ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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全てはここから始まった。

宮白兵夜が、須澄を見たとき驚愕したのも

エイエヌが、やけに須澄に手を出すのを残念がっていたのも。

兵夜が、須澄の魔術特性を詳しく知っていたのも。

全ては、彼らが繋がっていたからこそ……っ


近平戻

 俺は心の底からその名前を言い放った。

 

 ああ、自分で言ってて懐かしい名前だ。

 

 周りにいる連中は、全員少し疑問を抱いているだろう。

 

 当然だ。この名前を俺が語ったことなどかつて一度たりともないのだから。

 

「……近、平?」

 

 特に須澄の驚き具合が半端ない。

 

 ああ、そりゃそうだろう。自分とおなじ姓を、俺が名乗っているんだからな。

 

 だが、これは間違いなく正真正銘の真実だ。

 

 そして、奴もその辺のノリはしっかりしている。

 

「はっはっはっはっはっは! その名前で呼ばれたら、確かに出てこなけりゃいけないだろうな!!」

 

 その言葉と同時に、海面から巨大な魔獣が姿を現す。

 

 サイズこそでかいが、これまでの魔獣と形状そのものは大した違いがない。

 

 ああ、やはり本来の使い手(レオナルド)ほどは使いこなせていないということか。

 

「今回、従僕の生産限界数があったんであえてそのまま聖杯戦争に移行したんだが、結果的に赤龍帝を大量虐殺班に仕立て上げるという面白そうな展開にできそうだったんだがなぁ?」

 

 そして、当然のごとくその頭頂部には見慣れた姿が。

 

「うっひゃひゃひゃ! 殺しがいの在りそうな連中がより取り見取りですなぁ。うーん僕迷っちゃう!」

 

 まさかお前がここまで強敵になるとは思わなかったよ、フリード。

 

「赤龍帝の苦悶の顔は素晴らしく面白いなこれが」

 

 そうかい。俺はお前のオリジナルそっくりの顔は見たくなかったよフォンフ。

 

 敵陣営の幹部格ともいえる連中が出てきやがった。

 

「ああ、そこまで分かってるなら仕方がない。もともと遊び半分でつけてた仮面だしもう要らないか」

 

 そういって仮面を外したエイエヌの顔は、間違いなく俺の顔そのものだった。

 

「やはり、そういうことか……っ!」

 

「マジで宮白と同じ顔かよ」

 

 いやそうな顔をしながら、アルサムも古城も戦闘態勢をとる。

 

 いや、すでに全員が戦闘準備を整えていた。

 

 だが、エイエヌは何の動揺も見せないでいると指を鳴らした。

 

「ひれ伏せ」

 

 次の瞬間、心の底からひれ伏したいという感情と物理的な圧迫が襲い掛かった。

 

「……っ!?」

 

 とっさに神格の力すら発動させて弾き飛ばすが、しかしそれをできたのはごくわずか。

 

 上級悪魔クラスも含めた多くの連中が、一斉に地面にたたきつけられた。

 

「……これは、一体!?」

 

「体が、重い……っ!」

 

 魔力無効化装備を持つ姫柊ちゃんとシェンすらくらうということは、つまりそれだけのやばい力だということ。

 

 ってことは想定できるのはただ一つ。

 

神滅具(ロンギヌス)禁手(バランス・ブレイカー)か!?」

 

「その通り。これが俺の黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)の亜種禁手、覇光の聖槍(トゥルー・ロンギヌス・イデアバースト)だ」

 

 おいおい、その名前から推測できる能力なんて一つしかないぞ。

 

覇輝(トゥルース・イデア)を限定的に運用しているのか!」

 

 だとすると、かなりまずいぞオイ!?

 

「と、覇輝っていったい何なの!?」

 

 あまりの事態に混乱しているリオ達に、俺はとりあえず時間稼ぎもかねて説明する。

 

「神器の中には封印された存在の力を開放する覇という概念があるんだが、覇輝っていうのは黄昏の聖槍に込められた覇の力だ」

 

 そう、そしてその特性はほかの覇とはまったく異なる。

 

「槍に込められた聖書の神の遺志を開放する覇輝は、状況に応じて聖書の神の遺志が選んだ結果を具現化するという点で、ほかの覇とはまったく異なる力を持つ」

 

「単純な他の覇は莫大な消耗と引き換えの能力の上昇だが、覇輝は状況と聖書の神の遺志の判断で多種多様な能力を発現する。そのため聖書の神の意にそぐわない行動をとれば開放しても何も起こらないという結果に終わることがすでに判明しているが……」

 

 俺の説明を引き継いだアルサムの言いたいことはすでに誰もがわかっている。

 

 神滅具クラスの覇ともなれば、その出力は主神クラスだ。

 

 それらを弱体化させたとはいえ自分の意志で自由自在に使えるということは―

 

「そう、このように魔王クラスに届いていない連中なら完全に無力化できるということさ!」

 

「ヒャッハー! これでむちゃくちゃ殺し放題だぜ!!」

 

「そういうわけで死んでもらうおうか兵藤一誠!!」

 

 いうが早いか、フリードとフォンフが即座に赤龍帝を殺しにかかる。

 

 特にフォンフの目がマジだ。ああ、あいつのオリジナル(フィフス)は自業自得とはいえ散々な目にあっているからなぁ。

 

「させると思うか?」

 

「舐めんなフィフス!!」

 

 しかしアルサムとグランソードがそれを受け止め、そして俺も動き出す。

 

 動けるのはあの二人を除けばあとは赤龍帝とレグルス、そして古城か。まあ妥当だな。

 

 だとすれば―

 

「暁! 魔獣が接近したら眷獣で薙ぎ払え!!」

 

「あ、おい宮白!!」

 

 古城は止めようとするが、しかしそんなことを気にしている暇はない。

 

 第一―

 

「エイエヌぅううううううう!!!」

 

 あのバカのフォロー役が必要不可欠だろうしな!!

 

 赤龍帝は即座にレグルスと融合すると、全力の拳を叩き込む。

 

 普通に考えれば神滅具の禁手二つ乗せなんて即死ものだが、しかしエイエヌは全く動揺しない。

 

「……禁手化(バランス・ブレイク)♪」

 

 非常に楽しそうに禁手を発動させながら、エイエヌはかけらもよけずにそれを無防備に受け止めた。

 

 そしてそのまま主神すら殺せそうな拳が放たれ―

 

「―なっ!?」

 

 鎧ごと解除されて、一瞬で無力化される。

 

「―これが俺の絶霧(ディメンション・ロスト)の亜種禁手。赤き龍を絶望に包み込む黒い霧(アズライグ・ロスト)。能力は極めて単純―」

 

 いうが早いかエイエヌは即座に拳を握り締め殴りかかり―

 

「―赤龍帝の力の無効化だ」

 

「ガハッ!?」

 

 何の抵抗もなく鎧を砕いて鳩尾に拳を叩き込んだ。

 

「赤龍帝!? しっかりしろ!!」

 

「クソ、下がれ赤龍帝!!」

 

 同一化が解除されたレグルスがかばうように前に出て、俺はそれを利用して赤龍帝を回収する。

 

「下がれ赤龍帝! 奴の禁手が本当なら、今のお前じゃあいつには勝てない。ドライグ、透過は無理なんだろ!?」

 

『なぜ知っている!? だがその通りだ。そもそも、赤龍帝の籠手で透過は使えなかったはずだが……』

 

 そのレベルってわけかよ! くそ、詰んでねえかコレ!!

 

 イッセーは今ので重傷、グランソードとアルサムはフリードとフォンフが邪魔で動けない。

 

 そして、暁は動けない奴らの護衛として必要不可欠。

 

 つまり神の俺が神殺しを相手にしなきゃいけないというわけで―

 

「アザゼルとエヴァルド猊下を呼んでおけばよかったな、いやマジで!!」

 

「え、あいつら近くにいるのかよ? これさすがにきついか?」

 

 あ、エイエヌがさらに本気になりやがったかこれは!?

 

 ちょっとマジでビビルが、赤龍帝が俺の肩に手を置いた。

 

「……安心してくれ、宮白兵夜。フェニックスの涙は持ってる!」

 

 赤龍帝はそういうと、すぐに怪我を回復させて起き上がる。

 

「むちゃくちゃ悔しいけど、今は増援が必要だ。……あとなんでアザゼルが生きてるのか後で説明しろよな!」

 

「そこから気づいてなかったんかい! ええい仕方がない!!」

 

 とりあえず、それならこっちもやりようはある!!

 

「グランソードとアルサム! 選手交代だ!! あとフォンフは俺が引き受ける!!」

 

「応よ大将! アルサム、行くぜ!」

 

「それが妥当か、よし、任せる!!」

 

 二人はすぐに判断すると、即座に距離をとってすぐにエイエヌに向かう。

 

 むろんフリードもフォンフも邪魔しようとするが、しかし舐めてもらっては困るんだな、オイ。

 

「行かせると思うか!!」

 

「エイエヌをぶち殺せそうになくて腹立ってるんだ。八つ当たりさせてもらうぜ、この野郎!!」

 

 俺と赤龍帝の攻撃が、二人を押しとどめて足止めする。

 

 さあ、まだまだそう簡単にはやられないぜ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空中で猛攻が繰り広げられる中、近平須澄は唖然としていた。

 

「……戻? 近平戻って……本当に?」

 

「須澄さん? あの、戻って人の名前でいいんですか?」

 

 同じく地面にひれ伏されながら、アインハルトは須澄に尋ねる。

 

 その答えは首肯以外にない。

 

 ああ、実に懐かしい名前で、あり得ない名前だ。

 

「僕の兄だよ。僕が五歳ぐらいのころに、音楽聞いてて車に気づかなくてはねられて死んだって、父さんがあきれながら言ってたけど」

 

「なら、間違いないですわね」

 

 何とか起き上がろうとしながら、雪侶はそれを肯定する。

 

「兄上は現在ギリギリ17歳。受精から妊娠までの期間も含めれば、時期的なタイミングはぴったりと合いますの。ほぼ間違いないですのよ」

 

「ああ! その通りさ!!」

 

 エイエヌがアルサムとグランソードの攻撃を何とかかいくぐりながら、それを肯定する。

 

「初めて顔を見て、名前まで知ったときは驚いたさ! もちろん宮白兵夜もそうだったろうな!!」

 

「黙れエイエヌ! 貴様は、その実の弟を悲劇に巻き込んだことを恥じていないということだろう!!」

 

 軽蔑とともに放たれるルレアベの一撃を聖槍で受け止めながら、エイエヌはそれを肯定する。

 

「ああ、あいにくそういう感情は喪失しててな。いや、さすがにちょっとやっちゃったなーって思ってはいるけどさ?」

 

「だったらくたばっとけ!!」

 

 聖槍が使えない隙を狙ったグランソードの拳を絶霧で受け止め、エイエヌはしかしにやりと笑う。

 

「……グレートレッドを殺すのに比べれば、大したことじゃないからな」

 

「なぜだ! なぜその様なことを考える!!」

 

 アルサムはそれがわからない。

 

 グレートレッドを殺して何の得があるのだろうか?

 

 そんなことをしても地球を中心とするあらゆる神話体系の憎悪を買うだけでメリットがない。

 

 時空管理局と渡り合えるだけの次元世界組織であるフォード連盟を支配しているといってもいいエイエヌならば、グレートレッドを気にすることなく次元航行を行うことだってできるはずだ。

 

 なのに、いったいなぜそんなことをする?

 

「大したことじゃない。それが面白いと思っただけさ」

 

 エイエヌは、なんてことの内容に言いながら二人を弾き飛ばす。

 

 その際放たれるのは光力や魔力、そして灼熱に暴風に吹雪に雷光。

 

 あらゆる属性攻撃が、二人を力押しで圧倒する。

 

「ああ、本当に大したことじゃない。俺は楽しそうなことをしたいだけだ。ただの愉快犯だよ、俺は」

 

 そう愉悦の笑みを浮かべながら、エイエヌははっきりと言い切った。

 




ようやく出せましたこの情報。

ぶっちゃけ、この情報を出さないために普段メインで使っている兵夜の一人称使わないで進めてきましたから。

因みに近平のネーミングですが、苗字のほうは遠坂の反対の意味になりそうな時からセレクトしました。
 そんでもって兵夜の戻は「お前うっかり癖だから時々原点に戻れ」という願いを込めて作られ、そして兵夜は弟が生まれたときに「前に一歩一歩進んでくれるように」と当て字で須澄の名をセレクトしたのです。

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