ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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いや、こういうことになったからこそ書けるものってありますよね。

とくにケイオスワールドは初期の作品なので、出し損ねた設定とかもいろいろあるもので、ちょうどいいので仕立て直したうえで書いてみようかと。


番外編 設定を練っていても出す機会がない。人それを裏設定という!

 

 

 

 

 

「すすす凄まじい神経ですね。次期大王をこういう作戦に誘う神経が」

 

「ダメ元でゼクラム翁に伺ってみたら「手が空いているようなら連れて行っても構わない」と言われたもんでな」

 

 包囲網の一角で、俺はスパロの半目に視線を逸らしていた。

 

 思想的には魔王派だが、次期大王の逸材であるサイラオーグ・バアル。更にその眷属スパロ・ヴァプアルは、聖杯戦争を作り出した家系である御三家の一角である間桐の出だ。

 

 戦闘能力でもサポートでも対応可能で、しかも魔王派の顔も大王派の顔も立てる事ができる。ある意味凄まじい逸材である。

 

 まあ現バアル当主殿には苦い顔をされたが、ゼクラム翁からの許可をもらっているのでOKは出た。

 

 とはいえ、今のところ潜伏先は候補が分かっているだけなのでそこを片っ端から調べているのだが。

 

 一応俺は主なので、周囲の探索や調査などは下部組織であるグランソードの舎弟に任せている。調査班として魔術師組合からも人員を派遣してはいるがな。

 

 とはいえ、これで三つ目だがスカっぽいな。

 

 まあ、相手も腐ってもレーティングゲームランキング三位と言ったところか。八百長試合がゴロゴロあったそうだが、三位を担当すると言う事はそれだけの能力はあると言う事だろう。政治から離れ気味の番外の悪魔でありながら王の駒を手にした事といい、相応の政治力があった可能性もある。

 

 油断は禁物だ。隙を見せればこちらが食われる可能性だってある。

 

「今廃墟施設の調査が八割すんだ。この調子ではここもはずれだな」

 

 とサイラオーグ・バアルが陣地にしているテントに入ってきた。

 

 もう八割も済んだのか。早いな。

 

「というより、もう少し陣取っていた方がいいんじゃないか? エヴィー・エトゥルデとかと揉めた時は、指揮官として動く事もあるかもしれないだろうに」

 

「性分でな。どうも現場に乗り込むなりしないと気がすまん」

 

 俺の軽口にそう答えるサイラオーグ・バアルは、しかし一息つきたいのか、陣地に備え付けのウォーターサーバーに向かい―

 

「……でででも、慣れた方がよろしいですよ」

 

 ―その機先を制するように、スパロが既に水を入れて手渡した。

 

「すまんな」

 

「人を指揮する者は、ととと時として座して待つ事も仕事の内です。魔王を目指すのなら動くべき時を見極めるのも重要です」

 

 おお、なんというか含蓄ある言葉。

 

「いうねぇ。まあ、まるで子供をたしなめる親みたいだ」

 

 俺はそう軽口を叩いて空気を軽くしようとするが、スパロは平然と微笑んだ。

 

 そしてそのタイミングで、俺とサイラオーグ・バアルの眷属一同もまた陣地に戻り―

 

「ははははい。これでも経産婦でしたかかかから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その言葉と共に、空気が凍った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、サイラオーグのぽかんとした顔という、滅多に見れない表情を見れた。

 

「………初耳だぞ」

 

「ああああら? 申し上げてませんでしたか?」

 

 どうやら言ってなかったらしい。まあ、俺も初めて聞いたが。

 

「言われてみれば、魔術師は基本的に一子相伝だ。魔術を知っている子供という事は、跡継ぎも作ってる事になるな」

 

 俺はふと気が付いた。

 

 そうそう。魔術師というのは魔術というケーキを取り分けて運用するから、あまり人数を増やすと魔術の力そのものが分割化されて低下するんだよ。

 

 だから魔術師は基本的に一子相伝。子供が複数いても、特殊な事情がない限り魔術を複数人に教える事はない。

 

 そして、聖杯戦争は第五次まで続いている。なら、間桐の血を継ぐスパロは子供を生んだ可能性がでかい。

 

 スパロも指を口元に近づけて、ふと何かに気づいたかのような表情になった。

 

「そそそそもそも、私は第二次聖杯戦争の生まれです。むしろ零落していた間桐が200年近く持ち応えた事に感心するべきででですね」

 

 まあ、間桐が凄い勢いで弱っていったのは知っているが。

 

「……全ては翁である臓硯様の努力あってのこと。若かりし頃の翁なら、サイラオーグ様のことをとても素晴らしく評価しててくださる事でしょう」

 

 そう語るスパロは、同時にしかし苦笑を浮かべていた。

 

「……ですが、同時に人の限界に苦労なされていた方でもあります。せめて、夢破れたとしても初志だけは取り戻してほしいのですが―」

 

 ………。

 

 なんか、踏み込んだらいけないところに踏み込んだ感はあるな。

 

 さて、ちょっと空気を換えるべきかと思うが―

 

「……そそそそういえば、兵夜さんは聖杯戦争についてどこまでご存じで?」

 

 向こうから気づいたのか、スパロがそう言って話を振ってくる。

 

「願望機は副産物を魔術師を集める餌にしたもので、本来の目的は根源の穴を穿つ事。複数の要素をアインツベルンと間桐と遠坂がそれぞれ協力して担当し、かの第二魔法の使い手であるシュバインオーグが立ち会った……ってところか」

 

「はい。ですが、当初の目的において、アインツベルンと間桐は、遠坂とは異なっててててたのです」

 

 ふむ。

 

「アインツベルンと間桐は、根源到達を更に過程とし、第三魔法―魂の物質化を目的としていました」

 

 そう語るスパロは、遠い憧憬を目に移していた。

 

「アインツベルンは分かりませんが、間桐の翁である臓硯様の目的はそれによるこの世全ての悪の廃絶こそが目的でした」

 

 そんな事を、考えていたのか。

 

「荒唐無稽な理想である事は承知の上。間桐の血が既に魔術師として限界を超えて廃れていく事も理解しながら、それでも諦めず挑む姿勢こそが、後世に残すべきもので、後を継ぐ者を育てると信じておりました」

 

 ………なんだその良い人。凄く聖人君子じゃね?

 

 だが、スパロの表情は暗い。

 

「ですが、ゆえにこそ行った延命による苦痛は、あの方にどこか陰りを生み出していました。もし第五次の代まで延命を試みていたとして、果たしてあの方は人の心をとどめていられるのかと、不安で仕方がありません」

 

 ………

 

 なんだろう、身に詰まされる話だな。

 

 長い年月はいやおうなく人を変化させる。それは、広大な自然ですら例外はない。

 

 その変化を良い方向に変える事は、人ならできるだろう。だが、同時に悪い方向に傾いてしまう事も十分にある。

 

 もし、俺がイッセーと出会わなかったら。心の支えとなるあの男との友情を得る事ができなかったら……。

 

 俺達がしんみりしていると、スパロは苦笑を浮かべながら、サイラオーグに向き直った。

 

「サイラオーグ様。ミスラ様の調子も良くなっていること、喜ばしく思います」

 

「あ、ああ」

 

 いきなり話が変わって、サイラオーグ・バアルも流石に少し戸惑った。

 

 スパロはそんなサイラオーグににっこりと微笑むと、まっすぐその目を見つめる。

 

「サイラオーグさまの契機となられたミスラ様のお言葉。ゆめゆめお忘れにならぬよう。そして、できる事なら同じ夢を共有し、時として支えとなってくださる方々をより増やし、自身も必要な時は支えになってくださいませ」

 

「そうだな。ああ、気を付けよう」

 

 おお、流石出産経験あり。良い言葉だ。

 

「……体格差がありすぎて違和感ありますの」

 

「雪侶殿、お静かに」

 

 雪侶がいらんこと言って、サイラオーグ・バアルの眷属に嗜められてる。

 

 ま、違和感はある―

 

「それとサイラオーグさま? ちゃっかりお土産を買うのはよろしいですが、マグダランさまとの接し方はもう少し改めるべべべべきです」

 

「ん? その話になるのか?」

 

「子供のことを思い出したら気になりました! マグダラン様に後ろめたい思いがあるのは分かりますが、だからといってあの対応では話が進みませんよ?」

 

 完全にお袋のノリだぞ、スパロ。

 

「……なんか、意外な側面を見せてきてるな、スパロ」

 

「まあ、僕達の中だと一番年上みたいだし……?」

 

 バアル眷属も戸惑っているが、そもそも困った事があったぞ。

 

 っていうか、困った事を思い出したぞ。

 

「そういえば、マグダラン・バアルの件どうしよう」

 

「どしたよ大将? なんかあんのか?」

 

 グランソードに聞きとられたが、しかしどうした事か。

 

「いや、本格的に魔術師組合の後ろ盾にゼクラム・バアルがなってくれた時、交換条件として(キング)の駒の代用品を用意して、うっかり()()()で何個か大王派が使うという真似を四大魔王様とも示し合わせるという真っ黒一歩手前のグレーゾーンをチキンレースする事になってたんだが」

 

「大将、それもう黒以外の何物でもねえよ。テロリスト(俺様)もびっくりの腹芸だよ」

 

「流石は警察とヤクザの不可侵条約を取り付けた兄上ですこと」

 

「……腹芸では一生勝てそうにないわね」

 

 眷属達よ、それ誉めてないな。

 

「……下手すると魔王様より腹芸上手くないか?」

 

「政治的には敵に回したくないな。サイラオーグ様では政治の分野では勝てそうにないぞ」

 

 バアル眷属も黙ってろ。

 

「まあ、その辺は事実上連絡こそ取ってないが魔王派も大王派も示し合わせてたし、皇帝ベリアルがやらかした所為でうやむやになったんだが……」

 

 ああ、色々あってうやむやになったところが多くて助かった。

 

 俺もただでは済まないところだった。いや、ほんと助かった。

 

 まあ、それはともかくだ。

 

「……その代用品の使用候補、そのマグダラン・バアルなんだよ」

 

「つーか大将、そのマグダランって誰?」

 

 グランソードが根本的な質問をぶちかました。

 

 うん、そこが分からないならもっと早く言ってほしかったぞ。

 

 それがおかしかったのか、シルシは苦笑しながら説明してくれる。

 

「マグダラン・バアル様。現バアル様が後妻との間に産んだご子息よ」

 

 そして、サイラオーグ・バアルは何となく空を見上げる。

 

「そして、俺から次期当主の座を奪い取られた者でもある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マグダラン・バアル。サイラオーグ・バアルの腹違いの弟にあたる。

 

 兄であるサイラオーグ・バアルと違い、消滅の魔力をきちんと持っていた事もあって、正当たるバアル次期当主の立場についていた少年だ。

 

 だが、死に物狂いの努力をもって圧倒的な戦闘技術を手にしたサイラオーグによってその座を奪い取られた。

 

 ゼクラム・バアルは彼をバアルの次期当主にする事を諦めていない。サイラオーグが魔王の座を狙っている事を逆手に取っているようなものだ。この辺の腹芸は流石老獪と言ったところか。

 

 だが、実力において彼がサイラオーグの足元にも及んでないのは言うまでもない。

 

 というより、普通に戦ったら若手四王の誰にでも負けるんじゃないだろうか。

 

「……こんなところだから言うが、現バアルの方に問題があるんじゃないか? 素質がヴェネラナ様に傾きすぎだろ」

 

「宮白兵夜。言いたい事は分かりますが、流石に控えてください」

 

 サイラオーグ・バアルの女王にツッコミを入れられてしまった。

 

 だが実際、バアルとしては無能とはっきり言って凡庸。サーゼクス様と姫様の方が圧倒的にバアルの消滅の魔力を生かしている気がするんだが。

 

 一周回って同情してきた。いっそのことバアルの特性を覚醒させる事に特化した専用の駒の開発を試みるべきかねぇ。

 

 ……まあ、今のクリーン化が進んでいる冥界で、そんな事したら俺が詰むが。うっかり技術が流れすぎて旧魔王派の残党が強化されたら目も当てられん。

 

「ああ、そういえば、マグダランは人間界に来ていたな」

 

 と、そこでサイラオーグ・バアルがそんな事に気が付いた。

 

 おや、それは初耳。

 

「そうなのですか、サイラオーグ様? 人間界で悪魔側の大きな催しがあるとは聞いてないですけど」

 

 シルシがそう首を傾げるが、確かにな。

 

 マグダラン・バアルは人間界での活動は今のところしていない。だから、人間界に来るのなら大王派側で何かしらの大きめのイベントが起きているはずだ。

 

 ちなみに言い忘れてたが、ここはイギリスである。英国国教会という独自の宗派が存在する、聖書の教え的にある意味で重要な場所。

 

 そんなところに、バアルが態々赴くイベントなら俺かシルシが把握しているはずなんだが―

 

 と、サイラオーグ・バアルは軽く笑うと手を振った。

 

「そうではない。英国で高名な植物学者の後援会が開かれていてな。マグダランは植物の研究を好んでいるから、興味があっただけだろう。中々認めてくれる者がいないから、逆に冥界の講演会には行きづらいからな」

 

「……色々と苦労なされているのね、マグダラン様も」

 

「面倒な家系に生まれると、面倒に巻き込まれる宿命なのかねぇ」

 

 シルシとグランソードがそんな事を言う。

 

 うん。同情するのはいいんだが―

 

「……二人がそれを言いますの?」

 

 -雪侶のツッコミが全てなんだよなぁ。

 

 君らも面倒な家系の生まれで、色々あるでしょうが。




と、いうことでスパロの掘り下げ。

……うん。まあ、知らぬが仏ってこと、あるよね!
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