ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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本日二回目


生徒会、参上です!

 

 バスン!

 

「ストライク!」

 

 ズバン!

 

「ストライク!」

 

 スッパァン!!

 

「ストライク! バッターアウト!!」

 

 部長の声が俺に敗北を教えてくれる。

 

「・・・完全勝利です」

 

「負けたぁ!!」

 

 小猫ちゃんに見事に三振を取られて、俺は思わず絶叫した。

 

 旧校舎近くの森の中、俺たちは球技大会の練習をしていた。

 

 たいていの高校に球技大会があるが、当然俺達駒王学園にも球技大会は存在する。

 

 クラス対抗や部活対抗があり、オカルト研究部は部活対抗に出るので真面目に練習しているというわけだ。

 

 なにぶん、競技内容は当日発表だ。

 

 そのため、いろいろな内容の練習をする必要に迫られている。

 

 ちなみに、参加人数が足りない部活には救護措置が取られるので団体戦でも大丈夫。

 

 適当でもいいと思うのだが、部長はやけに張り切って、オカルト研究部は最近ずっと各種球技の練習に明け暮れている。

 

 どうも、部長のやる気にすごい勢いで火が付いているみたいだ。

 

 あれか、前回のライザーの一戦で負けかけたのが相当お気に召さなかったのか。

 

 イッセーの特訓のことと言い、どうも部長は勝ち負けにはこだわる性分のようだ。

 

 それが前回の一件でエスカレートしたらしい。

 

 実際、表のオカルト研究部の時間の時に、俺のトレーニングをやることがたまにある。

 

 一応戦闘もあるから自主トレをしておいて正解だったが、このままエスカレートすると追いつかない可能性もあるな。

 

 なんか新しいアプローチを考えないと、自由な時間がどんどん減ってしまう。

 

 最近は球技大会のトレーニングもあって相当重労働だし、さすがに対策を考えるか。

 

「投手は小猫に決定ね。・・・兵夜、あなたはとりあえず素振りを千回!」

 

「うーっす!」

 

 うん、球技大会でもスパルタだよ!

 

 悪魔の身体能力なら好成績叩きだすことぐらい簡単だと思うんだけど!?

 

「ライザーの戦いで思い知ったわ。これ以上私達に負けはいらない。・・・気合を入れていくわよ!!」

 

 野球のマニュアル本片手に、声を張り上げる部長。

 

 部長! 学校行事でどんだけ本気を出してるんですか!

 

「何事にも全力で取り込む人だな部長は。・・・イッセーのこともどんなアプローチをかけていることやら」

 

「・・・最近、恋愛のマニュアル本を読んでいるようです」

 

 俺の独り言に小猫ちゃんが答えてくれる。

 

 ほほう。恋愛でもマニュアル本頼りとは可愛いところがあるな。

 

 スケベに寛大で美人で巨乳。イッセーにとってここまでピッタリな女性はそうはいないだろう。

 

 ま、肝心のイッセーはどうも鈍いんだが。

 

『最近、部長が俺を抱き枕にしてくることが多いんだよ。ホント、下僕に対するスキンシップが大好きな方だよな』

 

 気づけよイッセー!

 

 どう考えてもそれは過剰だから!

 

 わざわざ相手の家に転がり込んでまですることでもないから! 

 

 いや、保健室で抱き枕にしてたとか言ってたからそのせいか? しかも裸でらしいし羨ましいなオイ俺にも分けろよそのエロイベント!

 

 まあ、夕麻ちゃんことレイナーレの一件も原因の一つだろうし気長に待つしかないか。

 

 普通に考えれば一生もののトラウマになったっておかしくない目にあってるわけだしな。

 

 まったく、一度ぶん殴ってやりたかったんだが部長が止めを刺してしまったとは残念だ。

 

 ・・・と、思っていたら、ボールが宙を舞っていた。

 

 どうやらノッキング練習に入ったらしい。

 

 飛んでいく方向にいるのは木場だ。

 

 何でも器用にこなす木場なら、簡単にできるかと思ったが・・・。

 

 コテン

 

 あらら、頭に直撃したよ。

 

「大丈夫か木場? 最近ボケっとしすぎじゃないか?」

 

「あ・・・ああ、ゴメン」

 

 どうも木場の様子がおかしい。

 

 イッセーのアルバムで聖剣とやらを見たときから、木場は考え込むことが多くなった気がする。

 

 そういえば、あいつも命を落としてから部長のおかげで悪魔に転生したと言っていたな。そのあたりに関係があるのか?

 

 聖剣の持ち主に殺されたとかいうのなら、過去のトラウマを刺激されて・・・って感じになるが・・・。

 

 まあ考えててもわからないか。

 

 幸か不幸か、悪魔の仕事にはだいぶ慣れて専門分野も出来始めているからな。当分の間はフォローされていた分俺がフォローし返すぐらいの気持ちで動いた方がいいだろう。

 

「最近ボーっとしすぎよ、祐斗。シャキッとしなさい」

 

「すいません部長」

 

 ・・・まさか、こんな短い時間で俺が先輩のフォローをすることになるとは思わなかった。

 

 ・・・パキ

 

 ん? 人がこっちに近づいてるのか?

 

「・・・誰ですか?」

 

 小猫ちゃんが声をかける。

 

 それにこたえたのは、やけに軽い返事だった。

 

「お! 球技大会の練習~? 気合入ってるねぇ」

 

 出てきたのは、まあ学園の敷地内だけあって俺たちと同じ駒王学園生。

 

 白い肌が目に眩しく、肩のあたりで切りそろえられた黒髪はつやがある。

 

 間違いなく美人・・・というか、思い出した!

 

 イッセーも気づいたのか、目を見開いて凝視している。

 

 当然だ。なんてったって彼女は・・・。

 

「二年の桜花(おうか)久遠(くおん)!? 剣道部の助っ人として全国大会まで引っ張って行った期待のエースにして、最近生徒会庶務に入ったとかいう・・・なんでここに!?」

 

 そう、恐ろしいほどの有名人だ。

 

 さらには明るいムードメーカーでもあり、学園内での人気はかなり高いが、欠点として周りを振り回すことも多いため、総合的な人気では上位ランクイン程度とか言う感じだ。

 

 なんでここに?

 

「いやー頑張ってますねー。生徒会としてはノリノリな部活が多い方が運営する側としてもやりがいがあるし、頑張りがいがあるってもんです!」

 

 まるで人気の試合を観戦している観客のようなテンションではしゃいでいる。

 

 だが、その雰囲気はちょっとヤバい。

 

 一見すると、彼女の雰囲気はこっちの様子を楽しんでみている観客のそれに近い。それはある意味で本当なのだろうが、それ以上にこちらの様子を注意深く観察しているかのようなそんな得体のしれないものが見える。

 

 ・・・間違いなく、物騒なことを考えてやがる。

 

 そんな桜花の様子に、部長が少し考え始めるがすぐに何か納得したようだ。

 

「・・・なるほどね。でも彼女が考えることとは思えないし、貴女の独断・・・いいえ、お願いしたのかしら?」

 

「いやー。太刀を振り回す身としては、どんなもんか試してみたくてー。・・・新入りさん達、試しても?」

 

「・・・アーシアはやめて頂戴。あと、あまりなめてると痛い目を見るわよ?」

 

 部長、ちょっと勘弁してくださいよ。

 

 俺は平和のためにあえて先に暴れるタイプで、こういうのはちょっと勘弁してほしいんですけど・・・。

 

 正直頭を抱えたくなったが仕方がない。

 

 痛覚干渉は行わない。さすがにそれが必要なほどの大暴れはしないはずだ。

 

「え? 部長? ・・・どういうことですか?」

 

「私はやめておくってどういうことでしょうか?」

 

 イッセーとアーシアちゃんがいまいち理解できていないようだが、説明する時間は―

 

「こういうことだよーっ!」

 

 ―無い!

 

 洒落にならない速さでイッセーに突っ込んだ桜花が、そのままの勢いで抜き手をイッセーに繰り出した!

 

 イッセーがかわせたのは、物騒な雰囲気を察知していたからだろう。

 

 赤龍帝の籠手の特性に合わせ、イッセーは普段から攻撃をしのぐことに意識を向けている。時間をかけるほど急激に強くなるイッセーの能力は、いかに相手の攻撃でダメージを受けないかが重要になるからだ。

 

「・・・フェニックス家の関係者か!? そんなに負けたのが文句あるのかよ!?」

 

「やーだなー。話に聞いたぐらいでしかないよーっ!」

 

 イッセーはフェニックス関係者の報復がらみだと思っているようだが、その可能性は低い。

 

 桜花からはこちらに対する敵意のようなものは感じない。むしろ面白いものを見るかのような好感のような感じの方が強い。

 

 と、来るとフェニックスを倒したイッセーの強さを味わいたいとか考えるバトルジャンキーか!?

 

「・・・とりあえず寝てろ!」

 

 考えながらも後ろに回り込んで蹴りを叩きこむが、相手はこっちを見ることなく伏せてかわす。

 

 だが甘い。蹴りの勢いは強化を使って無理やり殺し、反動を利用してそのまま踵を斜め下に叩きこむ!

 

 しかし、桜花の判断力はこっちの判断をさらに上回る。

 

 添えるように俺のかかとに手を当てて防御。

 

 さらに、それを勢いを殺すことだけに注いで自分は側転。一回転して完全に防ぎきった!

 

『Boost!』

 

「とりあえず一回攻撃!」

 

 そのすきを狙ってイッセーが軽く殴りかかるが、これも首をそらしてあっさりかわす。

 

 だが甘い。

 

 イッセーの弱点は倍化中は本来無防備にならざるを得ないということだ。

 

 下手に攻撃を喰らったり意識を攻撃に向け続けたりすると、倍化が解除されてしまい意味がなくなる。肝心の倍化がキャンセルされれば、イッセーの持ち味が完全に殺されてしまう。

 

 なら、イッセーの倍化中の攻撃はなんに使う?

 

 それはもちろん―

 

「・・・囮だ間抜け!」

 

 回避した方向に置いていく感じで、倒れ込んでひじ打ちを叩きこむ。

 

 倒れ込んだ分だけ加速がついて、向こうもガードするが勢いは殺せずかなりよろける。

 

 とはいえ浅い!

 

「容赦ないねー。でも正解! 悪魔業界は魔力がある分、男女関係なく危ない人たちが多いもんねー!」

 

 ガードした手をさすりながら、桜花は楽しそうにほほ笑む。

 

 その全身に電撃が襲いかかり、骨が透けて見えた。

 

「あ、あばばばばー!?」

 

「い、イッセーさんや宮白さんに手を出さないでください!」

 

 見れば、デフォルメされた青いドラゴンを抱えたアーシアちゃんが、涙目で怒りながら大声を出していた。

 

 ラッセー。

 

 使い魔騒ぎでアーシアちゃんが契約した、蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)とかいう子供のドラゴンだ。

 

 メスが大好きで雄が嫌いという、イッセーのようなドラゴンだが、今回は主であるアーシアちゃんの意思を尊重してくれたらしい。

 

「ガー!」

 

 ・・・すごい不満そうだけど。

 

 とはいえダメージはそこまで大きくないようだ。さて、これが俺の予想通りならそろそろ・・・。

 

「・・・その辺にしとけよ桜花。会長がそろそろ怒るぞ」

 

「・・・腕試しはそこまでです。あまりわがままを言わないように」

 

 ・・・ああ、そういうことか。

 

 現れたのは生徒会長と、以前にもあった匙の姿があった。

 

 そういえば会計になってたな。

 

「・・・匙がいるってことは、普通に考えて生徒会長が上級悪魔ってことか。この学校は悪魔の巣窟だな」

 

「知り合いなのかよ宮白!? っていうか、会長も悪魔ってマジですか部長!」

 

 うん、イッセーはリアクションが大きくて見てて落ち着く。

 

 俺も正直半信半疑だが、部長がオカルト研究部という部活を作り、メンバーを下僕悪魔に限定している以上、生徒会に二人も悪魔がいるなら生徒会も同様に動いている可能性が高い。

 

 それを補足してくれるかのように、朱乃さんがこっちにニコニコ笑顔で近づいてきた。

 

「生徒会長の真実のお名前はソーナ・シトリー。72柱の一柱、シトリー家の者です」

 

 やっぱりか。

 

「なんだよ。兵藤は俺たちが悪魔だってこと知らなかったのか? っていうか、お前も悪魔になったんだな、宮白」

 

「あのあとヘマやらかしてなぁ。ついでに言うと、部長からは何も聞かされなかったからな」

 

 あえて教える必要もないと考えたのだろうかね。

 

「それで、はじめましてでは・・・ないですよね、会長?」

 

「一年生の時に皆勤賞で表彰した時にあいましたね。・・・リアスからききましたが、本性がアレだとは思いませんでした」

 

 静かに微笑みを浮かべる会長も相当美人だ。

 

 フェニックス家のレイヴェルも美人だったし、上級悪魔の女性は美人が多いのだろう。

 

「申し訳ありませんでした。・・・新米悪魔同士の顔合わせはいつかするつもりだったのですが、桜花がどうしても今の実力を見てみたいというもので」

 

「だってー。なりたての下級悪魔が真正面から上級悪魔の天才を撃破したなんて気になりますよー」

 

「普段から尽力している貴女だからこそ許したのです。今後はしないように」

 

「了解しましたー」

 

 ビシリと敬礼をして返す桜花。

 

 一件さっきまでのようなちょっとお調子者の感じだが、それ以上に真剣見があった。

 

 どうやら忠誠心は人並みにあるらしい。

 

 できれば止められて素直に聞いて欲しかったとは思うけどな。

 

「にしては兵藤はあんまり役に立って無かったな。・・・本当にこいつがフェニックスを一対一で倒したのか?」

 

 匙が信じられないと言った目つきだが、まあこれは仕方がない。

 

 本人が全然自信ないように行動してるからな。

 

「まあ、あれは宮白がボコボコにしてたから行けたようなもんだしな」

 

 ほら、イッセーがそんなことを言うし。

 

「しかも変態三人組の一人だし、すっげぇ一緒にしてほしくないんだが」

 

 ・・・それもそうだ。

 

 学園で悪目立ちする変態で有名な男がそんな英雄的大活躍をするだなんて、普通に考えて信じたくないのが人情ってもんだろう。

 

 俺も結構こいつに毒されてるな。

 

「男の子はちょっとエロいぐらいがちょうどいいと思うけどねー」

 

「ちょっとじゃないからな」

 

 桜花にツッコミを入れながら、俺はふと思う。

 

 こんだけ悪魔がいることを考えると、この学園には悪魔事情に詳しい人間とかも結構いるんじゃないだろうか?

 

 今度、機会があったら部長に聞いてみるとしよう。

 

 今はそれよりも・・・。

 

「ま、そういうことなら以後よろしくお願いしますよ会長。匙に桜花も、今後ともよろしく」

 

 適度に仲良くすることだな。

 

「OKOK! 会長に迷惑かからない程度に楽しく行こうかー」

 

「はい! これからも宜しくお願いします!」

 

 桜花とアーシアちゃんも俺に続く。

 

 だが・・・。

 

「はっはっは。俺としてはアーシアさんやらリアス先輩やらと仲良くしている兵藤くんはどうかと思うけどねぇ。雷とか落ちちゃえばいいのに」

 

「それはどーも! アーシアに手を出そうとか考えなんなよ? ホント、天罰とか落ちちゃえばいいのにねぇ」

 

 イッセー、それに匙よ落ち着け。

 

 なんか、こいつら似てる気がしてきた。


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