ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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お好きな処刑用BGMの準備をしてください。


逆転、そして逆転

 

 

 

 

「ひゃははははは!!! しぶといね、しつこいね、ねばるねえ!!」

 

「うぅ……っ!」

 

 一方、ヴィヴィオもまたフリードに追い詰められていた。

 

 既にバンテージはぼろぼろで、魔力もだいぶ減っている。セイクリッドハートも負担が大きくかかっていた。

 

 兵夜の対応は大体上手くハマっていた。

 

 だが、その発想には一つだけ誤算があった。

 

 それはたった一つのシンプルな答え。

 

 織田信長という英霊そのものが、戦士としても優秀だったというそれだけの事。

 

 兵夜は、フリードの戦闘能力において技量をフリード其のままで計算していた。

 

 だが、激戦においてフリードは織田信長という英霊を使いこなし始め、その技量すら受け継ぎ始めていた。

 

 英霊の技量という圧倒的な能力が、遂に牙をむいたのだ。

 

 元々英霊とは、非常に優れた人間が、それに憧れる人々の信仰によって上位の存在へと昇華した者。

 

 元々戦闘職としての才能が薄いヴィヴィオが一人で相手をするには難易度が高い存在なのだ。

 

「さあ、素敵な戦いだったけどこれにて閉幕!!」

 

 剣戟を囮として放たれた蹴りが、ヴィヴィオを蹴り飛ばす。

 

 そのまま破壊された艦艇の装甲を飛び越えて、ヴィヴィオは地面へと叩き付けられた。

 

「……これで終わりだぜお嬢ちゃぁあああああん!!」

 

 そして生きたまま女を解体することに興奮しながら、フリードは飛び掛かった。

 

 そして―

 

「……作戦通り!!」

 

 突如として装甲板が跳ね上がり、フリードに激突した。

 

 以下にフリードの耐久力が高かろうと、それは単純に硬くなっているだけのこと。

 

 身体能力そのものは硬さに比べれば大して上がってないと言ってもよく、必然的にフリードはそのまま倒れていく装甲板に押し付けられて地面に叩き付けられる。

 

「作戦成功! コロナ!!」

 

「うん! 行って、ゴライオス!!」

 

 更にその上から巨大なゴーレムが圧し掛かり、フリードの動きを阻害する。

 

「うぉおおおおお!! 動けねえ!? まさか、この餓鬼ども!?」

 

「―うん。これが作戦」

 

 そして、何事もなかったかのようにヴィヴィオが起き上がる。

 

 ―そう、それこそが兵夜達の作戦だった。

 

 英霊の戦闘能力の更なる上乗せこそ想定外だったが、フリード自身が優秀であることはかつて殺し合った兵夜が一番よくわかっている。

 

 ゆえに、ヴィヴィオ一人に任せるだなんてことは最初から考えない。流石の彼もそこまで外道ではない。

 

 ヴィヴィオの担当はその戦闘スタイルを利用した囮。

 

 先程も説明されたが、ヴィヴィオははっきり言って格闘家に素質が向いていない。そもそも戦闘にも向いていない。

 

 魔力量はそこまで多い方ではなく、それゆえに攻撃力も耐久力も比較的低い。戦うにしても戦闘支援か遠距離戦闘が中心に行うべき能力値だ。

 

 だが、ヴィヴィオには接近戦においてのアドバンテージとそれを活かす技法がある。

 

 アドバンテージとは視野の広さと動作の速度。これはすなわち、相手の攻撃に即座に反応できるという利点を持つ。

 

 すなわち彼女の本質とはカウンターヒッター。打たせず打ち、敵の攻撃を成功させないことこそが本質なのである。

 

 そして、技法の名はセイクリッド・ディフェンダー。

 

 自身の素質を最大限に活かし、防御に回す魔力を収束することで防御力を上げる魔法。

 

 それはすなわち読みが外れればより大きなダメージを受けることになるということだが、それゆえに打撃を読めるものが使用すれば大きな力になる。

 

 そのため、フリードの蹴りも実際は防いでおり、ダメージはほぼゼロに近い。

 

 それなのに大きく吹き飛んだのは、ひとえにワザと飛んだから。

 

 最初から、怪力のリオとゴーレムを操るコロナの連携で取り押さえる事が本来の作戦だったのだ。

 

「このクソガキどもがぁあああああああ!! 裸に剥いて犯してやるからこっから出しやがれぇええええええ!!!」

 

 ものすごく口汚い言葉で喚くフリードだが、実際こうなってはもうなすすべもない。

 

「……おい! 大丈夫か!!」

 

 そして、後続の悪魔や堕天使がすぐに集まってきた。

 

「アイツ、フリードの奴じゃねえか?」

 

「っていうか英霊を憑依させてやがる! ……え? それをたった三人で取り押さえたのかよ!?」

 

 その光景に、多くの者達が油断しない程度で唖然とする。

 

 そんな姿がなんだかおかしくなって―

 

「チームナカジマ、大勝利だね!」

 

「「うんっ!」」

 

 ヴィヴィオは友人達と共に、場違いだがガッツポーズをしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

焔光の夜伯(カレイドブラッド)を継し者、暁古城が汝の枷を解き放つ―」

 

 赤龍帝の耳に、待ち望んだ声が響いた。

 

「来やがれ! 11番目の眷獣、水精の白鋼(サダルメリク・アルバス)!!」

 

 そして現れるはウンディーネ。

 

 蛇の下半身と髪を持ったそれが現れた瞬間、戦闘の趨勢は大きく傾いた。

 

 その奔流に巻き込まれた従僕と魔獣が、瞬時にその姿を塵へと戻していく。

 

 攻撃力による力ではない。それなら、従僕達も防ぐことができるだろう。

 

 それは、第四真祖の癒しの力の具現。しかし、同時にそれは決して優しいものではない。

 

 その本質は時間逆行。兵器を原子の塵に、命を産まれる前に、そして文明を未開の地へと戻す禁忌の力。

 

 回復という優しい力すら、第四真祖の出力の前には莫大な破壊の要素を持つ危険な存在へと変貌するのだ。

 

「従僕を、その前の状態に戻しているだと!?」

 

 流石のエイエヌも驚愕するが、しかしすぐに冷静さを取り戻す。

 

「悪いが、時間干渉系統の禁手や神器も山ほど持っている!!」

 

 即座に、従僕達の回帰が押し留められ、そして彼らはその戦闘能力で捕縛から自ら離脱する。

 

 神々の失われた呪いによって生まれし真祖の眷獣であろうとも、聖書にしるされし神が作り上げた最高位の神器の禁手の前には楽には勝てない。

 

 ましてや、暁古城は第四真祖になって半年そこらのルーキーだ。十年以上研鑽を積んできたエイエヌと真正面から制御能力で比べ合えば、彼が移植者であるがゆえに限界があることを差し引いてもその差は歴然。

 

 しかし―

 

「今だ、アインハルト!!」

 

 それは致命的な隙だった。

 

 エイエヌは、この状態でも戦闘において意識をちゃんと向けていた。

 

 須澄も、赤龍帝も、アップも、トマリもきちんと警戒していた。大暴れしている暁古城はもちろんのこと、負傷を回復させているグランソードや雪侶、雪菜のことも警戒に入れている。

 

 だが、しかし―

 

「……参ります」

 

 後ろから聞こえてきた声の持ち主には、警戒が足りなかった。

 

 それは単純に戦闘能力の問題だ。

 

 彼女達は戦闘能力は確かに低いわけではないが、一対一なら問題がないレベルで収まっている。

 

 彼女は確かに比較的警戒に値するレベルだが、常時展開している絶霧の防御を突破できるほどではない。

 

 そう、程ではない……()だった。

 

 視界に、黄金の獅子の鬣が映るまでは。

 

「―禁手を、他者に譲渡しただと!?」

 

 振り返って聖槍を叩き付けようとして、エイエヌはその推測が当たっていることを確信する。

 

 アインハルト・ストラトス、通常の大人モードに加えて、獅子の衣をその身に纏っていた。

 

 あり得ない。獅子王の戦斧は兵藤一誠の神器になっている。

 

 そんな簡単にそんな芸当ができるわけが―

 

「覇王―」

 

 そして、そんな思考の隙は―

 

「―断空拳っ!!!」

 

 あまりにも、致命的だった。

 

 神滅具の出力を上乗せされた覇王の拳は、絶霧の霧を無理やり押しのけてエイエヌに初めてクリーンヒットを叩き込んだ。

 

 如何に肉体を強化していようとも、神滅具の禁手の直撃をもろに受けてただで済むはずがない。

 

 今この瞬間、エイエヌは再生に大きく力を振り絞っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤龍帝Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チャンスだ!

 

 宮白兵夜の作戦は成功だ!

 

『赤龍帝。こっちのイッセーは禁手の鎧を他者にレンタルすることができる』

 

 一生懸命乳首をつつくというシュールな光景の中、宮白兵夜はそう言った。

 

 なんでも、向こうの俺は赤龍帝の力をリアス部長やゼノヴィアにレンタルして、二人を徹底的に強化することができるらしい。

 

 そして、それをイメージしながら乳首をつつけと言ってきた。

 

「神器は想いの力で機能する。やり方次第じゃ、禁手の方向性は変質を行うことも不可能じゃない」

 

 そういうわけで分離できるレグルスから試してみたけど……上手く行ったよ!

 

 うっわすっげぇ! 単純な殴り合いだったら俺勝てないね! 負ける!!

 

「何やってんのよ須澄もあんたも!」

 

 と、周りの魔獣を蹴散らしながらアップが大声を張り上げる。

 

「最終作戦! あの子が隙作ってそこを突く!! 忘れたわけじゃないでしょう!!」

 

 ああ、そうだな!

 

「援護よろしく! 行ってくるよ、アップ!!」

 

「ええ! エイエヌさまによろしくね!!」

 

 そう言いながら有象無象をブッたぎるアップを置いて、俺と須澄は一気に駆け出す。

 

「行ってよザ・スマッシャー! さ、行って須澄くん!!」

 

「うん、ありがとうトマリ!!」

 

 そしてトマリさんの援護射撃を受けながら、俺達はアインハルトちゃんに意識を向けているエイエヌに近づいた。

 

「エイエヌぅうううううう!!!」

 

「……なめるなぁ!!」

 

 須澄とエイエヌの聖槍がぶつかり合い、そしてオーラをまき散らす。

 

「奪取しただけで勝てると思うな! それでも俺は俺が使いこなせる分全部獲得してるんだよ!!」

 

 エイエヌの言う通りだ。最大出力では間違いなくエイエヌの方が上回っている。

 

 そして、エイエヌは周囲に絶霧以外の防護結界も大量に展開したうえで莫大なオーラを放っている。

 

 これは、普通じゃ近づけない―

 

 ―けど、今の俺は普通じゃない!!

 

『Penetrate!』

 

 赤龍帝の宝玉が光り輝き、発生される障壁を透過する。

 

 宮白兵夜の代行の赤龍帝のデータをもとに、更に乳を何千回もつついたことで、何とか至れた!

 

 ああ、色々と思うところはあるけど、それは別だ!!

 

 これで―

 

「俺達の勝ちだ!!」

 

「甘いわトカゲぇ!!」

 

 俺の全身に、何十本もの光の槍が突き刺さる。

 

 い、痛ぇええええええええ!!!

 

「俺が! それだけに頼ると思ってんのか? 甘いんだよ!!」

 

 言うが早いかエイエヌはアインハルトちゃんにも攻撃を叩き込もうとするが、しかしアインハルトちゃんは飛び退ってそれを回避する。

 

「……どうした? 格闘家が距離をとって勝てると思ってるのか!」

 

「いいえ」

 

 エイエヌの挑発に、アインハルトちゃんは静かに首を振る。

 

「もう、決着はつきました」

 

 ―ああ、そうだな。

 

 確かにボロボロの俺だけど、そもそも攻撃するのが目的じゃないから大丈夫。

 

 俺は、震える腕をできる限り速く動かして―

 

「……力借りるぜ、須澄」

 

「ああ。有難う赤龍帝」

 

 ―俺と、同じぐらい奴のことを倒したい男の肩に手を置いた。

 

『Transfer!』

 

 須澄に全出力を譲渡し、そして聖槍が光り輝く。

 

 そして、それに共鳴してエイエヌの聖槍も輝いた。

 

「聖槍の出力強化!? だが、それだけで俺を突破できると―」

 

「少し、少し違うよ」

 

 いまだ余裕を見せるエイエヌに、須澄は凄絶な笑顔を浮かべる。

 

 ―ああ、お前らやっぱり兄弟だよ。その怖い笑顔がそっくりだ。

 

 そして、その笑顔と共にエイエヌの顔が苦渋に歪む。

 

「……がぁ!? これは、ま、まさか―」

 

 ああ、そうだ。

 

 宮白兵夜は、エイエヌが聖槍に拒絶されていると推測していた。

 

 だから、エイエヌが使いこなせていない余剰分を使って須澄に聖槍が与えられたんだ。

 

 それでもエイエヌが聖槍を支配しているから全部奪い取るなんてことはできなかったけど―

 

「須澄の聖槍の支配力を高めれば、奪えるかもしれないよなぁ!!」

 

「このクソッタレがぁ!!」

 

 言うが早いかエイエヌは引き離そうとするが、聖槍はもう離れない。

 

 そして、完全に狼狽しているその顔が、もう一つの宮白兵夜の推測も裏付けしている。

 

『おそらくエイエヌは、拒絶反応の多くを聖槍で抑えている。だからこそのあの禁手だ』

 

 ああ、確かに。大量の神器を移植してそれを使いこなすだなんて、覇輝を使うでもしなきゃ無理がある。むしろそのうえでも出てくる負担を押させる為に更に神器を投入するとか狂ってる。

 

 だけど、この予想が当たっているなら……っ!

 

「これで終わりだエイエヌ! さんざん好き勝手してくれたお礼を、全部まとめて―」

 

 そして、エイエヌの聖槍は粒子となり―

 

「―喰らってて!!」

 

 ここに、分かれた聖槍は再び一本へと戻った。

 




リオとコロナも忘れてませんよ?





それはそれとして、聖槍の奪い合いこそが今回の作戦の肝です。

聖槍こそが力の根幹であるという推測。そして聖槍はやろうと思えば奪い合いができるという事実。

圧倒的な物量を誇るエイエヌを倒すこれが最適解でした。

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