ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
『大将は、グレモリー眷属というグループに所属していた』
グランソードは、唖然とする一同の前で説明を開始する。
『三大勢力の和平の邪魔から始まった、
それは、禍の団に所属していたグランソードだからこそ断言できる事だ。
『そして、宮白兵夜はその中でも戦果でかい組の1人。赤龍帝兵藤一誠と並び立つ、トップエースであり、四代目首魁のフィフス・エリクシルを討ち取った男だ』
三大勢力和平会談襲撃における、勢力の長をまとめて屠る最大のチャンスを逃した最大の要因。
その後逃げられたとはいえ、策をもってして最強戦力候補であるふんどしを倒した男。
天界をエロの渦へと包み込まんとした、エルトリア・レヴィアタンを倒した戦士の1人。
そして、第四首魁フィフス・エリクシルの宿敵。
そう、それはすなわち禍の団最大の敵。
そしてそんなものが弱体化してここにいる。
全てを理解して、雪侶は心底心から腑に落ちた。
『ああ、そんな男が弱体化してこんなところにいれば、手を取り合って殺しに来てもなにもおかしくありませんわね』
場合によっては聖杯を投げ捨ててでも復讐したい対象だろう。
「なんで真っ先に気づかなかった!?」
「すいませんうっかりしました!!」
古城の心からのツッコミに、兵夜は心から謝った。
ああ、これは確かに最大の誤算だ。
禍の団残党の参加者は、確かにこぞって殺しに来るだろう。
あの戦闘で近くにいた者達が、眼の色を変えて探しに来るのは当然。
バトルロイヤルなら、最後の決着をつけるまでの間の仮初の同盟は十分あり得る可能性。それも怨敵を倒す為なら簡単にできるだろう。特に主要人物を失った派閥なら、聖杯を投げ捨ててでも協力する可能性は十分にあった。
これは明らかにうっかり過ぎる。
「あの、独創的な戦装飾ですね。防御力は大丈夫なのでしょうか?」
「ハイディちゃん? あれは趣味の世界だから」
流石に汗を一筋流しながら、シルシはアインハルトの勘違いを正しておく。
きっと頑張って好意的に解釈したのだろう。実にいい子だと思うが、悪党相手では欠点になりかねないのが実に厳しい現実である。
「と、いうより明らかにいやらしい人達がいるんですが。なんですか、あの人達」
「姫柊ちゃん。あいつらはあの一団の中でも最強候補だ。油断しないように」
変態の群れに年頃の女子として当然な反応を返す雪菜に、兵夜は危険性を伝えておく。
実際彼らは間違いなく強敵なのだ。戦った事はあるからそれだけは確実に言える。
「奴らは自らの胸や性器のサイズを一時的に犠牲する事によって、強大な色欲を持つ者に強大な戦闘能力を付加できる。それどころか性的に欲情できる相手の衣服なら戦車クラスの頑丈さを持っていようと問答無用で粉砕する技を持つし、うなじフェチならうなじの後ろに高速移動するなり、透視能力で下着を見たり、周囲数百メートル以上の範囲でスカートを一斉にめくるなどといった一芸を保有している」
「三大勢力の天界・・・すなわち天国に襲撃し、淫行の限りを尽くして汚染した強大な組織よ。禍の団の残党でも強力な部類ね」
『色欲は人にとって重要な要素ですが、それを突き詰めたあの方々は間違いなく精鋭ですの』
『ああ、あいつらの戦闘能力はシャレにならねえ。油断したら、裸にされたうえで貞操を奪われるぜ?』
宮白眷属は全員が彼らを最も警戒していた。
「いや、どんな連中だよ!?」
「覚えておけ。俺の世界は、極限の領域に至った変態は何かしら他の面でも規格外の領域に到達する。・・・ホント頭痛い」
絶叫する古城に、兵夜は残酷な真実を告げる事にする。
どうせ隠せそうにない。
「うぉおおおおおお! 私の幼女の元へと誘導追尾する能力の前には、時速百キロ超の車といえど恐れるに足らず! そろそろおいつ―」
「YESロリータNOタッチ!」
明らかに危険な事を言った男に光力を叩き込んだが、それを切り替えのタイミングとして、兵夜は即座にアクセルを踏み込んだ。
「全力で走るぞ! 舌をかまないように気をつけろ!」
「あの、あれは撃ち落としてもいいのかなっ?」
「ぜひ跡形もなく吹き飛ばしちゃってください!」
トマリにOKを出しながら、兵夜はとにかく全力でアクセルを踏み込んだ。
あんな奇想天外な連中にやられて聖杯戦争に敗れたら、末代までの恥である。何よりヴィヴィオやアインハルトなどの子供には毒すぎる。
なのでぜひ始末してほしいと心から願い、それにトマリの答えてくれた。
「了解っ! 出番だよ、ザ・スマッシャー!」
トマリから魔力が迸り、そして上空で形を成す。
そこに現れるのは、魔力で構成された八首の蛇。
先ほど悪魔達を薙ぎ払った眷獣が、プラズマの吐息を放出した。
「アベシ!」
「タワバ!?」
「ウワラバッ!?」
先頭を走っていたナントの団がなすすべもなく吹き飛ばされるが、ふんどし集団と変態集団は素早くかわす。
特にふんどし集団は、瞬間的に短距離移動をしながら車の真上まで移動した。
そして、ザ・スマッシャーに抱き着いた。
「UMAだ! ヒュドラっぽいUMAがいるぞ!」
「はぁはぁ・・・」
ザ・スマッシャーはそれを振り払おうと、砲撃を忘れて全身を揺り動かす。
だが、鍛え上げられたふんどし達は一向に離れようとしなかった。
「ザ・スマッシャー!? お願い、今は幼女の敵を倒して! NOタッチはロリでもショタでも変わらないんだよ!?」
「僕ショタじゃない、ショタじゃないよ!? あと抱き着いているよ!?」
「まじめにやってください! いやらしい人達も来ましたよ!!」
夫婦漫才を勃発するトマリと須澄を一括しながら、雪菜は器用に車の上に乗ると、雪霞狼を展開する。
砲撃が止まった隙を突いて、変態集団が飛び掛かってきた。
「可愛い少女よ、一糸纏わぬ姿を見せるがいい!」
「一斉武装解除魔法! 放て!」
『『『『
無数の武装解除魔法が、雪菜を裸にせんと襲い掛かる。
武装解除魔法とは、武装を解除する為の戦闘魔法だ。
武器は弾き飛ばされ、衣服は弾け飛ぶ。そんな魔法攻撃である。
赤龍帝兵藤一誠の代表技である洋服崩壊に比べれば、破壊できる範囲も出力も圧倒的に劣るが、しかし軍用としてみた場合、その性能は武装解除魔法の方が有利だ。
なにせ、習得難易度も射程も汎用性もはるかに違う。練習すれば誰でも使えて、驚異的な裸を見たい願望も必要なく、遠距離を自由自在に、男女両方に自由に使える。そんな魔法なのだ。
ゆえに、戦闘用の基本として使われるそれは、しかし悲しい事に魔力で放たれるものだった。
ゆえに、魔力を伴う攻撃に対しては圧倒的な優勢を誇る。
その性能は、宝具にすら匹敵する。ランクを設定すれば究極の対魔術宝具であるアーチャーの宝具すら凌ぐだろう。
だが、圧倒的なまでに数が多すぎた。
「く・・・これは!」
霊的能力により一瞬先の未来視すら可能とする雪菜は、しかしまだ中学生。
身体能力は人間であり、それゆえに限界が存在する。
四方八方から放たれる魔法攻撃を無力化するので手いっぱいだった。
そして、一発でも仕損じればその場であられもない姿を見せられる羽目になる。
・・・割と男の多いこの状況下で、それは断固ごめんだった。
「先輩よりもいやらしい! しかも数も多いとか最悪ですね!」
何とか攻撃をしのぐが、しかしそれでも限界はあった。
「・・・うなじがある限り俺は高速移動ができる。・・・後ろをとったぞ」
その言葉に、動きが止まらなかったのは自画自賛してもいいだろう。
だが、全方位からくる武装解除魔法を捌くのに手いっぱいで、後ろの相手に対応する余裕がない。
雪菜は背筋が凍り付くのを自覚した。
「では、御開帳!」
そしてその僅かな隙を逃さず、男の手が雪菜に伸び―
「はい、そこまで」
・・・天井から突き出たエストックに、串刺しにされた
「ぎゃあぁあああ!?」
「中学生におさわりは禁止よ? あと、これぐらいの厚さなら透視できるから」
シルシのエストックが男の動きを止め、そして更に拳が男の顔面に叩き込まれた。
「いい加減にしろ、この変態が!!」
顔面を吸血鬼の拳で殴りつけられ、変態が一人脱落。
「無事か姫柊! なんか変なことされてないな!?」
「は、はい! ありがとうござます」
慌てて無事を確認してくれる古城に少し赤面しながら、雪菜はしかし戦闘体勢を解除しない。
今の不意打ちに動きが一瞬止まったが、しかし敵はまだたくさん残っているのである。
・・・ふんどしが眷獣に夢中になっているが、それでも変態は数多いのである。
「おい、こいつら全員吹き飛ばしてもいいんだよな!?」
「テロリストは
兵夜から許可を取り、古城はすぐに眷獣を展開する。
「まとめてぶちのめせ、
そして、獅子の姿をした雷撃が、周囲に破壊の渦を発生した。
変態集団は一斉に雷撃に呑まれて感電する。
あまりの破壊力に、英霊すら吹き飛ばす一撃が敵の過半数を脱落させた。
だが、其れでも限度がある。
特に、すぐ近くに味方と一緒にいるふんどし集団までは手が回らなかった。
だが、そんな心配はあまり無用だった。
「おお、ここにもUMAがいるぞ!」
「「「「「ぺろぺろす・・・ぎぃいいやぁああああああ!?」」」」」
勝手に抱き着きに行こうとして、勝手に感電してくれたおかげで簡単に殲滅できた。
心なしか、獅子の黄金も嫌そうな顔をしていた。そしてザ・スマッシャーと視線を合わせて共感している感じがした。
「なんか、すまん」
なんとなく悪い気がして謝ってから、古城は周りを確認する。
真祖の眷獣は圧倒的に強力だが、しかし欠点も多い。
破壊力があまりにも強大過ぎる為、細かい操作ができない。つまり、派手なのだ。
「宮白だったか? とりあえずあいつらは全滅したみたいだけど・・・まだ来そうだよな」
「だろうな。・・・今のうちに距離を稼いで逃げたいところだが」
そう言葉を切る兵夜だが、それは簡単に分かる。
既に、新たな影が近づいてきていた。
黒い翼を生やした一団。兵夜の世界の悪魔だろう。
さっきのバラムの一団がもう仕返しに来たのかとも思ったが、しかしそれは違った。
その先頭に立つ少年が、ひときわ大きな声を上げる。
「見つけた、見つけた見つけた見つけたぁ!! 殺してやるよぉおおおお!!!!!」
憎悪に濡れたその声を聴いて、兵夜は少し記憶をあさった。
そしてすぐに思い出す。
「ディオドラか!? 脱走していたとは聞いていたが、もう来ていたのか!」
「そうさ! お前にやられたこの恨みを晴らし、離れて行った女を取り戻す為に聖杯を使うつもりだったけど、ここに来たのならちょうどいい!」
目を血走らせたディオドラと名乗る少年は、狂気を浮かべながらいくつもの魔力の塊を生成する。
「そのまま死ねえええええええ!!!」
いくつも魔力の塊が、ジグザグに曲がりながら放たれた。
「撃ち落とせ!」
古城はすぐに眷獣に命令するが、しかしディオドラは魔力塊を自在に操作して、その迎撃をかいくぐる。
そして、いくつかの魔力弾が四方八方から襲い掛かった。
「先輩伏せて! 私が迎撃します!」
「馬鹿! 数が多い! 俺なら喰らっても―」
雪菜だけではカバーしきれない。そして古城は胴体を両断されても再生する不死の生命力を持つ。
だからいくつか喰らう覚悟をしたが、その心配は無用だった。
「大丈夫です!」
古城に迫りくる魔力塊を、大人モードになったヴィヴィオが拳で殴り飛ばした。
「これぐらいなら、十分迎撃できます」
そしてアインハルトも同じく激戦に参加する。
「・・・なんか、悪いな」
外見こそ年上に見えるが、その実実際は十歳前後の子供に助けられ、流石に少し居心地が悪くなる。
見習いとはいえ本職である雪菜に全部任せるのも思うところがあるのだ。ただの学生らしい二人に庇われる形になるのは、少し恥ずかしかった。
そんな古城の気持ちを察したのか、アインハルトは警戒しながらも言葉を放つ。
「お気になさらず。覇王として、すべてを守り通せる力を求めるのが
そういいながら魔力塊を迎撃するアインハルトに、古城は何か嫌なものを感じる。
アインハルトが悪人だとかそういうものではなく、何か背負い込んでいるようなそんなものを感じたのだ。
「邪魔をするなよ人間風情が! このディオドラ・アスタロトを汚した報いを、その薄汚い転生悪魔に教えてやらないとねぇえええええ!!!」
だが、そんなことを深く考えさせる暇はなかった。具体的にはディオドラがさせてくれなかった。
「な、何かしたんですか、兵夜さん?」
あまりの剣幕にヴィヴィオが尋ねるが、兵夜はなんてことがないように答える。
「いや、外道に上の許可もらってからお仕置きしただけだし」
「それにしても、それにしてもマジギレしてるんだけどやりすぎてない?」
聖槍をもって同じく迎撃に参加する須澄の言葉が全員の総意だ。
あれは、かなり常軌を逸している。
だが、実際のところディオドラにも十分すぎるほど責任がある。
「気にしなくていいわよ。あの男は、シスターや聖女を誑かして自分の女にする為なら手段を選ばないの。兵夜さんの同僚なんて、其の為だけに自分で大怪我をした彼を治療した所為で教会を追放されたもの」
シルシがバッサリと切り捨てながら、エストックをディオドラに突き付ける。
「消えなさい女の敵。あなた如きに私達全員を倒す力は欠片もないわ」
絶対零度の瞳で見据えられ、しかしディオドラは屈しなかった。
「忘れてないかい? 今の僕は英霊の力を宿しているんだよ?」
そういうなり、彼はネックレスを取り出すとそれを身に着ける。
それは、バラムが保有していたものと同じだった。
「さあ、出番だよ、その剣で奴を殺してしまえ、セイバー!」
今回のうっかり、そもそも敵が協力する可能性を忘れていた。
そりゃアンタ、自分が禍の団に何してきたのか忘れてんのか。十億抜きにしたって殺したいよ。
それはともかくとしてディオドラ登場。
前から思ってたんだけど、下手したら死ぬような大けがする当たり、こいつ意外と根性あるんじゃないだろうか?
しかも用意したのはあのセイバーだが・・・。