ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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フェニックス編完結!


俺、決意します!

 

 

 禁手(バランス・ブレイカー)。神器にはそんな切り札が存在してたとはな。

 

 真っ赤なドラゴンを模した鎧に身を包んだイッセーは、先ほどとは比べ物にならないオーラに身を包んでいた。

 

 その光景にライザーが警戒するように後ろに飛ぶ。

 

「良いだろう。手加減なんざ絶対しねえ。そのまま燃え尽きろクソガキィ!!」

 

 ライザーが両手に巨大な炎を生み出す。その出力はさっきとほぼ同等だ!!

 

「ヤバい!? 飛べ小猫ちゃん!!」

 

「・・・了解です!」

 

 俺と小猫ちゃんは同時に飛び上がる。

 

 ・・・校庭が炎に包まれた。

 

 洒落にならない。よく俺はあれを対処できたと褒めてやりたい。

 

 だが、驚くのはこれからだった。

 

 その凶悪な炎を、イッセーは真正面から突っ込んだ!!

 

 普通に考えれば、どう考えても燃え尽きてしまうのが分かり切ってしまうほどの炎。

 

 だが、イッセーはそのまま突き抜ける。

 

「小猫ちゃんが言っていた。打撃は体の中心線を狙って抉り込むように打つって!!」

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』

 

 籠手から倍化を意味するであろう音声が何度も何度も放たれ、その左腕はライザーの顔面を思いっきり捉えた。

 

「ガァッ!? ・・・バカな!?」

 

 ライザーの奴は思いっきり吐血をする。その表情は驚愕とかそういうのが陳腐に思えるぐらいの信じられないものを見たかのような表情になっていた。

 

 当然だろう。ダメージを受けているとはいえ再生能力が売りのフェニックスだ。ただ殴られたぐらいならすぐに再生するはずだ。

 

 だが、俺はそれについて推理材料を持っている。

 

 まず、イッセーに渡したのは瓶に入った聖水の塊だ。

 

 注射器に入れるより大量に入れれたので、眼潰しとかそういった感じで使うように用意したものだ。

 

 これを、俺はイッセーにメモ付きで渡していた。

 

 メモの内容はこうだ。

 

『さっきの力を込めてライザーに叩きつけろ』

 

 アレが俺の予想通りの代物だとしたら、高確率で投げつけたとしても効果がある。

 

 魔力を流す必要がある強化よりも遥かに効果的だ。

 

 最悪の場合、それで何倍にも聖なる力を倍化させた状態でぶつけることで、ダメ押しの一撃とするつもりだった。

 

「バカな!? 聖水は悪魔にとって害となる。・・・そんなものをかけて左腕が無事で済むはず―」

 

「木場が言っていた」

 

 驚愕するライザーを無視して、イッセーが突っ込む。

 

 とっさに腕を振り上げるライザーだが、それは手段として愚策だ。

 

「視野を広げて相手と周囲を見ろって!!」

 

 あっさりとその攻撃をかわすと、再び左腕を驚愕するライザーに叩きこむ。

 

 地面に叩きつけられるライザーに追撃が来る。

 

「朱乃さんが言っていた! 魔力は体全体から流れるように集めるって!!」

 

 膨大な魔力を集めた右腕が突き出され、すぐにそれは砲撃となってライザーに放たれる。

 

 校庭に巨大なクレーターを生み出すほどのそれは、さっきの拳ほどじゃないがライザーを痛めつけ、更にその体を衝撃で空中へと跳ね飛ばす!

 

 その背中に回り込み、イッセーの拳が更に跳ね飛ばす!

 

 今までのイッセーでは考えられないほどの力がライザーを吹き飛ばし、そして耐性を整える間も与えずに追撃が叩き込まれる。

 

 ここまでやるかよイッセー! 実は切り札をもう一つ用意していたんだが、これなら必要ないか?

 

「アーシアが言っていた!」

 

 あ、使うのか。

 

 イッセーが更に懐から布に包まれた物体を取り出す。

 

 厚手の布で包まれたそれは、頑張って入手した本物の十字架だ。

 

「聖水と十字架は悪魔の弱点だって!」

 

 十字架を左手で掴むと、消費した聖水を再び降りかける。

 

「それを倍増した状態で叩きこめば、悪魔の体には大ダメージだよな!!」

 

 そのままライザーの顔面を掴むと、全力で地面へと降下し、そのままライザーを叩きつける。

 

 巨大なクレーターと化していた校庭に、新しいクレーターが誕生する。

 

「・・・どうして、イッセー先輩は十字架を平然と持っているんですか」

 

 その様子を見ていた小猫ちゃんが愕然としている。

 

 そりゃそうだろう。悪魔にとって天敵だというのなら、イッセーにとっても天敵だ。

 

 気合で我慢しているだなんてレベルじゃない。

 

「・・・たぶんだけどな。イッセーの左腕、悪魔のそれじゃなくなってる」

 

 俺は答えを教えてやった。

 

 どうせばれるし問題ないだろう。

 

「・・・どういうことです?」

 

「俺もそこまで分からねえよ。赤龍帝の籠手にはドラゴンと取引する力でもあるんじゃねえか?」

 

 そして、その効果は絶大だ。

 

 俺の強化を遥かに上回る倍増の力を込められた聖水と十字架は、ライザーの体を一気に蝕む。

 

「そして宮白が繋げてくれた時間。・・・無駄になんかできねえよなぁ!!」

 

 全身が赤く輝く中、更にイッセーは拳を振り上げる。

 

 その鎧が光と化して消えるが、既に決着はついているようなものだった。

 

 ライザーはボロボロなうえ、精神を大幅に消耗して立っているのもやっとの状態。

 

 ボロボロなのはイッセーも同じだが、奴は逆に気力が充実している。

 

 これでイッセーに負ける要素は見当たらなかった。

 

 ライザー自身も分かっているのか、見ていて哀れなぐらい取り乱している。

 

「ま、待て! お前、この婚約が冥界でどういう意味を持つか分かっているのか!? 悪魔の将来の為に必要な事なんだぞ!? お前みたいな、た、た、ただの下級悪魔がどうこう言っていいようなことじゃ―」

 

「うるせえよ」

 

『Boost!』

 

 ライザーの言葉を遮ってイッセーは左腕に倍化の力を込める。

 

 迷いない目でまっすぐに、ライザーを見返しながら拳を構えた。

 

「俺はバカだから、冥界の事とか本当にさっぱり分からねえ。だが、気絶しかけたあの時、部長がどういう顔をしてたのかだけは分かる」

 

 一歩、また一歩とまっすぐに、力強い足音を響かせながら近づく。

 

「泣いてたんだよ! 部長は!!」

 

 左腕を握り締め、

 

「それだけあれば十分だ! 今回は左腕だ。それで駄目なら右腕、更に駄目なら今度は目を差し出してやる!」

 

 まっすぐにライザーを睨みつけ―

 

「それで部長の涙が止まるなら、俺がお前をぶん殴る理由には十分だァァアアアッ!!!」

 

 真正面から殴り飛ばした!

 

 ライザーは何とか耐えようとしたが、既にあいつにそんな力はない。

 

「こんなことで・・・俺が・・・っ!!」

 

 そのまま、前のめりに倒れると奴は動かなくなった。

 

「お兄さま!!」

 

 そんなライザーを庇うように、レイヴェル・フェニックスがイッセーの前に立ち塞がる。

 

 その目の前に拳を突きつけながら、イッセーは迷いない目で声を張り上げる。

 

「文句があるなら俺のところに来い! いつでも相手になってやる!!」

 

 男の俺から見てもカッコイイ姿だ。

 

 事実、真正面から見たレイヴェルの頬が真っ赤に染まっている。

 

 こういうところを見せればあいつもモテるだろうに、本当にそんな奴だよ、あいつは。

 

「どうだ小猫ちゃん。こういう時のあいつは結構カッコイイだろ?」

 

「普段がダメダメなのが致命的です」

 

 あらら、手厳しいね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・赤龍帝を宿すならやってくれるかもしれないとは思っていたが、やはりやってくれたか」

 

「やはり、お前は反対だったかサーゼクス」

 

「申し訳ありません父上。ですが、その分面白いものが見れたのは間違いない」

 

「フェニックス卿も笑って許して、しかし赤龍帝の存在は気にされていたよ」

 

「でしょうな」

 

「対をなす二天龍。その片割れが悪魔となるとは前代未聞だ」

 

「しかもそれが妹の眷属となるとは、本当に驚きました」

 

「敗北を知って息子は成長すると、フェニックス卿は喜んでおられた」

 

「そうですか。結果的に、双方に理がある決着で良かった」

 

「フェニックスと赤龍帝の戦いは本当に見物だったが、伝説の通りならまだまだあんなものではないだろう」

 

「ええ。敗れた場合に備えてグリフォンなども用意していましたが、今の段階でも必要ないと来ている。ですが・・・」

 

「なんだ。他に気になる事でもあるのか?」

 

「ええ、赤龍帝より先にフェニックスにたった一人で立ち向かった兵士です」

 

「彼か。悪魔なら毛嫌いする聖水を躊躇う事なく戦闘に組み込んだ。・・・観戦していた者全てが息を呑んだよ」

 

爆弾王妃(ボムクイーン)がいなければ、彼の段階で決着がついていたかもしれない。いや、私の妹は本当に眷属を見つける才に溢れている」

 

「お前が言う事でもないだろう。だが、それ以上にあの動きは凄かった。プロモーションの影響を受けすぎたのだろうか」

 

「ええ、もしかしたら、アジュカとセラフォルーが言っていた件が影響しているのかもしれませんね」

 

「・・・なんだと? それはどういうことだ?」

 

「まだ、我々と一部の者しか知らぬ事なのですが、あの大戦の影響はこの世界に異物を呼び込んだかもしれないのです」

 

「異物・・・。聖と魔のバランスの崩れは、そんなところまで影響を与えているというのか」

 

「ええ。可能性が議論されていた異世界からの漂着物。彼はその影響を、受けているのかもしれませんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数日後。

 

 俺達オカルト研究部の内、三人を除いたメンバー+ナツミは、某回転寿司チェーン店にやって来ていた。

 

 本当ならイッセー達も連れてくる予定だったのだが、残念なことにイッセーは未だに気絶している。

 

 あの後イッセーは部長と少しの間会話していたのだが、目を離した隙にイッセーが鼻血を吹き出しながらぶっ倒れていた。

 

『イッセーッッッ!?!??!? 何があった!?』

 

『き、き、き・・・ふぁ、ふぁ、ふぁ・・・ファーストキ・・・ス』

 

『本当に何があった!?』

 

 どうも部長が落ちたらしい。

 

 まあ、あそこまでカッコイイところを見せられたら惚れてしまっても無理はないだろう。

 

「それもそうですわ。何度も何度も倒れながらも立ち上がり、最後には勝ってしまったのですもの。女の部分が刺激されますわ」

 

 それってあなたもイッセーに気があるって言うことで良いですよね?

 

「流石スケベ技の開発に全面協力しただけはありますね。スケベに抵抗がないどころか相当のエロ担当でしょうあなた」

 

「あらあら。これでも私は処女ですので、そこまで言われると傷つきますわ」

 

「それでそこまで!?」

 

 ワサビをしょうゆ皿に出しながら俺は驚く。

 

 イッセーとの一緒の風呂を了承した事と言い、この人経験豊富なお姉さまだとばっかり思ってた。

 

 まさか未経験だったとは・・・。

 

「・・・宮白先輩。注文が来ました」

 

「お、サーモンマリネ寿司到着。さ、食べよ食べよ」

 

 小猫ちゃんの言葉に俺は我に返る。

 

 そう、これこそが俺が楽しみに待っていた大事な食事。

 

 回転寿司の期間限定、サーモンマリネである。

 

 まさに今日が限定期間の最終日。イッセーの復活を待たずにこんな打ち上げもどきを強行したのはこれが理由だ。

 

 イッセーの看病に残った部長とアーシアちゃんには後で持ち帰りで持っていこう。その頃までにイッセーが起きている事も考えて、3と2で割り切れる数にしておかなくては。

 

 うん、美味い。

 

 俺が味わっていると、その視界に心配そうな木場の姿が映る。

 

「でも良かったのかい? 全部宮白くんが奢ってくれるとかいうけど、財布の中身とか足りるのかい?」

 

 その視線が向くのは小猫ちゃん。

 

 ・・・既に皿が積み重なっている。

 

 流石に想定外の食べっぷりだが、それと金の問題は関係ない。

 

「そういえば、魔界の賭け事サイトで今回の試合を賭けたとか言ってましたわね。それで?」

 

「ええ。なんて言ったって20倍ですからね。それに結果オーライな想定外もありまして」

 

「「「結果オーライ?」」」

 

 三人の首が傾く。

 

 ・・・ちょっと言いたくないが、まあいいだろ。

 

「20倍だなんて額なんで、景気づけも兼ねて一万円ほど賭けたつもりだったんですが・・・」

 

 本当に結果オーライだった。

 

 勝てたからこそ笑い話にできるが、これは一歩間違えれば大惨事。

 

「・・・サイトの金額単位がドルで、貯金全部賭けてました」

 

「・・・本当に結果オーライだね。一万ドルってその時いくらぐらい?」

 

「ジャスト120万円」

 

 木場に返答しつつ視線を逸らして、サーモンマリネを口に運ぶ。

 

「ブフッ! ちょ、ダメ・・・アッハハハハッ」

 

 お茶を噴き出しながらナツミが爆笑した。

 

 ああ、笑うがいいさ!

 

 まさか俺もここまで思いっきりやる事になるとは思わなかったよ!!

 

 おかげで俺の全財産は2400万円だ!!

 

 マンションが一部屋買えるぞこれは。

 

 今後は気をつけよう。

 

「・・・不注意のおかげで遠慮しなくて済みます。ゴチになります」

 

 ・・・まだ手加減してたの小猫ちゃん!?

 

 この子の本気が予想できない!?

 

 100円均一の店で良かった!

 

「・・・しっかし、今回は本気で大変だったな」

 

 部長の気持ちも分からなくもないが、流石にこう言ったのは出来れば勘弁してほしい。

 

 部長のお父さんがこれに懲りて、成人するまでの間黙って見ている事を祈るだけだ。

 

「まあまあ。僕らは皆部長に助けられたものなんだし、そんなこと言わないで」

 

 木場がやんわり嗜める。

 

 ん? なんか変な事を聞いたような。

 

「あれ? てっきり俺みたいに死ぬところを助けられるようなケースってレアだと思うんだが、違うのか?」

 

「普通はスカウトしたりするんだけどね」

 

 木場は苦笑したが、どこかその笑顔には影がある。

 

「少なくとも、僕はイッセーくんやアーシアさんと同じように一度死んでいるよ。・・・今の僕という存在は、その半分以上が部長のおかげで出来ているようなものさ」

 

「・・・私も、名前を与えてもらいました」

 

「私も、危うく命を落とすところをリアスに助けられて以来の関係ですわね」

 

 ・・・部長、どんだけ誰かの命の危険に介入してるんだよ。

 

「皆もいろいろと大変なんだねー」

 

 ナツミの言葉が全てを物語っている。

 

 どいつもこいつも不幸な目に遭ってきたって事か。

 

 間がいいのか悪いのか。

 

 思わず茫然としてしまったが、どうやら部長は想像以上にお人好しらしい。

 

「なるほど、それじゃあ仕方がないか」

 

 ああ、これは仕方がない。

 

 どうやら、俺は今回、上司には恵まれているらしい。

 

 傍から聞けば物好きなだけにも思えるが、それだけじゃないだろう。

 

 そんな機会に巻き込まれること自体そうそうないだろうし、何よりもっと恩に着せることができるはずだ。

 

 そして、イッセーに見せたあの涙。

 

「・・・うん」

 

 誰にも聞こえない声で、だけど俺は声に出して決めた。

 

 何時か話してみよう。

 

 何時になるかは分からない。だけど、死ぬまでに必ず一度話そう。

 

 俺の、あまりにも奇想天外すぎる独特な特徴を。

 

 あ、万が一の時はナツミだけは逃がさないとな。

 

 そう決めてから、俺はサーモンマリネ寿司を一口食べた。

 

 うん。

 

 美味い。

 

 

 




これにてフェニックス編は完結です。

これからもゆっくりと、しかし確実に進めていきたいと思いますので、応援と感想よろしくお願いします。
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