ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

54 / 361
ついに第四巻に突入!

これからも頑張っていきます! 応援よろしく!


停止教室のヴァンパイア
総督、襲来です!


 深夜のオカルト研究部は、今日も今日とて悪魔活動が盛んである。

 

 だが、時には多くのメンバーが暇になって、暇を持て余す機会が存在する。

 

 そして、そういった暇を潰す為に色々やるのは当然である。

 

 と、いうわけで。

 

「つーわけで、とりあえず俺のところの魔術についてご説明いたします」

 

 パチパチパチパチ。

 

 ノリのいいナツミと、付き合ってくれた朱乃さんが拍手をしてくれた。

 

 うん、やっぱこういう時はリアクションがあった方がいいな。

 

「・・・異世界の魔術となると、色々と興味深いわね」

 

 部長が勉強モードに入ったからか、メガネをかけて結構真面目に話を聞く気になっていた。

 

 俺がこんな事をするには理由がある。

 

 ドラゴンは強大な存在を呼び寄せると聞いた。

 

 実際、コカビエルがこの街に来たりしたのも少しぐらいは関わっているだろう。悪魔の長い人生から考えても、影響を受ける機会は多いはずだ。

 

 そして、部長はこう言っては何だが色々とイレギュラーな存在に出会う可能性が高いように思う。

 

 どうも堕天使の関係者っぽい朱乃さんや、聖剣計画なんていう普通関わりようがないだろう木場みたいな存在を眷属にしているのだから当然だ。

 

 俺が眷属になったのだって、二人の影響を受けた可能性は非常に高い気がする。

 

 と、くれば、俺以外の魔術師に関わる可能性もあると思う。

 

 それならある程度知識があった方が将来的に良いだろうという事だ。

 

「まず最初に説明しますが、この世界の魔術と俺の世界の魔術は根本部分が違い、使用には魔術回路という先天的才能が基本的に必要と成ります」

 

 そう言うと、俺は首の魔術回路を見えるように起動させる。

 

 位置が位置なので俺には見えないが、まるで機械の配線みたいな模様が見えている事だろう。

 

「これが、魔力を発生させ、そして魔術を構成します。ぶっちゃけ、よほど特殊な事例がないと回路なしじゃ魔術を使えませんし、少なくとも俺はその事例を知りません」

 

「・・・確かに違うわね。この世界の魔術は悪魔の魔力を人が再現できるようにしたものだもの。根本から違っているわ」

 

 部長がメガネをかけ直しながら感心する。

 

 同じ名前がついてても全くの別物。これを知ると、やはりここが異世界だという事を実感できる。

 

「まあ、細かい説明をしても大変ですし、今日のところは簡単な実例を見せます」

 

 そう言って、俺が取り出したのは簡単なペーパーナイフと棒きれ一つ。

 

「一番分かり易いのは強化です。悪魔の強化は魔力を纏わせて固くする事しかできませんが、魔術の強化は魔力を物体の内部に通す事で、概念そのものを強化してそのものの力を強化する」

 

 右手のペーパーナイフは悪魔風に、左手のペーパーナイフは魔術風に強化。

 

「極端な話、魔力による強化だと頑丈にする事しかできませんが、魔術による強化は『切る』という概念を強化する事ができるので・・・」

 

 俺は一気に振り下ろす。

 

 右手のナイフは棒に少し食い込むだけだが、左手のナイフは棒をすっぱり切り飛ばしていた。

 

「このように効果は歴然。ちなみに、特殊な趣味の魔術師曰く、メイドだと萌え度が強化されるそうです」

 

 普通は家事スキルじゃないだろうかとは思う。

 

「見れば見るほど面白い効果ですわね。今度マッサージ器を強化してもらおうかしら」

 

「・・・便利な力」

 

 朱乃さんと小猫ちゃんが感想を漏らす。

 

「ちなみに、ライザー戦では、駒の、能力を強化する概念を強化する事で全身体能力を強化した後、聖水の力を強化する事でダメージをでかくしました」

 

「応用性が広いのは便利だね。僕の魔剣で言うのなら、頑丈性を強化して破壊の聖剣でも壊せないようにしたり、切れ味を強化して単純に攻撃力を上げたり、特性を強化する事で特殊効果をより効率よく使う事ができるわけか」

 

 木場がすぐに俺の魔術の応用方法を考えてくる。

 

 こいつも頭の回転が本当に早いな。

 

「・・・一番違うところで言うと治癒魔術ですかね。自分でちゃんと試しましたが、少なくとも俺の魔術は悪魔でも回復できます」

 

「それは凄いわ!」

 

 俺の言葉に部長は歓喜する。

 

 そりゃそうだろう。

 

 教会が悪魔や堕天使にとって大きなアドバンテージがあるとすれば、それは治癒の力の存在だ。

 

 不幸な事に遥かに凌駕する性能を発揮するアーシアちゃんがいるからあまり役には立ちそうにないが、それでも回復役が二人できるのは戦術の幅を広げてくれる。

 

「それを量産する事ができないのは残念だけど、その力は悪魔にとってとても重要よ」

 

「あー。その辺なんですが良いお知らせと悪いお知らせが一つずつ」

 

 言うべきか言わざるべきか少し迷うが、この際だ、この変の隠し事はなしにしよう。

 

「・・・俺らの世界には魔術礼装という、魔術そのものを強化したり魔力を流す事で魔術を発動したりするマジックアイテムが存在するのですが、これを悪魔の魔力で応用する事は可能だと思われます。これが良い知らせです」

 

 実際、魔術の応用で悪魔流魔力運用を使う事も可能だったしな。

 

 だが、これには問題が一つ存在する。

 

「悪い知らせは、魔術含めた俺らの世界の神秘の類は、信仰によって大本の力が発揮されるという事です」

 

 その言葉に、部長達はよく理解できていないのか首を傾げる。

 

 まあ、これはかなり独特だろうから仕方がない。

 

「・・・俺がコカビエル戦で出したあの大技は、英霊召喚という儀式なのですが、これは信仰によって後押しされた人物が精霊と化した存在を召喚する儀式です」

 

 信仰は力になる。

 

 例えば、エクスカリバーを使ったアーサー王。

 

 彼はエクスカリバーと共に戦場を駆け抜け、ブリテンの王として今でも人々の心に残る。なんでもいざという時は復活するとまで言われているほどだ。

 

 その漠然としたイメージは力になり、彼を死後、人からそれを超える精霊の類へと進化させた。

 

 彼ら英霊は英霊の座という、この世からはずれた場所へと移り、英霊召喚はその分身を召喚する。

 

 そして、自身の伝承を思う人々の想念によって生前の力を再現して、その武勇を再びこの世に轟かせるのだ。

 

「・・・漠然としたイメージがケーキバイキングのケーキだとするなら、魔術師の魔力はそれを取りに行く労力です。で、美味い思いとして魔術があります」

 

 それゆえに、最も世界で信仰を得ている教会の教えは莫大な効果を発揮したはずだが、それは関係ないので置いておく。

 

「で、ここから先が重要になるのですが、もしケーキバイキングのケーキの個数より、ケーキバイキングに来た客の数が多かったら、ケーキは食べられなくなりますよね?」

 

「・・・つまり、魔術の概念は人に知られてはいけないということ?」

 

 部長がまとめてくれるが、つまりはそういう事だ。

 

「神秘は秘匿すべし。・・・これが、魔術の世界の不文律にして根本的な絶対ルールです」

 

 ・・・ゆえに、魔術礼装を量産して回復の魔術を広く展開する事は事実上不可能だと言っていい。

 

「ま、グレモリーの陣地の病院で使用する分なら効果はそこまで下がらないとは思いますが、そういう事なので俺の事情は色んな意味で黙っていてください」

 

 この辺は申し訳ないとは思う。

 

 俺みたいなこの世界のはぐれ者を迎え入れてくれているのにも関わらず、その恩恵を与える事ができないのだから。

 

 加えて言えば、治癒魔術の展開は莫大な金になるだろうに激しく残念だ。

 

「色んな意味で自分でも残念なんですが、いやホントグレモリーの財政的にも俺の財政的にも惜しいんですが・・・っ!!」

 

「そこまで悔しがらなくてもいいわよ」

 

 しかし部長! 悪魔の長い生を生きる以上、金策の工面は超重要ですよ!?

 

 今後の魔術を利用した能力強化にしたって金がかかるのに、その金を稼ぐ事ができないだなんて・・・!

 

「まあ、気を取り直して今度は非常に金がかかる極小手榴弾とでも言うべき宝石魔術について―」

 

 ドタドタドタドタ

 

 なんだ? イッセーでも帰って来たか?

 

「ぶぶぶぶぶ部長!? 大変です! アザゼルが契約で、大量の報酬!!」

 

「だから筋道立てて話せ」

 

 なにがあった、イッセー?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前のお得意さんが堕天使総督だったぁ!?」

 

 なんだそりゃ!?

 

 なんでも、最近できたイッセーの大口契約を行っている男が、堕天使総督のアザゼルだったという事が発覚したらしい。

 

 やけに金払いがいいと思っていたが、とんでもないVIPだったという事か。

 

「それでイッセー。重要情報を黙っていた事を利用して報酬を更に増額にする交渉とかしたのか?」

 

「最初に言うのがそれかよ!?」

 

 何を言っているんだイッセー。

 

 奴の監督不行き届きで危うくこの街は滅びるところだったんだ。

 

 住民全てに莫大な慰謝料を請求したってバチは当たらんだろう。

 

「そうだ。この悪魔の陣地に勝手に入っている事もあるんだし、俺達グレモリー眷属全員に三ツ星レストランフルコースぐらい奢らせるって言うのもマジでありだと思うが」

 

「その辺りにしておきなさい」

 

 ポコンと、俺の後頭部に部長の拳が軽く当たった。

 

「私のイッセーに対して営業妨害をしていたのは腹立たしいけど、三すくみのトップ会談が行われるのだもの。うかつにそんな反撃はできないわ」

 

 部長がそう言って嘆息する。

 

 しかし堕天使の総督自ら接触か。

 

 なんか本気で裏がありそうで怖いな。

 

 それに、奴にはイッセーを殺す指示を出した前科だってある。

 

 ・・・隙あらば、殺す。

 

「それはともかく、私のかわいいイッセーに手を出そうなんて万死に値するわ! トップ会談が決裂で終わるような事があれば・・・」

 

「同感です部長。・・・よし、ちょっと真剣に呪いを研究し直そう。大丈夫大丈夫、精密性において桁違いの開きがある魔術の力なら、例え相手が最上級堕天使だろうと・・・」

 

「部長、宮白、二人ともとりあえずストップ!! めっちゃ怖い!!」

 

 なんだイッセー。これはまさにお前の為でもあるんだぞ?

 

 まったく、敵に対して甘すぎるところがあるよなこいつは。

 

「二人とも落ち着いてください。大丈夫、イッセーくんは僕が守る」

 

 木場はよく理解してくれているようで助かるよ。

 

「いや、部長も宮白も木場も落ち着いて! つーか木場、お前ちょっとキモいぞ!!」

 

 やけにイッセーが青い顔になっている。

 

 ・・・よく見ると、木場の顔がなんだか赤いな。え? こいつもしかしてそっちのケがある?

 

 一応言っておくが俺にはない。イッセーに依存気味なのは認めるが、俺のはあくまで友愛であって恋愛ではないぞ。普通に女が大好きだし堪能してますからね隅々まで!

 

「とにかく、問題はアザゼルの動向ね。いったい何を考えてるのかしら?」

 

「ただ単にイッセーに興味があっただけじゃない?」

 

 部長が首を捻るほどの疑問を、ナツミが凄い単純な答えをあげた。

 

 ・・・いや、仮にも一大勢力のトップがこんな緊張感あふれる大イベント前にそんな事する余裕があるか? 組織を率いる者としてもうちょっとプライベートと仕事は分けて考えてもらいたいんだが。

 

 いや、仕事はちゃんと定時で終わらせて、その分プライベートではっちゃけたのか? クソ、それだと表向きには文句が言えん。だが、そんなことでイッセーに余計な危害を加えるギリギリのラインに立つとは本気で許せん。あの野郎一軒家に住んでたのならダイナマイト満載のトラック使い魔に遠隔操作で突っ込ませてそのまま爆殺してやるものの」

 

「・・・プライベートでから口に出てますよ、宮白先輩」

 

「物騒すぎるぞ宮白。俺は大丈夫だからしっかりしてくれ」

 

 いかん、小猫ちゃんとイッセーにツッコミを入れられちまった。

 

「あらあら。宮白くんはイッセーくんのことと成りますと時折リミッターが外れますのね」

 

 朱乃さんはそう言ってお茶を入れてくれたが、しかしどうしたものか。

 

 試作段階の切り札が、最初期バージョンが一発完成したのでその後の調整中。

 

 アレが直撃すれば、例え最高位クラスの堕天使といえど相当のダメージになるだろう。もちろん、当たってくれるとは限らないから至近距離で密着させる必要はあるが。

 

 今の今まで血みどろの殺し合いを続けてきた三大勢力が、今回の会談でいきなり解決するだなんて、俺は考えていない。

 

 直接関わる事はなかったとはいえ、どす黒い魔術師の側面を知っている俺は、人間同士ですらこういうのは極めて難しいという事を知っている。

 

 種族すら違う上、紛争の解決とは期間が違いすぎる。

 

 間違いなく、コカビエルは氷山の一角でしかない。

 

 会談そのものの決裂はもちろん、会談阻止を目論むテロだって視野に入れるべきだ。

 

 だから変換したエクスカリバーに代わる切り札を用意してはいるが、それでも不安は残る。

 

「・・・奴の思考が正直読めないのが難点だ。いったいどういう意図でこの緊張状態の中行動してんだ?」

 

 俺の疑問に答えたのは、

 

「アザゼルは、昔からそういう男だよ」

 

 後ろから来た、見知らぬ男性の声だった。

 

 判断は一瞬。

 

 アーティファクトの能力で割と本気でイリーガルな方法を使って入手した散弾銃を召喚。

 

 中身は同じくイリーガルな入手方法の麻酔弾。発射した弾丸が対象に当たると、慣性の法則によって中身の麻酔が注入される仕様だ。

 

「・・・誰だアンタ!?」

 

 銃口を向けた先にいるのは、貴族服を着た一人の男。

 

 優しげな笑みを浮かべた赤い髪の男だが、オーラがちょっと洒落にならないレベルなのが俺でも分かる。

 

「中々いい反応だ。リアスは資質の良い眷属を得たようだね」

 

 銃口を向けられても余裕すぎる。

 

 いったい誰だこいつは!?

 

 仮にも上級悪魔が根城にしている旧校舎だぞ!? 当然相応の防御だってしてるだろ!?

 

「・・・お、お兄さま!?」

 

 ・・・はい?

 

 壮絶な嫌な予感と共に後ろを振り返れば、茫然としている部長と、跪いた朱乃さんに木場に小猫ちゃん。そして状況が分かっていないイッセーにアーシアちゃん、そしてゼノヴィア。

 

 ・・・この組み合わせの差と、さっきの部長の言葉から判断すると。

 

「・・・サーゼクス・ルシファー様ですか? 部長のお兄さまの?」

 

「ああ、妹がいつも世話になっているね。確か、君は宮白兵夜くんだったかな?」

 

 よりにもよって、あらゆる意味で上司な人に銃向けてるよ、俺。

 

「すすすすすすすすすすすすいませんでしたぁあああああああ!!!!」

 

 とりあえず一瞬で土下座。

 

 ヤバイヤバイヤバイ!? いくらなんでもムチャヤバい!?

 

「いや、ワザと隠密性を重視して転移して驚かせようと思ったんだが、思った以上に反応が早くて私も驚いてしまった―」

 

 スパン!

 

 なんか、以前部長をハリセンで叩いたかのような音が響き渡った。

 

「サーゼクス様。不用意な悪戯は御止めください」

 

「すまなかった、グレイフィア。私が悪かったからハリセンに魔力を込めるのは止めてくれ」

 

 水を操って鏡のようにして上を見てみれば、そこにいたのはハリセンを構えたグレイフィアさんの姿。

 

 あら? サーゼクス様完全に押されてるよ。

 

「お顔をお上げください兵夜様。我が主が悪ふざけをしてしまい申し訳ありません」

 

 え? 大丈夫? 俺、首をはねられたりしない?

 

「リアス様を守るに相応しい反応でした。・・・大丈夫です。このような悪ふざけで罰を与えたりなど私が許しません」

 

 よ、よかったぁ・・・

 

 心臓が止まるかと思った。ヤベ、ビビりすぎて涙が出てる。

 

 とりあえず引き金を引かなくて本当に助かった。引いてたら流石にアウトだっただろう。

 

「ぶ、部長のお兄さまですか!? はじめまして、俺、兵藤一誠と言いましゅ!!」

 

 イッセーはイッセーで完全に噛んでいる。

 

 まあ、俺らの頂点に位置するお方がいきなり現れたのでは失神ものだろう。

 

「はじめまして一誠くん。兵夜くんと共に、ライザー・フェニックスとの戦いは見させてもらった。・・・二人とも、見事な戦いだったよ」

 

 おお、以外と好感触だ。

 

「はじめましてサーゼクスさま。私、アーシア・アルジェントと申します」

 

「あなたが魔王か。はじめまして、ゼノヴィアというものだ」

 

 アーシアちゃんとゼノヴィアもサーゼクス様にご挨拶する。

 

「ごきげんよう。しかし、元々教会の者が三人も我が妹の眷属となるとはね。私も大概だが、リアスも異色の眷属を集める才があるようだ」

 

 ・・・まあ、朱乃さんも堕天使の関係者みたいだし、俺にいたってはこの世界の人間という区分にするのもあやしいレベルだしな。・・・うん、どう考えてもイレギュラーだ。

 

「それと、兵夜くん。アジュカ―現ベルゼブブから君に伝えてほしい事があるそうだ」

 

「は、はい。何でしょうか?」

 

 正直この手の話は緊張するな。

 

 なにぶん、俺みたいな存在は普通に考えてイレギュラーだ。

 

 それを最初から念頭に置いた話を、こんなビッグな人物とするだなんて想像を絶する。

 

「現ベルゼブブと現レヴィアタンが共同で進めていた転生者捜索において、彼らを早期に発見する為にも、報告にあった魔術回路のデータが欲しいとのことだ。・・・学校の夏季休暇の時にでも、一度検査に来てくれという事だ」

 

 ああ、そんな事か。

 

「検査でいいんですか? ちょっとした実験とかも覚悟してたんですが」

 

「アジュカもセラフォルーもそんな事はしない。・・・安心したまえ。妹の大事な仲間を無下に扱うような真似は、魔王の名に賭けて許しはしない」

 

「ホントですか!?」

 

 俺が反応するより先に、イッセーが喜色満面で喜んだ。

 

「はぁ。ちょっと心配だったから安心しました。良かったな、宮白!」

 

「ああ、・・・まぁ、諸々の理由で直接異能で恩返しできないのが割と本気で申し訳ないが」

 

 マジでややこしいんだよ魔術の理論!

 

 どこまでも個人的な規模でしか活躍できない能力だなぁもう!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、サーゼクス様はなんとイッセーの家に泊まる事になった。

 

 ・・・あいつの家、本当に普通の一般人の家なんだが大丈夫か?

 

 どう考えても魔王様が止まるようなレベルの家ではない。桁違いにグレードが下だと考えるべきだ。

 

「・・・イッセー、ショック症状を起こさなきゃいいんだが」

 

 わりと、本気で心配になってきた。

 

 部長とアーシアちゃんがゾッコン状態。準ゾッコン状態の朱乃さんがそこに続いているイッセーハーレム建設計画。

 

 アーシアちゃんが聖書の教えを信仰する女の子がネックではあるが、既にあいつの野望は完成一歩手前という状況下に到達している。

 

 なんか、男の木場がそこに参入しかねない状況なのが些か不安ではあるが、どう考えてもハイスペックハーレム完成間近だ。

 

 すげぇなイッセー。

 

 正直な話、俺はちょっと劣等感を感じ始めてきているぐらいだ。

 

 あいつは、俺のことを凄い奴だと言ってくれる。

 

 だが、本当に凄い奴って言うのはあいつみたいな奴を言うのだろう。

 

 ・・・なんか、考えてきたら嫌な流れになってきてるな。

 

「ちょっと、そこのあなた」

 

 声をかけられて、ふと足をとめた。

 

 今の時間帯だと人通りは殆どない。呼び止められる可能性があるのは俺だろう。

 

 振り返ると、フード付きのパーカーを着た女性がいた。

 

「なんですか? つか、こんな夜更けに女性の一人歩きは危ないですよ」

 

 今は完璧に深夜だぞ。

 

 俺が偉そうに言えた義理じゃないが、この人危機管理能力が低いんじゃないだろうか。

 

「外食のあと涼んでいたのだけど、帰り道が分からなくなってしまったのよ。この辺りに、朝までいても問題のない場所ってないかしら?」

 

 ・・・そう言えば、近くのコンビニに座って食べれる場所があったな。

 

「向こうの道をまっすぐ行ったら、何分かするとコンビニがあります。椅子と席が置いてあるので、適当になんか買って食べながらだったら文句は言われないと思いますよ」

 

「ありがとう、助かったわ」

 

 そういうと、女性はコンビニの方に去って行った。

 

「・・・さて、帰るか」

 

 なんか嫌な気分になったし、今夜は一杯飲んでから寝よう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この時、俺は悪魔の力で人に知覚されない状況になっている事をすっかり忘れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの坊やが私の・・・ね。まあ、悪い子じゃないのだろうけど、私を使うには程遠い実力ね。・・・もう少し様子を見ましょうか」

 




最後に出てきた謎の女性。

はたして彼女は一体だれか!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。