ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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宗教勢力、同盟です!

 

 世界各地にはたくさんのおとぎ話が存在する。

 

 そして、その中にはたくさんの魔法使いが存在する。

 

 彼、もしくは彼女は、物語の登場人物にとって救いの存在だ。

 

 特に地球ではシンデレラの魔法使いが有名だろう。

 

 シンデレラストーリーやシンデレラコンプレックスなどという言葉が生まれるぐらい、その存在は大きい。

 

 不遇な身の上におかれているものが、善良たる存在の手によって救われ一転幸福な人生を送る。誰もが一度は憧れる物語ではないだろうか。

 

 そんな魔法使いたちは、そのほとんどが英霊には届かない幻霊である。だが、そういうたぐいの存在に対する信仰は、半端な英霊を凌駕する。

 

 それこそが、魔法使いの英霊。

 

 ワイズマンとでも形容するべきそれは、苦難にあえぐものに救いの手を差し伸べる。

 

 そして彼らは宝具として最も適した存在が選ばれるという能力を獲得した。

 

 それが宝具、不幸を払う魔法使い(ワイズマン・オブ・ストーリー)

 

 召喚者の潜在意識はその時点の願望に合わせて、最も救える魔法使いへと姿かたちや人格を変える。群体としての英霊であるからこそ保有できる宝具。

 

 それゆえに、人体との融合という高難易度の所業も簡単だった。

 

 今のトマリは、体に不定形の英霊が融合している状態なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど。もともと姿を変えられる英霊なら人体との融合も比較的楽か」

 

「形はどうあれ、英霊と肉体的に混ざり合ってる人が二人もいるとか、すごいことね」

 

 感心する兵夜もまたすごいことになっているので、シルシは半分ぐらいあきれていた。

 

 あきれていたが、しかしすごいことには変わりない。

 

「召喚形式がもとから憑依させる方向だったからできた内容だな。不完全であるがゆえにイレギュラーか」

 

「うーん。その辺はよくわからないんだけどねっ」

 

「魔術は、魔術はほとんどわからないから。いや、ホントごめん」

 

 感心する兵夜だが、トマリも須澄も魔術にそこまで詳しいわけではないのでどうすごいのかがいまいち理解できていない。

 

 それがもったいなくて、兵夜はついつい口を出したくなってくる。

 

「須澄くん。君はまあそこそこできる方だから真剣に学んだ方がいい。間違いなくやればまあまあできる」

 

「え? えっと・・・わかるの?」

 

「わかるとも。君は魔術師として大成はできないだろうが、間違いなく武器として使えるレベルだ」

 

 と、兵夜は断言した。

 

「君の魔術属性は水。魔術回路の適性は魔力の流動だ。魔術師はこれを利用して、古い宝石に血液などを媒介に魔力を込める。これにより大魔術を一小節で発動させることが可能で、コストは高いが戦闘においては割と強大な存在となりえて・・・」

 

「兵夜さん。ついていけてないから」

 

 と、テンションが上がっている兵夜をシルシは落ち着かせる。

 

「・・・まあ、魔術回路はちゃんとできてるから少しずつ教えていけば何とかなるだろう。魔力を込めるのには時間がかかるから、今回の聖杯戦争には間に合わないしな」

 

 魔術師としての基本中の基本である魔術回路の形成はできている。それはもちろんわかっている。

 

 なら、今後はそれなりに対応できるだろう。

 

魔術師(メイガス)は、リンカーコアを人為的に改造できるの? すごい技術ですね」

 

「それは違うな、ハイディ。厳密にはそうしないとまともに魔術を行使できないといった方が近い。・・・あ、でも応用すれば魔導士の能力を上昇できるか・・・? いや、オリュンポスやアースガルズの魔法技術を組み合わせるのも」

 

 感心するアインハルトに訂正しながら、兵夜は新たな可能性に興奮する。そしてついでに須澄にどう魔術を教えるかを考える。

 

 習得できていないことがもったいない。科学に追い抜かれている部分も数多いとはいえ、魔術がいまだ優位を保っている部分も数多いのだ。

 

 また時空管理局に対しても、この技術交流は良い交渉道具になりそうだ。

 

 そのあたりを考えながら、兵夜はテンションを上げていくが・・・。

 

「その前に、ちょっと話があるんだけど?」

 

 浅葱に割って入られて、兵夜は思考を中断する。

 

「ああ、藍羽ちゃんだったか? そういえば説明がまだだったな」

 

「そのあたりについては大体聞いたわよ。・・・エイエヌとかいうやつが聖杯戦争とか起こしてるんだっけ?」

 

 浅葱はそう前置きしてから、彼女にとっての本題に突入する。

 

「それよりも! 古城のあの回復力は何よ? あんたたち、何かした?」

 

「・・・ん?」

 

 何を言っているのかが微妙にわからず、兵夜は首をかしげる。

 

 が、すぐにどういうことかを理解した。

 

「ああ、冷静に考えればおかしくないか。俺も松田や元浜には言ってなかったし」

 

「・・・は? どういうことよ」

 

「いや、ちょっと待て宮白! それは―」

 

 雲行きが怪しいと思って古城が割って入るが、しかしその肩に兵夜は手を置いた。

 

「あきらめろ暁。あの再生能力はごまかせんぞ。秘密を共有する者は少ないに越したことはないが、多少いた方が逆に隠しやすいもんだ」

 

「なに? どういうこと?」

 

 浅葱は自分の勘違いをさとる。

 

 てっきり兵夜たちが何かしたのかと思ったのだが、どうも古城の自前だったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして五分後・・・。

 

「古城が第四真祖で、そっちの姫柊さんがその監視役・・・の皮をかぶった妾ぇ!?」

 

「いや違う! 姫柊のほうはあくまで宮白の勝手な憶測だからな!?」

 

 素っ頓狂な声を上げる浅葱に、古城はすぐに釘を刺した。

 

 自分でも言われて納得してしまいそうだが、しかしそれはあくまで推測である。なので認めなければつまりそういうことにはならないわけである。強引だがそういうことにしたい。

 

「そ、そうです! 三聖からは監視して危険なら抹殺するように命じられているのですから!」

 

「十分危ないわよ!」

 

 と、そこで浅葱は古城をにらむ。

 

 そういえば、隠している理由は聞いていなかった。

 

 どうも気の置けない付き合いをしているようだし、これは相当に腹が立っているのだろう。

 

「まあ待ってくれ。確かに親友に黙っているのは悪いことだが、いきなり種族が変わったなんてそう簡単に言えるわけが・・・」

 

「いや、それは別にいいのよ。理由もわかるし」

 

 と、思って兵夜はフォローを入れたが全然違った。

 

「あ、そうなの?」

 

「うん。・・・古城の妹さんは魔族恐怖症だし、古城が第四真祖になったなんて知ったら大変なことになるしさ」

 

 なるほど、それは人には言えなくなるものだろう。

 

 これまたいろいろと面倒なことになっているようだ。

 

 だが、其れよりも何よりも、浅葱には聞きたいことがあったようだ。

 

「それで、アンタ何回やったの?」

 

「や、ヤった!?」

 

 何やらすごいことを聞いてきた。

 

 いまだ不意打ちを警戒して大人モードを継続しているとはいえ、ヴィヴィオとアインハルトはまだ子供である。

 

 これはきかせられないと思った兵夜だが―

 

「何回吸血行為をしたのかって聞いてるのよ!」

 

「ああ、そっちか」

 

 兵夜は安心した。

 

 吸血行為ならまあ吸血鬼なら当然の行動だろう。

 

 D×Dの吸血鬼なら、純血ともなれば吸血行為は必要不可欠。それなら別に何回やっても問題ない。

 

「いや、その・・・」

 

「えっと・・・」

 

「つまり、一回はしたってことね」

 

 と、明らかに動揺する古城と雪菜の態度で最低限の情報を浅葱は把握した。

 

 これでどうやって隠せていたのか兵夜は不安になってきたが、さてどうしたものか。

 

 まあ、吸血鬼が吸血行為をするのは当たり前だと判断し・・・。

 

 そこで、兵夜はあることに気が付いた。

 

 それは、兵夜に初めて彼女・・・という愛人ができたレーティングゲームのこと。

 

 半端に共通点のある異世界の情報を誤認して、痛い目を見たことがあった。

 

 もしかしたらとてつもない勘違いをしているのかもしれないと思い直し、兵夜は一回質問することにした。

 

「・・・その、そっちの世界の吸血鬼ってなんで血を吸うんだ」

 

「たしか、性的衝動で出てくるはずだけど」

 

 浅葱が古城をにらむ理由が痛いほど理解できた。

 

「もう責任取れよ。責任取って娶れよお前。それとも何? 昔の俺みたいにただれた生活してんの?」

 

「違う! 血、血を吸っただけだ! 眷獣がそうでもしないということ聞いてくれなくて!!」

 

「そうです! あれはオイスタッハ神父を止めるために必要不可欠な行動だったんです!」

 

 古城と雪菜は慌てて弁解するが、しかし古城が発情したことに変わりはない。

 

 むしろそんな状況下でなにをしているのだお前はとツッコミを入れたくなる。

 

「オイスタッハ神父って、キーストーンゲートを襲撃した人よね。そういえば、その人結局どうなったのよ」

 

「ああ、それが戦ってる時に転移に巻き込まれて・・・」

 

「ってことは、ここにきてる可能性があるってことよね」

 

 状況はさらに悪いということに浅葱は気が付いた。

 

 兵夜もそれは想定している。

 

 万が一だが、オイスタッハが聖杯を使って聖遺物を奪還する可能性もないわけではない。

 

 聞けば相当の実力者だそうだし、アスタルテというホムンクルスも強力な戦力だ。

 

 そして何より、嫌な予感がする。

 

「それについでだが、一つ懸念がある」

 

 やはり、これは言った方がいいだろう。

 

「なに、なにか気づいたことでもあるの?」

 

 須澄も嫌な予感を覚えたのか、真剣な表情で訪ね返した。

 

「・・・禍の団には、宗教的思想の強いものも何人か存在する。そして今回のオイスタッハとやらの行動は、割と本気で宗教的に同情案件だ」

 

 そう、宗教とは怖いものだ。

 

 そして、排他的なところがあるとはいえそれについての怒りは理解できるものだろう。

 

「万が一、万が一だが宗教系の参加者がオイスタッハと出会った場合、意気投合する可能性も・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へえ、少しはわかっているようね」

 

 その声が届くことは、兵夜はまあ想定していた。

 

「あら、まあ一人ぐらい様子を見に来るとは思ったけど速かったわね」

 

 そして見えているシルシもすでにエストックを引き抜いている。

 

 そして、身構える全員の視線の先に出てきたのは、一人の女性。

 

 ぴっちりとした体形の服を着た女性が、そこにはいた。

 

「その服装は、教会の出身か」

 

「ええ、グレイス・ベルヴィルよ。まあすぐ殺すことになるだろうけど、一応覚えておきなさい」

 

 そういいながら、女性は光の剣を抜き放つ。

 

 さらに、そこかしこから同様の装備を持った男女が姿を現していた。

 

「おい、教会と悪魔は和平を結んでたんじゃないのかよ」

 

「それが、和平反対派も結構多くって。特に教会はクーデターが起こりかけるとか大変なのよ」

 

 古城にシルシが答えながら、半円状に囲む悪魔祓いたちを警戒する。

 

 彼らはみな、いくつもの実戦を潜り抜けてきた戦闘経験者。実力こそ玉石金剛だろうが警戒するに越したことはない。

 

「・・・それで、わかってるとはどういうことだ?」

 

 大体予想はできているが、兵夜は一応念のために聞いてみる。

 

「決まってるじゃない。彼は素晴らしい信仰者だと目を見た瞬間にわかったわ。・・・話を聞けば怒り狂って当然の所業をしていたのだし・・・町一つ焼き払っても十分なことだとは思わない?」

 

「ええ、まったくもってその通り。貴方とは話が合うようで助かります」

 

 そして、そこに彼が現れる。

 

 ケープコートを着たホムンクルスを連れて姿を現すのは、装甲のついた僧衣を着込んだ一人の男。

 

「・・・あの人が、オイスタッハという人ですか?」

 

「はい。殲教師の称号を持つ、ロタリンギア正教の神父です」

 

 アインハルトに雪菜が答え、そして戦闘態勢に入る。

 

 オイスタッハもグレイスも、一級品の実力者。加えて厄介なのはアスタルテ。

 

 基本魔力でなければ倒せない眷獣でありながら、魔力を無効化する能力を持った薔薇の指先。それを宿すアスタルテは、割と反則に近い。

 

 わずかな時間で新たな激戦が幕を開ける。

 

 この聖杯戦争は、さらなる激戦へと突入した。

 




トマリのサーヴァントは、本編のおける兵夜の相棒候補としても考慮していたりしていました。

お伽噺のジャンルがサーヴァントになるのなら、お伽噺の魔法使いという立ち位置が概念として英霊になってもおかしくなかったからです。それを最新の型月設定と複合させました。

本来なら魔術行使も可能なのですが、イレギュラーだらけのデミサーヴァントゆえにエンチャント特化。ですがこれ、後々かなり重要になりますのでお覚えください。


あとやけに兵夜が須澄の魔術特性に詳しいですがこれも後々の伏線です。まあ、今の段階では予測は不可能ですが。それでもやってみたかったことの一つではあります。









そしてオイスタッハは元教会の勢力と同盟。この展開はさすがに予想できまい。

ですが、宗教的にマジギレ案件がかかわっている以上、意気投合して同盟・・・というのも十分あり得ると思うのです。

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