ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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輝く腕のベル

 

 戦闘が再開され、俺は即座にイーヴィル・バレトを展開する。

 

 目的はあくまで制圧射撃。とにかく弾丸が来ることを意識させて魔獣達の動きをけん制する。

 

「イッセー! とにかく有象無象を薙ぎ払え!! アーチャーは抜けてきたやつをピンポイントで殲滅してくれ」

 

 火力重視のイッセーはとにかく殲滅重視。制御性能のアーチャーはピンポイントで仕留めるスナイパーの役割を頼んでおく。

 

 で、どっちも足りない俺は球数重視でとにかく牽制!!

 

「つっても俺はそろそろ魔力が足りなくなりそうなんだけど・・・」

 

 ここでこいつ抜けたらどうしようもないだろうがこの野郎がぁあああああ!!!

 

 オイちょっとマジで増援プリーズ。えっと誰か来てくれてないのマジで!!

 

 くそ、やけだ、やるしかない。

 

 でも、でもやっぱり―

 

「誰か助けてくれぇえええええええ!!!」

 

 届かないとは思っていた。

 

 思っていたけど―

 

「「「「「「「「「任せろ!!」」」」」」」」」」

 

 ―本当に来ると、すこし感動するな。

 

「とにかく一般兵はそいつと一緒に制圧射撃だ。狙いなんてつけなくていい。進行速度をとにかく落とせ!」

 

「火力重視の連中は狙いをつけろ! 一体ずつピンポイントでつぶしていくんだ!」

 

「接近してきたら俺たちで行くぞ! 三対一ぐらいじゃないと死人出かねないし、とにかくうち漏らすのわずかにしろよ!!」

 

「上級悪魔ども。お前ら魔力が有り余ってんだから砲撃担当な。とにかくつぶせよ!!」

 

「わかってるよシスター。あんたもしっかりけが人治療してろよな!」

 

 わらわらと、むしろお前らそんなにいたのかよと言わんばかりに悪魔祓いも若手悪魔も集まっていく。

 

 後ろの方からは最初に使った火砲を使って援護射撃すらぶっ放される。

 

 さっきより数が増えたはずの魔獣たちが、少しずつだが確実に数を減らしていく。

 

「なあ、宮白」

 

「なんだよ」

 

 イッセーが鎧を一部解除して聞いてくる。

 

「思いっきり殴り合ったからガスが抜けてるな。協力するのにためらいがねえよ」

 

 イッセーは心から満足げだ。

 

 宗教観が緩い典型的な日本人だし、何より平和がモットーだからな。

 

 教会と悪魔のにらみ合いなんて、してても全然楽しくないと心から思っている。むしろ仲良くなって平和になった方がいいに決まっていると思っている奴だ。

 

 だから、こんな光景もうれしいんだろう。

 

 と、この野郎俺の顔ガン見してきやがった。

 

「お前のおかげだ。よく頑張ったよな」

 

 ・・・・・・・・・えっと。

 

「ええ、間違いなくあなたの功績だわ」

 

 と、アーチャーも余裕がないくせに俺の頭を撫でてきやがった。

 

「やるじゃない私のマスター。おかげで助かったわ」

 

 ・・・・・・・・・・あのぉ。

 

「じゃあこの辺で揶揄うのはやめるわよ。照れすぎて泣いちゃいそう」

 

「それもそうですね」

 

「うるっせぇよどいつもこいつも!!」

 

 こ、こいつらマジでむかついてきたな!!

 

 ありがとうよ!!

 

 だから、だから、だから・・・。

 

「勝て、俺のベル・アームストロング!!」

 

 大好きだ。

 

 愛してる。

 

 一緒にいたい。

 

 だから死ぬな。

 

 いや―

 

「敵将倒して、大活躍しやがれぇえええええ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「実質、拝命いたしました!!」

 

 愛する主人からの心からの願いをうけ、ベルは全身が充実していくのを感じる。

 

 ミカエルの力になりたくて、兵夜の力になりたかった。同類(彼女たち)の力になりたくて、みんなの力になりたくてたまらなかった。

 

 しかし、自分は不器用だった。

 

 超能力者(エスパー)として間違いなく規格外のスペックを持っていながら、しかし超能力者として未熟の極み。持っている力を雑に振るうしかできないようでは、磨き上げられた戦術を持つ輩を前には蹂躙されるほかない。

 

 そんな中、ゲンとの出会いはまさに運命だっただろう。

 

 彼の教えはピタリとはまり、見る見るうちに上達しているのがよくわかった。

 

 今ならできる。今なら戦える。

 

 ただの神器使いとしてだけではなく、超能力者として戦える!

 

「覚悟してもらいます、ザムジオ・アスモデウス!!」

 

「こちらのセリフだ! 魔王剣の担い手として、負けるわけにはいかん!!」

 

 そういい返すと同時に、ザムジオはサソリの尾をいくつも展開する。

 

 それらすべてを逃げ場をふさぐように展開し、ザムジオは攻撃を開始した。

 

 瞬間移動能力を使っての回避はしない。それをすれば範囲攻撃に即座に切り替え、周りに被害が出るはずだ。

 

 ゆえに、することはただ一つ。

 

「・・・っ」

 

 一瞬の空間認識ののち、ベルは念動力を開放。

 

 その瞬間、すべての尾が進行方向を微妙にずらした。

 

「ぬ?」

 

 疑問に思いながらも、ザムジオはその隙間にもぐりこむと判断して突きを繰り出す。

 

 念動力で止めようとしても、力技で突破できるとこれまでのデータから判断したがゆえに行動だった。

 

 だが、ベルはそのまま正確に拳を突き出す。

 

 そして、切っ先が滑ってザムジオの顔面に拳がまっすぐ飛んでいく。

 

「・・・っ」

 

 今度こそ、明確に狼狽しながらザムジオは首をひねって回避した。

 

 今、あの女は何をした?

 

 平静さをなんとか維持しながら攻撃を繰り返すが、そのすべてが何らかの形で軌道をそらされる。

 

「・・・念動力での防御は、力で正面からはじくのではなく、斜めにそらす」

 

 教わったことを復習するかのように、ベルの口から意識せず言葉が漏れる。

 

「・・・瞬間移動能力者は、空間認識能力も高い。だから目に頼らず戦闘できる」

 

 四方八方から、ダミーの殺気すら放ちながら放たれる尾を、一切視界を向けることなく迎撃する。

 

 今この場において、ザムジオは明確に理解していた。

 

 この女は、すでに最上級の領域にまでたどり着いていると。

 

 ヴァスコ・ストラーダのようなごく一部の領域に、彼女はすでにたどり着いている。

 

 そして、その技量の根幹は不可視の一撃。

 

「・・・ならば!!」

 

 ザムジオは距離をとると、ルレアベの出力を最大にする。

 

「最大出力の破壊力で突破するのみ!! ルレアベよ、どうか我が意に応えたまえ!!」

 

 技量において劣っているのならば、力を利用するほかない。

 

 自分の持つすべての魔力をルレアベに注ぎ込み、ザムジオは突貫した。

 

「・・・いいでしょう。回避はしません。全力をもって、力で叩き潰します!!」

 

 そういうと、ベルの姿が変化する。

 

 ベル・アームストロングの亜種禁手は一時的な出力の大増大。まさに短期決戦に特化している。

 

 それを見て、ザムジオは笑みを浮かべた。

 

「正面からの一騎打ちに乗ってくれるとは、宮白兵夜の下僕とは思えんが、こちらとしては喜ばしい」

 

「私は実質殴り合いしか能がありませんので。兵夜さまの下僕であるからこそ、そこは譲れません」

 

 気合を入れたいい表情を浮かべて、ベルは深く腰を落とす。

 

「最大出力。奥義をもって向かいます!!」

 

「よく言った!!」

 

 その言葉が放たれた次の瞬間、ザムジオは間合いに入った。

 

魔の遺志宿す(ルレ)―」

 

 そして同時にベルも踏み込む。

 

 その拳には極大の光力が渦巻いている。直撃すれば、魔王クラスといえどただでは済まないだろう。

 

 だが無理だ。ここにいるのは魔王四人。ただ単純に数の差がもろに出る。

 

 ゆえに滅びろ勝つのは私だ。冥界の空を彩る星となれ。

 

絶世の剣(アベ)!!」

 

 勝利の確信すらある一撃。

 

 単純に威力で上回っている。

 

 気合も十分。

 

 踏み込みもこれまでにないほどに完璧。

 

 たとえ軌道の横から殴りつけられようと、無理やりまっすぐ振り落とす覚悟もできた。

 

 そう、これは間違いなくこのままでは勝利の一撃だった。

 

「・・・これが、瞬間移動能力者の究極系!」

 

 次の瞬間―

 

「素粒子レベルの同時空間転移!!」

 

 ベル・アームストロングが三人に増えた。

 

 攻撃の数は単純に三倍。それが直撃し―

 

「・・・が・・・あぁ・・・っ」

 

 ルレアベごと、ザムジオの肋骨を粉々に打ち砕いた。

 

「なんだ・・・それは」

 

「いえ、素粒子レベルのテレポートを使用して、分裂しただけです」

 

 分身を解除しながら、ベルは残心をとりつつそう告げる。

 

 いうのは簡単だが、それが超絶技巧なのは誰でもわかるだろう。

 

 事実、ベルの全身は汗まみれであり、疲労困憊しているのかふらつきすら見える。

 

 だが、勝利は勝利。誰が見ても文句なしで、ベルの勝ちは確定していた。

 

「・・・魔王の力を宿したことで、無意識に油断していたとでもいうのか」

 

「・・・いいえ。油断も隙も無い、覚悟もこもったいい一撃でした」

 

 ベルはザムジオの後悔を否定する。

 

 すべてにおいて、彼は高水準だろう。

 

 まじめすぎて空回りしている節はあるが、その在り方はシャルバやカテレアよりはるかに上。仕事モードのサーゼクスたちに匹敵する真面目具合だ。

 

 それを徹底的に努力をして鍛え上げているザムジオは、間違いなくこの年代において最強クラスだ。

 

 しかし―

 

「・・・実質、私には兵夜さま()の加護と勅命がありますので。そう簡単に負けるわけにはいきません」

 

 そう、自慢げに笑みを浮かべた。

 

「なるほど。それは・・・しかたが・・・ない」

 

 自身の負けを認め、ザムジオは意識を失った。

 

 Side Out

 




ゲンがベルに教え込んだのは、ひとえに能力の精密制御。

彼にとって念動力の最大の特性とはすなわち「いくつもの見えない腕を持つ」点であり、それこそがベルに足りないもの。彼女は能力を使うときもパンチと併用したりするなど、腕を動かしているときもありましたので。

なのでプラモづくりでそのあたりを鍛えた結果、全力で戦闘しながら他からくる攻撃をそらすほどの技量を習得しました。

加えて瞬間移動能力はその空間認識能力を中心に強化。さらに出力の高さをいかして部分テレポートの応用で分身すら可能とさせました。絶チル原作でも一度しか使われていませんが、三人に分裂して三人相手に互角に戦っていたので、出力あまり低下しないと判断しました。

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