ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
後日譚のメインヒロイン、シルシ・ポイニクスのパターンです!!
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この状況下において、真っ先に告げるべき人物は誰だろうか?
現四大魔王の方々か? 親友であるイッセーか? それとも、主である姫様ことリアス・グレモリーか?
その中では最有力なのは姫様だろう。だが、俺の場合は違う。
サーゼクス様達四大魔王は確かにトップ中のトップだ。だが、トップすぎるのでこの場合一々了承を取る必要はない。っていうかそうなったら過労死するしな。
イッセーに関しては嫁の一人と言ってもいい雪侶を眷属にするので一言言うべきかもしれないが、雪侶自身が「
普通に考えれば直属の主である姫様には告げるべきだろうが、まあこれは本格的に転生させるまでは問題ないだろう。これも違う。
そう、言うべき相手は他にいる。
基本的に眷属悪魔最強になりやすい
厳密には僧侶はもう一つ空いている。だが、今後を考えるとこっちは確実に魔術師組合の人物から選ぶ事になるだろう。事実上予約されたようなものだ。
なので、これを知らずに人員を選んでいるだろう人物に真っ先に報告に行くべきだ。
そうだ。大王派最重鎮にして、魔術師組合の重要な後援者。そして、我が主リアス・グレモリーの曽祖父。
初代バアル、ゼクラム・バアルその人である。
「……というわけで、送り込む人員は女王と僧侶にはしないでいただきたいのですが」
「はっはっは。まさかベルゼブブの末裔を眷属にするとはな。中々豪胆な決断をしたものだ」
バアル特産のリンゴによるアップルパイとアップルティーを嗜みながら、俺とゼクラム・バアルは今後についての会談を行っている。
で、一通り終わってから俺の眷属構成についての話になったわけだ。
真面目な話、彼との繋がりは維持しておきたい。ついでに言うと、今後の最重要課題として大王派のある程度の復権は必要だ。
その為、俺とゼクラム・バアルはある程度の連携をとる必要がある。此処で彼らにとどめが刺されては俺が困るし、冥界としても困るはずだ。主に
そういう事もあり、ゼクラム・バアルは間違いなく俺に眷属として誰か送り込んでくるのは確定的に明らか。
監視役ではなくサポート役だろうが、それでも確実に自分の派閥から人員を送りこんでくるはずだ。
なので、既に確定同然のこっちの眷属事情はすぐに伝えておくべきだ。此処で拗れて関係が悪化するのはこちらにとっても不利である。
「しかし、
「ですねぇ。主の眷属が優秀すぎるので、こちらもそれ相応の人物を何人か必要で困ってます」
いや全くだ。一人二人は凄い逸材を集めておかないと、規格外のネームバリューがゴロゴロいる広義のグレモリー眷属には向いていないからな、うん。
いや、本当にチートが多すぎる。堕天使副総督の娘やら吸血鬼の名門出身、元聖女やアースガルズ主神のお付きとかいるからな、オイ。
まあ、魔王末裔を迎え入れたからその辺については心配ないとは思うんだが……もう一人ぐらい凄いのいるかな、うん。
そう思っていると、ゼクラム・バアルはアップルティーを一口の飲んでから、告げる。
「時に兵夜君。フェニックス家分家のポイニクス家は知っているかね?」
……来た。
たぶんそろそろ準備はできていると思ったよ。
来たぞ来たぞぉ、俺の眷属にする為の人員のアピールタイムが。
「話ぐらいは。大王派側のフェニックス系列としては有力な家系でしたね。大王派でも有力な家系だとか」
「ああ。本家に負けず劣らず子だくさんな家系でね。中には人間との混血も存在する」
ふむふむ。
血統最重要の大王派から送り込んでくるにしては、混血とは思い切ったな。
まあ、純血統の上級悪魔以外は正しい意味での悪魔ではないと断言するゼクラム・バアルだ。如何に俺や
だが、ビジネスパートナーとして重要な立場なのは俺も向こうも理解しているはずだ。相応の立ち位置に取り入れたいとは思っている。だから、そこそこの地位にいる人物を送り込んでくるとは思っていた。
「実力はそう高くはないが、最近文官としての技量を伸ばしていてね。歳も君の肉体年齢と近しい者がいるのだ」
「それはいい。あまり歳が上の者だと、関係がぎくしゃくしそうですからね」
流石はゼクラム・バアル。中々考えた人選のようだ。
どうやら監視とかそんな事ではなく、あくまで政略的な繋がりを本命としているらしい。
そこそこ有力な家系の、しかし大王派の価値観から考えて家を継ぐ事はない程度の人物。しかも秘書向きの技量を持っているが、あくまで若手の範疇内。そして、この調子なら俺の監視などは優先順位が低いようだ。
さて、もう一押ししてくるんだろうな、これは。
「……どうも、彼女の母親である人間はそちらの世界の出身の可能性があるのだよ」
……ほぉ。
「出来れば、当人からお話を聞きたいのですが―」
「それは無理だ。残念ながら既に死去している」
そうか。そういうパターンも当然だろう。
できれば詳しく話を聞きたかった。この調子では、その子も詳しい話は聞かされてないだろうな。
「その者は神器とは無関係の特殊な見る力を持っていたのだが、魔術師組合の……アーチャー達が開発した眼帯で制御できるようになっていてな。そして君の話をしたところ、ぜひ眷属になりたいと言ってきたのだ」
そう言って差し出す資料を、俺は確認する。
シルシ・ポイニクス。年齢は俺の肉体年齢とほぼ同じ。人間とポイニクス家当主のハーフだ。
戦闘能力は上級悪魔として及第点と言ったところ。戦闘スタイルはエストックを主体とする近接戦闘で、魔力戦闘もある程度はこなせる。礼装で眼を制御してからは、ある程度の格上の攻撃を先読みして迎撃する事もできるので、ある程度の実力者相手に凌げる程度の自衛は可能。
そして秘書官としての技量は優秀だろう。流石に実務経験はないが、それを考えても優秀な成績を示している。普通に親父の会社で秘書課の期待のルーキーになるだろう。
……そして、保有する能力も間違いなく優秀だ。
おそらくは高ランクの千里眼。此処まで強大だと、世界を見渡す一歩手前のレベルだな。礼装で補正すればある程度の未来視や過去視、読心の類もこなせるか?
また魔術回路も確認されており、その縁もあって魔術師組合の末席に属している。これに関しては俺の落ち度だな、それなりに規模があるとはいえ、気が付いてなかったのは失態だ。
「……実に優秀ですね。俺の眷属にしてよろしいので?」
これだけ優秀なら、酷い言い方だが他の運用方法も考えられるだろう。
いっそのこと、大王派の主力に与えるという判断も取りそうな物なのだが。
俺のその探る視線に、ゼクラム・バアルはどこか疲れた笑みを浮かべた。
……不正の大量発覚による大一掃で、影響力が大幅に削減されているのが堪えているのか?
まあ、自業自得だからそこは気にしない。だが、ダメージが大きいのは間違いないので、後で銘酒の類でも差し入れするか。
それはともかく、返答は如何に。
「なに。君にはこれからも我々と縁を維持してもらいたいのでね。……とある筋からの要望に合わせて、私達が吟味した結果と言っておこう」
……先読みした魔王側からの何かしらの注文が付けられたのか?
まあ、魔王派からしても変な奴を俺につけられるのは面倒だろう。如何にゼクラム・バアルといえど、今の段階でそれを跳ね除けるのは無理か。だから、その辺に対して考慮したうえでの人材を俺に派遣したという事か。
流石のゼクラム・バアルも権威に陰りが見えたと見える。自業自得ではある。しかし魔王様達に悪いが、これ以上権威が失墜すると魔術師組合が暴走しかねないので何としてももう少し復興してもらわねば。
これは断れないな。それに、資料を見る限りサポートタイプとして非常に優秀だ。高位の千里眼というものは、それだけでもう重要すぎる。
更にフェニックス家分家の一員と言うのがいい。その特性を踏まえれば、生存能力も絶大だ。
イッセー眷属におけるアーシアちゃんに匹敵するサポート役になりえるだろう。そこに秘書としての力量が加われば、実にいい。
そも、ゼクラム・バアルの要望を断るのも後が怖い。これは受け入れる以外の選択肢がないな。
「了解しました。彼女を眷属として迎え入れる事にしましょう。まあ、一応面接はさせていただきますが」
「それは良かった。断られると多少面倒な事になると思っていたよ」
……やはり少し疲れているな。再三言うが自業自得ではあるが、しかし倒れられても俺が困る。
後で湯治を勧めておこう。日本の温泉街当たりでも紹介するか。
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と、言うわけでまず姫様に事情を説明してから面接となった。
『……私の眷属は、時として凄まじい事をする子が多いのね』
などと疲れた表情を浮かべられたが、とりあえずグランソードと雪侶に対してはOKが出た。
『いっそのこと、私も魔王の血族に生き残りがいないか探してみようかしら』
『いや、リアスの巡り合わせの運だと本気で探したらマジで見つけそうだから待ってくれ。……俺も魔王の血族とか同僚になるのはちょっと精神的に……ね?』
ぼやいた姫様にイッセーがそう言ってきたが、逆にイッセーが魔王の末裔を眷属にする可能性もあるかもな。
……まあ、流石にないとは思うが。
「さて、と、言う事でシルシ・ポイニクス……だったな」
と、俺は資料を速読で再確認しながら、シルシ・ポイニクスをまじまじと見つめる。
うん、断言してもいい。
美少女だ。まず間違いなく、美少女だ。
流石はゼクラム・バアル。俺の興味を引き、必要な能力をちゃんと備え、そしてルックスも考慮している。
これが、政治の世界で四大魔王を圧倒するほどの影響力を発揮した老獪の本気か!
俺は真剣に感心した。というか、一瞬見惚れてしまった。
うん。まず俺がするべき事は決まった。
「……不倫はしない不倫はしない不倫はしない」
「兄上、とりあえず正気に戻りますの」
自分に真剣に言い聞かせる俺の後頭部に、雪侶の拳が叩き付けられた。
疑似
ツッコミに殺傷性がありすぎる。我が妹ながら遠慮がない。と言うより、既に転生は済んでいるんだからこれ不敬じゃね?
俺が何となくジト目で見ると、雪侶はこっちを一瞥もせずにニコニコ笑顔でシルシに告げる。
「と、こんな風にプライベートでは軽い関係になりますの。シルシさんもあまりへりくだらないでいただけると嬉しいですのよ」
「いや、俺もそこまで畏まる気はねえけどよ? お前はもうちょっと遠慮しとけよ」
グランソードの常識人的ツッコミが心に沁みる……っ。
さて、とりあえずシルシはどう反応する?
「ふふふ。兵夜様の眷属はフレンドリーな方が多いようですね」
うん、多少動揺しているが冷静に対応しているな。
だが、ちょっと硬いな……。
「シルシ。一応俺からも言っておく」
うん。この辺入っておいた方がいいか。
「代を重ねた貴族の出である君がそこまで畏まる必要はない。主と眷属の関係とはいえ、必要時以外はタメ口でも構わないさ」
「え? ですが、兵夜様は主でもありますし―」
貴族と言っても側室の娘で混血。それも、ある意味で有力貴族に輿入れするのが仕事と言ってもいい年上の姉までいる家系なら当然の反応ではあるな。
ゼクラム・バアルから「嫁になる気で行け」とか言われている可能性もあるし、傅くくらいの対応をしてもおかしくない。
だが、生憎俺としてはそこまで傅かれても困る。
「ゼクラム様が何と仰られたかは知らないが、俺は君を優秀だと判断したから眷属として審査する気になった。それに、我が主リアス・グレモリーは眷属を家族として扱っている。だから俺もできる限りはそれに倣うつもりだ」
そう、俺は姫様の眷属である。
実際問題、最低限の礼節を弁えてこそいるが、それ以外ではリアス・グレモリー眷属は広義に属する兵藤一誠眷属も含めてフレンドリーな関係だ。
だから、俺もそれに倣うべきだろう。
グランソードは基本タメ口だし、雪侶は妹だから気やすい関係だ。
ここに一人だけ畏まり過ぎられても、逆に空気がぎくしゃくしてしまう。
「雪侶やグランソードと君は対等の立場だ。あまりへりくだったりしないでくれるとありがたい」
なあ? と、俺は視線を二人に向ける。
両隣にいる二人も、それに同意を示して笑みを見せる。
「そうそう。それにアンタは大将の秘書的立場になるしな。そう言う意味じゃあ武官筆頭になる俺とは対等だ。魔王血族とかで下手に出られまくるとしちゃぁ、対等の奴が一人ぐらいいた方が嬉しいんだよ」
「その通りですの。仲良くいたしましょう、シルシさん?」
その対応に、シルシはちょっときょとんとした。
まあ、貴族が自陣営のトップであるゼクラム・バアルの命で眷属として仕官するのだから、硬くなるのが当然ではある。
更に先輩は主の妹と魔王の血族だ。身も心も配下として従うつもりだったのかもしれない。
だが、そう言うつもりはあまりない。
「まあ、なんだ。最低限の上下関係さえ弁えてくれれば、それ以外は対等で構わないさ。へりくだるなら俺をよく見てそうすべきだと思ってからにしてくれ」
俺がダメ押しにそう告げる。
そしてシルシはちょっとだけぽかんとしてから―
「……ふふっ」
そう、クスリと笑みを漏らした。
「……そう、ではこれからは兵夜さんと呼ばせてもらうわ。グランソードも雪侶もそれでいいかしら?」
おお、対応力がかなり高いな。
グランソードも雪侶もここまで速攻で馴染むとは思わなかったのか、ちょっとぽかんとしていた。
だが、これこそが望むところ。
「いいねぇ。んじゃ、次いくか」
「第一段階は満点合格ですの」
ああ、これぐらいの方が俺の部下に向いている。
そして能力面などの話をして、十数分。
最後に俺はこれを聞いておきたいところだ 。
「……じゃあシルシ。これから俺の眷属になるに辺り、何か目標があるなら教えてほしい」
「因みに俺ぁ、レーティングゲームに参加して大暴れする事だな。持った全てのモン使ってどこまでいけるか試す為に
「雪侶はイッセーにぃの愛人になる身として、それなりの箔を身につけたいですの」
俺の発言に合わせる形で、グランソードと雪侶が当面の目標を語る。
そして、シルシは少しだけ考え込んだ。
自分の中で言葉を整理しているんだろうな。ああ、速攻で適当ぶちかますよりはいい判断だ。
さて、俺に評価させれるようないい目標を思いつくのだろうか……?
「そうね、一つあるわ」
「「「ふんふん」」」
さて、なんだ?
「兵夜さんの妻になりたいわね」
そうか。俺の妻か……?
「待った」
俺は速攻で待ったをかけた。
いや待て、少し待て、ちょっと待て。
「それはゼクラム様の指示か!?」
「……? いえ、あの方からは「誠心誠意お仕えして、彼の出世の助けとなるように」としか命じられてないけれど?」
じゃあなんでだ!?
「私はこの目の問題をあなたに解決していただいたような身。それに、貴方はこれからの冥界で間違いなく上に立つ優秀な人物。それにこれまでの話で中々な好感が持てる人物だと思ったの」
「割と異常者ですのよ、兄上は」
雪侶、お前ちょっと黙ってろ。
シルシもその辺はスルーするつもりなのか、特に反応はしない。
そして、軽く頬を染めながら照れるそぶりで顔をそらす。
「ならもうあれよ。我がポイニクス家の発展の為にも、ポイニクス家の派閥である大王派の再興の為にも、そして私の人生の為にも妻になりたいわ。感謝の気持ちとして処女と子宮を差し上げてもいいぐらいよ」
うん、この子魔術師の血を継いでるわ。しかも貴族の出身の身なだけあるわ。
間違いなく政略結婚をダシにする気だ。それを生かして輿入れする気だ。
シルシ自身が俺のことを気に入っている節がある。おそらく、眼の問題を魔術師組合が解決した事が原因で、俺に対して好意を抱いているのだろう。
そこまで考慮して送り込んだのは想定していたが、ここまでとは想定外だぞ、ゼクラム・バアル!!
「待ってくれ! 俺は不倫はしない!!」
「あら? 妾でも構わないのよ? 貴方の立場を確立するには、有力貴族との縁故関係は必須じゃないかしら?」
確かにそうですけどね!?
「……雪侶、そう言えばなんかメール届いてねえか?」
「あら? なんですの……お?」
何か後ろで外野がぼそぼそ呟いているが、そろそろこっちに来て援護射撃を―
「……大将」
グランソードが、ポンと肩を叩いた。
え? なに? なんなの?
「……まあ、頑張って後宮作っとけ」
あっさり見捨てられたぁ!?
「まあよろしいですの、これからよろしくお願いしますのよ、シルシ義姉様?」
しかも雪侶は速攻で受け入れやがった!?
いや、その、あの、その……。
俺も、政略結婚を一度もせずに成り上がるなんて無理だとは思うけど……さ?
その、理由がね? ちょっと、俺が直接関わってないからね? その……ね?
「んじゃ、これで眷属入りは決定でいいだろ。舎弟共に買い出し行かせてるから、初期メンバー決定記念でパーティするか!」
おい待てグランソード! 確かにこの面接は形式的なものだが、勝手に決めるな!
「じゃあシルシ義姉様、雪侶達はちょっとお茶でもしましょう? 兄上の好みとか教えて差し上げますの」
「あらいいの? なら、お言葉に甘えようかしら」
雪侶もなんで俺より先にシルシと交友を深める!! シルシ、お前もなんで俺より先に雪侶を狙う!? あれか、将を射んとする者はまず馬を射よとか言うあれか!?
あれ? 俺、主なのにいくら何でも扱いが悪くないか!?
………先行きが別の意味で不安だ。今度姫様に主としてのマウントの取り方を相談しよう。
そんなこんなで、この俺、宮城兵夜の眷属はだいたい集まった。
この後一年ほどそこそこのトラブルを解決しながら地盤を固め、そして三月に大規模な戦いに巻き込まれる事になるのだが、それは機会があれば語るとしよう。
そういうわけで、兵夜の眷属が一通り決定するまでのお話、いかがだったでしょうか?
機会があれば「対決! ビィディゼ・アバドン編!」とか、「裏話、兵夜嫁ーズの策謀!!」とかもやりたいと思います。