ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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大規模模擬戦最終ラウンド! デュランダルVSデュランダル!

 

 ・・・うぅ。久しぶりにマジ泣きした。

 

「ぐす・・・ひっぐ・・・」

 

 そしてベルもマジ泣きし終えたようだ。

 

「えっと・・・ベル? 大丈夫か?」

 

「はい・・・大丈夫です・・・うっぐ」

 

 とりあえず泣き止んでくれて助かったな。

 

「兵夜さまは心配性です。もし本当に嫌になったのなら、実質はっきり言いますよ」

 

「うん。ごめん」

 

 ヴァスコ・ストラーダには感謝しないと。

 

 あそこで説得されてなかったら、ずっと腹にため込んだままだった。

 

 たまにははっきり言うのもいいもんだ。

 

「本当に悪かったな。俺、その、経験ないから」

 

「いえ、その、その割にはすごく上手だったような―」

 

「そっちじゃないよ!!」

 

 うん、ベッドの上は得意だよ!? そこに持ってくまでが苦手なんだよ!?

 

 だって誘ったらOKしてくれる緩い女しか相手してなかったからね! 誘うまでの技量とかは間違いなく低いからね!?

 

「ベルは、兵夜さまのことが世界で二番目に大好きです」

 

「うん。それはすごい栄光だ」

 

 あの大天使ミカエルの次とか、すごい栄光としか言えないだろう。

 

 同類なので嫉妬する気には全くならない。むしろ、一番になったら冷める可能性すらある。

 

「だから、兵夜様のお力になりたくてたまらないんです」

 

「ああ、俺もそうだよ」

 

 あいつの力になれるだなんて、とても幸せだと心の底から思っている。

 

 少なくとも、俺はあいつの親友として並び立つために本当に頑張っている。それは間違いなくナツミも久遠も小雪も(みんな)同じだ。

 

「だから、一生懸命頑張ったんですからね? 何度も何度もプラモ壊して、ようやくまともに素組できるようになったんですから」

 

「そりゃすごい。この短期間でそこまで行くとかすごすぎだろ」

 

 そのあたりがどう能力の向上につながってるかがわからないが、すごいのだけは想像できる。

 

「・・・大好きです、兵夜様。実質おそばにいさせてください」

 

「ありがとう。その言葉を翻されないように頑張るよ」

 

 ああ、本当にありがとう。

 

 ・・・ん?

 

 そういえば、なんか周りが騒がしいな。

 

 なんとなく気になって音の方を見てみたら。

 

「・・・すげえ、俺たちの前でイチャイチャしてやがる」

 

「これが、ラブシーン公開処刑宮白兵夜・・・っ」

 

 あ、外野が見まくってた。

 

 っていうかなんだその異名は!!

 

「あ、あのベル? ちょっと離れた方がいいと思うんだけど?」

 

「え? いやです。このままギュっとしてくださいっ」

 

 ですよね!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは、圧倒的なパワーの化身だった。

 

 支援のために放たれた魔力が一瞬で散らされる。

 

 修練を積んだ魔法が、一瞬で術式を崩されて崩壊される。

 

 何とか懐にもぐりこんだ者たちが拳でなぎ倒される。

 

 そして何より驚愕するべきは、それが全盛期を過ぎた老人であるという事実だ。

 

 スパロは目の前の光景に驚愕する以外のすべを持たない。

 

 司祭枢機卿、ヴァスコ・ストラーダ。

 

 歴代最強とまで言われたデュランダル使いの無双っぷりに、どうしたものかとすら考えてしまう。

 

「ど、どどどどうすればそんな力が手に入るのですか!?」

 

「簡単だ。揺るがぬ信仰心の元、弛まぬ努力を積んだだけだとも。才能があったことは否定はしないが、何より力を司るデュランダルと私の生き方の相性が良かったのだろう」

 

 さらりと返されては笑いたくなる。

 

 だが、だからといってこのまま負けるわけにはいかない。

 

 自分は次期大王サイラオーグ・バアルの名代なのだ。無様な戦いは許されない。

 

 ・・・なので、ここは昔の自分を取り戻すとしよう。

 

「・・・ふう」

 

 魔術回路を起動し、自身に精神干渉を付与。

 

 負担は大きいが、今はこれが必要だ。

 

「・・・仕方がないのぅ。ここは間桐らしく陰湿に行くとするか」

 

 次の瞬間、四方八方からいくつもの蟲が彼にとびかかった。

 

 それらはすべて猛毒の蟲。噛みつかれればそれだけで常人の命を奪いかねない劇薬を持ち合わせた虫だった。

 

 むろん、これはあくまで牽制。

 

 ここまでの水準に達した存在がこの程度の毒で倒されるわけがないだろうし、何より迎撃されるのは目に見えている。事実一蹴されている。

 

 地面に潜らせて足元から奇襲している蟲すら見もせずさばいているあたり、もはや悪魔よりよほど化け物だといえるだろう。

 

 だが、その間にスパロは次の蟲を準備する。

 

 あらゆる糸を生み出す生物を合成した特注の蟲を用意し糸を準備。さらにより合わせて綱にし、同時に先端部分に鉄球を装備。

 

 できたのは即席のモーニングスター。

 

「参る!!」

 

 接近を仕掛けながら、しかしスパロの目的は接近戦ではない。

 

 そもそも魔術師(メイガス)とは研究者だ。実戦での戦闘能力の高さも立派なステータスだろうが、本質的な魔術の道を進んでいたスパロにとって、それは副次的なものに過ぎない。

 

 間桐家は当主の意向で蟲を多用する。そして属性的に吸収こそが本領。

 

 ゆえに、これは壮大なブラフだ。

 

「何を隠しているのかはわからないが、それを正面から打ち砕いてこそのデュランダル使いだ!!」

 

 鋼鉄よりも頑丈な糸をたやすく両断されながら、しかしスパロはそこから攻撃を組み立てる。

 

 その破壊力に身を任せて後ろへ飛びながら、スパロは最後の蟲を展開した。

 

「・・・ゆけ!!」

 

 ストラーダはそれを即座に迎撃しようとするが、しかしそれは悪手である。

 

 なぜなら―

 

「そ奴らは、お主に触れるつもりは一切ないぞ?」

 

 次の瞬間、蟲から莫大なオーラが放たれた。

 

 ・・・作り上げた虫は吸収の特性を付与した特注品。短時間だがオーラを吸収し、それに指向性を与えて放出する爆弾に変化する蟲だ。

 

 大出力ゆえにデュランダルのオーラはかなり漏れている。これを利用しない手はないだろう。

 

 勘付かれないように近接戦闘を挑んで対応したが、これならさすがに一矢報いることはできただろう。

 

「見事だ」

 

 実際、体にやけどの跡が刻まれており、それは間違いなく十分な負傷というものだ。

 

「よよよよくいいます。・・・普通に戦えるれれれレベルじゃないですか」

 

 だからこそ、その圧倒的な実力がよくわかってしまった。

 

 下手したらこの男一人でこの模擬戦を勝ってしまったかもしれない。それだけの規格外だろう、これは。

 

「ささささいしょから出てれば、普通に勝ってたのでは?」

 

「それではだめなのだよ。この戦いは信徒たちの不満をぶつけるためのもの。彼らがぶつけなければ何の意味もないのだ」

 

 なるほど、これは確かに枢機卿に選ばれるような人物だ。

 

 生粋の聖職者。迷える子羊を導く導師以外の何物でもない。

 

 彼のようなものがもっと多ければ、かつて当主も苦難の道を進むことはなかったのではないかと思えてしまう。

 

 とはいえこれは模擬戦。このままだと負けが確定しかねないがどうすればいいのか。

 

「・・・下がっていてくれ」

 

 と、そこで肩に手を当てながらゼノヴィアが前に出てきた。

 

「戦士ゼノヴィアよ。私は使()()()を示したぞ?」

 

 その言葉にうなづきながら、ゼノヴィアはエクス・デュランダルを分解した。

 

 そして同時に、上着を羽織った。

 

「そそそそれは?」

 

「宮白が作ってくれたサポート兵装さ。あくまで試作型だが―」

 

 そういうと、ゼノヴィアはエクスカリバーを展開する。

 

 それは剣を分解するとかそういう意味ではない。

 

 上着にまとうように、エクスカリバーが全身に張り付いたのだ。

 

 そして出来上がるのはもう一つの偽聖剣。あれと似通った全身が刃でできた、しかし大きく異なる印象を与える騎士の鎧。

 

聖剣外装・二之型(エクスカリバー・フルメイル)。宮白が次善の策として開発した、私がデュランダルを調整することに特化した形態へとエクスカリバーを変化させる礼装です、猊下」

 

「なるほど、これは面白い」

 

 得心したように、ストラーダはうなづいた。

 

「デュランダルは完成された聖剣だ。そしてエクスカリバーも完成された聖剣だ。方向性は違うとはいえ、それは文句のつけようがないほどの完成品どうしなのだよ。それを組み合わせることに、私は疑念を覚えていた」

 

「ええ。宮白は何度も言ってましたよ。そもそもエクス・デュランダルは設計ミスだと」

 

 その言葉に、ストラーダは苦笑する。

 

「やはり彼は素晴らしい。そう、圧倒的な破壊の権化であるデュランダルを、精密たる多様性をもつエクスカリバーで抑え込むなど、それは制御でなく封印といえるものだ。お互いの特性を殺してしまうといっていい」

 

 圧倒的な力の全力を、自由に扱えることができる彼だからこそ言える言葉に、ゼノヴィアも苦笑した。

 

「今なら彼の言いたいことも分かる。そのうえで、中間点を選んでくれた彼には感謝しなければいけません」

 

 そう告げると、ゼノヴィアはデュランダルを向けた。

 

「胸を借りる・・・などというつもりはありません。何も考えず、ただ全力をぶつけさせてもらいます」

 

「それでいい。デュランダルは考えるものではない。いや、考えてはいけないのだ!」

 

 次の瞬間、圧倒的な破壊力のぶつかり合いが発生した。

 

 思わず十歩は後退しながら、スパロはその破壊力のぶつかり合いを眺めることしかできない。

 

 当然だ。あんな破壊の渦に近づくには、レグルスの力が必要不可欠。そうでなければ跡形も無く粉砕されてしまうだろう。

 

「あ、ああああのひと、今まで本気なんて出してなかったんででですか!?」

 

 そうとしか思えない圧倒的な威力を前に、しかしだからこそ決着は早く着いた。

 

 甲高い音が鳴り響き、レプリカのデュランダルにひびが入る。

 

 くしくも、宮白兵夜の策は的中していた。

 

 デュランダルをエクスカリバーで覆うのではなく、デュランダルを使うゼノヴィアをエクスカリバーで強化することで揮える体を用意する。

 

 礼装の効果によりデュランダルをふるうために最適化されたエクスカリバーは本領ではないかもしれないが、それゆえにデュランダルの性能を引き出すことについてだけは高かった。

 

「双方ともに、見事だ・・・」

 

 膝をつきながら、ストラーダは満足げだった。

 

「戦士ゼノヴィアよ。正しい意味でデュランダルの使い手としての一歩を踏み出したな」

 

「いいえ、全ては仲間たちのおかげです」

 

 本心からのゼノヴィアの言葉を受け、ストラーダはうなづいた。

 

「確かに、エクスカリバーの力を借りてのことだろう。だが、際限なく力を発揮するという基本にようやく到達したのだ。胸を張るといい」

 

 ストラーダは、感心するかのようにエクスカリバーの鎧を見る。

 

「おそらくは、矯正ギプスなのだろうな。次の段階は礼装をつかわない鎧の展開で、最終的にはエクスカリバーの返却すら狙っているのだろう」

 

「おそらくは。エクスカリバーは教会に返却するべきというのが彼の持論ですので」

 

 ゼノヴィアは鎧を撫でるように触る。

 

 まだまだ圧倒的なオーラを安全に使うにはこれが必要だが、いずれは無しで使えるようにならなければならないだろう。

 

 そんな自分の未熟を嘆くような、そして成長を願うような感情がこもっていた。

 

「猊下。ご指導ご鞭撻、誠にありがとうございました!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ああ、じゃあそのまま成長する前に死んでもらおうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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