ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
と、いうわけで兵夜の眷属探しです。
2
そんな事を思っていたら、いきなり俺は呼び出しを喰らった。
「……大将! 助けてくれ!!」
「いきなり何の用だ、グランソード」
呼び出してきた男は、グランソード・ベルゼブブ。
……この名を聞いて「おいマテ」となった諸君。お前らは当然の反応だな。
そうだ。目の前のこの男。初代ベルゼブブの血を継ぐ男なんだ。
兄貴ぃ! とか呼びたくなるタイプの気質で、自分がどこまで出来るか試す為に、テロ組織である
だがふたを開けてみれば、旧現含めた魔王の名を冠する連中の中でも、屈指のまともっぷり。切り捨てられたオーフィスを助ける為に禍の団を抜けて、現政権に投降。その後奉仕活動を積極的に行っており、その血筋と人柄から冥界での人気も高い。
俺としても、人格も能力も頼れるので、色々と仕事を頼んだりしている。天界に戦力として連れてきたほどだ。
そのグランソードが、割と焦り顔で俺に頼み事だ。時間を割くぐらいのことはしてやるが、下らないことだったら怒るぞ。
「で? 具体的に何がどうした?」
俺がそう促すと、グランソードは机に手をついて頭を下げる。
「大将助けてくれ! 俺を最上級悪魔にしようって連中がゴロゴロいるんだ!!」
ああ、なるほど。
確かにグランソードは魔王末裔だ。それに実力も優れている。舎弟からも慕われており、人材も豊富。
今の冥界のごたごた具合を考えれば、いっそのこと公式に相応のポストに迎えたがる連中もいるだろう。
……テロリストなんだけどなぁ、グランソードは。
「まぁ、ヴァーリよりはまともだしな」
「……ヴァーリはアザゼル元総督に説得されて受けた」
何考えてんだどいつもこいつも。
リベラルすぎだろ同盟トップ陣営。特にアザゼル、薦めるなよ。
ま、確かにグランソードの気持ちも分かる。
グランソードはなんだかんだで常識も良識も弁えている。「一度頭に据えといて裏切りなどゴメン」なんてマネでオーフィスに就いたぐらいだからな。義理人情を弁えている。
そのグランソードからすれば、「テロリストやってるのに最上級悪魔なんて筋が通らない」って感じなんだろうな。俺としてもそこに関しては納得できる。
「お前も大変だな。で、具体的にどう助けてほしんだよ?」
「俺を眷属悪魔にしてくれる奴を探してくれねえか?」
……凄い事言ってきたな。
最上級悪魔に推薦されている魔王末裔を、一眷属悪魔としてスカウトしてくれる悪魔を探してほしいってマジかよ。
「純血悪魔は大抵拒否るだろうし、転生悪魔だって悪目立ちするだろ? 大将のコネぐらいじゃねえと、そんな奇人変人見つからねえ気がするんだよ」
「お前、俺を何だ思ってんだ、ア?」
まあ、そんな珍しい奴はそう簡単には見つからねえわな。
「つってもお前を眷属にできる悪魔がまず少ねぇだろ。いや、実力的に」
「だよなぁ。それに俺を眷属にするなら、それ相応の実力と器ってもんが欲しいしな」
うんうん。
変な奴の眷属悪魔に魔王血族を入れるわけにはいかねえしな。それに、眷属にできる度胸や実力も必要だろうしな。
つまり、選ばれるに相応しいのは―
「最上級悪魔にケンカ売れる実力が最低でも必須だな。そして旧家から文句を受けられないような奴か」
俺も流石に、そんな奴を即座に思いつけねえぞ。
「赤龍帝とか大将の愛人とかいるんじゃねえかって思うんだけどよ。その二人紹介してくれねえか? 大将ほど付き合いねえから直接乗り込むのも気が引けてな」
「いや、あいつらは難しいな」
現実問題難しいだろ。
会長命の久遠は、会長の夢を支援する為にもアウロス学園一択のつもりだろう。
ハーレム王になる為に上級悪魔を目指したイッセーも、眷属は全員最高の女を集めるとか言っていたはずだ。
かといって、姫様やソーナ会長の余っている駒で転生できるほどちゃちな格じゃねえし……。
「お前を転生させるなら、
俺は自分の駒を取り出して、そこを考える。
姫様もソーナ会長も、流石にそんなに余ってないし……。
そこまで考えて、俺はふと気づいた。
「………ん? 旧家が納得して相応の拍があって最上級悪魔クラス以上すら倒した奴ならいいのか?」
俺は、一瞬俺のことを考える。
大王派筆頭―すなわち旧家筆頭―のゼクラム・バアルと茶飲み友達。冥界の英雄の1人にして、最上級悪魔に手が届いた男。そして、悪神ロキと冥府の神ハーデスをボコった男。
……あれ? 俺、ぴったりじゃん。
「……グランソード。俺は今、武官と文官を一人募集しているんだが―」
「……奇遇だな。俺も今、武官として仕えがいのあるやつを見つけたんだが―」
俺達は視線を合わせ、頷いた。
「契約成立だな」
「よろしく頼むぜ、大将」
この日、上級悪魔であるこの俺、宮白兵夜は魔王血族というめっちゃ強い男を武官として迎え入れた。
ちなみに、これによってグランソードの舎弟達を下部組織として運用する事が可能になった! 凄まじい人材を本格的に確保したぜ、やっほい!!
3
そしてとりあえず前祝として酒を飲みに行ったその夜の事だ。
俺は、裏業界の酒場に入ると同時に、後頭部を蹴り飛ばされた。
「うわぁああん兄上ぇえええええええ!!!」
「ごふぁ!?」
顔面を床に激突してしまい、俺は悶絶する。
な、なんだ!? 敵襲か!?
「てめえ! 俺の主に何しやがる!?」
「はうお!?」
グランソードが速攻でアイアンクローを下手人に叩き込む。
うん、できれば喰らう前にやって欲しかった。
俺はいきなり攻撃をしでかしてきた不届きものに視線を向ける。
……セリフで分かっていたが、寄りにもよってお前かい。
「おい、何してんだこの愚昧」
「た、助けて兄上……っ」
「ん? 愚妹で……兄上?」
宮白
親父が俺の生みの母親と離婚した後、再婚した後妻との間にできた娘だ。ちなみにその母親が魔法使いであり、雪侶も魔法使いである。魔法使い組織の一つである
ちなみに俺は魔法使いとしての契約を雪侶としている。その縁で女王の嗜みの後ろ盾の一つとなっているわけだ。
ロキとの一件で比較的余裕があった事から、新しく悪魔との契約関係の独占体制に食い込む事が決まっていたので、そこは問題ない。
でだ。このトリプルテールを特徴とする妹だが、一つの特徴がある。
……イッセーLOVEなのだ。
割れ鍋に綴じ蓋というか、変人の妹だから変態のイッセーを好きになってもおかしくない。っていうか雪侶、肉食系が好みだと断言してるし。
「この年頃の嬢ちゃんはエロにがっついてるやつとか嫌うと思ってたんだがな」
「ハッ! 雌とは雄に見られてこそ輝くもの。草食系などという雄の
グランソードにそう返答する雪呂は、そのままの勢いでジュースをぐびぐびと飲む。
この二人、なんか意気投合してるな、おい。
因みにグランソードは外見年齢を考慮してウーロン茶。俺は普通にハイボールを飲んでいる。
で、雪侶がこっちに殴り込みをかけてきた理由だが―
「……イッセーにぃが既に僧侶二駒埋めてるって初耳ですのよ!?」
「いや、気づけよ」
……最近研究が忙しくて、イッセーが僧侶二駒をアーシアちゃんとレイヴェルで埋めた事に気づいてなかったそうだ。
で、俺に愚痴をこぼしに来たと。
愚痴をこぼすというより八つ当たりだろ。俺は正当性のない八つ当たりは大嫌いなんだがなぁ。
まあ、近況報告ぐらいはしてやるべきだったか。そこはちゃんと反省しよう。
「っていうか雪侶。イッセーの駒はだいぶ余ってるから問題ねぇだろ。騎士に戦車に兵士に女王とより取り見取りだぞ?」
お前が一番最初にイッセーに惚れてるんだから、その辺をつつけばある程度は融通が利くだろうが。そこを付けよ、そこを。
実際、典型的ウィザードタイプのロスヴァイセさんは戦車だしな。そういうパターンもあるだろう。
だが、雪侶は勢いよくジュースのグラスを置くと、俺を睨みつける。
もはや涙目なんだが、そこまで嫌なのか?
「この
「拘ってるなぁ、雪侶は」
「困った妹だ」
面白そうな表情を浮かべるグランソードにゃ悪いが、俺としては頭痛物だ。
つっても、だったらどうするんだよ。
そう思っていたら、雪侶は俺の胸ぐらを勢いよく掴む。
「……こうなったら最終手段ですの。兄上、眷属にしなさい!!」
すいません。眷属悪魔としての売り込みとしては、主になる男に対して乱暴すぎないでしょうか?
「本気かお前は」
俺は一応そう言うが、しかし雪侶の目はマジだった。
本気と書いてマジと読む。まさにそんな感じだったりする。
あ、これ下手に断ると俺の命がやばい感じだ。
「一応言うが、姫様の僧侶は一駒開いてるぞ?」
真面目な話、そっちの方がいいんじゃないか?
我らが姫様であるリアス・グレモリーの眷属位なった方が、イッセーとの接触密度は増えると思うんだが。
そも姫様こそイッセーの本妻にして正室だ。今後の立ち位置から考えても、姫様の眷属になった方がいいと思うんだが。
姫様からしても、雪侶クラスの魔法使いなら十分スカウト対象だと思うしな。あの人ならイッセーに最初の惚れたと言ってもいい雪侶を邪険にはしないとも思うんだが。
そう思った俺だが、雪侶は静かに首を振る。
「……兄上かリアス・グレモリーのどちらの部下になりたいかと言われたら、兄上の方がいいですわ」
その理由は何だ?
俺のジト目に、雪侶は胸を張った。
「如何に愛人とはいえ、イッセーにぃの寵愛を受けるのならそれなりの水面下の争いはありますもの。主にしたらどうしても遠慮せざるを得ませんわよ?」
なるほど。納得だ。
しかし、妹を秘書として運用するのはあれかもしれんなぁ。
武官としてはグランソードには確実に劣るだろ、流石に。っていうか、武闘派関係に勤勉な魔王末裔をしのげるほど雪侶は化け物ではないと思うしな。
「っていうか、お前俺との魔法使いとしての契約はどうするんだよ」
そう、そこは重要だ。
俺は魔法使いとしての契約を雪侶としている。眷属にするならそれを解約する事もあり得るはずだ。
その辺はどうするんだよ。俺としてもその手のステータスは気にしたいぞ。
そんな俺の視線に、雪侶は胸を張って断言する。
「ご安心を。いざという時の代役は既にピックアップしておりますの」
「準備良すぎじゃねえの、大将の妹」
言うなグランソード。雪呂の行動力には俺もたまに手を焼く。
ああ、懐かしい。夏休み前の雪侶の暴走の結果、俺の舎弟を含めた駒王町の不良集団がボコボコにされたのは実に懐かしい。
……非常に申し訳ない。だが、ぐれるというのはそういうデメリットを背負い込む事だ。半分自業自得だと我慢してくれ。
さて、気を取り直して考える。
雪侶のポテンシャルは嫌というほど知っている。
普通に上級悪魔クラスの戦闘能力はあるだろう。更に、
「……ちなみに、近年の研究テーマとかは?」
その辺も一応考慮しよう。
そういう研究が俺の利益になるのなら、更に断る理由はなくなる。
そして雪侶はいきなり氷をがりがりと食べると、右手を振るう。
-その右手の軌跡をなぞるように、氷の粒が形成された。
「異世界魔法の一つ、滅竜魔法を研究していますの。ちなみに属性はイッセーにぃと対をなすように氷を主体としておりますわ」
……素晴らしすぎる。断る余地がかけらもねえ。
「グランソード。同僚にする分において不満はあるか?」
「あるわけねえだろ。こんだけ出来りゃぁ十分すぎるっての」
だろうなぁ。
「……一応オヤジに了承を取ってからだぞ? 親子の仲とは言ってもケジメはいるからな」
「了承を一切取らずに眷属になった兄上が言う事ですの?」
俺の場合は特殊だっての。
そいて親父からは了承を得た。
これで、俺の眷属は二人で来たわけだ。
魔王末裔の
さて、これだけの実力者を眷属に入れたのなら、有象無象が自薦してくる事はないだろう。
だが、問題は―
今回はグランソードと雪侶の話でした。
そして後半では後日譚のヒロインであるシルシについてスポットライトを当てたいと思います!!