ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
今まであまり意識を向けたことはなかったが、実は旧校舎には妙なスペースがあった。
テープを張り付けてあるほどの厳重な封印スペース。明らかに危険な何かがあります的な、いやでも注目をしちゃうような場所だった。
どうも、そこに部長の最後の眷属であるもう一人の僧侶がいるとのことだ。
何でも、眷属にしたのはいいが部長でも完全に制御することはできず、封印するように言われていたらしい。
だが、ここにきて状況は一変。
ライザー戦での勝利やコカビエルの撃退が部長の評価を上げたらしい。
これほどまでの活躍を遂げるということはリアス・グレモリーはその実力を大幅に上げたと考えるべき。翻ってその僧侶の制御も今なら可能かもしれない。
などと考えたようだ。
「・・・つまり、イッセーが根性見せたので今ならフォローがきくと判断したってわけですか」
「そういう意味ではイッセーに感謝ね。でも、それはあなたのおかげでもあるわよ」
「そうですわ。レーティングゲームでもコカビエルとの戦いでも、イッセーくんに負けず劣らずの大活躍だったではないですか」
二大お姉さまにそう言われると照れるな。
「・・・その年でレーティングゲームに参加し、そしてそれだけの活躍をするとはね。そこまで活躍したのかい?」
「はい。イッセーさんも宮白さんもすごく頑張ったんですよ」
「・・・二人とも大活躍」
・・・ゼノヴィアの問いにアーシアちゃんも小猫ちゃんもそう言ってくれるが、本気で照れるな。
「いや、ライザーは結局失敗するし、あのザ・ダイナマイトも小猫ちゃんとの連携で仕留めたんだが。なあ?」
そう男連中に向けて問いかけるが、その答えもほぼ同様だった。
「いや、下手したら俺いなくても決着付けてたじゃねえか」
「まさか単独でライザー氏をあそこまで追い込むとは思わなかったよ」
イッセーや木場にまで言われた。
まあいい。今は僧侶の方だ。
部長達が部屋の封印を解いていくが。素人の俺から見ても厳重に封印しているようだ。
そこまでするほどの眷属をよくもまあ駒一つで悪魔にできたものだと感心してしまう。
「ちなみに、あの子は眷属でも一番の稼ぎ頭なんですよ」
「いや、封印されてるのにどうやって稼ぐんですか?」
朱乃さんの言葉は正直信じられないが、まさかこんなタイミングで嘘はつくまい。
どういう方法だ?
「直接会いたくない人のためにパソコンを使った契約方法もあってね。彼は若手悪魔の中ではその道でもトップクラスなんだよ」
「・・・意外な才能」
そんなのあるんだ!? 木場も小猫ちゃんもそんなサイバー的な領域に関わっていたとは・・・。
悪魔業界すげえなオイ。
などと話している間に封印は解け、ゆっくりと扉は開いていく。
薄暗くてよくわからないが、なんか少女趣味な部屋だった。
彼ということは男か。一見すると女の子の部屋だが、まあ趣味は人それぞれだ。
オカマな知り合いすら何人もいる俺には特に違和感ある展開ではないのだが・・・。
「いやぁああああああああ!!!!」
急に甲高い悲鳴が響いた。
みれば、部屋の隅で震える人影が一人。
金髪赤目の可憐な美少女の姿がそこにはあった。
「おぉ! アーシア並みに可愛い女の子!!」
その可愛らしさにイッセーはよだれを流さんばかりに歓喜するが、俺は僅かな違和感を感じてちょっと過去を思い出す。
そう、確か木場は彼と言っていた。
「・・・なるほど、女装趣味か」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
イッセーが、ぎこちない動きで俺の方に視線を向ける。
数秒後、その視線が部長の方へと移動。
「兵夜の言うとおり。あの子はギャスパー・ウラディ。私の可愛い下僕で、男の子よ」
「部長、こういうときはこういうんです。男の娘と」
「・・・読みは同じですよ宮白先輩」
小猫ちゃんはそう俺にツッコミを入れるが、それはイッセーの耳には入っていなかった。
数秒後、イッセーは静かに崩れ落ちた。
「イッセーさん!? イッセーさんしっかりしてください!?」
アーシアちゃんがあわててその肩をゆするが、その動きはイッセーの心には届かない。
相当ショックを受けてるな。まあちょっと同情する。
「そ、そんな・・・。一瞬とはいえ、俺はアーシアとのダブル金髪僧侶を夢見たというのに・・・」
「・・・人の夢と書いて、儚い」
小猫ちゃん、それはシャレにならんから。
「ひ、人がいっぱい増えてるぅううううう!? だ、だだだ誰なんですか一体!」
「君が封印されている間に悪魔になった新入りです。よろしく先輩」
俺はにこやかにあいさつするが、ギャスパーはブルブル震えると、さらに後ろへと下がった。
「ひいいいいいいい!!」
対人恐怖症か何かだろうか。
「木場、本当に封印されてただけなのか? どう考えても対人恐怖症の人見知りなんだが。外出不可能じゃねえか」
「実際、旧校舎内だけなら夜は出てもいいと言われてたんだけどね。彼自身の意志で引きこもってるんだよ」
引きこもりの女装趣味って、ホント部長の眷属って俺が言うのもなんだけど個性的なのが多いよな。
まあ、人に見せずにこっそり楽しむコスプレ趣味とかもいるし、そこまで言うことじゃないか。俺はその辺理解はあるぞ。
そんなことを考えていたら、部長が優しげな笑顔を浮かべてギャスパーに歩み寄った。
「さあギャスパー。あなたの封印が解かれたのよ? 一緒に外に出ましょう」
「いやですぅうううう!! 僕は一生ここにいるんです!! お外怖いぃいいいいいい!!!」
・・・重傷だ。
部長の眷属は過去にいろいろあった人が多いみたいだし、この子も例にもれず色々あったようだ。
外に出ること自体がトラウマになっていると考えるべきか?
そんなビビりまくりのギャスパーに業を煮やしたのか、ちょっと乱暴にイッセーが動いた。
「ほら! 部長が外に出ろって言ってるだろ―」
ギャスパーを立たせようとイッセーがその肩をつかんだ瞬間―
「ヒィイイイイ!」
一瞬、ギャスパーの目が光ったような気がし―
「・・・・・ん?」
意識が飛んでいたか?
みればギャスパーは壁にくっついて震えていた。
いつの間にあそこまで移動した?
いや、今の間隔はちょっと不自然だし、何よりさっきまでの話もある。
無自覚に相手の意識を奪う能力持ちと考えるべきか。いや、もしかしたら人間かもしれないし、そういう能力を持った神器を制御できていない・・・?
「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! ぶたないで・・・ぶたないでください」
・・・ふむ。
「なんて言ったらいいのかわからねえけど・・・」
俺はそう言って近づくと、ギャスパーの頭に手をおいた。
「少なくとも、今俺たちは何かするつもりはないから安心しろ。基本的には眷属なんだから味方のつもりだ」
「うぅ・・・。ぶ、ぶたない?」
「特に何かしたかったわけじゃなかったんだろ? ゴメンな、イッセー気が立ってたから怖かったろ?」
制御できない力って言うのは大変なもんだ。
魔術の才能も、高いレベルだと手つかずの場合毒にしかならないからその辺はよくわかる。
「意識か何かを停止させる能力ってところか? 直前の様子からみて視認するっていうのが条件の一つみたいだな」
俺達の世界で言う魔眼のようなものか。
・・・今後トラブルに巻き込まれないとも限らないし、俺も作った方がいいかな?
「だいたい正解。だけど、停止させるのは意識じゃないわ」
部長がそう言いながら、優しくギャスパーを抱き寄せた。
「この子はハーフヴァンパイア。そして神器は
想像の斜め上をいくハイスペック能力だった。
ギャスパー・ウラディ。
高名な吸血鬼と人間の間に生まれたハーフヴァンパイアの少年。
何が原因かは知らないが女装癖ありだが、彼の人生は非常に面倒なものだった。
吸血鬼の最大の特徴は、悪魔をはるかにしのぐ純潔派で血族至上主義。
血が薄い時点で名を上げる機会などゼロにひとしく、その血が混じりものであれば身内すら容赦なく迫害する。
ハーフな時点で、ギャスパーの人生は薄暗いものになることが確定だった。
さらに、その神器が問題だった。
停止世界の邪眼の能力は、視界におさめた者の時間を停止させること。
まあ、普通に考えて時間を停止させられている間に何かされたらと考えるれば怖くなるのは当たり前だ。
ここまでくればだいたいの予想はできる。
つまりは迫害だ。
結果、ギャスパーは住んでいた土地を追い出された。
追い出されて人間の世界に言っても、ヴァンパイアの血が邪魔して結局は迫害される。
最終的に、教会の吸血鬼狩りに襲われて部長の眷属になったらしい。
とはいえ、それでも神器の制御はできなかったため、大公やらサーゼクス様の命で旧校舎の片隅に封じられた。
んで、俺やイッセーが大活躍したことで部長の評価が上がり、これなら解放しても大丈夫だろうと判断されて今にいたる、と。
「ギャスパーの神器は非常に強力で、今もパワーアップを続けているわ」
いまだ泣き続けているギャスパーを撫でながら、部長は不安そうにそういった。
「この調子でいくと禁手にいたるのも時間の問題と言われているのよ」
「制御不能なのに大幅パワーアップが確実って・・・。そりゃ問題だ」
下手をすれば大惨事になりかねない。
「魔術のアイテムの中には魔眼封じって言うのがあるんですが、生前の実家に現物があったんでちょっとは詳しいんです。なんとか作れないか試してみます」
「そんなものまであるの? ありがとう。必要なものがあるなら何でも言ってちょうだい」
俺に作れるかどうかわからないが、まあ効果を押さえるぐらいなら何とかできるかもしれない。
このまま暴走しちまったら俺のためにも部長のためにもこいつのためにもよくないし、当面はその開発に集中するか。
しかし時間停止か。
一時的にとはいえ完全に停止させ、解除された後のデメリットもなし。倍増や半減よりある意味チートじゃないか?
イッセーのその反則加減に驚いているのか、ギャスパーを見直したかのようにまじまじと見つめている。
「しっかし時間停止って反則だよなぁ。宮白、魔術にそういったのってあるの?」
「一大ジャンルとしては存在してるが、ある程度準備する必要はあるわ加速や減速はできるけど停止はむずいし、何より解除した後揺り戻しがでかいから使い勝手はわるいぞ」
「揺り戻し? どれぐらいだい?」
「ゲームみたいに言うなら一定時間待ち時間減少するが、時間終了後HP大ダメージ・・・みたいな?」
「・・・使いにくい」
木場の質問に対する答えに、小猫ちゃんが嘆息する。
まあ、知識はあるが専門家ではないのであまり使わない。
「俺じゃあせいぜい、カップラーメンの待ち時間を少し減らすことにしか使えないな。ちょっと麺が崩れやすくなるが俺は固めが好きなのでその辺のバランスは丁度いい」
「あらあら。何気にすごい魔術も、宮白くんにかかったら日常のちょっとしたスパイスですのね」
朱乃さんの口調もどこかあきれているようだが、俺はとりあえずスルーすることにした。
「まあとりあえず、俺たちがしなきゃいけないことは・・・」
そう言いながら視線を向ける先にあるのは、一つの大きな段ボール箱。
「うぅ・・・。また僕の話に戻ったぁ」
中から声が聞こえてくるが、これはギャスパーのものだ。
ギャスパーくん、外に出るのが怖いからと、段ボール箱の中に入って落ち着こうとしてきましたよオイ。
これは引きこもりとかそういう次元からまた違う領域ではないだろうか?
「強力な神器に加えて、吸血鬼としての能力も高い。さらには人間の魔法使いが扱う術式にも造詣があるし、本来僧侶の駒一つで済むような者じゃないわ。能力的には朱乃に次いで二番手じゃないかしら」
イッセーも大概チートだがこの子も大概チートだなオイ。
問題は引きこもりということだけだが、まさにそれが致命的なわけだ。
「ちなみにデイウォーカーという特殊な吸血鬼の血を引くから太陽光も克服している、本当にすごいこなのよ?」
それはすごすぎではないでしょうか? 部長。
「お前学校に出てないだろ? そんなにすごいんだから学校ぐらい普通にできなきゃ損だぞ?」
イッセーはそういう感想になるか。
こういう特殊要素に対する抵抗感が一切ないのはこいつの長所だな。俺は制御不能ということで少し躊躇がある。
「無理ですぅうう!! お外は僕の天敵なんですううう!! 箱入り息子ってことで勘弁してくださいぃいいい!!!」
箱入り息子ってアンタ・・・。
「・・・そういえば吸血鬼って血が主食ですよね? その辺は大丈夫なんですか?」
「ハーフなこともあって、定期的に輸血用パックから血を吸うぐらいで十分みたいね。実際、血を吸うことも嫌いなのよこの子」
イッセーの言葉に応える部長の回答は、正直驚きにあふれるものだった。
吸血衝動とかないのかよ。つか吸血鬼なのに血がにがてってオイ・・・。
「個性的すぎだろこの後輩・・・」
封印を解放して本当によかったんだろうか?
正直な話、解放する前にいろいろとすることがあるような気がして頭が痛い。
「とりあえず、私と朱乃は会談の下準備のために一度出てくるわ。祐斗もお兄さまが聖魔剣について知りたいことがあるということで連れていくから、イッセー達はギャスパーのことを見てて頂戴」
「うっす」
部長も忙しいようだし、取り合えず頑張るとするか。
「言ってきますわね。ギャスパーくん? ちゃんとお外になれましょうね?」
「そ、そんなこと言わないでくだしゃい朱乃お姉さまぁあああああ!!」
いや、きみは少し慣れた方がいいからね?
「それじゃあ、頑張ってくださいねイッセーくん」
「はい! 部長と朱乃さんの期待にこたえて見せます!!」
イッセーはそう言って胸を張るが、さてどうなることやら。
まあ、俺もできることをやってみるとしますか。