ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
たぶん型月ファンならだれもが気づいていることでしょう。
あれ? レイヴンいるならすぐに封印解けない? と
イッセーSide
種を明かしたフィフスは、心から安堵した顔を浮かべる。
その顔を見て、俺は奴が本気で言って実行したことを理解した。
なんだそりゃ。
俺の体を移し替えるためだけに、聖杯を奪った?
しかも、あいつの話が正しけりゃ、そのためだけにあいつはあの模擬戦に乱入したってのか?
そして、そのタイミングを見計らうためだけに俺の両親を誘拐した?
「狂ってんのか、お前」
どうかしてるとしか思えない。
俺を、するかもわからない覚醒を何とかするためだけに聖杯奪って特化した禁手作ったって?
前からこいつは俺のことを危険視してるとは思ったけど、異常すぎるだろこいつ。
「俺も兵藤一誠のことは評価していたが、お前には負けるな・・・正気とは思えん」
あのヴァーリですら、開いた口が塞がらないかのように唖然としている。
だけど、フィフスは何を言ってるんだって顔をした。
「実際龍神を覚醒させてるじゃねえか。見ろ、このデータが正しければこれだけで神滅具の禁手に匹敵する出力だぞ?」
そういいながら、フィフスはあきれ果ててため息をつくと、首を振った。
「・・・トライヘキサの封印を解除すれば押し切れる可能性はあったが、さすがにそんなことするのはリスクが大きすぎるしな。念のため龍神の肉体を確保してからやるつもりだったがうまくいってよかった」
こ、この野郎。そのために封印解除まで待ってたってのか!?
余裕があるのかないのかわからねえ。この野郎、ちょっとノイローゼになってるんじゃ―
「―おい、ちょっと待て」
と、リゼヴィムが険悪な表情を浮かべながら割って入る。
なんだ? この野郎共犯者のくせに―
「今の言い方じゃ、トライヘキサの封印を解けるって言ってねえか、お前!!」
え?
ちょっと待て、今リゼヴィムはなんていった?
トライヘキサの封印が解けるって、こいつは知らなかった―
「ああ、そういえば言ってなかった」
フィフスはそうポンと手を打つと―
「お前はもう用済みだ」
次の瞬間、リゼヴィムの背中に何本もの武器が突き刺さった。
「・・・な」
呆然として、リゼヴィムはそのまま倒れる。
「悪いなリゼヴィム。俺らはお前と違って俗物でな、異世界に侵略とか面倒くさい真似に興味ないんだ」
虫の息のリゼヴィムをそう見下ろしながら、フィフスは後ろのモニターを見るように指をさす。
「さて、それじゃあ俺たちが何を考えているかを御覧に入れようか」
Other Side
内部でデータを調べ上げていた小雪は、事態は半ば手遅れだという事が理解できた。
すでにクージョー連盟に参加している国家は相応の技術を提供してもらっていた。
これは例えていうならあれだ。第二次世界大戦にイージス艦が参入してくるようなものだ。それも一隻や二隻ではなく、それらを運用する基地やミサイルなどを補給するラインまで出てくるようなものだ。
この戦争、どう平和的な解決を想像してもクージョー連盟の存在を認めないわけにはいかない。
不幸中の幸いは、これが国家同士の寄り合い所帯だという事実だ。
トップが倒れれば内乱が起こって勝手に事態が収束する。それを指を食わせてみていればそれでいい。
そこからくる大量の技術流出こそ脅威だが、さすがにそこまで止めるわけにはいかない。そのあと暴走するのを止めるぐらいのことはさせてもらおう。
「とにかく、すいだした技術はアメリカとか日本とかに売った方がいいか」
物理的に破壊されてデータの吸出しが完了しなかったが、まあいい。
これだけ吸い取れれば、二年もすれば先進国は実用化できる。当分はこれを利用した国際共同開発の戦闘機が主力になるだろう。
「おい小雪! ちょっとやばいぞ、コレ!!」
「ファックに知ってるよ! ああまったく、これで人間界は十年は紛争状態だ」
火薬庫に大型の爆弾が投げ込まれていたようなものだ。被害がこの程度で済んでいることが奇跡に近い。
魔法の力でシャットアウトしても、果たしてどこまで防げるかどうかだろう。
だが、ナツミの悲鳴はそんなことが理由ではなかった。
「いいからこっち見て! あそこ、あそこ!!」
その声に、かなりのレベルで恐慌が入っているのを見て、小雪は視線を向ける。
そして、固まった。
「・・・・・・ファ・・・ック!」
そこにあったのは半壊したドーム。
全長1kmを超えるかもしれない大きな台座の上に、巨大な化け物が卵の殻を破るように封印を破り始めていた。
誰が見ても分かる圧倒的な存在感。何より近づくだけで消し飛ばされかねない莫大なオーラ。
間違いなく、あれがトライヘキサだ。
「封印が・・・解除されてるのか!?」
「まずいぜ小雪! これ、兵夜さがして逃げないとだめじゃない!?」
ナツミが気弱な意見を漏らすが、これは仕方がないだろう。
今の自分たちでは勝ち目がない。それどころか、手も足も出ずに吹き飛ばされる可能性があった。
蒼穹剣を使った兵夜でも無理だ。極覇龍を使ったヴァーリでも無理だ。三宝を使ったイッセーでも無理だ。手加減を捨てたクロウ・クルワッハでも無理だ。
「小雪! データは、データはとれたの!?」
逃げ出したいけど手ぶらで逃げるわけにはいかない。そんな感情を込めながら、ナツミは小雪をかばうように立ちながらがくがく震えていた。
別に逃げ出しても怒るに怒れないのに、律儀な少女だ。
緊張をほぐすのもかねてハグしてから、小雪はしっかりとうなづいた。
「ああ。奴はD×Dの総力戦だな」
「・・・うん!」
その時は負けない、と気合を入れなおして―
「あれは、実質まずいですね」
大隊の敵を叩き潰してきたが、これはさすがに危険すぎる。
ベルは間違いなく窮地の一歩手前だということを理解して、冷や汗が流れるのがわかる。
「あれが、トライヘキサか。・・・勝てんな」
ただ事実だけをつげ、クロウ・クルワッハはトライヘキサを見る。
「逃げた方がいいだろう。奴を相手にするには手数が足りなさすぎる」
「同感だねー。兵夜くんに撤退指示を入れないとー」
と、通信用の魔方陣を展開しようとした久遠はあることに気づく。
「・・・あれ?」
トライヘキサの様子がおかしい。
封印を解除したばかりでテンションが上がっていてもおかしくないのに、急に苦しみ出したのだ。
否、その場にいる全員が理解していた。
あれは苦しんでいるのではない。断末魔だ。
「えー? えー? ど、どういうことー?」
「ふ、封印解除の際になにかトラブルがあったのでしょうか?」
「いや、違う」
戦闘態勢を何とか維持しながら混乱するという器用なまねをする二人を制し、クロウ・クルワッハは断言する。
あれは、封印を解除したことによるトラブルなどでは断じてない。
起きていることはもっと単純。そして、彼をもってしても思いもよらない事態だった。
「あれは、封印が解除された隙を突いて殺されたんだ」
死にゆくトライヘキサの上で、レイヴンはため息をついていた。
直死の魔眼でトライヘキサの封印を殺し、そのままトライヘキサを殺す。自分にしかできないことではあるが、負担が大きいことを考慮してくれていないだろう。
とはいえ、この工程は確かに必要だ。
いうことを聞いてくれるかわからない化け物を、放し飼いにするほど自分たちはおろかではない。
だからこの過程は必要であり、まあ少し興奮する環境であることも事実なのだ。
「さて、トリプルシックス起動。・・・よく食べるといいぞ?」
そういい、起動スイッチを押す。
そして、トライヘキサの台座がトライヘキサを食い始めた。
キャスターによるいくつもの魔術術式が、レイヴンの研究の元死体を取り込んでいるのだ。
これぞ、錬金術と死霊魔術と人口神器と学園都市の協奏曲。
666の遺体を力の動力源とすることにより駆動する。疑似的に作り上げた対世界宝具。
さあ動け。トリプルシックス。
今こそ、世界にその咆哮をとどろかせるのだ。
すべては、自分たちが好き勝手に生きていける世界のために!
直死の魔眼、発動。レイヴンはほんとチートなんです、眼は。
まあ、兵夜も推測させてたはずですがレイヴンの眼なら封印なんてすぐに殺せるし、トライヘキサもグレートレッドも理論上は殺せる。
今までそれをしなかったのは大きく分けて二つの理由。
1 リゼヴィムの野望に付き合う気がそもそもあまりなかったから
2 そもそもトライヘキサをそのまま操れるかどうかが疑問だったから
しかしフィフスの目的を万全にするためには、そして万が一全勢力を相手取るにはトライヘキサはあった方がいい。
そこで、レイヴンとキャスターの技術を利用して、トライヘキサの死体を取り込んで駆動する超大型人造神器を開発。その完成までなあなあで引き延ばしていました。
こっからがラスボスフィフスの本領発揮。ある意味原作以上に派手に行きます!