ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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ホテルでの一幕を覚えているでしょうか?



あれ、一応伏線でした。


仮面の裏の本性 ~我が人生を彼女の遺言に捧ぐ

俺はフォンフの相手をすることを即座に決定する。

 

 理由? んなもん一つに決まってるだろう。

 

 フィフスのコピー体であるフォンフが、イッセーメタの戦闘スタイルでないわけがないからだ!

 

「火龍の鉄拳!!」

 

「へぶあ!?」

 

 そして俺はすっかり忘れてた。

 

 今俺、代行とはいえ赤龍帝だった!

 

 あと龍属性俺もあったよ!!

 

「龍殺し持ってんのかよ!? そして宮白兵夜、お前馬鹿なの!?」

 

「すいませんうっかりしてました! あと対龍戦闘魔法だそうです!」

 

 あ、これ駄目だ。むちゃくちゃ不利だ

 

 でもエイエヌも振り出し、ええいこうなったら―

 

「まずお前をぶち殺してやるよ、フリードぉおおおおおおおお!!!」

 

 幸いフリードは頑丈なだけだ。

 

 ぶち殺すのなら比較的楽! ならばそうするしかない!!

 

 だが、フリードの奴はなんかすごい余裕の表情を浮かべていた。

 

「ひゃははははは!! 甘いぜクソ神様!!」

 

 フリードは俺の一撃を簡単に防ぐと、そのまま光の拳銃を向けた。

 

 だがその程度でやられる上級悪魔など存在しない。即座に俺は防護障壁を展開し―

 

「バキューン!」

 

 ―その弾丸は俺と赤龍帝を簡単に貫いた。

 

「はぁ!?」

 

「何!?」

 

 俺も赤龍帝も痛みではなく驚愕から絶叫を上げる。

 

 おいおいおいおいちょっと待て

 

「うひゃひゃひゃひゃ! 言ってなかったっけ? 実は俺様ちゃんが英霊を宿してる存在なんだよねぇ?」

 

 そう気軽そうに笑うフリードの髪は、黒く染まっていた。

 

「日本人のお二人さんなら当然知ってる有名人! 織田信長!! そしてその能力はーなんと!!」

 

 そういうが早いが、フリードの後ろにあるものが現れる。

 

 それは、早い話が火縄銃。

 

 だが、その数が問題だった。

 

 その数、ざっと数千。

 

 明らかに数の暴力を体現しまくっている。

 

「その名もずばり天下布武! 神性や神秘のランクが高い相手や、体制の守護者の属性相手に有利な補正を与える素敵ウェポンさ! 言いたいこと、わかるよねん?」

 

 ああ、泣きたいほどわかるよフリード。

 

 つまり、聖書にしるさせし神が作り出した神滅具を持つイッセーはもちろん、神様そのものである俺にも効果的。

 

 ましてや俺もイッセーも現政権側。必然的に体制の守護者だ。

 

 まずい、こんなもの喰らえば―!?

 

「撃ち抜け、三千世界(三段撃ち)!!」

 

 そして何の躊躇もするわけがなく、そのまま一斉に攻撃が放たれる。

 

 ……こうなりゃ賭けだ!!

 

「純正化学式複合素材型装甲版、展開!!」

 

 奴の発言がその通りなら、何の神秘も加えていない学園都市性の装甲版なら効果は薄いはず!!

 

 そして、弾丸の雨あられが装甲版にぶつかり火花を散らす。

 

 よし! どうやら想定通り! 賭けに勝った!!

 

 勝ったけど……。

 

「「動けねえええええええ!!!」」

 

 まさしくこれぞ制圧射撃! 顔を出した瞬間に神秘殺しの弾丸が直撃する!

 

 火縄銃の連射速度は分速1~3発。それが掛ける三千だから分速平均六千発。秒速平均約百発だ。

 

 ああ、ガトリングガンじみた連射速度。こんなもんどうしようもないだろうが!!

 

「クソ! これじゃあ動けない!!」

 

「オイどうするんだよ! だったらもう誰かの助けを借りるしかないんじゃないか!?」

 

 赤龍帝がそういうが、しかし動ける連中はほとんどいない。

 

 グランソードとアルサムはエイエヌの相手で手一杯。暁だって数千年前の吸血鬼の力である以上、天敵であることには変わりないだろう。

 

 そしてほかの仲間たちはエイエヌの禁手で動けない。

 

 ヤバイ、完璧に詰んでる!!

 

「……そして、俺はもう回り込んだぞ?」

 

 あ、フォンフの奴いつの間に回り込んでやがる!?

 

「ああ、俺の憎悪の根源を、この手でようやく晴らすことができる」

 

 そう笑みを浮かべると、フォンフは腰を落として拳を構える。

 

 ヤバイ! フォンフのターゲットは赤龍帝か!

 

 クソ! せめて時間を稼げれば―

 

「まあ待てよフォンフ。冥途の土産に、俺の過去でも聞かせてやろうじゃないか」

 

 エイエヌ! ありがとう聞かせてくれ!! 流石愉快犯!!

 

 そしてその隙を突いて、俺は状況を打開してくれるわ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エイエヌSide

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本当に、本当に俺の人生の理由なんてものは大したことじゃない。

 

 転生者の人生は、最初からある種の躓きがあるといっていい。

 

 なんたって、最初から人生の最初から最後までの経験がある。こんなもん、メリットもあるがデメリットもあるさ。

 

 当然周りの環境と馴染めないなんてことはいくらでもある。人格が歪んでもおかしくない。

 

 だから、俺の人格は当然の如く歪んだわけだ。

 

 いや、だからって同情しろとかは言わないぜ?

 

 それにしたって俺のやったことはやりすぎだ。暗示の魔術と黒魔術による薬草関係を使ってどれだけの人間を傀儡にしたことか。

 

 そんな環境で適度に豪遊した人生を送ろうかと思っていた中学一年生の時、それが起こった。

 

 ……あそこの世界の連中なら知ってるだろう? 禍の団(カオス・ブリゲート)さ。

 

 あいつらも転生者の情報は持ってたらしく、強引にスカウトされたんだよ。しかもたまたま近くにいたオーフィス直々に。

 

 ああ、マジで死ぬかと思ったね。俺の人生これで終わりかと心臓が止まるかと思ったよ。

 

 だが、あの無邪気な子供は利用できると思って俺は賭けに出た。

 

 そっからは結構楽しかったな。なにせオーフィスは純真だから、簡単な遊びを教えるだけで気に入られたよ。

 

 他の連中は、オーフィスを怖がって近づこうともしなかったから非常に都合がよかった。おかげで俺は摂政に近い立場になったし、彼女が積極的に協力してくれたから、俺はだいぶ好き勝手出来た。

 

 だがまあ、曹操にはマジでむかついたね。俺のオーフィスを利用するどころか、力を奪い取って使い捨てにすることすら考えてたんだから。

 

 その辺り俺に諭してきたりもしたから、適当に乗っかる振りして暗殺してやったよ。堕天使側からの神器摘出技術を確保できてたから、ついでに曹操が確保していた神器使いの神器とか、曹操達の持ってた神滅具とか貰っといたけどな。

 

 ……ああ、因みに俺の従僕の正体も気づいてるから教えるけど、俺の魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)の禁手は|死肉より創造されよ我が従僕《アナイアレイション・メーカー・フランケンシュタン》っていうんだ。

 

 これに覚醒できたのがオーフィスと出会ったことの次にラッキーだったね。なにせ、敵をぶっ殺すことにさえ成功したら、その手強い連中を頼りがいのある配下にできるんだ。

 

 しかも掛け合わせもできる。

 

 ジークの能力はマジ便利だったよ。赤龍帝の仲間達をより強化して運用できれば、それこそ無茶苦茶大暴れできるからな。

 

 ……そんなこんなで詳しい話はあの世で赤龍帝に聞いてもらいたいが、俺はこれを使って上手く立ち回り、グレートレッドをぶっ殺すことにまでは成功した。

 

 方法? あの世界にはサマエルっていうドラゴン特化の最終兵器が存在したからな。オリュンポスで内戦起こしてから、特攻かまして奪い取ったんだ。

 

 それで何とかグレートレッドは殺せたんだが、そこで俺はうっかりした。

 

 ……オーフィスもドラゴンだってこと忘れてたよ。だって普段は女の子なんだもん。

 

 おかげでオーフィスも死にかけに弱って、慌ててサマエルを封印しなおしたところにそこの赤龍帝君が仕掛けてきやがってさぁ。

 

 ………………オーフィスは、死んじまったよ。流石にあの状態で二天龍を相手にするのはやりすぎだったな。

 

 アイツ、俺のこと気に入ってたのか最後にこんなこと言ってきたんだよ。「楽しく生きてくれ」……ってさ。

 

 あ、あと平行世界の話をしてたからからか、別の世界の自分に静寂を与えてほしいとも言われたんだ。

 

 ……散々後ろ盾になってくれた奴の最後の頼みだ、聞いてやるのもやぶさかじゃない。

 

 それに、楽しそうだろ? 世界最強の存在を殺して、そして生まれる世界の混乱を眺めるのって?

 

 ま、それが俺の理由だよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、その過程で直接間接含めれば人類絶滅寸前まで追い込んでるから同情には値しないだろうけどな?」

 

 エイエヌはそう占めると、愉悦に満ちた表情を赤龍帝へとむける。

 

「ほらどうした? むかつく自分語りだっただろう? 怒りで覚醒の一つでもやって見せろよ?」

 

「このクソ野郎が……っ!!!」

 

 目を血走らせて憎悪の表情を浮かべる赤龍帝だが、しかしまあ、そういうことか。

 

「ハッ!」

 

 俺は鼻で笑わせてもらったよ。

 

 ああ、それこそ心から鼻で笑える。

 

「中途半端すぎるぜ、エイエヌ」

 

「………は?」

 

 エイエヌは呆れる声を出しているが、しかしあまりにもそれは遅い。

 

 おいおいエイエヌ。お前それはうかつすぎるぞうっかりだぞ。

 

 この俺の目の前で、そんなに餌をぶら下げるなよ? 食いつきたくなるじゃないか。

 

「憎悪に燃えて殺したくてたまらない? ハッ! そんなちゃちなもんじゃないだろ、()()()()()

 

「…………」

 

 エイエヌは沈黙をもって肯定する。

 

 ああ、仮面だらけの表情が、本音を隠せなくなってるぜ?

 

 平静を装っているようで、口元は引くついているし額には青筋が浮かんでる。

 

 実に図星を突かれた表情だ。実にわかりやすい。

 

 だから答えてやろうエイエヌ。お前の本音を。

 

「それでなんでグレートレッドを本当に殺す必要がある? 態々赤龍帝の仲間達という、才能はあれど未熟な若い戦士を選んで従僕にする必要がある? 態々赤龍帝の神経を逆なでする必要がある?」

 

 それが楽しいから?

 

 ああ、確かにそれはそうだろう。

 

 だが、なんで楽しいのかは答えてない。

 

 だから俺が答えてやろう。

 

「大好きなオーフィスの頼みだからグレートレッドを殺すんだろう?」

 

「…………」

 

 長い沈黙がその答えだ。

 

 人間、図星を刺されると黙っちゃうもんだもんな。

 

 そして、中盤からの答えもそれだろう?

 

「因果応報だろうが何だろうが、オーフィス殺した兵藤一誠が憎いから、あえて神経逆なでする方法で精神苦しめないと我慢できないんだろう?」

 

「……………」

 

 またしても沈黙。

 

 ああ、隠しても無駄だエイエヌ。

 

 あの子は本当に純真な子供だ。おそらく、お前が全てを話しても引いたりしなかっただろう。

 

 ああ、そうだろうそうだろう。それが、俺らにとってどれだけ重要なことか、俺はよく理解してるさ。なにせ、俺だからな。

 

 そう、あいつはおそらく、お前にとっての光だっただろう。

 

 だから、そう、だから―

 

「俺はお前でお前は俺だ、エイエヌ。だから手に取るようにわかるぜ? 全て話しても純粋に受け止めるオーフィスが大好きなんだろう? 心から悪に堕ちたお前は因果応報なんて納得したりしないだろう? だから―」

 

「―だからグレートレッドを殺すついでに、兵藤一誠の心を殺す」

 

 静かに、静かにエイエヌはそう告げる。

 

 そこにあるのは、薄ら笑いを浮かべる道化師ではない。

 

 間違いなく憤怒に燃える復讐者にして、最後の願いを叶える殉教者のそれだ。

 

「ああ。お前は俺のこと大嫌いだろうがな、赤龍帝? 俺もお前のこと大嫌いだよ!!」

 

 いうが早いか、エイエヌは聖槍片手に赤龍帝に突きかかる。

 

 その豹変に対応できたのは、俺一人だけだった。

 

 対聖槍用に木場に創ってもらった魔剣でそれを受け止めながら、俺は全身を焼かれながらエイエヌの心を切開する。

 

「ああ、むかつくだろう! 自分の光を、太陽を! 奪われてお前は納得できる奴じゃない! 悪に堕ち切っているがゆえに、そんな因果応報なんてどうでもいい!!」

 

「ああそうさ! 誰一人彼女を理解しなかったくせに、その彼女のただ一つの願いすら打ち消すような連中の都合など知ったことか!!」

 

 技も技術もへったくれもない、豪快な一撃が俺を押し飛ばす。

 

 だが、俺は赤龍帝を庇う為にすぐ戻って受け止める。

 

「その為に態々姫様達を従僕にしたんだろう!? 戦闘能力不足を、ジークをばらして組み込んでまでな!!」

 

「ああそうさ! あいつらを使って赤龍帝を生きたままばらして動けなくしてから、本格的な本番だ!!」

 

 エイエヌは狂気的な笑みを浮かべて、そして赤龍帝を見据える。

 

「覚悟しろ、お前の目の前であいつらとまぐわって、お前の心が壊れるまで犯し続けてやる! 止めれるものなら止めてみろ!!」

 

「させると思うか!」

 

「てめえちょっと黙れ!!」

 

 後ろからグランソードとアルサムが襲い掛かるが、しかしそれをフォンフが受け止めた。

 

「面白い! 平行世界とはいえ兵藤一誠の絶望だなんてそうは見れない! 俺もガブリ付きで見物させろよエイエヌ!!」

 

「てめえ、ふざけんな!!」

 

 あまりの報復内容に、古城もまたブチギレて眷獣を呼び出すが、しかしそれはフリードが受け止めた。

 

「ざんね~ん! 今の俺ちゃんには、太古の昔の力なんて通用しないよ~ん!」

 

 うん、隙を作るつもりで図星ついたが、これは思った以上に地雷踏み抜いたな。

 

 だが、ここまで激高しているなら隙が必ず生まれるはず。底さえ見つかれば……っ!!

 

「ふざけんなこの野郎! そんなこと、意地でもさせねえぞ!!」

 

「なら止めてみろ! 肝心の赤龍帝の力が通用しないのに、それ以外はせいぜい中級程度のお前がどうやって勝つのかなー?」

 

 とびかかった赤龍帝を蹴り一つで終わらせ、エイエヌは聖槍を突き付ける。

 

「訂正しよう。オーフィスの遺言は「平行世界があるのなら、その我に静寂を与えてほしい」と「兵夜も、楽しく生きて」だ」

 

 だからこそ、心から楽しそうにエイエヌは哂う。

 

 狂気的に、だけどどこまでもまっすぐに。

 

「だから俺は楽しむぜ? 心から楽しく全てを奪い喰らい貪り!! そのうえでしっかりあいつの願いを全て叶える!! この世界への移動は、全て彼女の力によるものなのだから!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「‥………ふざけるな」

 




兵夜はやっぱり兵夜だという話。





どれだけ悪性に傾こうと、心に支えが必要なことは変わらない。結局兵夜は弱者なのだから、支え無くして立ち向かえなどしないのだ。









問題は、当時の純粋すぎて静寂を味わうこと以外に無頓着すぎるオーフィスがそれになってしまったこと。

最強の存在という後ろ盾を得たこの男が、そのある意味ゆがんだ願望のために全力を出しながら愉悦ったらどうなるか。………こうなった(汗

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