ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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バルパー、許しません!!

 

 結論からいえば、そのあたりの交渉は木場を交えても無事に終わった。

 

 それだけではない。木場にとって真の敵ともいえる人物を特定することにも成功したのだ。

 

 名を、バルパー・ガリレイ。当時の聖剣計画の責任者で、被験者の殺害命令を下した腐れ神父。

 

 どうやら、被験者の処分は奴の独断であったらしく、教会側にとっても汚点となっているようだ。

 

 当然だが、そんな奴はとっくの昔に追放されて堕天使側に属している。こっちが勝手に首をはねたとしても、少なくとも教会側は関知しないだろう。

 

「実質、そちらにとっては邪魔する敵が変わっただけですが、奪われたエクスカリバー全てに使い手がいましたので、研究者だったバルパーがこの街に来ている可能性はあります」

 

「「たまたま」一緒にいるときに出くわしたとしても、お互い最優先目標を奴に設定したところで問題ないだろうね」

 

 ベルとゼノヴィアから見事にお墨付きをもらっているので、できれば逃げられない状況下で袋にしておきたいところではある。

 

 とにもかくにも、木場も遺憾ながら限定条件下における不戦条約は締結。これで、エクスカリバーをぶった切る算段は整ったわけだ。

 

「・・・さて、それでは作戦を説明する」

 

「はい質問ー」

 

 なんだ桜花。今から真面目な話なのに。

 

「桜花さんじゃないけど同感だよ。ここは彼女たちと別れるところじゃないのかい」

 

 木場、お前もか。

 

 見れば、ベルはだいたい何が言いたいのかわかっているようだが、それ以外のメンバーが全く理解できていない。

 

 やれやれ。これが政治的な問題だらけなのを忘れてるなこいつら。

 

「・・・まさかと思うが、マジで部長達が教会シスターズを完全にフリーにすると思ってるのかお前ら?」

 

「え? だって部長、今回の騒動には関わらないんだろ?」

 

 イッセーの返答にみなうなづく。

 

 全く。これだから上で指揮することがない人間は困るんだよ。

 

「お前らなぁ。自分の縄張りに明らかな敵対勢力の人間がいるってわかってて、完全に無警戒にしているやつは間違いなくバカだ。そして会長はよく知らんのであえてスルーするが、部長は少なくてもバカじゃない。ここまではOK?」

 

「会長ディスるのがむかつく以外はOKー」

 

 桜花、もしかして文句言いたいためだけに今の発言をしたのか?

 

「つまりですね。実質、居場所が把握できた侵入者に監視をつけないわけがないというわけです。普通に考えれば居場所ぐらいは把握している可能性はありますね」

 

 うん。理解している人が一人でもいると説明が楽でいい。ありがとう、ベル・アームストロング。

 

「私達は別に攻撃してくるわけでもないので、実質気にしないことにしましたが、主に隠れて行動している彼らは別。早いうちに決着をつけないとややこしいことになります」

 

「うげっ! このままだと会長のお仕置き確定かよ」

 

「・・・それじゃあ、下手するとこの会話も部長達に筒抜けなのかよ!?」

 

 匙とイッセーが顔色を変えるが、まあ今のところは問題ない。

 

「そこは一応大丈夫だ。少なくとも今の時点ではまだ気づいてない」

 

 ちゃっかり使い魔を使って部長と会長には付けている。

 

 エクスカリバー破壊に協力しているなんて知れれば、もう少しあわてているはずだ。さっき確認した時は二人とも普通に学校の活動をしていたから、ばれている可能性は低いだろう。

 

 まあ、すぐに気付かれるだろうし今日中にケリをつけた方がいいはずだ。

 

「つーわけで、改めて説明するけど作戦はこう!」

 

 俺は懐から地図を取り出すとそれを広げる。

 

 そこには赤いペンとかでいろいろマーキングを施している。

 

「昨日の内に舎弟とかをつかって、普段神父などがいなかったり、教会施設がない地域とかで聖職者らしき格好・・・およびフリードのような目立つ特徴をもった・・・追加でコカビエルという名前から予想される、最近になって見かけた外人らしい奴などの目撃情報があった箇所を調べた」

 

 おぉ・・・と、周囲からどよめきの声が聞こえる。

 

 ふっふっふ。これが街中に関係者やコネがある俺の本領発揮だ!

 

 正直昨日は深夜トレーニングは中止して明け方までこれをまとめていた。

 

 睡眠不足は魔術をつかって、精神面だけだが完全にリフレッシュに成功している。いざというときは魔術薬があるので大丈夫!!

 

「そのうち三つ全ての証言があり、それも一番多かったのがこの山に近い赤でマーキングした地点。おそらく山の中にある廃棄された建物か何かをアジトにしている可能性が高い。念のためナツミに協力してもらったが、確かにその近辺にフリードはいた」

 

 イッセーと視線が合う。

 

 俺達の脳裏に浮かんだのは、あの動物化するナツミのアニマルソウルとかいう魔法とやらだ。

 

 あれは非常に便利にだった。こういう後方支援から直接支援までこなせるのはマジ便利。ことが終わったら回らない寿司をご馳走せねば。

 

「なるほど。では、アジトの探索は実質私達の仕事ですね。本格的にことを構えるのは私達教会の仕事です」

 

「それで、町中で私達が囮になってフリードって人を引き付けるんだねー。神父の格好とか貸してくれない? 餌はつけとかないとねー」

 

 ベルと桜花のおかげでサクサクすすむ。

 

 だが、作戦としてはこれで十分だ。

 

 念には念を入れてそのあたりに白髪を探して俺らしき人物がウロウロしているとの情報も流しておいた。俺にボコられたフリードなら、エクスカリバーを使って自分から打って出ようと考える可能性も十分にある。

 

 あの戦闘狂なら人数差があっても突っ掛かってくるはずだろうし、割と本気でイケるはずだ。

 

 さらに!

 

「念には念を入れて下準備もしておいたし、できうる限り今日中にフリードを倒してエクスカリバーも破壊する」

 

「最低でも核はちゃんとこちらに引き渡してもらう。それでいいなベル」

 

「構いませんよゼノヴィア。イリナ、確か殺された潜入した神父の着替えが残ってましたね。アレを彼らに着せてみましょう」

 

「わかったわ。・・・うーん、イッセーくんたちならともかく、この女の子にはシスター服の方がいいかしら?」

 

「・・・私はどっちでも。桜花先輩はどうしますか?」

 

「シスター服だと動きにくそうだし、私は神父さんかなー。むしろ兵藤くんとかにシスターのカッコさせたらあちらさんも油断するかもー?」

 

「誰が得するんだよその格好! 木場、何とか言ってやってくれ!!」

 

「ははは。いろいろと迷惑もかけたし、全部解決した後の罰ゲームなら僕はいいよ」

 

 うん、良い感じになってきたな。

 

 なんだかんだで全員で結束している中、しかしついていけない人が一人。

 

「・・・あのさー、完全に置いてけぼりになってるんだけど、そもそもなんで木場はエクスカリバーが憎いんだ?」

 

 あ。

 

 そういえばそうだ。こいつその辺の事情一切知らないんだった。

 

「そういえばそうだねー。聖剣計画って言うのが原因らしいけど、何がどうなったの?」

 

 確かにそうだな。

 

 イッセーは部長から聞いてたみたいだし、小猫ちゃんはその辺の事情を知っているみたいだが、俺も含めて、深いところを知っている奴がこの中にどれだけいるのか。

 

「そうだね。・・・いい機会だし、聞いてもらおうかな」

 

 そこから聞かされたのは、あまりにも惨たらしい話だ。

 

 身寄りがなく、頼るものが何一つない幼い子供たち。

 

 彼らは教会にその才能を認められ、聖剣をつかえる選ばれた者へとなるべく実験に参加した。

 

 実験の内容は非人道的でいろいろと精神的にも苦痛だったらしいが、それでも彼らは頑張った。

 

 いずれ主のために役に立てると、神に愛されていると信じて、聖歌を口ずさみながら頑張った。

 

 だが、その結果はあまりにも惨たらしい。

 

 吐き気をこらえるかのような表情で、ベルは顔を伏せた。

 

「毒ガス・・・だったと聞いています」

 

「ああ。そんな中、彼らは・・・名もなき彼らは僕だけでもと体を張って、僕を逃がしてくれた」

 

 だが、そんな木場の体も毒ガスで汚染されていた。

 

 雪が降り積もり森の中を、裸足で走り続け、そして力尽きた。

 

 そこに、本当に偶然近くに来ていた部長が通りがかっていたのだ。

 

「同志たちが助けてくれた僕の命は、決してただ使い潰されていいものじゃない。彼らの無念を、彼らの憎しみを、彼らの悲しみと絶望を、僕は魔剣に込めなきゃならないんだ・・・っ」

 

 正直な話、これを聞いたところで、俺にできることは何一つとしてない。

 

 二度死んだとはいえ、一度目は完全に自己責任の事故死で、二度目はしっかり原因に止めを刺している。

 

 そんな俺に、木場について何かを言うことはできるはずがない。

 

 はずがないが・・・。

 

「バルパー・ガリレイ・・・っ!」

 

 大きな秘密を未だ隠している俺に、何かを言う資格はないのかもしれない。

 

 だが、そいつだけはただでは済まさん・・・!

 

「やってくれるみたいだねー。そのダメ神父さんはー」

 

 口調は結局語尾が延びているが、桜花もちょっと引くぐらい殺気がにじみ出ている。

 

 こいつもいろいろと過去に何かあったらしいな。

 

 まあ、平和な日本とはいえ凶悪犯罪がないわけではないし、イッセーのようなパターンもあるわけだ。

 

 まさか俺みたいに転生者なんてそうそう無いだろうが、かなりの経験があるんだろうな。

 

「・・・・・・愛されるべき信徒、それも小さな子供に対してよくもまあそんなひどいことを! 許せないわバルパー・ガリレイ! 見つけ次第、私がエクスカリバーで裁いてあげる!」

 

「そこはグレモリーの騎士に譲ってやるべきだろう。とはいえ、誇るべき人工聖剣使いにそんな負の側面を作った報い、エクスカリバーによって祓いたくなる気持ちもわかるけどね」

 

 イリナとゼノヴィアも怒りに燃えている。うん、価値観の違いはあるけど、この二人も悪い奴じゃないだろう。

 

「・・・ぅう」

 

 なんかむせび泣くような声が聞こえてきた。

 

 ―匙だ。

 

 ちょっとドン引きするぐらい号泣している。鼻水まで垂れているが、冷静に考えるとまだファミレスです。

 

 ヤバいマジで目立ってる。

 

 ・・・ハッ! そういえば金が手に入ったから作った、認識阻害の使い捨て魔術礼装が完成していたんだ! 急げ! 変なこと口走る前に急げ!!

 

「木場ぁああああ!!! お前って本当に大変だったんだな!! ああ、そりゃ聖剣や教会に恨みを持ったって当然ってもんだ!!」

 

 匙は号泣したまま木場の手をとると、そのままブンブンと振り回す。

 

 よしセェエエエエフ!! ギリギリで間にあった!

 

「良し! 俺も覚悟を決めたぜ!! 会長のお叱りも後でしっかりと受けてやる!! 正直イケメンのお前のことがちょっといけすかなかったが、そういうことなら話は別だ!! 全面的に協力するぜ!! だからお前も救ってくれたリアス先輩を裏切るな!!」

 

 おお、まるでイッセーみたいに熱いところがある奴だ!

 

 しかし、これで変に脅す必要はなくなった。駒三つで転生したポーンが全面協力してくれれば、比較的難易度も楽になるはずだ。

 

「よっしゃ! お前の秘密だけ聞くのもなんだし、俺の秘密も聞いてくれ!!」

 

 ・・・なんだろう、ライザーが部室に来た時に、イッセーが妄想に入った時のような感覚がしてきたぞ!!

 

「・・・俺の夢は、会長とできちゃった結婚することだ!!!」

 

 ・・・沈黙が、降りた。

 

 俺はなんかアホらしくなったので思考を切り替えることにした。

 

「・・・今日の夕食の準備もしないとな。そこのトリオ・ザ・セイント、金とり返してきてやったんだから荷物持ちぐらい手伝ってくれ」

 

「いや、止めなくていいんですか? 実質、空気が台無しになってるんですけど」

 

「気にすんな裸族エクソシスト。なぜなら・・・」

 

 最後まで言うことはできなかった。

 

 なぜなら、イッセーが男泣きしながら匙の手を握っていたからだ。

 

「匙! 俺の夢は、部長の乳首を吸うことだ!!」

 

「・・・このように、さらに状況が悪化するからだ。わかったな物乞い三人娘」

 

「・・・本当に、欲望の強い悪魔らしい行動だが、いくらなんでも無謀の極みじゃないのか?」

 

「安心しろゼノヴィア。はっきり言って既に秒読み段階と言ってもいい。・・・イッセーは」

 

「・・・なんてこと!? 懐かしい幼馴染がしばらく見ない間にとんでもない変態になっちゃってるわ! 主よ、これも試練なのですか!?」

 

 どんな試練だよそれは。

 

 あ~あ~あ~あ~。二人ともすっかり意気投合しちゃってるしホントにもう!

 

「・・・やっぱりダメダメです。変態コンビな先輩たち」

 

「あはは。でも、イッセーくんらしいと思わないかい、小猫ちゃん?」

 

「元ちゃんも兵藤くんも思春期の男の子だねー」

 

 やれやれ。

 

 こんな調子で大丈夫か?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ファック! 思った以上にはぐれ悪魔祓いの連中が集まってやがる。アザゼルが赤龍帝の始末を命じた時ぐらいじゃねーか? ファック!」

 

「気にしすぎだぜ? まあ、お前はあの時の命令も嫌ってたから仕方がないけどな。・・・つっても、正教会のエクスカリバーを二本とも奪うとはコカビエルも本気だねぇ? どう思うよ、白龍皇さまは?」

 

「別に。あの様子ではコカビエルぐらいしか楽しめるのがいないからな。全く、いくら赤龍帝がいるからと言って、こんなつまらない任務はバラキエルやもう一人の神滅具の男に頼むべきだ」

 

「いいからさっさと仕事しろよファック龍皇。少しぐらいは待っててやるが、あちらに犠牲者が出たら、あとでこっちがいろいろ言われるんだぞ」

 

「少しぐらいはかまわないだろう? 赤龍帝がどれぐらいか知りたいし、輝く腕のベルとコカビエルの戦いは、少し楽しめそうだ」

 

「俺としてはエクスカリバー使いが気になるかねぇ。どうやら他にも奥の手がありそうだし、できれば様子を見てデータをとっておきたいぜ?」

 

「ファック! このバトルジャンキーとマッドサイエンティストはどうしようもねーな」

 

「気にしすぎだろ? それに、俺としてはグレモリー眷属が意外と頑張りそうだぜ? 俺がくすねてきた対フェニックス戦はお前も・・・ああ、あれは白龍皇様しか見てないか」

 

「確かにあの男は面白い戦い方をしていたな。・・・それ以上に、最後の能力上昇は興味深い」

 

「あんなもん大したことはねぇよ。・・・まあ、聖水を体内に注入して攻撃とかは驚いたけどな」

 

「んなこたーどーでもいいんだよ。ファック! 真面目に仕事する気なのはあたしだけかよ」

 

「まあそういうなって、ウチのボスはボスで今回のことを利用していろいろ考えてるみたいだし、その辺は下っ端として汲んでやらないとだめだろう? なあ、そこで携帯ゲームに夢中になってるダメ総督さん?」

 

「なんだ、そんなところにいたのか。・・・どうせなら話に加わればいいのに」

 

「このダメダメファック総督は本当に・・・っ」

 

 

 

 

 

 

 

「お前らなぁ、もう少し総督を尊敬しろよ。・・・まあ、これはこれで面白そうだながな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってお前らに返事してたらゲームオーバーになったじゃねえか! 後ちょっとでノーミスクリアだったんだぞ!!」

 

「うるせえよダメ総督!! ファックファックファァアアック!!!」

 


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