ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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神様、多いです!

 

 

「・・・なるほどねぇ? そういえば、ぶち壊してでも持って帰るってたしかにいってたな」

 

 イッセーの発言はこうだ。

 

 教会側はエクスカリバーを壊してでも回収したい。

 

 木場はエクスカリバーを破壊して仲間の無念を晴らしたい。

 

 だから、俺たちが木場と共にエクスカリバーを破壊したとしても、一本ぐらいなら問題ないだろうということだ。

 

 ・・・意外に考えたな。

 

「イケると思うぞ、その作戦」

 

「マジか! ダメ出しされるかと思ったんけど」

 

 確かに、普通の段階では教会側の言い分とは逆に、天使と悪魔が手を組んだようなイメージを与えるかもしれない。

 

 だが、俺達には大義名分がある。

 

「これは伝えそびれたんだが、フリードの奴が戻ってきたみたいなんだよ」

 

「あの野郎が!?」

 

「・・・あの男ですか」

 

 二人の表情がゆがむ。

 

 そりゃそうだ。あのキャラクターはインパクトがありすぎるし、何よりイッセーは奴に殺されかけてる。

 

 そう、一度殺されかけてるのが肝だ。

 

「流れからいってコカビエル側にいる可能性は非常に高い。以前の因縁を清算するために戦闘したはいいが、『たまたま』エクスカリバーがそれに関わったら、壊しちゃっても言い訳はできるよなぁ?」

 

「すっげぇ悪役ヅラだな、オイ」

 

 無理やり連れられている匙がすごく嫌そうな顔で感想を漏らす。

 

 正直帰してもいいとは思いたいが、こいつが会長にチクったら全てが台無しだ。

 

「まあ安心しろ。・・・これから言い訳が立つようにpi-をpi-して・・・」

 

「喧嘩売ってんのか! ふざけんなよコラ!!」

 

 冗談だよ。

 

「でもさー? どうやってその教会三人娘を見つけるのー」

 

 久遠の言うことは正論だろう。

 

 あちらはこちらに要望を叩きつけただけで、本来敵なのに変わりはない。

 

 だから、当然接触は避けてるはずだが・・・。

 

「ああ、イリナにこっそり発信機付けてたから、今の場所はわかるぞ」

 

「・・・いつの間に」

 

「気にしたら負けだ小猫ちゃん。こいつ、ホントいろいろと抜け目がない」

 

 我らがグレモリーの領地に潜入した敵陣営を、なんの監視もなしにほおっておくわけがないだろう。

 

「何を考えてるのかは分からないが、ちょうどこの近くにいるみたいだから、とっとと話をつけに行くぞ」

 

 しかしどんな目的で、真昼間の繁華街なんかに来てるんだあいつら。

 

 普通に考えれば昼飯だろうが、さすがに町中に溶け込む服装はしているだろうし、この発信機の制度じゃさすがにすぐには・・・

 

「えー、迷える子羊にお恵みをー」

 

「どうか、天に代わって哀れな私達にお慈悲をおおおおお!」

 

「本当にすいません! 住所と郵便番号を教えてくだされば、必ず二倍にして返しますので! 実質、お金が増えると思ってどうか援助お願いします!」

 

 溶け込んでない!?

 

 考えてみればそりゃそうだ。着替えてたら発信機がこんなところに出てくるわけがない。

 

 と、いうか何で物乞いしてるんだあいつら? 普通必要経費ぐらい出されてるだろう。

 

「やっぱり駄目ですね。実質珍しすぎて引かれてます」

 

「これが経済大国日本の実体か! これだから、信仰のかけらもない国に来るのは嫌だったんだ!」

 

「仕方がないわ。所持金がない私達は、こうして異教徒どもの慈悲を受けないといけないのよ! ああ、パンすら買えない私達!!」

 

 そういうことはもう少しオブラートにくるんで話そうか? 金もらう気、ある?

 

「すいません! これは実質、預金通帳や銀行カードを持ってくるのを忘れた私のミスです!」

 

「それは違うぞベル。これは全て、イリナが所持金すべてつぎ込んで詐欺まがいの絵を購入したのが原因だ」

 

 そんなゼノヴィアの視線の先にあるのは、なんつーか適当に書いた感じしかしない油絵だった。

 

 ・・・どんな理由があればアレに金つぎ込む余裕を任務中に捻出できるんだ?

 

 っていうか、あの絵どっかで見たことがあるような・・・ああ、以前詐欺まがいな行為をやっていた奴懲らしめた時に見たな。

 

 ああ、アイツ懲りてなかったのか。

 

「イッセー。ちょっと任せた」

 

「あ、オイ宮白! どこ行くんだよ!」

 

 ちょっと恩を売ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、言うわけで金取り戻したついでにサツに下手人引き渡してきた」

 

「本気でありがとうございます! もうどうしたものかと思ってました!!」

 

 ファミレスでそんな大声上げながらお礼言うなベル。すっごく目立つ。

 

 と、いうかすっごい食べてるみたいだけどコレおごりになるのか?

 

「ああ! 悪魔の中にも慈悲深いものはいるということね! 主よ、この慈悲深い悪魔にどうか―」

 

「イリナ。それは二度目だからやめようか。・・・下手をすると返してもらえなくなる」

 

 ああ、来た時にイッセー達がもだえ苦しんでいたのはそういうことか。

 

 とりあえずかなり金はある方だし、ここは半分ぐらいは持っておいてやることにしよう。

 

 全額払え? バカだな、言いだしっぺはイッセーなのに全部尻拭いしたらこいつ反省しないだろうが。

 

「まあ、感謝の言葉とかはいらないな。その代わり、ちょっと頼みたいことがある」

 

「・・・やはりな。とりあえず言ってみるといい」

 

 ゼノヴィアが鋭く反応する。

 

 まあ、昨日の今日でこんな状況だ。これが正しい反応だろう。

 

 俺は視線でイッセーを促す。イッセーもそれにうなづくと、静かに切りだした。

 

「エクスカリバーの破壊に協力したい」

 

「・・・いいだ―」

 

「ダメですね。実質嬉しい申し出ですが、そんなことをすれば三大勢力間で政治的に大きな問題になりかねません」

 

 何か言おうとしていたゼノヴィアを制すかのように、ベルはバッサリと切り捨てた。

 

「三大勢力の内、ほかの二勢力が残り一つを攻めるということが、どんなバランスの変化を生み出すかわかっていませんね」

 

 ため息をついたベルは、視線を窓の外に向ける。

 

 そこにあるのは映画館。確か、北欧神話をテーマにした映画が上映されているな。

 

「・・・悪魔になりたてでは知らなくても実質問題ありませんが、あなた方は聖書の神が実在するなら、他の神話の神がいるかもしれないとは考えなかったのですか?」

 

 ・・・ちょっととんでもないことを言わなかったか?

 

 聖書の教えが正真正銘存在しているのなら、ほかの宗教や神話がフィクションなのはむしろ当然と考えるべきではないだろうか。

 

「・・・北欧神話。ギリシャ神話。そして当然この国日本の神話。数の上での最大勢力こそ聖書の教えではありますが、世界のあらゆるところに存在する神話は、天使や悪魔のように、実質確かに存在するのです」

 

「・・・マジですか?」

 

 イッセーがかなり驚愕するが、これはまあ嘘をついているわけじゃなさそうだ。

 

 そして、それは確かに非常に問題があるな。

 

「確かに不味いな。追い詰められたその一つが、不利な条件をのんで他の神話に助けを求めたら・・・」

 

「各種神話をフィクションだと教え込んだ教会の教えに不満を持つ勢力は多数。不要に三大勢力のバランスを崩せば、他の神話勢力の過激派が動いて自体は余計に悪化しかねません」

 

 そういうと、ベルはコンソメスープにガムシロップを入れたうえ、ティーバックを突っ込んだ。

 

「これがおいしいと思うものはいますか?」

 

「・・・無理」

 

「どう考えても不味いだろ。何考えてんだアンタ」

 

 小猫ちゃんと匙の答えにうなづくと、ベルはそれをかき交ぜた。

 

「不用意なバランスの変化は、人類にとってまさにこのゲテモノ化したコンソメスープに近いでしょう。・・・極端な話、グレモリー眷属の騎士がはぐれになって勝手に暴れるならともかく、グレモリー眷属やシトリー眷属が直接エクスカリバー争奪戦に関われば、そのような事態を引き起こしかねないのです。我々が協力していると思われず、たまたま状況がそういう風になったと思わせる根拠がなくては承服しかねます」

 

 こっちが接触した理由はわかっているようだが、これだとちょっと望み薄か。

 

 そう考えると非常にヤバい問題だな。

 

「下手したら部長や会長の首が飛びかねない・・・と、言いたいが」

 

 だが、それはエクスカリバー争奪戦に限ればの話だ。

 

「話は変わるがそこの教会三人娘。フリード・セルゼン、という白髪の発狂神父に心当たりはあるか?」

 

 その言葉に、三人の表情はそろって不愉快なものになった。

 

「実質、コカビエルにくみしたエクスカリバー使いです。先日一度会いまみえました」

 

「13歳でエクソシストになった天才だが、味方にまで牙をむいた信仰心無き殺人鬼だ」

 

「処罰から逃れて堕天使側にいっちゃったらしいけど、なんでイッセーくんたちがそれを知ってるの?」

 

 ・・・はぐれな時点でわかっちゃいたが、どうやらそっちでも扱いに困っていたようだ。

 

 あのキャラならヤバいとすぐわかりそうなもんだが、なぜエクソシストにしたんだ?

 

 小猫ちゃんもアイツのことを思い出したのか不機嫌になる。イッセーにいたっては親の仇を見るかのようだ。

 

「知ってるも何も宮白の仇みたいなもんさ。あいつのせいで宮白は一度死んだんだ!」

 

「おーい訂正しろ。アイツはしっかりぶっ飛ばしたぞ。その後油断して堕天使に致命傷喰らったんだ」

 

「・・・ライザー・フェニックスと一対一で戦ったりした時点で相当だけど、お前人間のころからどんな目にあってんだよ」

 

 匙が恐ろしいものを見るかのような目つきになるが、桜花はむしろ面白そうなものを見る目つきだった。

 

「へー。人間のころからすごいじゃん。それで? そのはぐれエクソシストがどう関係するのー?」

 

 なに、大したことじゃないさ。

 

「ちょっと個人的に殺し合いになっても問題ない理由で追っているし、特にグレモリー陣営は一度、スカウト前とはいえ僧侶を一人殺されている。ここまではいいか」

 

「・・・なるほど。読めたぞ」

 

 ゼノヴィアがこっちの考えを理解したのかニヤリと笑う。

 

「・・・因縁のあるフリード・セルゼンを倒そうと行動していたら、「たまたま」エクスカリバーを持っていたので、「たまたま」エクスカリバーに恨みを持つそちらの騎士の恨みを果たしても問題がない、というわけか」

 

「そして奴らが「たまたま」仲間を引き連れていたら、身を守るために「たまたま」一緒に遊んでいたシトリー眷属が助太刀して倒しちゃっても、正当防衛が成立するってわけだ」

 

 理解が早くて助かるねぇ?

 

 我ながら、即興で考えたにしてはなかなか美味い考えだと思う。

 

「そっちだって部長に「勝手に潰し合うのを高みで嘲笑って見物すればいい」とか言ってたんだ。こっちがこっちで勝手に消耗しあってくれれば、戦術的には助かるんじゃないか?」

 

「実質いやらしい考えですが、確かにそれならば言い訳はできそうですね」

 

 ため息をつくベルだが、とりあえず反論はないようだ。

 

 今まで流れについていけなかったイリナはちょっと不満げだったが、この流れはもう戻せまい。

 

「ちょ、ちょっといいの? 相手はイッセーくんもいるけど、悪魔なのよ?」

 

「大丈夫ですイリナ。さっきの言い訳があればとりあえずの問題はない。向こうが何か言ってくるのであれば、その後こっちが彼らを攻撃してしまえば消耗した隙を狙って行動しただけということでえげつないやり方をたしなめられるぐらいでどうにかなるでしょう。ねえゼノヴィア」

 

「それに、向こうの戦力を逆算したとしても、こちらの勝率は切り札込みでせいぜい4割。命を落とすことなど恐れてはいないが、どうせなら生きて主のためになることをした方がいいだろうしね」

 

 2対1。それも、反対派だって積極的なわけではない。

 

 ・・・決まりだ。

 

「商談設立だな。」

 

 後は木場を呼ぶだけだ。

 

 ・・・いきなり暴走してここで剣を抜いたりしないだろうな。それだけが少し心配だ。

 


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