ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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合流、開始します!

 

 全員が会話を聞こえるように設定してもらってから、携帯を通話にする。

 

「・・・遅い! 死んだかと思ったじゃない!!」

 

 かなり本気で大声が響いて、耳を抑える。

 

 だが、これだけの声が出せるということは消耗は少ない証拠だった。

 

「大丈夫そうで何よりだ。シルシ、電波経由で千里眼使えるか?」

 

「電子干渉魔術はまだ慣れてないけど、ある程度距離がわかれば・・・」

 

 兵夜はシルシとすぐに動くが、古城はそれよりも何よりも無事を喜んだ。

 

「無事だったんだな浅葱。心配したぜ」

 

『無事じゃないわよ! テロリストが襲撃してきたかと思ったら空間転移魔術に巻き込まれるし! 親切な人が拾ってくれたからよかったけど、その人にネット環境借りて、やっとの思いであんたの携帯があるって探し当てたのよ!?』

 

「今サラリとすごいこと言わなかったか、その女」

 

 ハッキングの心得もあるので、兵夜はその恐ろしさがよくわかる。

 

 少なくとも、並のハッカーではどうにかできるようなことではない。そしてこの緊急事態でそんなことができる胆力もシャレにならない。

 

「そうか? バイトで絃神市のメインコンピュータを使わせてもらってるらしいが」

 

「それ十分すごいからな?」

 

 どうにも周りもよく分かっていないようだ。

 

「にゃー」

 

 猫に慰められた。

 

 あと、クリスと呼ばれた兎のぬいぐるみが頭に手を置いた。

 

 どうやら、この二匹はすごさがある程度はわかっているようだ。

 

『別に大したことはしてないわよ。私はバイトでプログラム組んでるだけだし・・・っていうか誰?』

 

「最初に警告しておく。自分の化け物具合を自覚しないと死人出すぞ。・・・それと俺は暁の協力者だ」

 

 かつての親友が、自分の実力を過小評価しすぎた結果昇格試験で人を殺しかけたことを思い出して、兵夜は頭痛を感じた。

 

 だが、其れはともかくこれは中々いけると判断する。

 

「とりあえず、藍羽・・・だっけ? 簡単に状況を説明するから、落ち着いて聞いてくれ」

 

 と、兵夜は簡潔に状況をまとめて説明する。

 

 ただの高校生(などというレベルではないハッカーだが)である以上、取り乱すと踏んでいた。

 

 が、割とすぐに納得してくれた。

 

『なんでそんなことになってんのよ。絃神市の設計者のせいで大変なことになってるってのに、こんどは異世界召喚でバトルロイヤル? 一周回って落ち着いてきたわ』

 

「大物だな、オイ」

 

 最早兵夜としては感心する他ない。

 

 とはいえさてどうしたものか、と思った時、須澄が割って入って声をかける。

 

「・・・聞こえる、聞こえるかな? とりあえず、今どの辺りにいるかわかる? っていうかその親切な人って誰かな?」

 

『ん? あなたも協力者? ・・・日が出てる方から海が見えるわね。海からこっちまでの間には、なんかぼろぼろの建物がいっぱいあるけど』

 

 その言葉を聞いて、トマリが地図を出した。

 

 そこにに素早くペンで一部を丸く囲むと、「廃墟地帯」

の文字を書く。

 

「海が見えるってことはこの廃墟地帯のこっち側だねっ。反対側に何が見えるかわかる?」

 

『えっと・・・高速道路っぽいのが。あと、ちょうどインターチェンジが太陽の反対側に』

 

「OKっ。それなら大体わかるよ。シルシちゃん、半径五百メートルぐらいなら場所わかるかなっ?」

 

「浅葱ちゃんの顔写真があるならできるわよ? 大体の方向も分かるしね」

 

「うんうん。あと浅葱ちゃん? 今いる建物どれぐらいの高さかわかる?」

 

『えっと、かなり高いわね。同じぐらいのは三つもないけど』

 

「OKOKっ。そこまで分かればすぐに行けるよ。そこで待っててっ」

 

 と、とんとん拍子に話が進んでいく。

 

 だが、そんな中兵夜は嫌な予感を感じていた。

 

「これ・・・大丈夫か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たぶん、たぶん危険だね、浅葱ちゃんは」

 

 と、街を歩きながら須澄は断言した。

 

 それについては、兵夜も全く持って異論はない。

 

「この治安の悪い街で、廃墟地帯のすぐ近くにあるそんな高いビルに住んでるような奴は十中八九悪人。できるだけ急いだほうがいいよっ」

 

「そうなんですか? でも、なにもされてないんですよね?」

 

「安心させてから内臓を売るつもりか・・・いや、俺たちもまとめて一網打尽にする作戦かもしれないな。全員戦闘する覚悟はしておくように」

 

 ヴィヴィオにそう釘を刺しておきながら、兵夜は視線で町中を観察する。

 

 最短距離で歩いているが、しかし割と人が多い。

 

「もっと活気が無いかと思ったんだが、割と賑わってないか?」

 

 今はちょうど市場の辺りだが、闇市同然とはいえ人が割と多い。

 

 むろん、売られているのは怪しそうなものがたくさんある。明らかに違法薬物と思われるものもあった。

 

「・・・なんか魚が焼けるにおいがするな。朝飯喰ったばかりなのに腹減ってきた」

 

 古城の視線が屋台に向けられるが、須澄が青ざめた顔でその肩に手を置く。

 

「やめたほうが、やめたほうがいいよ。前食べてみたけど三回中三回ともアイスみたいな甘さがあったから」

 

「絶対ロクなのじゃないって言ったのにっ。須澄くんはうっかり屋さんなんだから。でもそんなところも可愛いっ」

 

 と、冷や汗すら流す須澄にトマリは抱き着いた。

 

「はいはい御馳走様。・・・とはいえ、思ったよりは栄えてるな。もっとスラムじみたところだと思ったんだが」

 

 話に聞いているとかなり貧困だと思ったのだが、そうでもないように思える。

 

 が、須澄は蔑むように街を見渡しながら、ため息を突く。

 

「数年前から聖杯戦争の舞台づくりとして発展させられてるんだと思うよ? 必要もない貿易の中継地点かされてるしね」

 

 地元なだけあってよく見ている。

 

 確かに、少し周りを見渡してみると港での作業を募集する胡散臭い男が何人もいた。

 

 その男たちから明らかに距離を置きながら、トマリはヴィヴィオたちに警告する。

 

「皆、話しかけられても無視してねっ? この街、犯罪者の巣窟になってるから、油断してると犯罪の片棒担がされるよっ」

 

「そ、そうなんですか?」

 

「気を付けます」

 

 と、流石に慣れてないのか緊張する二人は、すでに大人状態になっている。

 

 子供のままで歩くには危険すぎる。そういう須澄とトマリの意見を反映した結果だ。

 

 バリアジャケットという戦闘装飾は流石に目立つので、兵夜がジャージを提供した。

 

「っていうか、なんでジャージとはいえ女物の服持ってんだ?」

 

「友人が、あの変態どもの脱がし技の開発者でな。たまに暴発するんでフォローのために常備してるんだ」

 

 古城の質問に答えると涙が出てくる。

 

「元祖洋服崩壊(ドレス・ブレイク)の生みの親なのよ。あれは初めて見たとき吹き出したわ」

 

「・・・すごいいやらしい人なんですね、その人」

 

 思い出しておなかを抱えだすシルシを眺めながら、雪菜は極めて妥当な意見をはっきりという。

 

「ああ、あふれ出る性欲を抑えることができない覗きの常習犯。控えに行っても女の敵だな」

 

「うっわぁっ。須澄くん、そんなのにだけはならないでよっ」

 

 兵夜が軽く説明すると、トマリはまあ当然の反応を返す。

 

 それに兵夜は苦笑で返す。

 

 なにせ、女の敵であることは間違いなく事実。普通に考えればモテる訳がない危険人物だ。

 

「・・・だけど、其れさえ絡まなければ基本的に常識人。エロさえ関与しなけりゃ誠実で仲間思いな良いやつさ。問題ごとにもできないなりに寄り添ってぶつかっていくから、一度仲良くなったら嫌いになんてならない良い男でもある」

 

 兵夜はそう断言する。

 

 そう、彼はその評価は正確かつ的確だ。

 

 友達や仲間の為なら体を張れる献身の精神を持ち、その優しさは多くに仲間を救ってきた。

 

 スケベすぎるのが問題だから万人受けはしないが、エロに寛容な冥界では普通に人気者だ。

 

 弱気を助け強きをくじく。悪に義憤する正義感の持ち主で、だからこそ冥界の英雄とすら呼ばれている。

 

「例えていうならそうだな・・・英語でHとEROを足すとHEROになる。そんな男だよ、あいつは」

 

 そういう兵夜の顔はとても自慢げで、大切な宝物について語る少年のそれだった。

 

「大好きなんですね、その人のこと」

 

「もちろんだよヴィヴィ。俺は、あいつのためなら死ねるとも。・・・ま、死んだらあいつが泣くから死なないように頑張るけどな」

 

 そうおどけながら、兵夜は行き先を確認する。

 

「・・・そろそろだいぶ近づいてきたが、見えるか?」

 

「そうね、染めた金髪で雪菜ちゃんとほぼ同じ学生服を着た女の子は見つけたわ」

 

 と、シルシが眼帯に手を当てながらすぐに報告する。

 

「そいつだ! で、まだ大丈夫なんだな?」

 

「ええ。すぐ近くに十代後半ぐらいの女性がいるわ。・・・髪型は短めの髪のポニーテール。髪と目の色は赤いわね」

 

 と、すらすらとシルシは答えていく。

 

 はるか遠くの悲劇すら見据えることができる千里眼の前には、建物の内部など関係ない。

 

 それゆえに、すぐにその情報を判別することができた。

 

 ・・・そして、作戦はすぐに建てられた。

 

 


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