ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
二人の従僕とにらみ合う中、その均衡状態を吹き飛ばすように爆発が響き渡った。
廃墟の一つが粉砕され、そこから弾き飛ばされるのはシルシだった。
「ぐ・・・っ」
全身から再生の炎をまき散らしながらシルシは立ち上がろうとするが、すでに炎は弱弱しく、立ち上がろうとする体にも力が入らない。
「シルシちゃんっ!?」
「まずい・・・わね。思った以上に・・・強かった・・・っ」
「まあねえ。これでも一応グラムの持ち主なわけだし? 弱かったらやってられないっての」
そういいながら土煙を振り払って姿を現すのはアップ。
その顔は赤く染まり、表情も恍惚な笑みとなっていた。
「くく・・・ふふふ・・・あははははっ!」
抑えきれなくなったのか大声で笑いながら、アップはグラムを突き付けた。
「そうよそうよそうよそうよ! こういうのがやりたかったのよあたしは!」
「強くなくて、そんなに、うれしい?」
「ええそりゃぁもう! これよ、あたしがやりたかったのはこれなのよ!」
笑いすぎたのか目じりに涙を浮かべながら、自虐的なシルシの言葉に頷きながらアップは微笑む。
「これが楽しいから私は悪の使いっぱしりなんてやってるのよ。・・・そうじゃなきゃ、誰がこんなことするかっての!」
「アップちゃん・・・」
「そこまで、そこまでだよトマリ」
何かを言いかけるトマリを手で制しながら、須澄は一歩前に出る。
「楽しそうで、本当に楽しそうでよかったね、アップ」
「そうね須澄。それで? そんなのは間違ってるからやめるんだ! ・・・とか月並みな言葉を言おうとしてるの?」
だとするならお前は馬鹿だといわんばかりの口調だったが、須澄は静かに首を振る。
「まさか、いやまさか。
「・・・・・・」
微妙に機嫌を悪くするアップに取り合わず、須澄は静かにほほ笑みながら槍を向ける。
「だから、そんな君自身を
そう、慈愛すら浮かべて須澄は告げる。
「・・・・・・・・・えっと、それ何、殺し文句?」
「そうだね、うんそうだ。殺すから殺し文句だね」
「いや、そうじゃなくて・・・」
アップは顔を真っ赤にして狼狽するが、その隙を突こうという様子は須澄にはなかった。
「えっと、えっとどうしたのさ? 来ないならこっちから行くけど?」
「え!? あ、ちょっと待って今ので心の準備が!!」
「・・・?」
「うっわぁ、須澄君天然ですごいこと言ったよっ。微妙にヤンデレ入ってるよっ」
「???」
何やら顔を真っ赤にするアップとトマリに須澄は首をひねるが、しかしそんなことを気にしている場合ではないと槍を構えなおした。
「悪いね、悪いけど・・・そろそろ行くよ!!」
「あ、ちょ、ちょっと待ってってば!!」
聖槍の一撃をギリギリで魔剣で受け止めながら、アップは顔を真っ赤にしながら戦闘を再開する。
「・・・そういう聞きたいセリフをいまさら言われても、こっちが困るってのよ!!」
「・・・何やってんだ、あいつら」
煽情のど真ん中でラブコメに見せかけた何かが始まっている中、古城はとりあえずシルシを引っ張って浅葱のところまで走っていく。
「浅葱! とりあえずシルシさんを見ててくれ」
「え!? ま、まって古城、私別にけがの治療とかできるわけじゃ」
「俺並に不死身だからほっといたら回復するだろ。とにかくバテてるから近くにいてやってくれ」
そういいながら古城が振り向くと、そこにはフィーニクスとパルミラの姿があった。
「気を付けてください先輩。あの二人、本当に実力者です。技量まであって手が付けられません」
何とか攻撃をしのいでいた雪菜の言葉は本物だろう。
ろくに戦闘経験どころか訓練すら積んでない自分でもわかる。
なんというか圧倒的な実力だ。単純な能力どまりの自分たちとはまったく違う。
「あんたら、そんだけの実力があるならエイエヌなんかに頼らなくても生きていけそうだけどな」
「それは違うさ第四真祖。私たちはエイエヌ様の従僕だからな」
「道具には道具の幸せというものがありますのよ?」
二人はそうあっさりと告げると、再び戦闘態勢に入る。
「くそ、やるしかないのかよ!」
「気を付けてください先輩! この二人、間違いなく実戦慣れしています!!」
「それってやばくねえか!?」
桁違いの能力を持っているとはいえどほぼ一般人の古城。戦闘訓練は一流の本職相手に通用するとはいえ、しょせんは見習いの雪菜。
この状況下で経験豊富な実力者を何人も相手にしろなどと、無理難題にもほどがある。
「・・・そういえばヴィヴィオとアインハルトは?」
「あ、ヴィヴィオちゃんならアインハルトちゃんの方に向かってますけど―」
その言葉と同時に、再び廃墟が吹き飛んだ。
ビルを突き破る砲弾とされながら、アインハルトはそれでも何とか意識を失わずにすんでいた。
「・・・たやすい。覇王に聖王とはこの程度のものなのか?」
「アインハルトさん!?」
ザイードのあざけりとヴィヴィオの声が届くが、しかしそれも遠く聞こえる。
なんて様だ。
覇王の末裔としてこの見るだけで心が痛むような場所を見ながら、それをどうにかするどころか、その柄一パシリ1人どうにもできないだなんて。
「・・・あの、あなた、私達のこと調べたんですか?」
「むろん。情報を集めるところから始めねばならぬ二人組はともかく、貴殿ら二人は割と早く情報がつかめたとも」
ヴィヴィオになんてことはないように答え、ザイードはぺらぺらとその来歴を語り始める。
「・・・時空管理局発足前のベルカ戦乱。その争いにおいて大きな影響力を持った聖王オリヴィエと、その彼女と恋仲だとすら言われる覇王イングヴァルト。聞けば貴殿らはただの子孫というわけでもないそうではないか」
わずかな期間でここまで調べられるとは驚くほかない。
もしかしたら、フォード連盟は時空管理局にスパイを送り込んでいるのかもしれないと、幼いながらもクラウスの記憶を持つアインハルトは裏事情を推測している。
国家が他国に対して密偵を放つのは珍しくも何ともない手段だ。少なくとも、他国の密偵を警戒するぐらいのことは
そして、そのあたりの諜報力においてフォード連盟が優秀だったということだ。
「ことそちらの覇王は格闘業界の実力者との路上試合で幾度となく勝利したそうだが。・・・まあ、龍神の肉体を前にすれば人間が真正面から挑んで勝てるわけがない。そこは気に病む方が無駄ということだろう」
ザイードはそういうと、静かに拳を構える。
「とはいえ私も組織の長の身。力届かぬ現実に対する苦悶も承知している。・・・己が無力からくる苦しみから解放してやっても構わんが?」
そういいながら静かに殺気を漏らすザイードに対し、しかし割って入る影があった。
「やらせません!」
こちらもダメージを受けていながら、しかしまだ軽傷のヴィヴィオが妨害のために攻撃をしかける。
その攻撃を素早く避けながら、しかしザイードは慌てない。
もとより単純な性能が圧倒的に開いているうえに、アサシンとて戦闘経験がないわけではない。
必ずうまく暗殺が成功するわけではない以上、何らかの形で戦闘を行う必要がある。そしてそれに生き残り暗殺という形に収めることができてこそ、山の翁と呼ばれるほどの暗殺者になるのだ。
「ふむ、動きはきれいだ。こちらの動きを読んで放たせないようにするのは見事だ・・・が」
ゆえに、ザイードは動きを切り替える。
今まで素早く受け流したり交わしたりしてきたきれいな戦い方から、もう何発喰らおうが無理やり耐えるといわんばかりの豪快な戦い方に。
「・・・っ!」
「この手のごり押しは苦手のようだな。動きがきれいすぎるので得手不得手も分かりやすい」
迎撃の攻撃をもはや意に介さず耐久力で耐え切り、そしてザイードは拳を叩き込んだ。
それもただ殴るのではない。暗殺者の技量をもって放つ不意打ちだ。
気づかれないことを想定して放つ一撃だったが、だからこそ効果的だった。
「・・・あ・・・っ」
「同時に脆い。魔術による防御でしのいできたのだろうが、反応できねば薄皮一枚と同じことよ」
直撃に崩れ落ちそうになるヴィヴィオの後ろに回り込んで、ザイードはとどめとして短剣を引き抜いた。
「
そしてそのまま短剣を突き立てようとして―
「あら、それはさすがに見過ごせませんのよ?」
その目の前に、一筋の光が映った。
「伏兵か!」
気づいて首をそらすだけでそれを回避したザイードは、そしてすぐにそれだけでないことにも気づく。
それはすでに射程距離に踏み込んでおり、勢いよく拳を振りかぶっていた。
「ようアサシン。またイケメンの体を手にしてんな!」
「グランソード・ベルゼブブ!!」
その攻撃をギリギリで受け止め、ザイードは勢いを受け流して後ろに飛ぶ。
だがしかし、その方向には壁を一切壊すことなく展開された魔力砲撃追いついていた。
「この曲射砲撃・・・! ここまでの技量の持ち主は魔法使いの世界でもそうはいない!」
「ええまあ。若くして期待の星などといわれてはいないわけですのよ?」
そう少女の声が聞こえ、そして砲撃が一斉に炸裂した。
ついに参戦雪侶とグランソード!
本編ではあまり活躍させれなかった二人ですが、その分相手は龍神という大判振る舞いです!!