ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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あらたな仲間、発見です!

 

 ・・・気付いた時には、やけに奇麗な星空が見えていた。

 

 背中の感触は草や土のそれだ。山の中にでも倒れているのだろうか。

 

「・・・あ、起きたー?」

 

 視線を少し横にずらすと、桜花が心底ほっとした顔で俺の様子を見ているのが移る。

 

「大丈夫ー? 致命傷じゃないっぽいけど、光の槍の一撃だから、結構全身ボロボロだよー?」

 

「あ、ああ。・・・まあ、命の危険がないなら十分ついてるほうだろ」

 

 まさかあの状況下でこっちに攻撃する余裕があるとは思わなかった。

 

 完全に判断ミスだな。やっぱり無理を言ってでも部長に協力を要請した方が良かったか。

 まあ、あのとんでもない奴が相手で、生きているだけめっけもんか。

 

 額から流れる血が目に入りそうで正直面倒だ。

 

 俺はそれをぬぐおうと左腕を動かして―

 

「な・・・っ」

 

 空を切った。

 

 首を動かしてみれば、俺の左腕は肘の少し上のあたりから完全に消滅していた。

 

「ゴメン。残ってた先の部分も、回収してる余裕なかったー」

 

 ・・・結構、キッツいなー。

 

「・・・他の、部分は?」

 

「どこもかしこもボロボロだけど、致命傷じゃないよ。大丈夫、なくなってるのは左腕だけー」

 

 そうか、どうやら、本当に致命傷一歩手前の状況だったみたいだな。

 

 ・・・とはいえ、真面目な話ショックを受けてる場合じゃない。

 

 コカビエルの目的は戦争勃発。

 

 堕天使幹部が教会の宝を使って魔王の妹を殺す。

 

 重要なファクターがそろいまくってる大騒ぎは、間違いなく大きな衝撃を与えるだろう。

 

 高確率で戦争が起こるだろう。コカビエルの戦略眼は、確かなものだと言わざるを得ない。

 

 圧倒的格上が相手な上に、完全に出遅れている。

 

 このままだと本気で勝ち目がない。

 

「ほかのみんなはどうなった! 木場は・・・」

 

「ゴメン。思った以上に敵が激しくってー。逃げるのに夢中でそこまではー」

 

「そうか・・・」

 

 無事だといいんだが。

 

 ついでに言うなら、イッセー達は大丈夫なんだろうか?

 

 奴の発言を完全に信じるなら、既に学園に到着している可能性は本気で高い。

 

 下手をすれば部長達を殺してから町を崩壊させる可能性もある。奴の実力ならどっちでも別段大した違いはないだろう。

 

 ・・・確実に決死の戦いになるな。

 

 さぁて、どうしたもんかね本当に・・・。

 

「・・・バカ」

 

「は?」

 

 いきなり、桜花にそんなことを言われた。

 

「私なんかのためにー、そんなことしないでよ」

 

「あー、あんまり気にすんな」

 

 まあ、目の前で自分をかばって命を落とすって言うのは、かばわれた側としてはショックが大きいのかもしれないな。

 

 とはいえ、それでここまで落ち込まれていては意味がない。

 

 助かったものは助かったことをしっかりと喜ぶべきだ。誰かが頑張ったのならそれを恩に思うことこそあれ、重荷にすることはない。

 

「まあ、あれだ。俺は結構後悔なく生きてるから、こういうとき自分の命の価値が低いって言うか、一度死んで悪魔になったから、おまけの人生的な感じになってるというか・・・」

 

「・・・それなら、私の方がはるかに軽いよー」

 

 ・・・さて、ここで説教かますほど俺たちは付き合い長いわけじゃないしな。

 

 かばって死のうとした俺が「そんなこと言うな!」とかはいえそうにない。

 

「一度死んで新たな人生って意味ならー、私の方がはるかに大きいよ」

 

 言いたくなさそうに、だけど言った方がいいような言い方で、桜花は肩を震わせていた。

 

「死んで生き返っただけの人より、私の方がよっぽどラッキーだよ」

 

 ・・・ん?

 

「でも、私の場合は会長に出会うまであまり意味なかったしー、そういう意味じゃあんまり変わらないのかなー?」

 

 ・・・どっか引っ掛かるような。

 

「下手に記憶を残しててー、おかげでずっと一人だったー」

 

 その言葉に、俺はイッセーと出会う前の自分を思い出していた。

 

 家族ともろくに仲良くできず、ずっと一人でいた寂しい半生。

 

 ・・・なんとなくわかった。こいつは俺と同じ、いや、こいつも俺よりひどいんだ。

 

「結局会長の不思議は私と違ったけどー、あの人がいなかったら私は―」

 

「もういいよ」

 

 思わず、

 

 ホント後になって頭を抱えたんだが、俺は思わず桜花を抱き寄せていた。

 

「え・・・っ!? ちょ、ちょっとー!?」

 

「俺は便利でもあったけどきついところはキツイモンな。()()()()()なんてのは」

 

「―ッ!?」

 

 ビンゴか。

 

 ああそうだ。ナツミの時もわかってたじゃないか。

 

 イッセーがいた俺は、間違いなく幸運な部類なんだ。理解者がいるということこそ、転生者にとってとても重要なファクターなんだ。

 

「・・・全部終わったらさ、お互いの世界について少し話さないか?」

 

「・・・え?」

 

「俺以外にも転生した奴がいるんだけどさ、そいつの世界がなんと完璧なファンタジー世界なんだよ。だからたぶん、お前の世界と俺の世界は神秘の種類が違うんだと思う」

 

 ああ、きっと全く違う文化に違和感バリバリなんだろうな。

 

 ああクソ。なんかちょっと楽しみになってきたかも!

 

「だったらー。何とかして、コカビエル止めないとねー」

 

 そうだな。それが重要だ。

 

「つったってどうしたもんか。悪いがベルは生きててもただじゃ済んでなさそうだし、かといってイッセーに禁手化してもらっても5カウント程度じゃとても倒せる相手じゃない」

 

 増援を要請したとしても、来るのに時間がかかるだろうからそれだけの間時間稼ぎをする必要がある。

 

 ベルがいてくれるなら十分稼ぐことは可能だろう。とはいえ、あの戦闘の後じゃ生きていたとしてもただでは済んでないはず。

 

 ライザーを圧倒したイッセーの禁手化なら十分対抗どころか勝ち目はある。・・・長時間発動できるのならの話だが。

 

「というかー、エクスカリバーの融合とかで爆発したら意味がなくない?」

 

「ああ、それは・・・はっきり言うと、魔法陣的な何かだったら可能性は低いが付け入るすきはある」

 

 そう、そこはまだ勝算はある。

 

 可能性が絶望的なコカビエル戦とは違い、何らかのタイムラグがあり、魔法陣のような儀式的形態を使っていれば、付け入るすきはある。

 

 これはライザー戦でのアレから考えても行けるとは思うのだ。

 

「つったって俺は片腕だから戦闘はろくにできそうにないし、俺の世界だったら金さえあればいい義手は手に入るんだが・・・こっちだとどうなんのかねぇ」

 

 マジでその辺が心配だ。

 

 金と技術者次第ではあるが、魔術師の世界なら普段の腕と変わらないレベルで、さらに追加機能を発言できる義手とかは存在する。

 

 まあ今の残金で手に入るとも思えないが、あれば可能性はあるのだ。

 

 まあ、あの方法は絶対に結果そのものは『失敗』するとはいえ、片腕だろうが問題はない。

 

 だが、その発動には間違いなく時間がかかる。

 

 今の段階でそれができるか? そもそも、そんな思い通りの儀式を向こうがやってくれるのか?

 

 やってくれれば、少なくともいきなりの都市崩壊は何とかできる可能性は6割は固い。

 

 あの圧倒的な戦闘力を保有するコカビエル。その目的に対して六割も出せるなら十分すぎる気がするが、さてどうする?

 

 あの隠れ家の規模から判断して敵の人数は数十人。しかも間違いなくこの街にいる中では最強のコカビエルがいる。

 

 時間を稼いでくれないと、とても使えるようなものではない。

 

「んー。今の私だと・・・10秒いけたら奇跡かなー?」

 

 ダメだ! 敵が圧倒的すぎて話にならない!!

 

 量より質を体現した化け物め! せめてアレが成功しても戦闘する必要はあるし、せめて両腕が使えれば・・・。

 

 正直頭を抱えたくなったその時、桜花はポンと手を打った。

 

「そうだー。アレ、試してみよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イッセーSIDE

 

 

 

 

 

 

 

「・・・堕天使、コカビエル」

 

 部長の震える声が聞こえる。

 

 それは、深夜のことだった。

 

 結局あの後部長に発見され、俺たちは思いっきり説教された。

 

 ・・・お尻叩き1000回はひどかった。俺も匙も尻が死んだぜ。

 

 だが、そんな痛みもぶっ飛ぶ者が目の前に二人もいる。

 

 一人はフリード。

 

 恐ろしいことに、両手に聖剣を持っていやがる。さっき戦った時の聖剣にあんなのはなかったし、となるとアレは最後の聖剣、夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)か?

 

 そしてもう一人。

 

 そのフリードの上、ローブを着たいかにも大物そうな堕天使が一人。

 

 翼の数は・・・10もあるぞ!? 俺でもわかるぐらい超大物じゃん!?

 

 しかもコカビエルってエクスカリバーを盗んだ張本人!? なんで俺たちのところにわざわざ・・・あ、俺たちがエクスカリバーをぶち壊そうとしたから、怒ってるのか!?

 

「俺のことを知っているのか、リアス・グレモリー。さすがは魔王の妹か」

 

 コカビエルは面白そうに笑うと、ふと気付いたかのように首を振る。

 

「ああ、お前のところに来たのに政治的な意味はないから安心しろ。そんなくだらないことに興味はないんでな」

 

「それはどうも。・・・だったら何の用かしら? 私の領地で好き勝手されるのは非常に不愉快なんだけど」

 

 部長も敵意を無茶苦茶出しながら答えるが、コカビエルは動じない。

 

 そういえば、コカビエルの奴は何か抱えているみたいだけどいったいなんだ? 人みたいだけどこの角度からじゃよくわからないぞ?

 

「なに、お前のかセラフォルーの妹のか知らないが、俺の根城に来て、しかも俺の目的まで見抜いたんでな。誉めてやろうと思ったんだよ」

 

 目的だって?

 

 エクスカリバーを盗むこと以外に何か目的があるってのか?

 

「・・・まあ、ほとんどが雑魚だったがな。輝く腕の奴はそれなりに楽しめたが結局逃がすし、景気づけとしては失敗だ」

 

 コカビエルは嘲笑うが、その後ろからいきなり大きな影が。

 

 あれはベルさん!? それに・・・

 

「・・・コカビエルゥウウウウウウッ!!」

 

 絶叫するベルさんの手には・・・軽トラック!?

 

 どうやって持ってるんだよあんなもの!? しかもあれ、掴んでるというか触れて・・・いや、触れてもいない!

 

 軽トラックはコカビエルに簡単に受け止められるが、その隙にベルさんはコカビエルから人影らしきものを奪い取ってこっちにすぐ近くに着地する!!

 

 人影もはっきりと見える。・・・こいつはイリナ!? しかもボロボロだ!!

 

「・・・大変です!」

 

 あわててアーシアが近寄って、その傷を癒す。

 

 ベルさんはそんなアーシアにイリナを預けると、そのまま部長の方を向いた。

 

 その表情は青ざめているし、彼女自身もボロボロだ。下手するとイリナより重傷じゃないか?

 

「リアス・グレモリー!! 至急サーゼクス・ルシファーに救援を要請してください!!」

 

「な、なにを言ってるのよ」

 

 部長は戸惑うが、ベルは全く意に介さない。

 

「奴は三大勢力の戦争再開を目的として、重要ファクターのそろっているこの街を消滅させる気です!! 実質、事態は我々の手にあまります!!」

 

 なんだって!?

 

 戦争を起こす?

 

 この街を消滅させる?

 

 なんだよ、なんだよそれは!!

 

「ああ、その通りだよ。ミカエルの奴は結局戦争を起こす気はないみたいだし、だったらお前ら魔王の妹を犯して殺すぐらいしないと、戦争にならないだろう?」

 

 とんでもないことを言ってるよこの男!

 

 なんてこった! 

 

 ベルさんはこの状況が三大勢力間のバランスを崩しかねないから慎重に動いていたけど、そんな必要は全然なかったんだ!

 

 コカビエルの目的はバランスを整えるどころか思いっきり崩すこと! 完全に俺たちは失敗したんだ!

 

「それじゃぁ・・・宮白は!? 木場はどうなったんだ!?」

 

 俺の言葉に、コカビエルは嘲笑ってベルさんは目を伏せる。

 

「俺のもくろみを見抜いた奴には一撃叩きこんだが、結局はどうなったかな? まあ、手ごたえはあったから一人は片付けたと思うが」

 

「私がコカビエルから逃げるころには全員見失っています。・・・誰か一人ぐらい合流しているかと思ったのですが」

 

 一人やられた!?

 

 木場か? 桜花さんか? 

 

 いや、目的を見抜いたってことは頭の回転が速い奴ってことだ。冷静じゃない木場や、いっちゃ悪いけど桜花さんは違うだろう。一番危ないのは宮白じゃないか!

 

 自分でも顔が真っ青になっているのがわかる。

 

 部長やアーシアも表情がこわばってる。宮白たちのことが心配なんだ。

 

 そんな俺たちの様子を見て、コカビエルが面白そうに哄笑する。

 

「まったく本当に雑魚ばっかりだ。アザゼルもシェムハザも神器だなんてくだらないものの研究ばかりしやがって。そこのガキの赤龍帝の籠手ぐらいでもなければ役に立たないだろうに。本当に俺はもう限界なんだよ! だから戦争を起こすのさ!」

 

 コカビエルの視線は別の方向に向かう。あれは学校の方向だ。

 

「魔王の妹が二人もいる所なら魔力はたくさん集まっているだろう。エクスカリバーの本来の力を解放するには最適だろう? 少しは楽しめそうだ」

 

 本気で頭がイカれてやがる! マジで戦争を起こすなんだ!

 

「どうどう? イッセーくん! 俺様のボスにふさわしい、ステキにイカれた方だとは思わねえかい? しっかもこんな素敵なプレゼントもくれちゃうし、もう俺様幸せ100パーセント!」

 

 フリードは服をつかむと、その内側を見せる。

 

 オイオイオイオイ! あの時のエクスカリバーじゃねえか!

 

 しかも、腰のベルトにくくりつけられてるのはイリナの聖剣じゃねぇか!!

 

「聖剣を使えるステキ因子に、エクスカリバーが五本もセット! まさにパーフェクトフリード爆・誕・です!」

 

 よりにもよってこいつに全部聖剣をもってやがる。

 

 ちょっとエクスカリバーさん、相手を選ぶんだったらもっとまともな人に使われろよ!

 

 コカビエルは10の翼を広げると、フリードも閃光弾を取り出した。

 

「戦争をしよう、リアス・グレモリー、ベル・アームストロング!!」

 

「学校で待ってるぜイッセーくん! 今度こそ、本当の殺し合いさ!!」

 

 二人は俺の目がくらんでいる隙に姿を消す!

 

 くそ! やらせるかよ!

 

 俺たちの学校を、俺達の住む街を、俺達の大切な日常を!

 

 両手を強く握りしめながら、ベルさんがリアスに頭を下げる。

 

「リアス・グレモリー。力を貸して・・・いえ、力を貸します。だからコカビエルを倒してください!」

 

「わかってるわ。イッセー、アーシア! 学校へ向かうわよ!」

 

 わかってます、部長。

 

 あいつらの隙になんてさせねえ。頼むぜドライグ、コカビエルをぶっ飛ばすんだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の目の前で、桜花が地面に魔法陣らしいものを描いていた。

 

 桜花の奴は俺のパワーアップをするとか言ってた。

 

 確かに腕一本無くなっている以上、コカビエルとやり合うならそれなりの準備が必要になるだろう。

 

 だが、こんな短時間の儀式でパワーアップする方法なんてあるのか?

 

「あの時のオコジョ妖精に教わっておいて正解だったなー」

 

 パワーアップとオコジョと、一体何の関係があるんだ!?

 

「準備完了ー。さ、宮白くんこっち来てー」

 

 なんか心配になってきたが、今はそんなことを考えている余裕はない。

 

 とりあえず、言われるままに魔法陣の中央に進む。

 

「で、次はどうすれば―」

 

「んー」

 

 いきなりだった。

 

 いきなり、真正面から抱きしめられた。

 

「・・・・・はい?」

 

 え?

 

 なに?

 

 どういう状況!?

 

 は! これはまさかエロいことをするサバト的な儀式だったりするのか!?

 

 いくらなんでもこんな状況下でハッスルするほど俺も欲情しているわけじゃないんだけど!?

 

「ちょ、ちょっと待て! さすがに心の準備が―」

 

「ありがとうねー」

 

 静かに、そう、桜花はお礼を言ってきた。

 

「・・・この世界に生まれてこのかた、ずっと怖かったんだ」

 

 ・・・気持ちはわかる。

 

 世界が自分の知っているものと確実に近い何かになっている。

 

 これは、転生者にとって特有の恐怖なんだろう。

 

「怖くて怖くてたまらなくってー、たまたま手に入れたチラシに頼って、そして、来てくれた会長に思っていること全部話して、そしたら会長は優しく受け入れてくれたんだー」

 

 それは、いち早く救いを得た俺に対する恨みごとも含まれているのだろう。

 

「会長は、お姉さんに相談して同じような人がいないか調べてくれた。まだ発見できてないけど、今でもずっと調べてくれてるんだー」

 

「・・・そうか」

 

 ・・・安心した。

 

 俺達のことを考えて動いてくれる人がいる。

 

 それは、言っちゃ悪いがイッセーにはできないことだ。

 

 俺は、いち早く安心を与えてもらった。

 

 桜花は、真剣に考えてもらえた。

 

 俺達の違いなんてそんなもんだ。

 

「だから、その分のお礼は働いて返す。一生かけても、会長の力になって、会長の願いのために全力を尽くすんだー。もちろん、会長の危険はすぐにでも排除するよー」

 

「それが、お前が俺たちに協力した理由か」

 

 自分が感じた嫌な予感を確かめるために、そしてそれをいち早く排除するために。

 

 あえて怒られる危険を冒してでも主のために行動した。それが主のためになると心から信じて。

 

「・・・俺も、部長のことは信用してるよ」

 

「うん。だから、力を貸してー」

 

 魔法陣から魔力があふれだす。

 

 なんとなくだが、この儀式の内容が理解できる。

 

 これは契約の儀式だ。術者と被術者の間で契約を交わし、何らかの力を与える魔術的儀式だ。

 

「・・・ありがとうねー」

 

 なんか、顔を真っ赤にして桜花がこっちの顔をまじまじと見つめてきた。

 

「なんていうかさー。宮白くんって、カッコイイよねー」

 

「そうか? まあ、女子からいろいろ言われるのは自覚してるが」

 

 それをこの場で言うなよ。恥ずかしいだろ。

 

「なんだかんだでいろいろと考えてるし、聖剣使い相手に一歩も引かないぐらい強いし、それに・・・助けてくれて、ありがとうー」

 

 だから

 

「・・・名前で呼んでいいかなー、兵夜くん」

 

 ・・・なんだか、少しおかしくなった。

 

 返事をするついでに、ちょっとからかってやるか。

 

「OK、久遠」

 

 俺が答えると、ただでさえ真っ赤な顔が、さらに真っ赤になった。

 

「そ、その口閉じろー!!」

 

「え、なんで―」

 

 本当に口を閉ざされた。

 

 ・・・久遠の唇で。

 


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