ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
最終決戦、準備中です!
「なんていうか、大変なことになってるよなぁ」
深く落ち込んだ表情で、松田はそうぼやく。
まあ、そうだろうそうだろう。
いかに平和ボケといわれる日本とはいえ、核被害国であるがゆえに核兵器による攻撃は精神的に衝撃だ。
日本の被害は先進国では間違いなく軽微とはいえ、すでに輸入品の高騰などの被害が大量に出てきている。
資源が足りない・・・という最大の欠点を持つこの国にとって、周りの国の悪影響は割と自分にもダメージが入るのだ。
「覗きをしても怒られないとか、なんていうか、刺激が足りないよな。そして俺たちも覗く気分にならないっていうか」
元浜もこんな感じだ。
いつも元気なこの二人がこうなると、さすがに教室中が暗くなっている。
世界中で発生した異能力者は、その多くが犯罪を行っている。
世界中の都市がEMPで機能を破壊されている状況下で、突然不思議な力に目覚めたのが原因だ。
マイナス方向とプラス方向に揺り動かされて、精神の均衡を崩しているのだろう。
当然警察機能もだいぶマヒしており、中には暴徒を率いて銃を奪い、武装勢力と化した例もあるそうだ。都市を大量に持つ大国家ほど、治安が悪化して手が付けられない。
中にはかろうじて対応した軍隊を逆に返り討ちにした神滅具級の猛者もいる。
ああ、これは非常にまずいだろう。
「しっかし、これ割とすごい能力だよなぁ」
と、元浜は座った体勢のままジャンプする。
いや、ジャンプなんてものではなく、そのまま浮遊した。
俺はさすがに驚いたぞ。なんでこいつ飛べるようになってんだ。
じっさい周りを見てみると、両手の間で電気をバチバチさせてたりしてる連中も数多い。
・・・能力者増えすぎだろう。フィフスもうちょっと押さえろよ。
数億人とか言ったが、もしかして十億人未満だからとりあえず数億人って言っとけばいいやって感じだったのか?
想定される
それに、これまで跳ねっ返りだったはぐれ悪魔や異形社会の連中も余波で動くかもしれん。
なにせ今までは秘匿のために体制側が本気を出しかねなかったが、今なら「能力者の振りしました」とか言い訳できるからな。タガが外れるだろうことは想像できる。
すでに教会では、十年以内に悪魔との和平を公表して人類に異形の存在を知らしめるしかないという判断も出始めている。
そして、それはおそらく可決されるだろう。それだけの大きな影響が今この世界には出てきている。
異形の力が人間たちの世界に広まれば、世界は大きく混乱するというのが秘匿の最大の理由だ。それは傲慢かもしれないが、戦争や混沌を望まない者たちからすれば当然の理由であり、見境なしに責められるもんでもない。
だが、まさにその最悪の懸念はフィフスによってばらまかれている。
すでにフィフスたちはあらゆる手段を使って、練習すれば多くの人間が使える
個人の努力で軍事兵器並みの戦闘能力が手に入る世界。ああ、もうこの混乱は止まらない。
こうなれば、いっそばらして大きな制御機構を堂々と動かせるようにするしかない。上はそう判断し始めている。
「まあ、日本は比較的ましな方だ。ここは開き直って支援して、「国連盟主国、日本」を誕生させる・・・とか前向きに考えようぜ?」
「宮白も言うわねぇ」
俺が気分を軽くしようとそんなことを言ったら、桐生にからかわれた。
とはいえ桐生も事情は知っているし、そこは会話をスムーズにするために気を使ってくれてるんだろう。
「けどさ、みんな結構能力受け入れてるよなぁ」
とは元浜の弁だ。
じっさい、この教室の連中は俺たちオカルト研究部関係者以外は異形関係者がほぼいないのにもかかわらず、この突然の異能に差別とか排斥を謳っている連中はいない。
せいぜいが「露天風呂覗くのに使うんじゃないわよ!!」という女子たちのツッコミぐらいだ。
能力者の力に恐怖した人たちによる「能力者排斥運動」だって場所によっては行われていると聞くのに、これはまたびっくり。
「この教室、できた連中が多いよなぁ」
「そりゃそうよ。この私がいるクラスなのよ?」
「すっげえ。自意識過剰にもほどがある」
「「松田に同感」」
と、ばか騒ぎをしながら、俺は窓の外を見る。
・・・もうすぐ卒業式。姫様たちには嫌な感じになるだろう。
記念すべき卒業式を、よりにもよってこんな大変な時期に迎えるんだ。できることならもっと明るいニュースを聴きながら迎えたかったと思っている三年生は多いだろう。
ああ、まあそれはしたかがない。
というわけで俺が頑張るしかないわけだ。
「よし! みんな、俺から話があるんだけど」
と、イッセーが遂に切り出した。
「なんだ、イッセー」
「ああ。オカルト研究部の元メンバーを含めて、卒業式の日に気分を盛り上げるためのパーティをやろうって話があるんだ。お前らも一緒に参加してくれよ?」
と、イッセーはそう切り出した。
ああ、世界がいろいろ落ち込んでいるんだから、俺たちが明るくなって盛り上げていかないとだめってところはあるだろう。
それに、少しは明るいニュースも出てくるんだからなおさらだ。
「そうだな。これからの生徒会のためにも盛り上げていかねばならないし、ぜひ参加してくれると嬉しいぞ」
生徒会室から帰ってきたゼノヴィアもそれに乗っかる。
まあ、こいつもグレモリー眷属なんだから当然参加だ。
「お、いいなそれ! でもイッセーと宮白のハーレムだろ? ・・・マジでむかつくんだが」
元浜がジト目を向けてくるが、そこについては安心しろ。
「大丈夫だ。姫様の友人も呼ぶから意外といけるぞ。・・・前生徒会とかも今回は参加する」
そう、そこはすでに確定だ。
D×Dのメンバーは全員招待している。サイラオーグ・バアルやシーグヴァイラ・アガレスについても、予定を調整しておく徹底具合。
いい機会だし、松田と元浜にも俺たちの現状を教えようと思ってな。
・・・俺かイッセーの眷属にねじ込めとか言ってきそうだ。イッセーや俺がハーレム作ってる最大の要因だし。
と冷や汗を流していたら、二人そろってぐぬぬとでも言いたいような顔になっていた。
「ついにイッセーまでハーレムであることを隠さないとか! どういう了見だてめえ!!」
「モテないものの苦しみを思い知れ! 俺は能力者だぞ!!!」
「うわ、お前らちょっと待て・・・あああああああ!?」
あ~あ~あ~あ~。喧嘩始めちゃったよこいつら。
「い、イッセーさん!? ま、松田さんも元浜さんも落ち着いてください!!」
「こら二人とも! イッセーくんをいじめちゃダメなんだからね!」
アーシアちゃんとイリナが止めに入るが、間違いなく逆効果だろうそれ。
「・・・それで? あんたら今度はどんなことすんのよ?」
どうやら桐生には勘付かれていたようだ。
うん、まあ、つまりは・・・。
「ちょっと、元凶に殴り込みかけるメンバーに志願したんだよ」
Other Side
宮白兵夜が語る通り、世界の状況は大いに混乱しているといっていい。
世界中の都市の大半が機能を停止するという状況。軍事兵器において圧倒的であるという事実。そしてその中には文字通りの怪物が含まれているという現実。
そんな環境の中、突如無差別に民間人が強大な力を手にしてしまった。
軍事教育というものは、精神鍛錬も多分に含んでいる。
これは、人を殺すという多大なストレスに耐えうる人間を育成するという観点から必要不可欠。それを欠かしていなくても耐えられないものが出てくるのに、しないだなんてことはあり得ない。
シェルショックという言葉ができるほどにこれは強烈なのだ。殺し合いという極限の状況下は、人の精神に良くも悪くも大きな影響を与える。そしてその大半は悪影響だ。
他者をたやすく蹂躙できる力を手にしたという優越感。これを抑制するための訓練もまた、その精神鍛錬だ。
それを一切行っていない民間人が、いきなり強大な力を手にすれば大半は暴走を開始する。
結果として、都市部の治安は本当に悪化の一途をたどっており、今や都市といえるものの大半は犯罪都市へとなり替わっていた。
そしてそのタイミングで対異能者技術が流出したことにより、多くの人間がそれに飛びつく。
加速度的に発生する民間人による殺し合いに、各国の軍部はまともに対応することができない。
いわゆる先進国といえる国家でこれに対応することができているのは、第九条を理由として戦争に参加せず、そのゆえに核攻撃のメイン対象から外れた日本のみだった。
その日本ですら、凶悪犯罪発生率は例年の数十倍に膨れ上がっており、自衛隊及び警察に回される予算は、来年度は数倍に上げられるという異例の事態にまで発展している。
そして、そんな元凶であるクージョー連盟にたいし、異形社会はうかつに手が出せなかった。
なにせ、グレートレッドが事実上の人質になっているのだ。
世界最強の存在を人質にするという前代未聞の恐喝に、各神話体系は二の足を踏んだ。
なにせ各神話体系にも、嫌がらせに特化した獣鬼を送り込まれている。
その対処に忙しいし、今回の事態はある意味で利点だ。
これだけの事態に対応するには、自分たちの存在を闇に隠したままで対処しきれない。
裏を返せば、自分たちの存在を堂々と示せる。聖書の教えに侵略され、お伽噺と同じような扱いをされていた自分たちを、正真正銘実在する存在にすることができるというのだ。
さらに、フィフスはアサシンの諜報力を使って多くの影響力を各神話体系に与えていた。
悪魔の大スキャンダルはある意味おとりだ。ばらして混乱させることに意識を向けて、交渉の種にするという発想を少しでもそらそうとした。
それらの事情が重なり、反撃作戦はなかなか進まなかった。
意図的に一度は許可したことが特に大きい。彼らはこの一度しかないチャンスをどう生かすかという発想にとらわれてしまった。
ゆえに、ほとんどの人物は気づいていない。
フィフスたちの手によって、襲撃のタイミングすらコントロールされているということに。
完全にぴったりのタイミングにはできなくとも、カウンターを叩き込めるほどに準備ができるまで時間を稼がれているということに。
Side Out
フィフスも兵夜も飴と鞭は基本戦術。
こと、この混乱の状況下でその首輪を握っている者とのコネクションは莫大な利益を生む可能性があります。それは魔王派も大王派も教会も神の子を見張るものも同じこと。
ゆえに、この状況を維持したいというものも少なからずいるため情報を入手することは比較的容易。事前に展開を予測していればもうけを得ることも簡単ですからね。
ですが、そんなことは兵夜もアザゼルも想定内。・・・反撃は派手に行きますよ?