ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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一服、決断!

 

 カポーン

 

 そんな擬音が相応しい空間の中、兵夜は入浴剤の入った湯船に体を疲らせて、この数日で溜まっていた疲れを溶かしていた。

 

「・・・ふう。人員が増えたから俺も躊躇なく酒が飲める」

 

 さらに美酒を流し込み、体の内側からも疲れを溶かす。

 

 もちろんつまみをしっかりと用意してある。ことが温泉なので酒は日本酒でつまみは煮物。レトルトなのが難点だが、しかしそれでもだいぶ気分が楽になる。

 

「ほら、須澄君も一献一献。周りに護衛がいるこの機会を逃しちゃいけないよ」

 

「あ、いただきます。・・・不思議な味だね」

 

「すぐ慣れるさ。次第にこれが癖になるから」

 

 と、飲み慣れてない須澄に酒を進めながら、兵夜はふいーと息を吐く。

 

 何とか増援が来たことで、だいぶ気が楽になった。

 

 実際に来たメンバーは特別戦闘小隊だけでなく、堕天使側や教会側からも戦力が集まっていた。

 

 中には陣地生成担当などもおり、これにより陣地を形成することも可能となった。

 

 そして、特別戦闘小隊は兵夜に気を使って浴室まで持ち込んでいた。これを利用しない手はない。

 

 ここ数日は特に大変な日々だったのだ。これぐらいの息抜きはしてもいいだろう。

 

「・・・おい」

 

「なんだ暁? まあ、俺も未成年飲酒の常習犯だから飲んでも別にいいけど」

 

「そんなことは言ってないだろうが! いくらなんでも暢気すぎないかって言ってんだよ!!」

 

 ある意味当然のツッコミが遂に古城から入れられるが、しかし兵夜としては今更である。

 

「馬鹿だなぁ。ここ数日気を張り詰めていっぱいいっぱいなのはお前の方だろ。このチャンスを逃さず少し休んどけ。休息はとれる時に取っておくものだぞ、ホレ」

 

 と、兵夜は古城にも煮物を勧める。

 

 実際ほぼ民間人の古城にとって、この数日は桁違いのストレスのはずだ。

 

 そこを考えれば、増員が一気に増えて余裕が生まれたこの状況下は渡りに船である。

 

 荒事にのまれた経験の豊富な兵夜からしてみれば、一端の小休止にはちょうどいいと思っている。

 

「いや、美味いけどよ・・・なんていうか、ヴィヴィオとかアインハルトとかは友達のことが心配だろ?」

 

「そっちについても対策は取ってある。人員が増えるってことは捜索班を編成する余裕が生まれるってことだからな」

 

 実際にそこはきっちりしている。

 

 人員が増えたこともあり、当然のごとく捜索班は編成済みだ。

 

 それに、これまでにおいても何もしてなかったわけではない。

 

「クリスとティオの協力のもと、モンタージュ写真は作れたからな。だから顔認証システムを搭載したカメラを町中に設置してあるから、映ったらすぐにわかるはずだ」

 

「そ、そんなことしてたの?」

 

 いつの間にといわんばかりの表情を須澄が浮かべるが、しかし兵夜からしてみれば何を今更。

 

 もとよりそれが契約条件である以上、やることはちゃんとやっている。それが悪魔として当然の行動だし人道だ。

 

 むろん、捜索班にもカメラは大量に持たせ、各所に設置させてある。

 

 もちろん逆探知される危険性があるので確認は今まで気を付けて行ってきたが、もはやその心配もないだろう。

 

 なにせ、こちらも相当の大部隊を編成することができたのだ。こうなったら半ば自棄ではあるが堂々と基地を作って対抗するぐらいのノリで行くべきだろう。

 

 どうせ向こうも大きく動き出すだろうし、これでちょうどいいはずだ。

 

「ま、そういうわけだから上がった後も休んどけ。今日は半日休息に当てて、夜になったら再び探索スタートだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうも言ってられないのが世の中である。

 

「兄上、兄上」

 

「ん? どうした一体?」

 

 と、風呂から上がったとたんに雪侶が近づいてきて、兵夜は嫌な予感を察知して眉をひそめた。

 

「ああ、そういえばまだ挨拶が遅れておりましたわね。改めて初めまして暁古城さんに近平須澄さん。私は宮白兵夜の眷属悪魔にして妹の宮白雪侶と申しますの」

 

「どうも、ご丁寧にどうも」

 

「ああ、昨日は助かった。ありがとうな」

 

 と簡単に挨拶を交わしてから、雪侶は本題に入った。

 

「それで話を戻しますけど、シルシ義姉様がどうも元気が無いようですのよ」

 

「シルシが?」

 

 兵夜としては理由が思いつかなくて首をかしげてしまう。

 

「むう、その辺りは気を使っているつもりなんだが思い当たらない。雪侶、この愚兄にどういうことか説明してくれ」

 

「それが、どうもここ数日戦闘方面で叩きのめされ続けていることで意気消沈しているようですの」

 

 と、雪侶は困り顔で告げた。

 

 フェニックスに連なる家系であるポイニクスは、由緒正しき上級悪魔の末裔だ。

 

 そんな鳴り物入りで冥界の英雄の眷属悪魔になったのに、事実上の初実戦から苦戦続きなのがショックだったらしい。

 

「んなこと言ったってあいつらみんな化け物だろ? 気にする必要ないと思うけどな」

 

「そうでも、そうでもないよ。腕に自信がある人って負けるのが相当ショックだからね」

 

「そうなんですのよ。あとハイディさんもまだ落ち込んでいるようで、そちらのフォローもしなければなりませんし・・・」

 

 そう片手を頬に当てながら困り果てる雪侶の姿は実に絵になったが、しかしそんなことを考えている場合ではない。

 

「そうなんですよ、暁先輩」

 

 と、そこに同じく困り顔の雪菜達も現れる。

 

「姫柊に浅葱もか。・・・どうなんだ?」

 

「何でもないように見せようとしてるけど、全然隠せてないわね。結構ショックみたいよ?」

 

「マジか藍羽。・・・コカビエルにザイードと強敵だらけだからな。上級悪魔の末裔だからといって、実戦経験のほぼないシルシが負けたって文句なんて言うつもりはないんだが・・・」

 

 兵夜としてそういう他ないのだが、しかしそういうわけにもいかないだろう。

 

「とはいえ、あいつ結構本気で俺の力になりたそうだったし、ショックなのかもな」

 

 そう判断すると、兵夜はすぐに対策を考える。

 

「だとすると、俺が直接慰めるのは返って逆効果になりそうだな。時間はあまりかけられないが、少しそっとしておいた方がいいような気もするが」

 

「いやいや、それはダメだろ大将」

 

 と、そこで新たに乱入者が登場。

 

 グランソードがヴィヴィオとアインハルトを連れて更に現れた。

 

「なに? なんなのその取り合わせ」

 

「ん? ああ。体術には俺様も少しは心得があるんでな、ちょっと気分転換もかねて組手をやったんだよ」

 

「すごいですグランソードさん! 私の周りにも格闘技を使う人は多いですけど、この人と格闘で戦える人なんてノーヴェかスバルさんぐらいです!」

 

「いい経験になりました。ありがとうございます」

 

 明らかに尊敬の色が込められている視線を二人に向けられ、グランソードは口元を緩める。

 

「いいセンスをしてる子供たちに言われるとは嬉しいね、カッカッカ」

 

「確かに、異種格闘技戦とかはいい経験になるしな。ああ、これが終わったら一度揉んでやれ」

 

 兵夜は許可を出すが、しかしすぐに本題に入る。

 

「それはともかく、そっとしたらだめってどういうことだ?」

 

「あ? んなもん決まってんだろ」

 

 何を言っているのかといわんばかりの顔をグランソードは浮かべ、そして雪侶も兵夜の肩に手を置いた。

 

「兄上。傷心の女性を慰めるのは男の本懐ですのよ? ここで一気にフラグを立てて堕としてきなさいですの」

 

「よし、昼飯まで本格的に寝るか」

 

 兵夜は速攻で取り合わないことを選択した。

 

 雪侶とグランソードは速攻でそんな兵夜を押しとどめた。

 

「いやいや大将! その反応は好かれている男としてどうかって話ってもんだろうが!!」

 

「グランソード。俺は不倫をする気はない」

 

「兄上! 四人も美女を娶っているのですから、ここは勢いよくイッセーにいに負けじとハーレム御殿を建設するべきですの!!」

 

「純愛だから、純愛だからな!!」

 

 縋り付くレベルで動きを封じようとする二人を引きはがそうとするが、グランソードと身体能力で勝てるわけがないのでまったくもってうまくいかない。

 

「あの、グランソードさんも雪侶さんも、宮白さんにハーレムを作らせようと躍起になっていませんか?」

 

「冥界じゃあハーレムなんて珍しくもないんだし、それが理由なんじゃねえのか?」

 

「違うよ、それは違うよ。珍しくもないからってわざわざハーレムを作らせる理由にはないって」

 

「でもさぁ、だったら理由って何よ?」

 

 外野が話し始めるが、誰一人として助ける気はないらしい。

 

 もう増やしたらいいんじゃないの? っていう感じになりかけている節がある。

 

「ええい! アイツが俺に好意を持っているのは分かっているが、それは本当に直接的に関わったわけじゃないんだからな!」

 

 そう、それこそが兵夜の理由の大きな一つであった。

 

 好意を持たれていることは自覚している。そして、理由に関しても察している。

 

 扱いに困っているどころか、地獄すら見せているといってもいい能力を何とかしてくれたのなら、恩人に対する感謝を持ってもおかしくない。ましてやそれが異性なら、恋愛感情に発展してもおかしなことではない。

 

 だが、別に相手がシルシだから助けたわけではない。というより助けた覚えもないといっていい。

 

 ただ技術発展の書類にOKを出したり、その技術開発を行うことを勧めたりしただけなのにそれを理由に告白されても困るのだ。

 

「たまたま利益のための行動で間接的かつ結果的に助けたのが理由で惚れられても、素直に受け取れないだろ」

 

 誰でも助けたとかいうどころか、助けた自覚もないことで好意を持たれても困ってしまう。

 

 それをいいことにむさぼるような真似は、卑劣な気がして嫌だった。

 

「・・・だから半端に刺激して、フラグを立てるのだなんて絶対ダメだ」

 

 そう、それに関しては断言していい。

 

 ここでそれを利用して蜜をすするのは、間違いなく卑怯で卑劣な行いだ。

 

 戦闘においてはそれしか手がないのなら使用することをあり得るのが兵夜だが、恋愛という誠実であるべき場においてそんなことをする気はない。

 

 だから、それは絶対にしない方がいいと決意を決めて―

 

「じゃあ、伝えた方がいいと思います」

 

 と、後ろから声が届いた。

 

「・・・ヴィヴィ?」

 

 思わぬ人物からの思わぬ言葉に、兵夜はぽかんとして振り向いた。

 

 そして、全員の視線を集める中、ヴィヴィオが毅然とした表情で兵夜を見ていた。

 

「だったらちゃんと言わないとだめです。そっちの方が絶対いいです」

 

「えっとね? その、ね? そりゃ確かに振る時はいっそ一思いに振った方が心の傷が少ないとは言うけどね?」

 

 兵夜としては少し戸惑ってしまう。

 

 なにせことが政略結婚まで利用してのことなのだ。

 

 ぶっちゃけ兵夜の立場だと断りずらい。

 

「でも言わなきゃだめだと思います」

 

「・・・なんで、そう思うんだ?」

 

 やけにはっきりというので、兵夜はすこし居住まいを正して真剣に聞くことにする。

 

「私が、聖王オリヴィエのクローンだって話は、ちょっと前にしましたよね」

 

 確かにそう聞いている。

 

 ゆりかごと呼ばれる兵器の起動を行うために創られたのが高町ヴィヴィオという少女だ。

 

 ぶっちゃけ魔術師的には普通にあり得る話だが、しかし当人からしてみればかなり精神的に来ることがあるだろう。

 

「・・・体も心もいうことが利かなくて、私は自分のことを愛してくれる人すら殺しかけました」

 

 何か言うべきだろうか。

 

 いや、今はまだいうべきではない。

 

 兵夜は堪えて、静かに彼女の言葉を聞く。

 

「その時あの人に教えてもらったのは、ぶつかり合わなきゃ分からないこともあるってこと。そして、大事な思いはちゃんと示さないといけないってことです」

 

 まっすぐと、ヴィヴィオは真正面から兵夜を見る。

 

「ぶつかり合わないと分からないことはいっぱいあります。伝えたいことがあるなら、逃げちゃだめです!」

 

 その言葉は、確かに正論すぎて耳が痛かった。

 

 確かに、少しいい加減に対応しすぎていたかもしれない。

 

 なにせ恋愛事は実をいうと苦手だ。ましてやそれが隠れ蓑に政略結婚が見えているうえにそれすら隠れ蓑にしているのだからややこしい。

 

 だが、確かにだからこそはっきり言わないといけないところもあるだろう。

 

「・・・そうだな。うん、そうだ」

 

 兵夜は苦笑すると、ヴィヴィオの頭を優しく撫でる。

 

「君みたいな子供に、恋愛で説教されるとは俺もまだまだだ。これで何ハーレム作ってるんだろうな、俺は」

 

「だ、大丈夫です! 兵夜さんはいい人ですから、ちゃんと言えば分かってくれます!」

 

「ああ、そうだといいな」

 

 子供に発破をかけられては逃げるわけにはいかない。

 

 兵夜は、とりあえず真剣に答えることを決めて立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でもヴィヴィオちゃん? 男を見せて誠実に対応してしまった結果、余計に惚れてしまうこともあるのですわよ?」

 

「え、ええ!?」

 

「おい雪侶、子供相手になに余計なこと言ってんだ」

 

「全部台無しだろ、それ」

 




子供に説教される情けないシチュエーションではありますが、皆さんちょっと待ってほしい。

 相手は説得(物理の使い手高町なのは直伝の担い手です。・・・こんな簡単に済むと思ってたらあきまへんで・・・!
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