ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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世界は闇に染まったころ、兵夜は・・・


最後の令呪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 うわぁ、これきつい。

 

 全身が痛すぎて、もう悲鳴を上げる気すらない。

 

 ああ、その原因は大体わかっている。というか、例のごとくやってしまった。

 

 思えば、俺はドラゴンと化していたのだ。

 

 きっかけは神格化ではない。あれに関しては許容範囲内だ。

 

 そう、思えば俺はドラゴンのオーラを取り込んでいた。

 

 半ば興味本位でイッセーのオーラを宝石に取り込んだ時、トラブって飲み込んでしまったのだ。

 

 まさか、その影響が今になって出るとは思わなかった。っていうか想定できるか。

 

 でも俺弱いからなぁ。

 

 サマエルの毒の影響を抑えるには、俺の体は全然足りなかったということだろう。

 

 いやぁ、根性由来の体力はあるイッセーですら体全損だからな。そりゃ俺も致命的っつーかなんつーか。

 

 ああ、これやばい。死ねる。

 

「兵夜! 兵夜しっかりしろ!!」

 

「ご主人寝ないで! 寝たら死ぬから!!」

 

 目の前が真っ暗な中、小雪とナツミの悲鳴が聞こえる。

 

 ああ、そこまで言われるほどやばいってわけか。

 

 ああ、かなりきついなコレ。

 

「兵夜様!? 兵夜様目を開けてください!!」

 

 ベルも大変なことになってるだろうなぁ。一応いろいろ小細工はしてるけど、悪影響はかなり出ているだろうに。

 

 俺の心配してる暇ないかもしれないが、心配できる余裕があるならそりゃよかった。

 

 だが、これ冗談抜きで死ねるな。

 

 イッセーの場合は神器が封印系だったから何とかなったが、俺の場合はそうもいかない。

 

 ・・・内臓のほとんどがダメになってる。かろうじて脳と心臓は持ちこたえてるがこれはまずい。

 

 多臓器不全。完璧な致命傷だろう。

 

 なるほど、これは助からない―

 

「・・・兵夜くん」

 

 ・・・聞きなれているはずなのに、聞きなれてない声が聞こえた。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい! 私のせいでごめんなさい!!」

 

 ・・・そうだな、まだしねない。

 

 俺は、無理やり視界を戻すと久遠を引き寄せる。

 

「泣くなって。・・・あとでしっかりお仕置きしてやるから」

 

 そうだ、そうしないとだめだろう。

 

 そもそも、龍のオーラを飲み込んだのは久遠が後ろから抱き着いたからだ。

 

 それが原因で死んでしまったら、久遠が一生引きずりかねない。

 

 それに―

 

「約束したばっかだもんな。みんなで幸せになるって」

 

 その直後に死ねるわけがない。

 

 いや、戦死する可能性は考慮してましたよ? だからちょっと躊躇しましたよ?

 

 だけど、ここで死ぬわけにはいかないだろう。

 

 フラグ回収にもほどがある。それはだめだ。

 

 ・・・とはいえまたすぐに視界が暗くなる。

 

 ああもう、頑張るからとりあえず急いで病院に搬送してくれないかね。

 

「兵夜、聞こえるかしら」

 

 気合を入れていたら、アーチャーの声が聞こえる。

 

「はっきり言うわ。・・・このままだと持たない」

 

 ・・・そうか。

 

 奇跡の一つや二つ起こさないとだめってか。そういうのはイッセーの役目なんだが。

 

 ええい、俺としたことが柄じゃないことをしないといけないとはな。こりゃ今日は厄日だ。

 

 などと考え始めながら意識が遠くなる。

 

 それを引き戻すように手をつかまれて、アーチャーの声が聞こえた。

 

「・・・私でも今じゃ無理だわ。だから、やることはわかってるわね?」

 

 なるほど。そういうことか。

 

 サーヴァントといえど限界はある。世の中には無理という言葉が存在して、それは英雄といえどないわけではないのだ。

 

 だが、英雄には無理でもサーヴァントなら限界を突破できる。

 

 魔法も使わず空間を跳躍することも、致命傷の上でさらに持ちこたえることもでき、魔力が足りないのに必殺技すらぶっ放す。

 

 それが、令呪。

 

 まだ、最後の一個が残っていた。

 

 もったいないが仕方がない。惚れた女泣かせるよりかはましだし、死んだら元も子もないだろう。

 

「令呪を使って、頼むぜ相棒」

 

 いや、ホント頼りにしてるぞ、アーチャー。

 

「・・・意地でも、俺を、死な、せるな」

 

 ・・・頼むから、あいつらを泣かせないでくれ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兵夜くん? 兵夜くん!?」

 

 意識を失った兵夜を前に、久遠は絶叫しかけていた。

 

 傭兵としての経験が、致命傷を負っている事実を考慮して体をゆすらせない。

 

 だがそのせいで精神は限界に近い。発狂寸前に追い詰められていた。

 

 そもそもこうなっているのは自分が起こしたツケだ。自分が後ろから抱き着いたりしなければ、サマエルの毒はここまで悪影響を与えることはなかっただろう。

 

 いや、せめて発動させてることを見た瞬間に気づいてさえいれば―

 

「しっかりしろ久遠!」

 

 気絶しそうになる久遠を、小雪がゆすって引き戻す。

 

「ここであたしらがどうしようもなくなったらファックだろうが!! いいから治療を続けろよ!!」

 

 血まみれになりながら、小雪は兵夜を治療し続ける。

 

 回復の手段をかけらでも持っているのは久遠と小雪だけだった。ナツミの世界では回復魔法は特殊な能力で、ベルにはそもそも習得する余地がない。

 

 だから、拒絶反応で死にかけながらも小雪は回復を続けているのだ。久遠もまたしかり。

 

 ここで治療を止めれば、それこそ兵夜は死んでしまう。

 

「・・・兵夜、兵夜ぁ!!」

 

「兵夜さま? 起きてください!!」

 

 だから、ナツミとベルは手をつかむことしかできない。

 

 戦死した仲間なんて何度も見てきている。こんなことが起きるのも、想定はできていた。

 

 だが、それでもこれは衝撃が強すぎる。

 

 せめて戦闘中なら本能で抑制できたが、離脱できたことで四人そろって追い込まれていた。

 

 男を愛するなんて初めてだ。その初めてが、想像以上に衝撃が強いことを初めて知った。

 

 そして、このままでは間に合わない。

 

 フィフスの策によるものか、転移が行えないのが致命的だ。

 

 ミサイルのつるべ打ちで重傷を負っている四人は、離れたところで救援を待つことが限界だった。

 

 そして、それでは間に合わない。

 

 それを、四人そろって思考から追い出して―

 

「無理ね。臓器移植をしなければ助からない」

 

 アーチャーが、冷酷にも引き戻した。

 

「アーチャー!? そんなことないよね!?」

 

「心臓と脳以外は汚染がひどいわ。フェニックスの涙をもってしてもこのままでは回復できない。もちろん、私がキャスターのサーヴァントで召喚されても難しいわ」

 

 ナツミの否定を切り捨て、アーチャーははっきりと事実を告げる。

 

 神代の魔術師が、キャスターのクラスなら疑似的な不死すら可能としかねないアーチャーが、はっきりとそう告げた。

 

 その言葉で、小雪と久遠も回復の手を止める。

 

 冷徹な現実すら飲み込んだ裏の世界の経験が、それを認めてしまってしまったのだ。

 

 これ以上は魔力と体力の無駄遣い。もし発見されたりしたら、戦闘する余力がなくなってしまう。

 

 それを心の中で冷徹に計算できてしまうがゆえに、四人は行動を止めてしまう。

 

「・・・ベルは、戦闘が不可能です。だから、兵夜さまは私が運びます」

 

 フィードバックを受けることがわかっているから、ベルは真っ先に死体の運搬というつらい役目を引き受けた。

 

「じゃあ、ボクは後ろ気にするね」

 

 一番まともに戦闘ができるであろうナツミが、絶望を押し殺して危険な役目を遂行しようとする。

 

「悪い、ファックだがあたしも動くのがやっとだ。・・・任せる」

 

 限界を自覚して、小雪はそれでも何とか立ち上がろうとする。

 

「アーチャーさんー。マスター権限は、私がやるよー」

 

 ショックで倒れそうになりながらも、久遠は何とか自分ができることしようとする。

 

 脆い精神を経験で補い、四人は四人なりに何とか現実を受け入れようとして―

 

「・・・まあ、兵夜は何とかするけど」

 

 アーチャーのその言葉を聞いて、四人は顔を上げた。

 

 無理だといったのは彼女なのに、いったいどうやって助けるというのか。

 

 その疑問は、アーチャーを見たときに吹き飛んだ。

 

 胸が、大きく陥没している。

 

 誰がどう見ても致命傷。彼女こそ助からないのが見て取れた。

 

「・・・霊核が大破した時はどうしたものかと思ったけど、単独行動スキルって意外と便利ね。まともに役に立ったのはこれが初めてじゃないかしら」

 

 そう告げるアーチャーを目の前にして、四人はすべてを察した。

 

 アーチャーは助からない。だが心臓以外の臓器は無事だ。

 

 兵夜は助からない。だが心臓と脳は無事だ。

 

 そして、兵夜を助けるにはすぐにでも臓器移植をしなければいけない。

 

 全員が、何をするつもりなのかを理解した。

 

「・・・待って。待ってアーチャー! ぞうきいしょくって拒絶反応があるんでしょ!?」

 

「大丈夫よ。令呪のブーストをかけた状態で、小聖杯の機能を持つ兵夜なら受け入れられる。令呪のブーストっていうのはそういうものよ」

 

 声を上げるナツミを撫でながら、アーチャーはそう安心させるように告げる。

 

 だが、四人ともそれを喜べるような神経はしていない。

 

 いくら愛する男を助けるためとはいえ、大切な仲間を失うことを受け入れられるはずがない。

 

「アーチャー。おまえ、聖杯はどうするんだよ!?」

 

「そもそもあの聖杯じゃ無理よ。・・・私の願いはかつてイアソンに出会う前のコルキスに帰ること。冬木式の聖杯では私自身を過去に戻すことは難しいわ」

 

 小雪が止めようと聖杯戦争の根幹を告げるが、聖杯戦争を把握したアーチャーには意味がない。

 

「まって! 私が、私の責任なんだから、私の臓器も―」

 

「それだと拒絶反応があるわ。わかってるでしょう? 臓器移植はドナーとの相性がいるの。令呪と聖杯の機能がなければこの場の誰もできない」

 

 責任を感じる久遠が肩代わりしようとしても、それは不可能だとアーチャーは告げる。

 

「・・・どうしようも、ないのですね」

 

「ええ。私はここで脱落する。それはどうしようもない」

 

 ベルの最後の確認に、アーチャーは嘘偽りなくそう告げた。

 

 確かに、聖杯戦争を脱落するのはアーチャーにとっても残念だ。

 

 フィフスに意趣返しぐらいはしたかったし、グレモリー眷属との日々は割と楽しかった。

 

 だが、そんな日々をおくれたのは兵夜のおかげなのだ。

 

 この馬鹿が英霊召喚を、魔力消費のためだけに使用するという馬鹿をしなければ、この日々もなかっただろう。

 

 魔女とさげすまれる自分が、自分の趣味を満喫しながらこうも楽しい日々を送れたのは十分な感謝だ。

 

 だから、その恩は必ず返す。

 

 そもそも、サーヴァントはマスターの使い魔なのだ、そのために命を懸けるのは当然だろう。

 

 令呪のブーストで内臓を移植しながら、しかしアーチャーはやはり残念だった。

 

 ・・・ああ、できることなら勝利を分かち合ってもう少し楽しんでいたかったと、そう思ってしまう。

 

 だけど、まあ。

 

「・・・ありがとう、兵夜。できることなら、勝ちなさい」

 

 ・・・割と、悪くない聖杯戦争だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Side Out

 




アーチャー、脱落。

サーヴァントとの別れはFateの華とは誰が言った言葉だったか。とにかくアーチャーが最終決戦前に脱落、という流れは最初から決めていたことでもあります。

なのでどう終わるか、割と真剣に考えてました。皆さん、どう思いますか?

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