ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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これは戦争か聖戦か

 

 いくつもの銃声が鳴り響いたのを耳にして、アルサムは眉をひそめた。

 

「・・・む。これは、いかんな」

 

「と、申しますと?」

 

 隣を歩いていたシェンが首をかしげるが、アルサムは顔をしかめながら音のする方に振り向いた。

 

「残りの参戦者がだいぶ少なくなっている以上、あの戦闘は宮白兵夜が関わっている可能性がかなり大きい。・・・どうやらエイエヌも本腰を入れて排除しに来ているようだな」

 

「では、例の二人がそこにいる可能性もあるのですね」

 

 確かにそれはまずいと、シェンも眉間にしわを寄せる。

 

 彼女達に危害が加わるのは最も避けねばいけないことだろう。

 

 なにせ、今後の冥界の未来を左右するといってもいい協力者の協力条件といってもいいのだ。可能な限り守らなくてはならない。

 

「しかし、ああいう特徴的なことは前もって教えてほしかったものだ。・・・それさえ聞いていればあの日の時点ですぐにわかったものの」

 

「まあ、まだまだ子供ですからミスはあるでしょう。我々がフォローすればよろしいだけです」

 

「まあ、それが年長者の務めということか。これからはもう少し深く特徴を聞いておくことにしよう」

 

 そういいながら、二人は通信の魔法陣を開いて命令を飛ばす。

 

「斥候を送れ。私もすぐにそちらに向かう」

 

 アルサムは、戦闘が続いている方へ視線を向けながら、わずかに不安の感情を浮かべた。

 

「できれば、無事でいてほしいものだがな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 海岸まで辿り着いた兵夜達は、そのまま横に曲がることで戦闘空間を形成した。

 

 幸い、海岸線は弧を描いており比較的被害を抑えられそうな地形になっている。

 

 従僕達も頭が悪いのか、そのまま兵夜達を追いかけてきていた。誰一人として回り込もうとはしていない。

 

 それなら好都合だ。

 

「解析は終わった。あそこにいるのは敵だけだ! 暁、まとめて薙ぎ払え!!」

 

「わかってる! やっちまえ獅子の黄金(レグルス・アウルム)!!」

 

 雷撃でできた獅子が従僕たちを薙ぎ払い、勢い余って海を爆発させて潮の雨を降らす。

 

 それを浴びながら、しかし兵夜はこれで終わりなわけがないということも理解していた。

 

「シルシ! 増援部隊は送らなくていい! 拠点の防備を優先させろ!!」

 

『でも兵夜さん! これで終わりなわけがないでしょう!?』

 

「うかつに戦力を減らして、手薄なところを襲撃されたら話にならん。素材の出し惜しみが気にならないなら、こっちもやれることはいくつもあるからな!」

 

 そういうと、兵夜は即座にゴーレムを呼び出して駆動させる。

 

 土と式で駆動するゴーレムは、ただの人間より強大な戦闘能力を発揮する。

 

 しかも非常に優れた霊地から採掘した土でできているだけあって、その性能は並の下級悪魔なら一蹴できるほどの高性能だった。

 

 本来なら長期戦を考慮すればうかつに消耗できない人材だが、精鋭揃いの特殊部隊が近くにいるのならば問題はない。

 

 兵夜は彼らを側面に展開して新たに来るであろう従僕を牽制すると、すぐに大きく声を張り上げる。

 

「面倒くさいから出て来いよ! どうせ本命は用意してるんだろう!!」

 

 ようやくヴィヴィオとアインハルトを安心させれるかもしれないという気持ちがあったところにこれであり、兵夜としてもいい加減不機嫌だった。

 

 その感情がありありと籠った声だったが、それに敵もすぐに反応する。

 

「その通りだ。やはり把握できているようだな」

 

「まあ、かまわないんじゃないの? 私達も仕事をしないといけないしね」

 

 その言葉とともに、二人組が反対側の道から魔獣を引き連れて現れる。

 

 一人は筋骨隆々の男。もう一人は絶世の美少女。

 

 そして、彼らの姿もまた兵夜はよく知るものだった。

 

「今度はサイラオーグ・バアルにジャンヌ・ダルクかよ。・・・どんだけ俺の知り合いで統一してるんだあいつは」

 

 とはいえ、双方ともに実力者であることは変わらない。

 

 ことサイラオーグ・バアルは若手四王の中でも最強だ。加えて神滅具の保有者であることもあり、その戦闘能力はいずれ魔王の座すら狙える。本来好みでないため扱いが悪い方のゼクラム・バアルですらそういうほどの実力が彼にある。

 

 そして、ジャンヌ・ダルクもまた英雄の末裔。神器を禁手に至らせているその能力は欠片も油断することはできない。

 

 従僕は本人達ほどではないが、本人と近い実力を発揮したうえで、更に本人にないスキルを上乗せしている。間違いなく強敵といえる相手だった。

 

「じゃあ、さっさと仕事を終わらせましょうか」

 

「そうだな、すぐに終わらせよう」

 

 従僕たちは静かに腰を落とすと、そして即座に距離を詰める。

 

「おっとさせるか!」

 

「先輩下がって!」

 

 それを食い止めるのはグランソードと姫柊雪菜。

 

 轟音が鳴り響く中、高速で戦闘が激しくなる。

 

 そして仲間達も攻撃を仕掛けようとしたが、更に敵にも増援が舞い降りる。

 

「ひゃっはぁああああ! ちびっこ狩りの時間だぜぇ!!」

 

「あの時の!!」

 

 建物から飛び降りて切りかかるフリードを、アインハルトは裾を切られる程度で済ませてかわす。

 

 反撃の拳を放つが、硬度を強化された拳であっさりと受け止められた。

 

「うーん駄目だねー。この程度じゃ俺は倒せないぜ?」

 

「だったら眷獣で吹き飛ばす!!」

 

 最大火力による粉砕という単純だが確実に有効な手段がこちらにはあるが、しかし敵もそれを素直にさせてくれるわけがない。

 

「おっと、あなたの相手はこっちよ?」

 

 ジャンヌの姿をした従僕が指を鳴らすと、地面から大量の剣が突き出る。そしてそれがドラゴンの姿になると、獅子の黄金を体当たりで弾き飛ばす。

 

「全部まとめて対雷撃の聖剣だもの。これぐらいはできるわよ」

 

「うっわぁっ! ガチ対策だね! だったらこれだよ、ザ・スマッシャー!!」

 

 八首の龍がプラズマを放出しようとしたその時、さらにその真上から巨大な鬼が舞い降りて踏みつける。

 

「・・・おいおい、俺を忘れてもらっては困るぞ?」

 

 少し赤くなり始めた空の向こうで、コカビエルが嘲笑を浮かべながら空に浮かんでいた。

 

 それを見て、兵夜は心底から舌打ちする。

 

 どうやら、聖杯戦争も佳境を迎えたので、ここで兵夜達を確実に始末する算段らしい。

 

「やってくれるな、この野郎・・・っ!!」

 

「まあそういうな。お前は俺を倒したことがあるのだから、その気になればどうにかなるだろう?」

 

 そういいながら、コカビエルは周囲の空を染め上げんといわんばかりに光の槍を大量の形成する。

 

「さあ、吹き飛ばされるがいい!!」

 

「舐めるなぁあああああああ!!!」

 

 兵夜は躊躇することなく、防御用の対光力加工済みの祖鋼板を大量展開。そして同時に突進した。

 

 おそらく自分が相手をするのが一番いい。何とかしなければならないだろう。

 

 そして、戦闘はより激しく激化していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アインハルトとヴィヴィオは、フリードにターゲットにされていた。

 

 なんでも、殺しが大好きで教会を追放されたはぐれ悪魔祓いらしいが、正直な話ついてない話だろう。

 

 当人の実力も高水準である上に、非常に頑丈という質の悪い特性ゆえに攻撃が通りきらない。

 

 そして何よりフリードは戦闘者である以上に殺人者。

 

 そこそこ本気を出せる状態で、比較的安全に人を殺したいということこそが彼の本質なのだ。

 

 本質的に競技選手である二人にしてみれば、近くにいること自体が汚染されているようなものだ。

 

「ほぅらちびっこコンビ! しのげないと死んじゃうぜぇ?」

 

「わ、わわ!」

 

「速い上に、硬い・・・っ!」

 

 ヴィヴィオとアインハルトを同時に相手をして、フリードはなお優勢。

 

 いかに彼が底の浅い悪党であろうと、彼に宿った超能力は本物。

 

 その圧倒的な防御力は、多少のダメージを無視できるがゆえに思い切りをよくする。

 

 そして、その戦闘能力も悪魔祓い全体でいえば間違いなく高位。

 

 さらに、彼自身も戦闘に特化して作り出された存在だ。そのための遺伝子調整すら受けている英雄の後継者の実験体。

 

 そんな男が超能力などという一軍匹敵の力を手に擦ればどうなるか。

 

 それが、今まさに形となって具現化していた。

 

「オイオイオイオイ、覇王の末裔と聖王のクローンさんはこの程度なんですかぁ? もうちょっと素敵なバトルがしたいと思ってたんですけど、残念ですねぇ?」

 

 自分の耐久力を相手は突破できない。その確信がフリードを戦闘の高揚ではなく殺戮の興奮へと導いていく。

 

「俺様ちゃんも英雄シグルドの末裔から作られた試験官ベイビーなんで、もうちょっと素敵な設定のバトルができると思ったんだけど・・・流石にお子様相手に無理難題だったかなぁ?」

 

「・・・まだです!」

 

 圧倒的な余裕があるという事実に、しかしアインハルトは膝を屈さない。

 

覇王(わたし)は、クラウス(わたし)は! あなたのようなものから民を守るために覇王流(カイザーアーツ)を極めてきました! 今こんなところでやられるわけにはいきません!」

 

「お! まだまだやる気みたいだねん? それならもうちょっと切り刻んで終わらせちゃおうかなーっと!」

 

 その姿を見て、フリードは嗜虐の興奮に顔を紅潮させる。

 

 そしてそのまま刃を振るおうとして―。

 

「・・・おい」

 

「あん・・・っと!」

 

 真後ろから迫りくる拳を条件反射で回避した。

 

「うっわぁマジ怖え! つい条件反射でかわしちゃったよボクぅ」

 

「うるせえよサイコ野郎。人の仲間になにしてやがる」

 

 服がズタボロになっているところを見るに、どうやらジャンヌの猛攻を強引に突破して助けに来たらしい。

 

「暁さん・・・」

 

「ったく、どいつもこいつも・・・っ!」

 

 古城は髪の毛をわしゃわしゃとかき乱すと、フリードを心底本気で睨み付けた。

 

「本当にどいつもこいつもやれ覇王だなんだの・・・いい加減にしろよお前ら」

 

 その怒りに呼応するかのように、莫大な振動が周囲に放たれる。

 

 その振動は凄まじく、フリードの肌にわずかながら傷が生まれるほどの破壊を生み出していた。

 

「覇王だかイングヴァルドだか知らないが、とっくの昔に死んじまった連中に縛られて・・・お前はクラウスじゃなくてアインハルトだろうが!!」

 

 そして、そんなフリードに目もくれず、古城はアインハルトを一喝した。

 

「え、でも、私はクラウスの記憶を・・・」

 

「記憶を受け継いだだけで本人ってわけでもないんだろうが! それともなにか、お前はそのクラウスの恋仲だったっていうオリヴィエってのを男として愛してるのか?」

 

「い、いえ! オリヴィエを愛していたのはあくまでクラウスであって私では・・・」

 

 慌てて否定するアインハルトだったが、その頭に古城の手が乗った。

 

「そういうことだろ?」

 

「あ・・・」

 

 そこに至って、アインハルトは古城が言いたかったことをを理解する。

 

 クラウスとアインハルトが同一人物だとするならば、クラウスが抱いていた感情を余すことなく同一のものとしてアインハルトが持っている必要がある。少なくと、兵夜達転生者は皆そうだ。

 

 そうでないと自分から否定したということは、アインハルトは自分から自分とクラウスが同一人物でないと証明したことになる。

 

「・・・酷い言葉遊びです」

 

「まあそうなんだけどな。なんていうか腹立つんだよ、あいつらにもおまえにも」

 

 古城も、なんでここまでむきになっているのか自分でもわかっていない。

 

 脳裏に自分を第四真祖にした少女の姿がちらつくが、それが関係しているのだろうか。

 

 そういえば、あの時の記憶は未だに全然取り戻せていない。

 

 もしかすると、彼女にはアインハルトを思わせる何かがあるのかもしれない。

 

「覇王だかクラウスの記憶も血だかなんだか知らないが、お前はただの女の子なんだから、そんな面倒なこと気にして人生損してもいいことないだろ? 少しは友達や年長者に頼っても損はしないぜ?」

 

「そ、その通りです!」

 

 それに応えるように、ヴィヴィオも足を震わせながら立ち上がる。

 

「私はアインハルトさんの友達ですから、アインハルトさんがそんな顔してると私も悲しいです!」

 

「ヴィヴィオさん・・・」

 

 その姿にアインハルトが戸惑う中、フリードは明らかに嫌そうな顔をして剣を向ける。

 

「勘弁してくれなーい? 俺ちゃんそういうお涙頂戴! …っての大っ嫌いなんだよね?」

 

「うっせぇよ三下」

 

 それをバッサリと切り捨て、古城は一歩前に出る。

 

「覇王イングヴァルドの末裔とか、聖王オリヴィエのクローンだとかそんなの心底どうでもいい。俺は俺の友達を守るだけだ!!」

 

 雷光をほとばしらせながら、古城はフリードと正面から向かい合った。

 

「こっから先は、俺の戦争(ケンカ)だ!」

 

「んじゃさっさと終わらせるぜ!!」

 

 言うなりフリードは剣を片手に切りかかり―

 

「いいえ先輩」

 

 割って入った雪菜の攻撃で出端を挫かれる。

 

「―私達の聖戦(ケンカ)です!!」

 

 

 

 

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