ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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焼き鳥、シメてみます!

 

 携帯電話がうるさく鳴り響く。

 

 マナーモードにしていたはずだが・・・ああ、あれは裏用だったな。表用は学校行ってから変えるのを忘れてた。

 

 しかし全身が痛い。いったい何があった?

 

 確か今日は朝飯はシリアルですませてから学校行って・・・

 

 などと考えながら携帯に出る。

 

「もしもし?」

 

 最近漸く聞き慣れたばっかりの、覚えのある声が響いてきた。

 

『兵夜? なにボケっとしてるの? ・・・おきろーご主人。ボクだよーナツミだよー』

 

「それやめろって痛い痛い痛いって思い出したレーティングゲーム!?」

 

 ナツミの声で一気に覚醒した。

 

 そうだ、今はレーティングゲームに参加していたんだ。

 

 最初陽動として俺とイッセーと小猫ちゃんで行動し、それは成功したが不意打ちで小猫ちゃんが一時離脱。

 

 その木場と合流してから再び混戦。

 

 最終的にイッセーが新たなる力に覚醒して一斉撃破に成功。その後すぐに朱乃さんが撃破されてー

 

 爆破攻撃を喰らったんだな。全身が無茶苦茶痛い。

 

 よく見るとコートがだいぶダメージを受けている。

 

 どうやらモロに食らったらしい。リタイアにこそならなかったが、脳震盪で意識が朦朧としていたようだ。

 

「あー悪い、ちょっとダメージ喰らって混乱してた」

 

『大丈夫!? ・・・っていうかまだ続いてたの? 総力戦だからもう終わったと思った』

 

 どうやら俺やイッセーと同じ勘違いとしてたらいい。

 

「色々と長丁場でな。おかげでこっちも大変だ」

 

『そうなんだ。それじゃああんまり電話してもダメだね。・・・頑張って』

 

 最後に励ましの声を届けてから電話を切る。

 

 痛覚の実感を遮断して、ダメージを正確に把握する。

 

 結構もらったがコートのおかげで戦えないほどじゃない。この状態なら何とかなるか。

 

 念の為、調合していた魔術薬もとっておこう。

 

 コネを使って用意した糖尿病などで使う棒状の注射器で自分に投与。

 

 これで、あと数十分なら全力で暴れられる。

 

 ・・・自分で言うのもなんだがお人好しだな。

 

 そこまでする義理もないだろうに、俺は態々体に大きな負担をかけてまでまだ戦おうとしている。

 

 とりあえずは生徒会室に寄らないとな。女王にプロモーションすれば少しはマシになるだろ。

 

 足を進めようとした俺の前に、金髪がまぶしい少女の姿が見えた。

 

「・・・俺の相手はお前かよ。レイヴェル・フェニックス」

 

「話し相手にならなってあげてもいいですわ」

 

 ・・・どうやら、とことん戦闘に参加する気はないようだ。

 

「激戦の後にしちゃあのミス・ダイナマイトの行動が早いな。回復手段でも持ってるのか?」

 

「ちゃんとルールは守ってますわ。・・・コレ、赤龍帝はご存じ無かったようですけど、あなたはご存じかしら?」

 

 小さな小瓶を取り出すレイヴェル。

 

 ・・・液体? ああ、そういえばフェニックスにはもう一つ力があったな。

 

「そういや涙は癒しの力があるんだったな。・・・それか?」

 

「ええ。フェニックスの涙と言いまして、如何なる傷をも癒すんですのよ」

 

「・・・アーシアちゃんがいるからずるいとは言わないが、流石に使用回数に制限はあるんだろうな」

 

 とんでもアイテムもあったもんだ。

 

「ええ。フェニックスの涙はゲームに参加する悪魔の内二名しか持ちません。私達の場合は私と女王が持っていましたの。高値で取引されているから、フェニックスの財政はとても潤っていますわ」

 

「不死身に治癒。レーティングゲームが始まってから幸運続きで良かったな」

 

 聞いてないよ部長。そういう大事なことはもっと早く言ってくれ。

 

「じゃ、悪いが俺も下僕なんでな」

 

「ちょっと、あなたも私を無視しますの?」

 

「じゃあ上飛んで観戦してな。・・・俺の考えたフェニックス封じ、運が良ければ見れると思うぜ?」

 

 話をしているおかげで少しはましになった。

 

 俺はそのままレイヴェルに背を向けると、校舎に突入した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・部長が、泣いていた。

 

 まだ負けたわけではない。現にイッセーはまだ立っているし、アーシアちゃんも健在だ。

 

 だが、二人とも状況は著しく悪い

 

 アーシアちゃんは何やら魔法陣らしきものに囚われている。おそらくは回復を警戒したライザー辺りが行動したんだろう。

 

 イッセーにいたってはボロボロだ。

 

 おそらく、アーシアちゃんの回復能力を使用不可能にしてからイッセーを一人で相手してたって事だろう。

 

 敵女王は傍で見守るだけ、舐めてくれるじゃないかライザー・フェニックス。

 

 そんな中で、部長はイッセーを抱きしめていた。

 

 ボロボロのイッセーをだ。

 

 たかが一下僕にここまでできる。そんな人なんだリアス・グレモリーは。

 

 ・・・俺は、運がいいのかもしれない。

 

 あの人は、下僕の為に涙を流す事ができる人だったんだ。

 

「部長・・・」

 

 あの人は、ここまで下僕のことを思える人だったんだ。

 

「バカね・・・」

 

 だったら俺は―

 

「イッセー、お疲―」

 

 やる事は一つだ!

 

 魔術回路を起動させ、展開させるのは投影魔術。

 

 無から有を生み出す魔術で、魔力で物体を作り出す魔術だ。

 

 これだけ言えば便利そうだが、この魔術非常に使い勝手が悪い。

 

 投影で生み出した物は常時魔力を流していないとすぐに消えるし、外側だけ形作ったものだから、機械とかそういったものは完全に張りぼて。

 

 だが、それでも外側さえできていれば問題ないような物は簡単にできる・・・

 

 そう、

 

「部長ストップ!」

 

「キャッ!?」

 

 ・・・ツッコミを入れる為のハリセンとかだ。

 

 スッパァーン!

 

 うん。投影品とは思えないほどいい音が響いた。

 

 あまりの光景に時が止まったと言ってもいい。これは好都合だ。

 

「な、何をするのよ兵夜!?」

 

 涙を止め、部長が抗議の声を上げる。

 

 と言っても部長、アンタってば投了しようとしてましたよね。

 

「まだ俺がいるんですけど部長。・・・かってに全部諦めたりしないでください」

 

「あなたももう限界でしょう!? これ以上戦えばイッセーだって・・・」

 

 確かにそうかもしれませんがね。

 

 とりあえず、イッセーの方を向いて確認する。

 

 うん、意識は無くしかけてるがこれならリタイアはしないらしい。

 

 とりあえず魔術薬を注入しておこう。少し時間が経てば何とかもう少し動く事はできるはずだろ。

 

「・・・なるほどねぇ」

 

 魔法陣はこっそり解析してみたが、これは意外と隙が多いな。

 

 たぶん、やろうと思えば魔術で利用したり解除したりとかは簡単かもしれない。流石に今やると存在がばれるのでやらないけど。

 

 後は、素早く書いたメモと一緒にとっておきを懐に忍ばせる。

 

 さて、後は俺の頑張り次第だ。

 

「いっくら回復が怖いからって、名高い上級悪魔のフェニックス家の才児が、あれははないんじゃないかオイ」

 

 できる限り、余裕とナメた感じを見せろ。

 

 イッセーに注意を向けさせる事だけは何としても阻止だ。

 

 よし、ライザーの敵意が俺の方を向いたぞ。

 

「ほう。じゃあどうする? 俺を倒すか?」

 

「まあな。それぐらいしないと俺達も格好がつかないし? ・・・ここまでボッコボコにしておいて負けましたなんでダサいからなぁ松明野郎」

 

 勝算はある。少なくとも、無理に倒し続けたりするよりかは確実性のある切り札がある。

 

 保険もさっきセットは終えた。・・・今のイッセーなら可能性はある。

 

 その為にはここでは危険だ。なんとしても状況を変えろ。

 

「かかってこいよフェニックス。・・・アンタは俺一人で十分だ」

 

 言うと同時に神器を起動し、俺は校舎から飛び降りる。

 

「下でケリつけようぜ、たき火男!」

 

「上等だ・・・燃やし尽くしてやるよ!」

 

 ライザーは攻撃を喰らってもすぐ再生してこっちに向かってくる。

 

 ・・・これならいけるが、念の為引きつけておかないとな。

 

 ちゃんと起きろよイッセー。お前が最後の切り札だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「不死鳥と称えられた我が一族の業火、その身で受けて燃え尽きろ!」

 

 ライザーが洒落にならない熱さの炎を放つが、俺はそれを全力で移動して躱す。

 

 同時に光の槍を投擲するが、直撃した傍から再生された。

 

 だが、ライザーの表情は苦々しいものが浮かんでいる。

 

「プロモーションしたとはいえ兵士の動きじゃないぞ! いったい何をした!」

 

「知るか燃料バード! ・・・俺のポテンシャルが解放されたんじゃねえの!」

 

 種は簡単だ。

 

 体内にある悪魔の駒を強化した。

 

 悪魔の駒には仕様者の能力を強化する力がある。

 

 そして魔術の強化は、魔力によって概念そのものを強化することで効果を発揮する。

 

 なら、強化する力を魔術で強化すればどうなる?

 

 結果がこれだ。

 

 曖昧なモノを曖昧に強化する事ができない強化の魔術では全体的になんとなくパワーアップする事はできなかったが、全体的にパワーアップする女王の特性を強化すればここまで総合力を上昇できる。

 

 とはいえ、あり得ないほどの身体能力強化は俺の体に相応の負担をかけているし、魔力の消費だって尋常じゃない。

 

 長時間の使用は骨だ。一気に決める。

 

 ライザーも同じ事を思ったのか、両手に炎を込めると今までより広範囲に放とうとする。

 

「小賢しい真似をするようだがここまでだ!! ・・・これは躱せまい!!」

 

 確かに、今の俺の速さでは厳しいだろう。

 

 だが、それは俺単体での話だ。

 

 広範囲に炎を放ってくれるなら好都合。

 

 そちらにギャラリーの視線が行っているうちに、こそこそと魔術を使わせてもらう。

 

 隠し持っていたペットボトルのふたを開け、流体操作の魔術を展開する。

 

 魔術師には得意属性というものがあるが、俺の場合は水だ。だからこういう事が使える。

 

 ライザーが炎を展開するのとほぼ同時に、落とした水を流体操作で足元に収束して一気に動かす。

 

 それをカタパルトにし、俺は一気に跳躍した。

 

 直後に炎が運動場一面に広がる。おかげで魔術に使った水も蒸発した! 証拠隠滅完了だ!

 

 直撃はまずいが、そろそろ俺も動くぜ!!

 

 翼を操作しライザーに肉薄、大きく光の槍を振りかぶる!!

 

「なめるな小僧!!」

 

 ライザーはそれを難なく躱すと、片方の腕で俺の右腕、そしてもう片方で首を掴む。

 

 このまましめ落とす気か!

 

天使の鎧(エンジェル・アームズ)は驚異的だが、よくある神器で弱点が分かり易い。・・・発現している部分からしか光は発生できない!!」

 

 なるほど、それは弱点と言えば弱点か。

 

 今まで他の腕でしようと思わなかったから気付かなかった。

 

 だがな? 

 

 あえて()()()()()で攻撃していた事に気づいてたか? 

光に意識を向けさせる囮だって気づいてたか?

 

 俺は懐からあるものを取り出す。

 

 魔術薬を注入するのに使っていたのと同型の注射器。だが、中身は聖水だ。

 

 俺はそれを素早くライザーの腕に突き刺す。同時に魔術を小声で唱えた。

 

聖水強化(ブーストアップ)

 

 ・・・聖なる力、それも魔術で強化したものを体内に入れればどうなる?

 

 注射器を叩きこんでから数秒。変化はすぐに訪れた。

 

 ライザーの全身から、肉が裂けて血煙が立ち上る!

 

 

「~~~~~~~~~~っ!?!!?!?」

 

 声にならない叫びをあげて、ライザーが落ちる。

 

 だが、それだけでは済まさない。っていうか、この程度ならいずれ回復するだろう。

 

 俺はライザーの上に回ると、コートからロープを取り出す。

 

 先端は輪っかになっており、首をひっかけるのにちょうどいいサイズだ。

 

 普通にやってもライザーは倒せないだろう。

 

 神クラスの一撃なんて俺は持ってないし、時間をかけて潰すにしても、アーシアちゃんがやられれば一環の終わりだ。

 

 だが考えても見ろ。

 

 戦闘不能って言うのは、「気絶」だって含まれるだろ?

 

 なら・・・

 

「このまましめ落とせばどうなるかな!!」

 

 ライザーとは別の方向に全力で移動する。

 

 さあ、これで終わりだ!!

 

 だが―

 

「ライザーさま!!」

 

「あ、ヤベ!?」

 

 しまった!

 

 女王のこと忘れてた!?

 

 爆発の力が俺に向かって直進する。

 

 俺は身を捻って直撃を躱すが、その威力に吹き飛ばされると同時にロープを手放してしまう。

 

「ぐ・・・ガハッ!?」

 

 木に叩きつけられた俺の首を、煙を上げた手が締め上げる。

 

「やって・・・くれ・・・たなぁ!?」

 

 血涙すら流したとんでもなくボロボロな姿だが、ライザーは健在だった。

 

 髪はあれ、表情は憔悴し、服はもだえ苦しんだ事でボロボロだったが、それでも奴は健在だった。

 

 これでも持ち堪えるのか、この男は・・・。

 

「恐ろしい真似をしてくれたがここまでだ!? 俺の全力で貴様を燃やし尽くしてやる・・・」

 

 相当ダメージをもらったのか、ライザーは鬼気迫る表情で言い放つ。

 

 ・・・今度こそここまでか。

 

 後はイッセーが回復するかどうかだが・・・。

 

 まったく、俺もヤキが回ったぜ。

 

「後任せた、イッセー」

 

 さっきの一撃以上の火力が集まり、ライザーはそれを―

 

「・・・ぅぉおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

「な・・・ガッ!?」

 

 ―放つ前に、イッセーに殴り飛ばされた!?

 

「無事か、宮白!!」

 

「イッセー!?」

 

 あの短時間でここまで来たのか!?

 

 イッセーの状態もライザー並みにボロボロだ。

 

 だが、そこにライザーのような鬼気迫るものはない。

 

 それどころか、今までにないほどに何かに充ち溢れていた。

 

「お前大丈夫・・・っ!?」

 

 近づいた俺は、違和感を感じてとっさに解析の魔術をかける。

 

 ・・・イッセーの左腕、悪魔のそれじゃないぞ!?

 

「ちょ・・・お前、何やった!?」

 

「説明は後だ! ・・・悪い、お前の残したメモ無視したけど、この方法の方が効果がありそうだ」

 

 ・・・どうやら、ちょっと見ない間にまたパワーアップをしたらしい。

 

 ・・・左腕はその代償か何かか。無茶しすぎだろこいつ。

 

「・・・無茶してんのはお前もだろ。・・・魔術ばれたらどうすんだよ」

 

 うっせえ、悪かったな。

 

 だが、イッセーのその表情は力強く、そんな会話が元気を出してくれた。

 

「俺はライザーをぶっ倒す。・・・宮白、お願いがあるんだ」

 

 なるほどね。

 

 ・・・まあ、俺には丁度いい事か。

 

「気にせず言えよ。いつものことだろ?」

 

「小猫ちゃんと朱乃さんと木場の借り、俺の代わりに返しといてくれ」

 

 了解。お前がケリ付けるまで、俺はとっととお仕事しておくとしますか。

 

「OK親友。・・・勝ってきな」

 

「ああ、任せろ」

 

 さて、これからが最終決戦だ!




今回のサブタイトルはちょっとシメると絞め落とすの二重の意味を込めてみました。

面白かったら幸いです。

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