ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
ザイードが攻撃を叩き込もうとしたその瞬間、彼の肩に手が置かれた。
「・・・おい」
その声はあり得ない。
確実の心臓をぶち抜いたはず。
だが、しかしそれでもすぐに反応できた。
なにせ、彼は心臓を破壊されたどころか肉体が崩壊したのにもかかわらず、生存しているものを知っている。
だがそれでも、暗殺者である彼は不意打ちを行うことには強くとも完全な不意を突かれることには弱かった。
「人の仲間に何してんだ!」
「ぐぉぉ!?」
顔面狙いの、雷撃を纏った拳が放たれる。
かろうじて反応できたことと、古城が素人であったことから防御が半端に間に合った。同時に想定外だったこと、古城が人間離れした身体能力を持っていたことから半端にしか防御が間に合わなかった。
ガードで殺しきれず、ザイードは廃墟の壁を突き破ってたたきつけられる。
だが、その程度で殺されるほど龍神の肉体は甘くない。
「古城くん! ためらわずに吹き飛ばして!」
「わかってる! 薙ぎ払え、
魔王と並び立つほどの雷撃が放たれ、廃墟群を粉砕する。
圧倒的な雷撃はしかし、ザイードを殺すに至らなかった。
「ふふふ。殺し損ねたことは何度もあったが、殺してからよみがえられるとは想定外だ」
笑い声ではあるが、その声は屈辱にのまれている。
暗殺者の英霊である彼が、圧倒的な力を手にしている状況下で、確実に殺せる不意打ちを行い、そして殺したのにも関わらず殺し損ねた。
心の底から屈辱的だが、しかし彼は深追いはしない。
それは主の命に反するからだ。
「この失態は必ず取り返すとしよう。覚えておくといい、ハサン・サッバーハの手はいつでも貴様らに届くところにあると思え」
そういうなり、気配が消えていく。
「・・・気配遮断を使われたわね。これは追いかけるのは無理かしら」
「そう、そうだろうね。彼はどんなアサシンを宿しているんだろうね」
タネがある程度わかっている二人が息を吐く。
警戒こそ解いていないが、しかし追いかけるのは無理だと判断した。
それでも、須澄は割と驚愕している部類だ。
なにせ、アサシンは搦め手中心のサーヴァントだ。直接戦闘能力はサーヴァントでも最弱の部類であり、マスターの暗殺で真価を発揮する。
そういう意味では、マスターが直接サーヴァントの力を得るこの世界の聖杯戦争では真価を発揮しにくいだろう。暗殺というものは戦闘とはまた違ったセンスが必要なのだから。
ゆえに、彼こそが真のアサシンとしてこの聖杯戦争最強であることは間違いない。
なぜなら、彼はサーヴァントを宿した生命体ではなく、サーヴァントが生命を得た存在。前提の時点で格が違うのだ。
同じく警戒をしていながら、雪菜は古城を軽くにらむ。
この場にいる者たちはほとんどが死んだと思っていたが、雪菜だけは古城が立ち上がると信じていた。
なにせ、彼女は目の前で古城が両断されるところを目撃している。
放心状態になっていたら再生するところまで目撃したのだ。心臓がぶち抜かれただけで死なないことはよくわかっている。
わかっているけど心臓に悪いのに変わりはないが。
「先輩、二日連続で死なないでください。わかっていても心臓に悪いです」
「悪い、だけどあんなもんどうしようもないだろ」
古城としてはそう答えるしかない。
なにせ、そこそこ戦闘を潜り抜けているはずの須澄や、あり得ない目を持つシルシですら反応しきれない不意打ちなのだ。
戦闘経験がほぼないド素人の極み。戦闘においては割と性能と戦闘以外の経験の応用で戦うしかない古城に、暗殺者の不意打ちを防げというのも無理がある。
殺気を読め? 気配を感じろ? それは専門家の領域だろう。
と、いうわけで理不尽といえば理不尽なのだが・・・。
「・・・古城?」
ここに、もっと理不尽な目にあわされている者がいる。
そう、古城がただの人間だとばかり思っていた少女が一人。
「・・・ちょっと、どういうことよ」
人は、本気で怒ると声が静かになるものだということがよくわかった。
「ま、待て、浅葱。これには、これにはいろいろと事情が」
「事情じゃない! アンタねぇ!!」
涙目で浅葱に詰め寄られて、古城は思わず天を仰いだ。
・・・暁古城は一つの世界で最強の吸血鬼である第四真祖となったものだ。
だが、そのことを知っているものはごくわずかしかいない。
・・・ここでその説明をしなければならないことに、古城は心から嘆息した。
放たれ魔力弾の群れは、しかし横から振り下ろされた巨人の手に防がれる。
「させないよっ」
「トマリ! あんた回復力高くなってない!?」
それの正体に気が付いたアップは舌打ちする。
トマリ・カプチーノは古城と同種の吸血鬼である。彼女もまた須澄と同じく、異世界から巻き込まれたクチの人物だ。
それも、氏族クラスの吸血鬼。古城に比べれば大きく劣るが。それでも複数の眷獣を保有する彼女は、並のサーヴァントなら押し切れるほどの実力者でもある。
そのうちの一つ、怪力無双の四本腕をもつ氷の巨人。ザ・クラッシャー。
この狭い通路の中では本領を発揮できないが、しかし盾として使うには十分だ。
そして、彼女はついに伝家の宝刀を抜く。
その特性上、須澄に対しては使えなかった奥の手を。
「行って、ヴィヴィオちゃん!」
「はい!」
巨人がうまく体をひねって作られた道を、ヴィヴィオが全力で突撃する。
正面からの一発勝負。そして道は狭い。
そういう意味では、射撃が行えるアップとしては都合のいい状況だった。
「そんな馬鹿正直に!」
当然撃ち放つ。
先ほどの戦いである程度は見切っている。
ヴィヴィオは攻撃力も防御量もそれほど高くない。
動体視力と判断力は高いが、足を止めて打ち合うより避けて堅実に削っていく玄人向けの戦闘スタイル。カウンターヒッターとして完成すれば脅威だが、この中では危険度は低いといえるだろう。
だが、彼女は失念していた。
・・・実は前回の聖杯戦争。トマリは英霊としての力をほとんど使えなかった。
その理由は大きく分けて三つ。
一つは彼女自身の実力。氏族クラスの吸血鬼である彼女は、単独で英霊を憑依させた程度の実力者なら渡り合える。
二つ目は彼女の特殊性。デミ・サーヴァントである彼女は英霊の憑依とは再現の仕方が違う。それが能力を限定的にしていた。
三つ目は須澄との相性。並の宝具を圧倒する神滅具の聖槍では、彼女の能力では強化しきれない。
だが、ヴィヴィオなら話は別だった。
言い方は悪いが、ヴィヴィオの装備は聖槍に比べて見劣りする。
聖書にしるされし神が作り上げた、13の極点の中でも最強とされる聖槍と、あくまで人が子供のために作った魔法行使用の装備とでは大きな差があるのは当然だが、だからこそ
次の瞬間、弾き飛ばされたのは魔力弾。
すべてを強引に突破して、ヴィヴィオは懐にもぐりこんだ。
「さっきより硬い!? つまり―」
「アクセルスマッシュ!」
すぐに放たれた攻撃を、アップは何とかグラムで受け止める。
そして、その勢いで弾き飛ばされた。
「やっぱり、さっきより重い!!」
すぐに体勢を整えながら、アップは警戒する。
どうやら、これがトマリの本領らしい。
よくはわからないが、味方の能力を強化することこそがトマリのデミ・サーヴァントとしての本質。
弱いものを強くする能力など、弱い者いじめがしたい自分にとって嫌がらせに等しい。
そう舌打ちするアップと、ヴィヴィオの間で静かな立ち合いが生まれ―
「・・・ひっ!」
そこに、声が響いた。
アップの後ろに、逃げ遅れた子供が震えていた。
「まずい!?」
兵夜は舌打ちする。
アップのこれまでの性格ならば、人質にすることぐらい十分にあり得る。
子供の前で子供を見捨てるのは忍びない。何とかしないといけないだろう。
そう思った兵夜の目の前で、しかしアップは予想外の行動に移った。
「・・・しらけたわね。もう帰るわ」
そういうなり、アップは宙へと浮かぶ。
「エイエヌ様の命令もあるし、やる気は出ないけどあんたたちは殺すわ。トマリも、次あった特は遠慮しない」
「え? え?」
いきなり戦闘をやめたアップに、ヴィヴィオは戸惑いを隠せない。
だが、其れに取り合うつもりはアップにはなかった。
「・・・ソニックムーブ」
防御を切り捨て高速化したアップは、そのまま高速でその場を離脱する。
とにもかくにも、戦闘はいったん終了したのだった。
まあ、原作知ってるやつなら誰も心配しないよなぁ。
そういうわけで何とか困難は乗り越えました。