ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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白い龍、遅いんだよ!

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 聖なるオーラが充満する中、コカビエルは仰向けになって倒れていた。

 

 その全身は血だらけで、傷がないところが見当たらない。吐く息は荒く、もう動けない事がバカでも分かる有様だ。

 

 ・・・勝った、のか?

 

「ば、かな。この、俺が、こんな・・・雑魚どもに・・・?」

 

 コカビエルは茫然と呟く。

 

 正直俺自身信じられない。

 

 増援が来るまで時間が稼げれば御の字だとは思っていたが、だからと言って全力を出さずにいればすぐ滅ぼされる事も分かっていた。

 

 だからこそ、ありとあらゆる手段を考えて全力で暴れまわった。できれば避けたかったイッセーの擬似禁手も使って、コカビエルを殺すつもりで攻撃した。

 

 それでも、俺達は本当にコカビエルを倒せた自信がなかった。

 

「どうするイッセー? 俺、勝ったのか?」

 

「いや、これで勝ってなかったら俺達死ぬだろ」

 

 既に鎧が解除されたイッセーも、正直現状を飲み込み切れていないようだ。

 

 つーか鎧解除早いな! あんだけボロボロでも結構使えてたんだし、もう少し持ち堪えてくれても良かったんじゃないか?

 

 まあ、俺のエクスカリバーも粉々に砕け散ってるわけなんだが。まあかなり無理のある運用をしてたしな。木場には悪いが俺が壊しちゃったよ。

 

 後ろにいる仲間達も、未だに状況を飲み込み切れていないらしい。

 

 まあ、いきなりエクスカリバーは融合する。町は20分で滅びる状況になる。異世界の存在とそこから来た転生者の存在が明るみに出る。滅びる状況が解除される。圧倒的強者を倒しちゃう。

 

 ・・・うん。どう考えても許容量をオーバーしている。

 

「・・・とりあえず、止めを刺すより取り押さえて神の子を見張る者に突き出した方が政治的にはいいでしょうね」

 

 経験豊富なおかげでいち早く冷静になったベルが、そう結論した。

 

 その言葉がきっかけになったのか、俺達は何とか動けそうだ。

 

「そうね。朱乃、ソーナ達をこちらに連れて来て頂戴。全員でコカビエルを封印する結界を作り出すわ」

 

「了解しましたわリアス」

 

「・・・アーシアちゃんー。念の為今のうちに皆の回復お願いするよー」

 

「あ、はい! 分かりました!!」

 

 部長が朱乃さんに指示を出し、久遠はアーシアちゃんに要請する。

 

 また復活されても困るし、とっとと回復してとっとと拘束した方がいいか。

 

 まだ気を抜くには早すぎるが、これで一安心か・・・?

 

「―いや、その必要はないな」

 

 ・・・真上から、声が響いた。

 

 瞬間、結界が崩壊し、上空から三つの影が舞い降りる。

 

「ファック! 結局コカビエルが倒れるまで観戦し続けやがって!! どんだけ他勢力に迷惑掛けてんだよこの馬鹿龍皇が!!」

 

「グハッ!?」

 

 一人はボディスーツにフルフェイスヘルメットで姿を隠した、体格から言って同年代の堕天使。

 

 勢いよく落下したかと思うと、そのままコカビエルの鳩尾に踵を叩き込んで、奴の意識を消し飛ばす。

 

 聞き覚えのある声だな。ていうか、高みの見物してたのかよ!

 

「・・・間に挟まって、お前の攻撃喰らいまくった俺が一番被害者だろ。まあとりあえず、こいつら全員ひっ捕らえるとしますか」

 

 まるで科学者のように白衣を着た、銀の髪の大学生くらいの堕天使。もの凄いボロボロだ。

 

 彼が指を鳴らすと、どこからともなく全身鎧が何人も現れ、フリード達はぐれ悪魔祓いを拘束していく。

 

 なんか大型トラックまで出てきてるんだが、どうやって持ってきた!?

 

「お前がいい勝負になりそうだと言ったからだろう? 自業自得だ」

 

 そして、真っ白い鎧に身を包んだ一人の男の姿。

 

 ・・・どことなく、赤龍帝の鎧に似ているな。いったいなんだ?

 

 鎧の男は俺の方を興味深く見ると、その両腕を大きく広げた。

 

「面白いものを見せてくれた礼だ。俺の能力を見せてやるから、全力で攻撃を叩きこんでみてくれ」

 

 ・・・何を考えているのか知らないが。

 

 丁度いい。奴には聞きたい事があったんだ。

 

「その前に一つ聞くが、お前、どの辺から様子を見ていた?」

 

「最初からだ。・・・まあ、会話が聞こえるような距離にはいなかったが」

 

 そういう事か。

 

 よし、だったら望み通りにしてやろう。

 

「分かってないのは当然だろうが、俺は危うく酷い詐欺行為を働くところだった。・・・本気の全力でいくぞこの野郎!!」

 

 強化魔術は使わないが、今俺に出せる全力を込める。

 

 その鎧ぐらいは砕いてやる!!

 

『Divide!』

 

 いきなり、光の槍が半減した。

 

 更に槍は半分になっていき、鎧に当たる頃には爪楊枝のような大きさになっていた。

 

「これが、白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)の力。相手の力を半減し、その力は俺のものになる」

 

 なんだよそれは。まるで赤龍帝の籠手の正反対の力じゃ・・・。

 

「・・・白龍皇、ですか」

 

 俺達を庇うようにして、ベルがそう呟きながら歩いてきた。

 

「赤龍帝と共に三つ巴の大戦のなか喧嘩を行い、三大勢力が総力を挙げて神器へと封印した存在。堕天使側に組みしているとは聞きましたが、まさか今この場に来るとは・・・」

 

 ・・・赤龍帝と対をなす龍だと?

 

 そんなものがあったのかよ面倒だな!?

 

「ああ、まだ未完成な上しかも仲間の力を借りたとはいえ、コカビエルを倒す事ができるとは。まあ、俺の宿敵なのだからこれぐらいはできるようになってくれないとな」

 

 物騒な事を言ってくる白龍皇。

 

 こいつら、いったい何をしに―

 

「・・・そこの駄目龍皇! 散々迷惑かけた上に変な喧嘩を売ってんじゃねーぞファック!!」

 

 あ、後頭部に光が直撃した。

 

 あのフルフェイスはこのメンツのまとめ役か何かか?

 

「分かった分かった。・・・まあ、今日のところはコカビエルを捕まえる事が仕事だしな。・・・帰らせてもらうとするよ」

 

 白龍皇がコカビエルを抱え、フルフェイスはため息をつきながら宙に浮かぶ。

 

 どうやら退散してくれるようだ。それならそれで助かるんだが・・・。

 

『無視か、白いの』

 

 初めて聞く声が響いた。

 

 その声は、イッセーの左腕から聞こえてくる。見れば、声に反応して宝玉が光っていた。

 

『起きていたか、赤いの』

 

 応じるように、光翼からも声が聞こえる。

 

『せっかく出会ったのにこの状況ではな』

 

『こういう事もあるだろう。たまにはいいさ』

 

『どうした白いの? 以前のような敵意が伝わってこないぞ』

 

『こちらのセリフだ赤いの。お前こそ段違いに低いじゃないか』

 

『お互い、戦い以外の興味対象があるという事か』

 

『そういう事だ。どうせいずれ合いまみえるのだ。戦いはその時まで取っておこう。ドライグ』

 

『ああ。じゃあな、アルビオン』

 

 ・・・なんか、とんでもない会話を聞いた気がする。

 

 つーか、俺達はあのホワイトドラゴンと戦うこと確定かよ!

 

 マジでめんどいな。何が悲しくて、悪魔になったからってそんな激闘を毎度毎度繰り広げなくちゃいけないんだよ。

 

「おい、どういう事だよ!! お前はいったい何者で、何がどうなってるんだ!! つーか、さっきから上から目線で偉そうだな!!」

 

 イッセーが混乱しながらも喰ってかかるが、白龍皇はどこ吹く風だ。

 

「全てを知るには力が必要だ。強くなってくれ、いずれ戦う俺の宿敵くん」

 

 そう言うと、白龍皇はあっという間に空の彼方に消えていく。

 

 そして、いつの間にやらトラックにはぐれを全員詰め込んだ白衣達は、そのままトラックに乗り込んでいく。

 

「俺達も帰るぞぉ。はあ、この数を転送させるのは面倒だし、転送班と合流するまでは陸路だからな」

 

「わーったよ。・・・んじゃまぁ、このお詫びはウチのファック総督が直々に出すそうだから、悪いがアタシらは帰らせてもらうぜ」

 

 白衣に促されたフルフェイスもそう言ってトラックに乗り込むが、その顔が朱乃さんの方を向いた。

 

「・・・元気でやってるみたいで安心したよ。またな、朱乃」

 

「っ!? あなた、もしかして―」

 

 朱乃さんは何かに気づいたようだがフルフェイスは答えない。

 

 そのままドアを閉じると、トラックは校庭から外に出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・終わった、か。

 

 非常に濃い一日だった。

 

 色んな意味でスケールの大きな戦いだった。三大勢力全てが絡むわ、下手したら街一つ吹き飛ぶところだったわ、挙句の果てにボスは堕天使の幹部だわ。・・・全てにおいて今までを遥かに超越するレベルだった。

 

 しかも、俺達のことが皆に知られてしまったし、これから大変だぞマジでどうしよう。

 

「・・・まあ、とりあえず一段落ついたってところか」

 

 気にしても仕方がない。

 

 俺は振り返ると、皆の方を眺める。

 

 大事過ぎた所為か、皆どう反応していいか分かっていなかった。

 

「・・・どうやら、終わったようですね」

 

 結界が消えた上にトラックが学校から出てきた所為か、会長達が俺達のところに駆けつけてきた。

 

 皆結構疲労の色が見える。長時間結界を維持していたのだから、当然と言えば当然か。

 

「桜花! 宮白! 木場! お前ら大丈夫かよ!!」

 

 匙が俺達の姿を見つけて慌てて駆けつける。

 

 ああ、そういえば念の為作っていた抜け道から入ったから、こいつ俺達の存在気づいてなかったな。

 

「まあ、ただでは済んでないが俺は大丈夫。久遠は無事だよ」

 

「そうか。・・・で、何がどうなったんだ?」

 

 匙は頬を引きつらせながら、大惨事と化している校庭を見る。

 

 何故か体育館まで吹き飛んでいるし、これはどうしたものか。

 

 久遠も苦笑している。

 

「正直説明に時間がかかりそうー。・・・でも、なんていうかー」

 

 だけど、なんか頬が赤かった。

 

「・・・お仲間も見つかったし、結果オーライかなー」

 

「そうですか。それは良かった」

 

 会長が、そんな久遠に微笑んでいた。

 

「勝手をした罰はちゃんと受けていただきますが、まずは・・・良かったですね、桜花」

 

「・・・はいー。ただ、ちょっとセラさまは仕事が増えそうな予感がー」

 

「・・・普段がアレですし、たまにはしっかり仕事をしてもらわないと困ります。宮白くんも、すいませんが後で姉と話しをしてもらう事になると思いますね」

 

「ま、そりゃ必要経費と割り切りますよ」

 

 俺達の今後にも関わるんだし、それぐらいなら仕方がないか。

 

 俺は、ふと木場の方に視線を向ける。

 

 木場は何とも言えない表情をしていた。

 

 まあ、色々と因縁を清算できたはいいんだろうが、いわゆる燃え尽き症候群という奴になっているんだろう。

 

 マジで命を失ってまで叶えたかった事に一応の決着がついたしな。さて、どうフォローしたものか。

 

「やったじゃねえか、木場!」

 

 とまあ、こっちが色々考えてんのをふっ飛ばすかのように、イッセーが木場の後頭部を励ますかのように叩いた。

 

「それが聖魔剣かぁ。なんかこう、白と黒が奇麗に混じってるよなぁ」

 

 こいつは本当にこういう時迷わないな!

 

 ま、それがこいつの良いところか。

 

「イッセーくん。僕は・・・」

 

「ま、良いじゃねえか。聖剣も、お前の仲間の事も、今はいったん終了って事でいいだろ?」

 

 ・・・敵わないなぁ。ホントにさ。

 

「ま、そうだな」

 

「宮白くん・・・」

 

「とりあえずバルパー(元凶)はくたばったんだし、お前の同胞も少しは気が晴れただろ。・・・今日のところは、そういう事にしておこうぜ?」

 

 ・・・後ほど聞いた事だが、木場の同胞は特に恨みを晴らしてくれとか言っていたわけではないらしい。なんでも残留思念がどうこう言ったとかなんだとか。

 

 正直ちょっと見当はずれだったというわけだが、まあ、気分は良くなったみたいだし良かった事にしておこう。

 

「それより、君の方は大丈夫かい? その・・・」

 

「ああ、転生云々?」

 

 こいつも色々と大変だろうに、俺の心配している場合か?

 

 まあ、ある意味世界全土を震わすトンデモ設定なわけだから気になっても当然だと思うが。

 

「なんでも魔王様直々に調べているらしいし、前回のレーティングゲームでも結構使ったからもう勘づかれてるだろ。今更慌てても仕方ないな」

 

 基本的に、会長のお姉さんはその辺気を使っており、保護を方針とするらしい。

 

 ちょっとは窮屈な思いをするかもしれないが、まあそれで身の安全が保障されるなら我慢するか。

 

「あの・・・大丈夫、ですよね」

 

 皆の回復を終えたアーシアが、俺達の方に歩み寄る。

 

「木場さんも宮白さんも、また一緒に部活できますよね?」

 

 この一件で一番ショックを受けたのは間違いなく彼女だ。

 

 教会を追放されてもなお、戦闘服にシスターの格好を選ぶほどの信仰心を持つアーシアちゃんにとって、神の死なんてショック死レベルの出来事に違いない。

 

 まったく、ウチはお人好しが多すぎるぜ。

 

「・・・ま、俺は今後の展開次第かな」

 

「なら安心しなさい」

 

 部長が、その大きな胸を張って断言する。

 

「例えそれが冥界の総意であれ、下僕に危害を加えようというのならば私は抗議するわ。・・・おかえりなさい、祐斗、兵夜」

 

 部長は、笑顔で俺を迎え入れてくれた。

 

 いや、部長だけじゃない。

 

 朱乃さんも、小猫ちゃんも、そしてもちろんイッセーも。

 

「聖魔剣と異世界の力。あなた達は私の予想を遥かに超えてくれた。・・・私の自慢の眷属達よ」

 

 ・・・やべ、ちょっと涙腺が緩んできた。

 

「あれぇ? 兵夜泣いてんのぇ?」

 

 復活したナツミがからかうように言ってくるが、部長はそんなナツミを抱き寄せる。

 

「え・・・え、えと、えぇ!?」

 

「あなたもよ。・・・下僕の使い魔は私の使い魔も当然。悪意なんか私が消し飛ばしてあげるから、安心なさい」

 

 やべえ、俺の主のカリスマ性がやべぇ!

 

 そして、部長は右手を上げるとやけに凶悪そうな魔力を発し始めた。

 

 ・・・あれ?

 

 そして視界の端には、同じようなポーズと魔力の会長の姿も。

 

 ・・・あれ?

 

 ポンと、イッセーと小猫ちゃんが肩に手を置いてくる。

 

 これは明らかに同情のそれだ。

 

「じゃあ二人とも。勝手な事をした罰よ。桜花さんと一緒にお尻叩き1000回」

 

「せめて左腕回復させてくれぇええええええええええええっ!!!」

 

 最後にいいオチがついてしまった。

 

 だけど、まぁ、なんていうか・・・。

 

 俺、今、結構幸せだ。


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