や接収(テイクオーバー)のような特殊な力があるならともかく、そうでないならデメリットの方が多いかもしれない。

 

 ナツミは初めて出会えたんだ。同類という、話しても問題がない珍しい存在に。

 

「まあ心配すんな。そんなレアケース滅多にないし、そこまでするような激しい戦いにはならねえだろ」

 

「ホントだよね? ・・・絶対だよ!」

 

 心配性め。

 

 ま、俺としても負ける気はない。それ以上に命を賭けてまで部長に尽くす気があるのかというとそうでもない。

 

 俺が悪魔になったのは俺の意思とはかけ離れている。つまり、部長の意思で自然と悪魔になってしまっただけで、悪魔になって部長に使えたいと考えていたわけではない。

 

 アーシアちゃんの時はイッセーがボコボコにされた借りを返すのと、イッセーの想いを組んだだけだ。

 

 まだそこまで深い関係になったわけでもないし、そこまでする気にはどうしてもなれなかった。

 

 まあ、だからと言って手を抜く気もないんだけどな。

 

「まあ、勝機は見えたしそこを考えるだけだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今、俺はオカルト研究部部室で待機していた。

 

 既に深夜。たしか0時からレーティングゲームはスタートするとか言っていたな。

 

 既にイッセーを含めた部員たちも、戦闘準備を整えて部室に集まっている。

 

 恰好は駒王学園の制服に、せめてもの防具としてコートを用意したもの。

 

 本来なら専用の戦闘服とか用意されててもおかしくないのだが、部長がその辺はこだわりを持っているようだ。

 

「私達オカルト研究部にコスチュームがあるとしたら、駒王学園の学生服ね」

 

 ・・・やぶれたら修繕代出してくれるといいな。

 

 木場は横に剣を立てかけて待機しているし、小猫ちゃんはオープンフィンガーグローブをつけて準備万端だ。

 

 イッセーも、普通の制服姿だがその格好にはなんらかの自信が伴っている。

 

 アーシアちゃんだけはなぜかシスター服だ。悪魔がシスター服を着るのはどうかと思うが、彼女は元シスターだし、そっちの方が気合が入るとか考えたのだろう。俺から止めるような野暮はしない。

 

 部長や朱乃さんも優雅にお茶をたしなんでいる。

 

 全体的に緊張しているグループとゆったりしているグループに分かれている感じだ。

 

 ちなみに俺は緊張している方。初めてのレーティングゲームだし、仕方ないよね。

 

 とはいえ、冷静にならねば始まらない。

 

 俺は今回の仕込みの確認をしながら気付かれないように深呼吸をしつつ気分を落ち着けた。

 

 腹もだいぶこなれたし、トイレも済ませた。

 

 良し。体調は万全だ。

 

 そんなこんなで開始十分前ぐらいになったら、魔法陣が光りだして、グレイフィアさんが現れた。

 

「皆さん、準備はお済みになりましたか? 開始十分前です」

 

 その言葉に俺達は立ちあがる。

 

 ついに戦いの始まりか。やる気は十分みなぎってきたぜ。

 

「開始時間になりましたら、こちらの魔法陣から戦闘用に作られたフィールドに転送いたします」

 

「戦闘用?」

 

 緊張をごまかすのもかねて、俺は率直に質問してみた。

 

「はい。どんな派手なことをしてもかまわないように作られた、使い捨てのフィールドです」

 

 グレイフィアさんはさらりとすごいことを言う。

 

 そりゃあ、イッセーのあのとんでも砲撃とかが上級悪魔の一撃だ。

 

 下手に地球上でやらかしたら、隠匿とかは間違いなくできないレベルだろうな。

 

 だからと言って使い捨ての異空間を作り出すとは。

 

 恐るべし悪魔の技術。

 

「あの、質問してもいいですか?」

 

 俺が感心していると、イッセーが遠慮がちに手を挙げていた。

 

「部長にはもう一人僧侶がいたはずですよね? その人は参加しないんですか?」

 

 なんだと?

 

 まだ部長には眷属がいたのか。それは初耳だな。

 

 だが、イッセーの質問に部長含めた古参のオカ研メンバーの空気が妙なものに変わった。

 

 なんか重いな。聞いちゃいけないことを聞かれた時のそれみたいだが、その僧侶って問題児とかそんな感じなのか?

 

「残念だけど、もう一人の僧侶は参加できないわ。いずれ、そのことについてあなた達に話しておくべきね」

 

 何やら微妙な展開になってきたな。

 

 深くは効かないがうちの陣営って俺のようにいろいろと深い事情がある奴が多いのだろうか。

 

 そんな俺達の微妙なムードを変えるかのように、グレイフィアさんが割って入ってくる。

 

「今回のレーティングゲームは、両家の皆様も他の場所で戦闘をご覧になられます」

 

 なるほど、部長の父親も様子を見ることになっているのか。

 

 なら仕方がない。せいぜい度肝を抜いてもらうことにしてもらおうか。

 

「さらに、魔王ルシファー様も今回の一戦を拝見なされます。そのことをお忘れなきよう」

 

 とんでもないことを続けてくれたよグレイフィアさん。

 

 なに? 部長の婚約ってそんなにグレード高いのかよ?

 

 いまさらだが潰していいのか不安になってきたな。

 

「そう、お兄さまもこの戦いを見ているのね」

 

 ・・・ん?

 

 今、部長はなんて言った?

 

 お兄さま?

 

「お、俺の危機間違いですか? 今、部長が魔王様のことをお兄さまって言ってたような・・・」

 

 イッセーでかした!

 

 しかし、二人も聞いているということはこれは幻聴ではないということだぞ!

 

「間違いないよ。部長のお兄さまは魔王ルシファーさまさ」

 

 木場が、そんな俺の推測を裏付けてくれた。

 

「いやいやいや! 魔王はルシファーなんだろ? 部長はグレモリーじゃねえか! なに? この世界のルシファーとグレモリーって親族か何かなの!?」

 

 思わず俺は叫んでいた。

 

 そりゃあそうだろう。お兄さんが魔王ってどういうことだよ。

 

「そういえば、兵夜くんたちには教えていませんでしたわね」

 

 朱乃さん?

 

 この意味不明な事態について説明してくださるのですか! お願いします!

 

「かつての三つ巴の戦いで、魔王様は全員戦死なされたのです。そこで、生き残った悪魔たちはその中から新たなる魔王を選出なされたのですわ」

 

 なるほど、今やルシファーの名は一種の称号なわけだ。

 

 全く、驚いたじゃないか。

 

「サーゼクス・ルシファー。『紅髪の魔王(べにがみのまおう)』それが最強の魔王にして部長のお兄さまなのです」

 

「だから、部長は家を継がなきゃいけないのか・・・」

 

 朱乃さんの言葉にイッセーが感慨深げに唸る。

 

 まさか魔王の妹が俺らの主とはな。

 

「そろそろ時間です。魔法陣の方へ向ってください」

 

 かなり時間をくったのか、グレイフィアさんがそう促した。

 

 さて、レーティングゲームのスタートだ。

 


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