ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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通信、繋がりました。

 

「・・・で、問題はそこの二組じゃないかしら?」

 

 と、シルシは話を戻しながら、段ボール箱を開ける。

 

 そこには潜入活動などの為に用意していた戦闘糧食(レーション)の群れがあった。

 

「とりあえず、まあ食べながら話しましょうか」

 

「あ、おなかすいてたんだっ。いただきまーす!」

 

 と、何の警戒もなく躊躇なくトマリがレーションをとって食べ始める。

 

 それに引っ張られるように、全員がレーションを手に取って食べ始めた。

 

「巻き込まれただけのヴィヴィオちゃんや古城くん達は、できれば早めに返してあげるべきね。・・・はいあーん」

 

「シルシ? 今の段階なら片手は使えるからそれいらない」

 

 と、躊躇なく食べさせようとするシルシに兵夜は牽制球を投げるが、シルシは有無を言わせず口元まで持っていく。

 

「あら、こんな美人に食べさせられる機会なんて不意にしちゃ駄目よ? はいあーん」

 

「・・・あーん」

 

 押しに負ける形で、兵夜は素直にレーションを食べる。

 

 だが、これは非常にまずいかもしれない。具体的にはこのままなし崩し的に結婚という流れになるという意味で。

 

 兵夜は、これをゼクラム・バアルによるあえて明言しない政略結婚だと推測している。そしてシルシ当人もそのつもりである。加えてシルシは兵夜の行動が間接的に彼女を救ったことから好意を抱いているようだ。

 

 これは、非常にまずい。

 

「あの、ポイニクスさんと宮白さんは付き合っているのですか?」

 

「違います! 俺は彼女います! 不倫する気もないです!!」

 

 雪菜が勝手に誤解する前に速攻で否定するが、しかしシルシも負けてはいない。

 

「あら、冥界は一夫多妻OKでしょう? あなただって四人も恋人いるじゃない」

 

「ギャアアアアアアアアアア!? それややこしいことになるからばらすなぁあああああああ!!」

 

 一応言っておくが、D×Dでも人間世界は一夫多妻制は少ない方である。ないわけではないが先進国では基本一夫一妻である。冥界では普通に一夫多妻が認められているが、一人の妻だけを愛する者も普通にいる。

 

 だが、雪菜や古城のいる世界でそれがどうなのかはまだ分からない。ややこしいことになるかもしれない。

 

「え、え、えええええ!?」

 

「・・・マジかオイ。女みたいな顔してやることやってんだな」

 

「一応言っとくけど純愛だからな!? 俺は政略結婚にも理解はあるけど、既に恋人いる以上不純は避けたいからね! 亡き相棒が不倫は怒るだろうしね!!」

 

 顔を真っ赤にするヴィヴィオと古城に、大声でそう前置きする。

 

 実際に彼女達とは愛を育んでいる。その点においてとやかく文句を言われる筋合いはない。合法でもあるのだから尚更だ。

 

「ま、まあ・・・。なんか俺を頂点としたハーレムというよりかは既に四角錐とかそんな感じになっている節もあるが、それでも貴族が配偶者を複数持つなんて珍しくもないんだから、とやかく言われる筋合いはないぞ」

 

「ま、まあそうですね。私達の世界でも一夫多妻を認めている文化はいくつもありますし」

 

「顔が赤いわよ雪菜ちゃん? ・・・まあ、私も妾の子だし、冥界暮らしが長いから理解はあるの。・・・そこでどう? ポイニクス家と縁を結ぶ気はないかしら?」

 

 と、雪菜をからかいながら話をそちら側にもっていこうとするのがシルシクオリティ。

 

 割と凄い恋愛事情に、その場の殆どが程度はともかく顔を赤くしている。

 

「・・・べ、ベルカの王国でもそういう国がなかったわけではありません。覇王(わたし)として知識ぐらいは・・・」

 

「うっわぁっ! うっわぁっ! うっわぁっ!」

 

「・・・なんで、なんで僕の方を見るのトマリ!?」

 

 割と色々と混乱状態。間違いなく車の中はピンク色になっている。

 

「ちょっと待て! 話が変な方向に行ってないか? 高町達や俺らがどうするかの話だろ?」

 

 と、そこで古城がツッコミを入れて話の方向性が戻っていく。

 

「・・・そうだった。とりあえず、そっちがどうするかっていうのが問題だな」

 

 軌道修正に心から感謝しながら、兵夜は話を戻す。

 

「聖杯戦争でエイエヌとかいう主催者が、人狩りをゲームとして組み込んでいる。・・・ここであんた等を解放しても、結局は他の参戦者に襲われる可能性が高い」

 

 巻き込むのは避けたいところだが、巻き込まれるのが確定しているのが古城達の立ち位置だ。

 

 彼らを狩るのを余興として組み込まれている以上、どうあがいても彼らはターゲットとして認定されてしまう。

 

 そして、その被害に巻き込まれるのは古城達だけではない。それに雪菜は気づいていた。

 

「それに、巻き込まれたのが私達だけだと考えるのも危険です。位置的にオイスタッハ神父はもちろん、キーストーンゲートにいた藍羽先輩や警備隊の人達も巻き込まれている可能性があります」

 

「浅葱がか!? おい、あいつスポーツはできるけど別に戦えるわけじゃないぞ!?」

 

「・・・知り合いが巻き込まれている可能性があるの? それは危険ね」

 

 血相を変える古城を気づかわしげに見ながら、シルシは声をかける。

 

「それに、話を聞く限り戦闘中に巻き込まれたんでしょう? その警備員っていう人も被害者がいるのかもしれないわね」

 

「・・・確実にいます。オイスタッハ神父は警備員を正面から突破してキーストーンゲートの最深部まで到達していました。おそらく戦闘ができる状態ではないと思われます」

 

 話を聞けば聞くほど、危険度が大きい状況なのがよく分かる。

 

「ヴィヴィちゃん? そっちはどういう状況で巻き込まれたのかな?」

 

「あ、はい。朝にアインハルトさんと一緒にトレーニングをしてたら巻き込まれまして」

 

「・・・ヴィヴィオさんの学友の、リオさんとコロナさんとも一緒に走る予定でした。・・・二人とも巻き込まれてなければよいのですが」

 

 その説明に、兵夜はため息をついてから状況を考慮する。

 

 これまでの流れと、更に今の状況を考慮。そのうえで最適解は・・・。

 

「OK。じゃあこうしよう」

 

 兵夜は、性格は悪いタイプである。

 

 魔術師らしい倫理観の欠如もあり、特に自分のことには顕著になる。相手は選ぶがえげつない行動も辞さない危険人物で、異形社会に入る前から悪党相手に恐喝などの非合法手段をいとわない。性格がいいと言われるよりかは、イイ性格と言われる人物だ。

 

 だが、同時に人が良い為面倒もよく、こと報酬関係においては厳しく、大抵の業務には報酬を用意する主義でもある。

 

 あったばかりの罪もなく、間違いなく善性と判断するべき人達に対して、それは躊躇なく発揮された。

 

「・・・君達、俺に雇われてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雇う? アンタが、俺達を?」

 

 その言葉に、古城は首を傾げる。

 

 むしろ助けられている側だと彼は思っている。

 

 なにせ、自分達は状況が殆ど掴めてないのだ。その状況を正確に把握しているのは、須澄達の方だろう。そして次点が兵夜達だ。

 

 そんな状況下で一体何をしようというのか。

 

「聖杯戦争を潜り抜けるには、戦力はいくらあってもいい。そして見ず知らずの他人を不用意に助ける余裕は俺達にはない」

 

 と、冷酷なようで実際当然のことを兵夜は告げる。

 

 実際、ここにいる人達は二人一組で別れているが、住んでいる世界すら違う者達だ。

 

 いくら困っているからって、助けに行くのは間違いなくお人好しとかの部類だろう。

 

 だから、このまま別れることになっても文句は言えないわけだが、兵夜は違った。

 

「俺から君達に頼む依頼は、暁達に関しては知り合いの救出と帰還のつてが整うまでの協力。ヴィヴィちゃん達には追加で時空管理局との交流の斡旋。報酬として金持ちの俺は業界における傭兵の相場を払い、お知り合いの救出までの協力を行う」

 

「え、でもそれだと宮白さんが大変じゃぁ・・・」

 

 隣のヴィヴィオが躊躇するが、それは当然だろう。

 

 その条件だと、自分達ばかりが得をするように思える。

 

 なにせ、いきなり行ったこともない異世界に放り出されて、あてもないのは自分達の方だ。

 

 はっきり言えば助ける義理なんてないわけなのだが、兵夜はあっさりという。

 

魔術師(メイガス)も悪魔も合理的な生き物で、等価交換を原則としている。・・・今の状況で優れた戦力を確保できるなら、それ相応の報酬を払うのが筋ってもんだろう?」

 

 そういうと、兵夜は左腕を振るう。

 

 そうすると、四個の小箱がその手の平に現れた。

 

「とりあえずは、まあこれぐらいでどうかな?」

 

 古城達はそれを手に取って恐る恐る開けてみる。

 

 ・・・そこにあったのは、赤く透き通ったルビーだった。しかも大きい。

 

「これ、宝石じゃねえか!? 結構高くねえか?」

 

「大丈夫大丈夫。霊地の利用料や、魔術使った鉱石探知による鉱脈発見の報酬で、成り上がり貴族の俺は金持ってるから! ・・・ちなみにそれは前金だ」

 

 つまり、成功報酬は別にある。

 

「一応言っておくけど、彼はその程度ポンと払える程度のお金持ちよ? 先手必勝で魔術関係で特許取っているから、莫大な財源を確保してるの」

 

「俺の全財産からすれば木っ端程度の金額で、これだけの戦力を手に入れられるなら安い買い物だ。・・・その分サービスもきちんとするぜ? 俺は福利厚生は充実させる主義なんだ」

 

 にやりと自己アピールをしながら、兵夜は更に説明を続けていく。

 

「はっきり言って、増援を見込める可能性は低い。なにせ敵は複数の世界の連合だ。母艦は一隻で通信もいまだに繋がらな―」

 

 その時、突如兵夜の懐が光った。

 

 何事かと構える六人の視線の先、兵夜はふとにやりと笑った。

 

「前言撤回。・・・連絡は繋がったようだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『兄上、シルシ義姉様! ご無事でしたか!?』

 

「そこ、さらりと俺がシルシを娶る方向にするな」

 

 先制でぼける雪侶にツッコミを入れながら、兵夜は連絡ができたことに安心する。

 

 味方と話ができるというだけでも、だいぶ安心感が違う。それが油断に繋がれば終わりだが、余裕に繋がれば有利に事を進められるからだ。

 

『シルシに大将、こっちはとりあえず該当世界に近づいてるが、大丈夫か?』

 

 と、グランソードも通信に参加する。

 

 どうやら、緊急事態ということで母艦ごと世界に接近しているらしい。主の窮地とくれば当然の反応だろう。

 

 が、それに対してアインハルトが声を上げた。

 

「待ってください。つたない次元航行技術では、フォード連盟にすぐ気づかれます。一旦そこで停止してください」

 

『・・・一旦停止! って、嬢ちゃん何者だい?』

 

「ああ、彼女達は・・・というか状況を説明する」

 

 と、兵夜はとりあえず簡単にまとめて状況を二人に説明する。

 

 それを聞いた二人はもちろん、通信が聞こえているであろうブリッジ中がどよめきに包まれたのか声が聞こえてくる。

 

『聖杯戦争がその世界で行われてますの!? それ、緊急事態ではありませんか』

 

『そもそも、禍の団(カオス・ブリゲート)残党がいる時点で、俺らが動くべき案件だな、こりゃ』

 

 状況を把握した二人はすぐに真剣な表情を浮かべる。

 

 禍の団が起こした数々の被害を思い起こせば当然の判断だ。加えて聖杯戦争である以上、状況はあまりに酷いと言ってもいい。

 

『どうしますの? この船の通信設備では、冥界にも各種神話世界にも通信は届きません。・・・今から冥界に行っても、増援の準備も含めれば往復で二週間はかかりますのよ?』

 

 雪侶が困り顔でそう告げる。

 

 なにせ実験段階の船だ。これまでにない超長距離の次元の狭間の移動に、通信設備は全く持って耐えられない。移動するにしても速度に限度が発生する。

 

 ましてや、最大の問題はそれ以外にもある。それを、グランソードが口にした。

 

『ましてやその気になれば複数の世界の連盟を敵に回すわけだ。これ、やばくねえか?』

 

 そう、それが最大の問題だ。

 

 D×Dも地球を中心とした複数の世界の連合で、最低限の足並みは揃っている。だがそれだけだ。

 

 どの世界も必ずしも一枚岩というわけでも無いし、和平がなってから時間があまりに短い。更に言えば、世界規模での混乱が完全に静まったわけではなく、次元渡航技術も未熟。簡単にいえば戦力を大量に遠くに送り込むことは不可能。

 

 そんな状況で、次元渡航技術が圧倒的に上の世界の連盟と戦争を起こすのは愚策以外の何物でもない。

 

 だが、テロリストに聖杯を渡すなどという愚行も難しい。

 

 この状況にどうしたものかと悩みそうになったが、それについては解決策があった。

 

「・・・ヴィヴィちゃん、ハイディ。時空管理局はこの事態に動いてくれるか?」

 

「それについては大丈夫だと思います。・・・管理外世界に関与した以上、時空管理局も流石に干渉しないわけにはいきませんし、警戒の為に付近に艦隊を派遣しているはずです」

 

「その人達を探してくれれば、たぶん協力してくれると思います。あ、私時空管理局の無限書庫の司書資格持ってますから、文書書けますよ?」

 

『おいおい大将、この嬢ちゃん達魔法世界(ムンドゥス・マギクス)の出身か何かか?』

 

 思った以上にポンポンとスムーズに答えてくれる幼女二人に、グランソードが感心する。

 

 D×Dも若手の実力者は大勢いて、グランソードもその部類ではある。だがそれでも十代後半で、ヴィヴィオ達はそれに比べれば前半もしくはそれ以下だ。

 

「時空管理局は実力主義なんです。私のママや友達も、十歳かその前から嘱託魔導士とかやってましたよ?」

 

魔法世界(ムンドゥス・マギクス)も実力主義で十歳前でも腕次第では傭兵とか無差別級の剣闘士とかになれたと久遠義姉様が仰られてましたが、意外とそちらの方がポピュラーなようですわね』

 

「・・・姫柊だって15で見習いだってのに、凄いな次元世界」

 

 ヴィヴィオの言葉に雪侶と古城が呆れ半分の関心を示す。

 

 あまりそういった文化に馴染みがないものからすれば、時空管理局の実力世界は感心するべきか呆れるべきか。

 

「・・・まあ、俺らの異形業界でも天才クラスは十代前半から実戦参加するし、人のことは言えないだろう。それよりもだ」

 

 と、兵夜は話を戻す。

 

 色々と文化交流をできればそれに越したことはないが、今はそれをやっている時間はない。

 

「そう、そうだよね。聖杯戦争をここからどうするかが大変だよね」

 

 須澄がそこを心配する。

 

 そう、問題はこれが聖杯戦争だということだ。

 

 それも、間違いなく大規模聖杯戦争だ。

 

 フリードが単独で聖杯戦争に参加しているとも思えない。ましてや、上級悪魔が眷属をフルメンバーで引き連れているような規模の戦いだ。

 

 八人もいて、更にはバックアップメンバーとして数百人以上が期待できるとはいえ、それでも難易度が多いのには変わらなかった。

 

「・・・須澄くん。ちょっと大変なことになってきたよ?」

 

 と、そこでトマリがタブレットを片手に声をかける。

 

「・・・エイエヌが、聖杯戦争でお知らせがあるって」

 

 いきなり、状況は緊急事態になっているということが把握できた。

 

「っていうかそんな便利なもんあるなら言ってくれよ」

 

「ごめん、本当にごめん。うっかりしてました」

 

 どうやら、須澄達はうっかり屋さんらしい。先行きが不安である。

 




魔術の基本は等価交換。きちんと報酬を用意する当たり兵夜は人はいいのです。性格は悪いけど。


グランソードたちと通信はつながったが、それでも事態はいろいろ大変。

なにせ、下手に干渉すれば複数の次元世界を敵に回しますからね。明らかに兵夜たちの戦力では対処できない。そして上記の通りいかにD×Dが化け物ぞろいのインフレ世界でも、距離という概念が強敵。

時空管理局との連携が取れないうちは、素直に聖杯戦争のルールにのっとるしかないわけですが、当然向こうも警戒するわけで・・・
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